1 / 1
透明感のある彼
しおりを挟む
高校の放課後。
男友だちの明といつものマックで喋っていた。
「明って授業きいてるの?」
「きいてないけど?」
「なんで自信満々なのよ…。ノートくらい自分でとってよね」
「俺には絵里がいるからいいの」
「……」
わたしは明に英語のノートを渡した。
「絵里は毎日ここに来て飽きないのか?」
「…別にいいでしょ」
「ふーん。まあ、ノート貸してくれるからついていくけどね」
明には言ってないけど、
毎日通うのには理由がある。
一人で来るのもさびしいし、ノートで秘かに彼を釣っていた。
「ここって眺めいいよな」
「そうだね」
「俺さ。ここからカワイイ女の子探すの、最近の趣味なんだよね」
「あっそ…」
「絵里はそういうのしないのか?」
「わたしは明みたいにヤリチンじゃないから」
「そう…。その割にはさっきからキョロキョロしてるけど」
そんなにキョロキョロしてた…?
確かにわたしは外の景色に注目していた。
いつも、この時間くらいに通る、彼を探していたのだ。
「…そんなことないよ」
…明にじーっと見られてる。
嘘ついてるのバレたかな?
-------
すこしすると
例の彼を見つけた。
制服を着ていて、体型は細身で身長は私よりも高め。
色白でスラッとした姿勢は、何というかアイドル的オーラを放っている。
彼が立っている場所は時間が止まっていて、そこにスポットライトが当たっているようにさえ見えた。
(彼を見てるだけでも、お腹が膨れそう…)
わたしはコーヒーを口元につけて、じっと見つめる。
「もしかして、アイツ?」
「…っ!!」
今日はやけに、明がするどい。
「あの人、よく見るよね…」
「確かに目立つかもな」
「お家に帰る途中なのかな?」
「多分塾だろ」
「塾…?」
「ああ。あの制服、ここらで有名な進学校だしな」
「なるほど…」
「正直、おぼっちゃまって感じで、俺はいけ好かないな」
そっか、どおりでわたしと同じ時間を過ごしてるようには見えないわけだ…。
「あいついつも一人で歩いてるけどさ」
「うん」
「例えば彼女といっしょに歩いてるところ見たら絵里はどうする?」
「なにそれ?想像できないよ…」
「…例えばだけど。その彼女は、ボブのショートカットで」
「……」
「前髪は流行りのシースルーで薄め」
「……」
「メイクはナチュラルだけど、まつ毛をすこし盛ってて」
「……」
「笑った時の顔がカワイイ女とか連れてたら、どうする?」
「…ふたりは何喋ってるの?」
「そうだな、
『今日の先生のはなし面白かったねー!』、
とかどう?」
「…嫌かも」
「それだけ?」
なんでこんな意地悪な質問するんだろう。
明の方を見ずに答えた。
「嫉妬すると思う。その彼女に」
「それだけ?」
「病むと思う。一人で…」
「ふーん」
自分から聞いといて
なんて適当な返事だろう
「なんなの?」
「いや、俺とは違うなと思って」
「じゃあ明はどう思うわけ?」
「思うとかじゃねーよ」
「……?」
「好きなやつが、取られそうになったとき。
俺なら…」
「…っ!!」
とっさに目を閉じた。
わたしの口に明のくちびるが触れる。
ほんの数秒のできごとでも
果てしなく長い時間に思えた。
「俺なら、奪うよ。好きな子を」
「え…」
「俺の子を産んでくれ。絵里」
「……バカなの?」
店のなかでキスをして、
みんなの視線が気になるのに、
何言ってるの…?
「バカじゃないが?」
「は…?」
「俺とは子供産んでくれないのか…?」
「…わたしには無理だよ」
「なんで?」
「だって…。
わたしにもおちんちん付いてるから」
「そういえば、そうだったな」
「やっぱ、バカでしょ?」
「何回も言うなよ!」
「ふふ…」
………
しばらくの沈黙のあと
明が口を開いた。
「絵里ってカワイイ名前してるよな」
「そう?」
「なんでその名前になったの?」
「言わないとダメ?」
「嫌ならいいけど、気になるからさ」
「…まあいいか。
お父さんにつけてもらったんだよ。
わたしが生まれる前に事故で亡くなったけどね」
「お、おう。なんかごめん」
「いいよ、もう慣れたし。
お父さんは亡くなる前日に、わたしが女だったら絵里にするって言ってたらしいよ」
「男だった場合は?」
「そっちは忘れてたみたい」
「なんか抜けてる親父さんだな」
「ふっ…」
(そうかもしれない)
「お父さんの遺言にしたがって
お母さんはわたしに絵里って名前をつけたの。 結構気に入ってるからいいけどさ」
「そうなんだ」
「ずっとお父さんがいないまま育って来たから、今でも、生きてたらどんな人なんだろうって考えるんだ」
「ふーん…」
「だからかな? 男の人を無意識で目で追ってるの」
「……」
「こんなわたしって変だよね?」
「そうだな」
……
「さっき俺、ここから女の子眺めてるって言ったじゃん」
「うん…」
「確かにかわいい子たくさんいるけどさ…」
「……」
「俺、絵里以外じゃときめかない」
「え…?」
「俺も一緒なんだ。
どこかおかしいんだよ」
………
「俺は絵里のことが好きだ。
冗談じゃない。本気だ。
付き合ってほしい…」
………
「わたしは明のことは嫌いじゃないよ」
「…ああ」
「でも、ひとつだけ不満がある」
「なんだよ?」
「授業のノートとってよね」
「…は?」
「そうしたら付き合ってあげる」
「でも、それだと絵里のノート見れなくなるだろ?」
「別にいいじゃん」
「それに、ここに来てるのには目的があるんだろ?」
「それも別にいいの」
だって、
ーーあの人を眺める必要が
なくなったから。
男友だちの明といつものマックで喋っていた。
「明って授業きいてるの?」
「きいてないけど?」
「なんで自信満々なのよ…。ノートくらい自分でとってよね」
「俺には絵里がいるからいいの」
「……」
わたしは明に英語のノートを渡した。
「絵里は毎日ここに来て飽きないのか?」
「…別にいいでしょ」
「ふーん。まあ、ノート貸してくれるからついていくけどね」
明には言ってないけど、
毎日通うのには理由がある。
一人で来るのもさびしいし、ノートで秘かに彼を釣っていた。
「ここって眺めいいよな」
「そうだね」
「俺さ。ここからカワイイ女の子探すの、最近の趣味なんだよね」
「あっそ…」
「絵里はそういうのしないのか?」
「わたしは明みたいにヤリチンじゃないから」
「そう…。その割にはさっきからキョロキョロしてるけど」
そんなにキョロキョロしてた…?
確かにわたしは外の景色に注目していた。
いつも、この時間くらいに通る、彼を探していたのだ。
「…そんなことないよ」
…明にじーっと見られてる。
嘘ついてるのバレたかな?
-------
すこしすると
例の彼を見つけた。
制服を着ていて、体型は細身で身長は私よりも高め。
色白でスラッとした姿勢は、何というかアイドル的オーラを放っている。
彼が立っている場所は時間が止まっていて、そこにスポットライトが当たっているようにさえ見えた。
(彼を見てるだけでも、お腹が膨れそう…)
わたしはコーヒーを口元につけて、じっと見つめる。
「もしかして、アイツ?」
「…っ!!」
今日はやけに、明がするどい。
「あの人、よく見るよね…」
「確かに目立つかもな」
「お家に帰る途中なのかな?」
「多分塾だろ」
「塾…?」
「ああ。あの制服、ここらで有名な進学校だしな」
「なるほど…」
「正直、おぼっちゃまって感じで、俺はいけ好かないな」
そっか、どおりでわたしと同じ時間を過ごしてるようには見えないわけだ…。
「あいついつも一人で歩いてるけどさ」
「うん」
「例えば彼女といっしょに歩いてるところ見たら絵里はどうする?」
「なにそれ?想像できないよ…」
「…例えばだけど。その彼女は、ボブのショートカットで」
「……」
「前髪は流行りのシースルーで薄め」
「……」
「メイクはナチュラルだけど、まつ毛をすこし盛ってて」
「……」
「笑った時の顔がカワイイ女とか連れてたら、どうする?」
「…ふたりは何喋ってるの?」
「そうだな、
『今日の先生のはなし面白かったねー!』、
とかどう?」
「…嫌かも」
「それだけ?」
なんでこんな意地悪な質問するんだろう。
明の方を見ずに答えた。
「嫉妬すると思う。その彼女に」
「それだけ?」
「病むと思う。一人で…」
「ふーん」
自分から聞いといて
なんて適当な返事だろう
「なんなの?」
「いや、俺とは違うなと思って」
「じゃあ明はどう思うわけ?」
「思うとかじゃねーよ」
「……?」
「好きなやつが、取られそうになったとき。
俺なら…」
「…っ!!」
とっさに目を閉じた。
わたしの口に明のくちびるが触れる。
ほんの数秒のできごとでも
果てしなく長い時間に思えた。
「俺なら、奪うよ。好きな子を」
「え…」
「俺の子を産んでくれ。絵里」
「……バカなの?」
店のなかでキスをして、
みんなの視線が気になるのに、
何言ってるの…?
「バカじゃないが?」
「は…?」
「俺とは子供産んでくれないのか…?」
「…わたしには無理だよ」
「なんで?」
「だって…。
わたしにもおちんちん付いてるから」
「そういえば、そうだったな」
「やっぱ、バカでしょ?」
「何回も言うなよ!」
「ふふ…」
………
しばらくの沈黙のあと
明が口を開いた。
「絵里ってカワイイ名前してるよな」
「そう?」
「なんでその名前になったの?」
「言わないとダメ?」
「嫌ならいいけど、気になるからさ」
「…まあいいか。
お父さんにつけてもらったんだよ。
わたしが生まれる前に事故で亡くなったけどね」
「お、おう。なんかごめん」
「いいよ、もう慣れたし。
お父さんは亡くなる前日に、わたしが女だったら絵里にするって言ってたらしいよ」
「男だった場合は?」
「そっちは忘れてたみたい」
「なんか抜けてる親父さんだな」
「ふっ…」
(そうかもしれない)
「お父さんの遺言にしたがって
お母さんはわたしに絵里って名前をつけたの。 結構気に入ってるからいいけどさ」
「そうなんだ」
「ずっとお父さんがいないまま育って来たから、今でも、生きてたらどんな人なんだろうって考えるんだ」
「ふーん…」
「だからかな? 男の人を無意識で目で追ってるの」
「……」
「こんなわたしって変だよね?」
「そうだな」
……
「さっき俺、ここから女の子眺めてるって言ったじゃん」
「うん…」
「確かにかわいい子たくさんいるけどさ…」
「……」
「俺、絵里以外じゃときめかない」
「え…?」
「俺も一緒なんだ。
どこかおかしいんだよ」
………
「俺は絵里のことが好きだ。
冗談じゃない。本気だ。
付き合ってほしい…」
………
「わたしは明のことは嫌いじゃないよ」
「…ああ」
「でも、ひとつだけ不満がある」
「なんだよ?」
「授業のノートとってよね」
「…は?」
「そうしたら付き合ってあげる」
「でも、それだと絵里のノート見れなくなるだろ?」
「別にいいじゃん」
「それに、ここに来てるのには目的があるんだろ?」
「それも別にいいの」
だって、
ーーあの人を眺める必要が
なくなったから。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旦那様の愛が重い
おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。
毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。
他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。
甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。
本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる