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芽吹の箱庭
ノーヴ村
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リオとミナの故郷、ノーヴ村には予定より早く着いた。
フィリナとミュリィのダブルの加護のお陰で、疲れ知らずですいすい歩けたのだ。
元々体力おばけのリオはダッシュでも余裕そうだったが、それは勘弁願いたい。毎朝の鍛錬に加えて、夕食前の鍛錬も追加されてしまった。どれだけ体力が有り余っているんだ。
ミナは華奢だし、魔法を使うから体力はないのかと思いきや、意外にもタフだった。
「小さい頃から山を駆け回っていたから体力には自信があるのよ」
だそうだ。ノーヴ村って皆んなこんな感じなのだろうか。。 加護の効果は永遠なのだろうか。。
そんなこんなで特にアクシデントもなく、旅を続けていたのだが
「何だか段々と暑くなってないか?」
普通、陸と山では山の方が涼しいと思うのだが、ーーしかも森が深いなら余計ーー村に近づくにつれて、段々と暑くなっている。
雨も降っていないのか、草木は枯れている。元は幅が広かったであろう川も、チョロチョロと水が流れている程度だ。
「一体何が起こっているんだ?」
初めてノーヴ村に訪れる僕でも、違和感を感じる異様さだ。
「俺たちが小さかった頃は、この辺りはまだ霧に包まれていて、村人以外は村に辿り着けないようになっていたんだ」
「行商人のおじさんが来てくれる時は、誰かしらがここまで採取しに来るついでに案内していたのよ。でも、ある日急に霧が晴れたの」
そう言いながら、ミナが俯く。
「最初の異変は霧が晴れた事だな。この辺りは常に深い霧に包まれていて、まず晴れる事はない。ノーヴ村で取れる薬草なんかは、霧の中でしか育たない。だからほぼこの辺り一帯の薬草がダメになってしまったんだ」
「次に雨が降らなくなったわ。山に囲まれているから日照時間は少ないけれど、夏は涼しくて快適に過ごせるのよ。冬は雪が積もってかなり寒いけど。降水量が多いから水には恵まれていたの。昔から、この地には龍神様が眠っていて、供物を備える事で恵みの雨を降らせてくれる、と言い伝えられているの。供物は年に一度の豊穣祭以外にも、個々で毎日その日採れた山の恵みを供えているわ。先祖代々、信仰深くお祀りしているのだけれど‥‥」
「ノーヴ村は正式名称が『ルージェン・ノーヴ』霧に包まれた古代龍の眠る地、という意味がある。村人は『霧紡ぎ』と呼ばれる秘伝の技術で、霧から薬草や魔力を抽出するんだ。この地に住む者のみに与えられるギフトだな。ただ、村をしばらく離れると何故かその力が弱まるんだ。俺たちも最初は使えていたんだが、最近は魔力の抽出に時間がかかる。感が鈍るとはまた違う感覚なんだ。この地にいることでギフトの力が強まるようで、しばらく村で過ごしていると段々と戻ってくる」
「そんな特殊なギフトだから、村人は『霧龍の契約者』と呼ばれているの。自然と調和しながら癒しと再生の力を受け継いでいるわ」
「あぁ、だから霧が晴れてしまったことでこの地にいるにもかかわらず、皆ギフトの力が弱まってきているんだ。まぁ、そのギフトを使うための薬草がほぼ全滅してしまって使いどころがないってのが現状だが」
歩は止めず、辺りの惨状を見ながらこの村のことについて二人が話してくれる。
ノーヴ村の人たちってすごいんだな。「霧龍の契約者」ってかっけーー!ってそんな場合じゃあなさそうだな。ギフトの力まで弱まるって異常だよな?ん?ということは?
「ってことは、龍神様に何かあったのか?」
確か原因が分からないって話していたような薄っすらとした記憶はあるんだが、詳しく話を聞くと大元の龍神様に問題が起きているとしか思えないんだが…
「それが…分からないんだ」
「原因が本当にわからないの。風が吹くと龍の囁きが聞こえる『龍眠の峰』っていう、村で一番高い山があって、この辺りなんか比にならないくらいの濃い霧に包まれているの。山頂には、石化した龍の像が眠ると言われているんだけど、伝承として伝えられているだけで誰も確認をしに行ったことはないわ。村人ですら恐れる山で、麓には祠が祀られているの。そこから先は立ち入り禁止よ。かなり昔、村を訪れていた商人の見習いがその話を聞いて興味本位で登ったそうなんだけど…帰ってこなかったみたい。皆寝静まってからこっそり出て行ったから誰も止められなかった。崖から落ちたのか獣に襲われたのかすら不明。確認のしようがないわ」
「ただ、この霧の晴れ具合から、もしかしたらその山も霧が晴れているかもしれないからな。今回は冒険者の俺たちがその確認も兼ねて帰省したってわけだ。よければタクミも一緒に登ってくれないか?」
「あぁ、勿論だ。フィリナとミュリィがかけてくれた加護は、しばらくもつのかな?」
そこ重要。
頭の周りをあっち行きこっち行きしていたフィリナが僕の目の前に戻ってきて
「えぇ、大丈夫よ。永久にしておいてあげたわ」
そして左手の中指にはめた蒼紋環からは、ちょこんと顔をだしたミュリィがコクコクと頷いていることから、どうやらこちらも効果は永久のようだ。
良かったー! ノーマルの僕だと、皆に置いて行かれる未来しかみえないからな。
そうこう話しているうちに、村が見えてきた。だが、想像を絶する光景に少し観光気分だった僕は絶句してしまった。
フィリナとミュリィのダブルの加護のお陰で、疲れ知らずですいすい歩けたのだ。
元々体力おばけのリオはダッシュでも余裕そうだったが、それは勘弁願いたい。毎朝の鍛錬に加えて、夕食前の鍛錬も追加されてしまった。どれだけ体力が有り余っているんだ。
ミナは華奢だし、魔法を使うから体力はないのかと思いきや、意外にもタフだった。
「小さい頃から山を駆け回っていたから体力には自信があるのよ」
だそうだ。ノーヴ村って皆んなこんな感じなのだろうか。。 加護の効果は永遠なのだろうか。。
そんなこんなで特にアクシデントもなく、旅を続けていたのだが
「何だか段々と暑くなってないか?」
普通、陸と山では山の方が涼しいと思うのだが、ーーしかも森が深いなら余計ーー村に近づくにつれて、段々と暑くなっている。
雨も降っていないのか、草木は枯れている。元は幅が広かったであろう川も、チョロチョロと水が流れている程度だ。
「一体何が起こっているんだ?」
初めてノーヴ村に訪れる僕でも、違和感を感じる異様さだ。
「俺たちが小さかった頃は、この辺りはまだ霧に包まれていて、村人以外は村に辿り着けないようになっていたんだ」
「行商人のおじさんが来てくれる時は、誰かしらがここまで採取しに来るついでに案内していたのよ。でも、ある日急に霧が晴れたの」
そう言いながら、ミナが俯く。
「最初の異変は霧が晴れた事だな。この辺りは常に深い霧に包まれていて、まず晴れる事はない。ノーヴ村で取れる薬草なんかは、霧の中でしか育たない。だからほぼこの辺り一帯の薬草がダメになってしまったんだ」
「次に雨が降らなくなったわ。山に囲まれているから日照時間は少ないけれど、夏は涼しくて快適に過ごせるのよ。冬は雪が積もってかなり寒いけど。降水量が多いから水には恵まれていたの。昔から、この地には龍神様が眠っていて、供物を備える事で恵みの雨を降らせてくれる、と言い伝えられているの。供物は年に一度の豊穣祭以外にも、個々で毎日その日採れた山の恵みを供えているわ。先祖代々、信仰深くお祀りしているのだけれど‥‥」
「ノーヴ村は正式名称が『ルージェン・ノーヴ』霧に包まれた古代龍の眠る地、という意味がある。村人は『霧紡ぎ』と呼ばれる秘伝の技術で、霧から薬草や魔力を抽出するんだ。この地に住む者のみに与えられるギフトだな。ただ、村をしばらく離れると何故かその力が弱まるんだ。俺たちも最初は使えていたんだが、最近は魔力の抽出に時間がかかる。感が鈍るとはまた違う感覚なんだ。この地にいることでギフトの力が強まるようで、しばらく村で過ごしていると段々と戻ってくる」
「そんな特殊なギフトだから、村人は『霧龍の契約者』と呼ばれているの。自然と調和しながら癒しと再生の力を受け継いでいるわ」
「あぁ、だから霧が晴れてしまったことでこの地にいるにもかかわらず、皆ギフトの力が弱まってきているんだ。まぁ、そのギフトを使うための薬草がほぼ全滅してしまって使いどころがないってのが現状だが」
歩は止めず、辺りの惨状を見ながらこの村のことについて二人が話してくれる。
ノーヴ村の人たちってすごいんだな。「霧龍の契約者」ってかっけーー!ってそんな場合じゃあなさそうだな。ギフトの力まで弱まるって異常だよな?ん?ということは?
「ってことは、龍神様に何かあったのか?」
確か原因が分からないって話していたような薄っすらとした記憶はあるんだが、詳しく話を聞くと大元の龍神様に問題が起きているとしか思えないんだが…
「それが…分からないんだ」
「原因が本当にわからないの。風が吹くと龍の囁きが聞こえる『龍眠の峰』っていう、村で一番高い山があって、この辺りなんか比にならないくらいの濃い霧に包まれているの。山頂には、石化した龍の像が眠ると言われているんだけど、伝承として伝えられているだけで誰も確認をしに行ったことはないわ。村人ですら恐れる山で、麓には祠が祀られているの。そこから先は立ち入り禁止よ。かなり昔、村を訪れていた商人の見習いがその話を聞いて興味本位で登ったそうなんだけど…帰ってこなかったみたい。皆寝静まってからこっそり出て行ったから誰も止められなかった。崖から落ちたのか獣に襲われたのかすら不明。確認のしようがないわ」
「ただ、この霧の晴れ具合から、もしかしたらその山も霧が晴れているかもしれないからな。今回は冒険者の俺たちがその確認も兼ねて帰省したってわけだ。よければタクミも一緒に登ってくれないか?」
「あぁ、勿論だ。フィリナとミュリィがかけてくれた加護は、しばらくもつのかな?」
そこ重要。
頭の周りをあっち行きこっち行きしていたフィリナが僕の目の前に戻ってきて
「えぇ、大丈夫よ。永久にしておいてあげたわ」
そして左手の中指にはめた蒼紋環からは、ちょこんと顔をだしたミュリィがコクコクと頷いていることから、どうやらこちらも効果は永久のようだ。
良かったー! ノーマルの僕だと、皆に置いて行かれる未来しかみえないからな。
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