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1.Farewell to the Beginning
0:プロローグ
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おもむろに立ち上がった”それ”は重そうに口を開く。
―――・・私たちが・・・いつでも守ってあげるから・・・―――
かすかに聞き取れたその一言と共に "それ”は
眩い光の中に吸い込まれていく。
――――――そうか、俺は・・・・――――――
◆
「・・・・ッ!・・・ス!・・・・・BOSS!
・・・・んのっ・・・いい加減に起きろよっ!ムルトッ!」
ガコン!と音を立てて頬に強烈な痛みが走る。
まだ視点の定まり切らない視界に、青い無機物が俺に話しかけてくる。
「やっとこさお目覚めですかぁ?、ムルト君。まったく・・・うぉっ!」
さっきから何かがヒュンヒュンと頭上を通っていく。
まだ意識の覚醒しきっていない俺の視界に、
バイタルステータスのウィンドウが黄色い枠で表示されたていた。
≪左第八、九肋骨骨折≫
≪血圧低下≫
骨折と言ってもヒビくらいなものだろう、
血圧の低下もアドレナリンの分泌量を増やし正常値に戻す。
他に損傷は・・・なさそうだな。
無意識のうちにやっていたバイタルチェックを再度走らせるが、
他に異常はなさそうだ。
「すまん、何があったか教えてくれ、ロウ」
意識の覚醒を終えた俺は遮蔽物から覗きつつ、
鮮やかな青が目立つ無機物に話しかける。
遮蔽物に隠れた青い無機物は、
面倒くさそうに言葉を返してきた。
「なんか光ったと思ったらとんでもねぇ爆風でよぉ!
奴ら、ECB使ってきやがった!」
※"ECB"=Electronic Counter Bomb
空中で爆発する電子炸裂弾、
及び起爆前に 電磁妨害波を放出する兵器。
「BOSSはそれに先っちょだけ触れたんだよ、先っちょだけな」
ロウと呼ばれたその青い無機物がおちゃらけた感じで、
塩をつまむような動作を横にしてやってみせる。
その青い無機物からは伺えもしない、
いつもの調子に乗った顔が脳裏を横切る。
しかしECBか。先っちょだけなんて言ってたが、
実際はもう少し範囲内にいたのだろう。
その証拠に肋骨2本を持っていかれた。
言い換えれば2本で済んだ、とも受け取れる。
何も感じず間もなく、気が付けば三途という名の川を渡ってました。
そういった奴は何百と見てきたが、
いざ自分がその場に置かれていたと考えると、少し背筋が凍る。
だが問題はその後、電磁妨害が残るのがネックだ。
強力な妨害で 個別通信は使えないし、
近くの連中とのやり取りも口頭伝達になる。
近距離無線が通じる分、
現実での戦闘のほうが、まだマシと思えるくらいだ。
ふと、ロウの周りから遮蔽物の奥へ向ける銃声がないことに気づく。
「フィスタール軍はどうs・・・・全滅か。」
地図の生体反応の点灯を確認しながらぼやく。
よく見ればあちこちに、
グレーに塗装された軍服を纏った、人であった何かが横たわっている。
臓物や体の一部でであろう何かが所狭しと転がっていた。
見渡す床も3割は赤く染まっている。
現実と何ら変わりない光景が
仮想で広がっている。
即死だったのがせめてもの救いか。
「ま、ヒューマジェストのやつらも半ば自爆に近い起爆だったんで、
数はそんなに残ってないと思うけどなっ!」
そういいながらロウは真面目にお仕事に励んでいる。
右手に持ったアサルトライフルを震わせ、
遮蔽物の向こうへ弾幕を張ってはいる。
が、どうも当たっていないようだった。
戦闘能力を買って組んだわけではないので、
当てにしていたわけではないが・・・ないにしてもだ。
どういう精度してるんだこいつの腕は。
小学生でももう少し当てるぞ。
楽しそうに弾幕を張るロウをよそ目に、ウィルスチェッカーを走らせる。
意識は戻ったが記憶のほうは曖昧だ。
その曖昧さはウィルスの可能性もあると考え、
先にチェッカーを走らせる。が、だめだった。
少し記憶が飛んでるようだ。ECBに小指を突っ込ませる前の記憶が曖昧だ。
チップ内の記憶領域《ストレージ》も・・・だめだ、
ここでフィスタール軍を発見した後の記憶領域《ストレージ》が、
更地と化している。
時間にしてものの数分だと思うが、それにあの声は・・・・・。
ともあれウィルスの心配は無い様だし、今はそれどころではない。
一先ず奴らを手早く片付けて 接続解除したほうがよさそうだ。
現実に戻ったところで何がどうこうするわけでもないが、
日に2度もECBを食らってやる余裕はないし、
俺だけ範囲外に逃げても・・・後味悪いしな。
ふと相棒に視線を送るとそれに気づいたのか、
「目が覚めたんならさっさと掃除してもらっていいですかね?BOSSぅ!」
いくら弾切れが無いとはいえ弾幕を張り続けるのは、
訓練された 傭兵といえど精神的にキツイ。
ましてや向こうからも弾が飛んでこないわけではない。
屋外の射撃練習場ではない。現実ではないにせよ本物の戦場だ。
弾に当たれば死ぬ可能性が有ることは、
仮想も 現実も変りはない。
「残りは・・・・5、いや6か。」
視覚の右上に表示されている 地図の生体反応を確認しつつ、
装備を確認する。
具現化させた愛刀、
2本の小太刀はいつも以上にやる気を見せてくれている。
その証拠にいつも以上に光を反射している・・・気がする。
「ロウ、 接続解除の準備を頼む!」
叫ぶと同時に遮蔽物を乗り越え 光学迷彩を発動する。
「ボ、BOSS!ダメージは・・・・大丈夫そうだな・・・
ったくどういう体の作りしてんだか」
後方で微かにそんなぼやきを聞きつつ、
俺は銃弾の飛び交う中を駆けていった・・・・・。
―――・・私たちが・・・いつでも守ってあげるから・・・―――
かすかに聞き取れたその一言と共に "それ”は
眩い光の中に吸い込まれていく。
――――――そうか、俺は・・・・――――――
◆
「・・・・ッ!・・・ス!・・・・・BOSS!
・・・・んのっ・・・いい加減に起きろよっ!ムルトッ!」
ガコン!と音を立てて頬に強烈な痛みが走る。
まだ視点の定まり切らない視界に、青い無機物が俺に話しかけてくる。
「やっとこさお目覚めですかぁ?、ムルト君。まったく・・・うぉっ!」
さっきから何かがヒュンヒュンと頭上を通っていく。
まだ意識の覚醒しきっていない俺の視界に、
バイタルステータスのウィンドウが黄色い枠で表示されたていた。
≪左第八、九肋骨骨折≫
≪血圧低下≫
骨折と言ってもヒビくらいなものだろう、
血圧の低下もアドレナリンの分泌量を増やし正常値に戻す。
他に損傷は・・・なさそうだな。
無意識のうちにやっていたバイタルチェックを再度走らせるが、
他に異常はなさそうだ。
「すまん、何があったか教えてくれ、ロウ」
意識の覚醒を終えた俺は遮蔽物から覗きつつ、
鮮やかな青が目立つ無機物に話しかける。
遮蔽物に隠れた青い無機物は、
面倒くさそうに言葉を返してきた。
「なんか光ったと思ったらとんでもねぇ爆風でよぉ!
奴ら、ECB使ってきやがった!」
※"ECB"=Electronic Counter Bomb
空中で爆発する電子炸裂弾、
及び起爆前に 電磁妨害波を放出する兵器。
「BOSSはそれに先っちょだけ触れたんだよ、先っちょだけな」
ロウと呼ばれたその青い無機物がおちゃらけた感じで、
塩をつまむような動作を横にしてやってみせる。
その青い無機物からは伺えもしない、
いつもの調子に乗った顔が脳裏を横切る。
しかしECBか。先っちょだけなんて言ってたが、
実際はもう少し範囲内にいたのだろう。
その証拠に肋骨2本を持っていかれた。
言い換えれば2本で済んだ、とも受け取れる。
何も感じず間もなく、気が付けば三途という名の川を渡ってました。
そういった奴は何百と見てきたが、
いざ自分がその場に置かれていたと考えると、少し背筋が凍る。
だが問題はその後、電磁妨害が残るのがネックだ。
強力な妨害で 個別通信は使えないし、
近くの連中とのやり取りも口頭伝達になる。
近距離無線が通じる分、
現実での戦闘のほうが、まだマシと思えるくらいだ。
ふと、ロウの周りから遮蔽物の奥へ向ける銃声がないことに気づく。
「フィスタール軍はどうs・・・・全滅か。」
地図の生体反応の点灯を確認しながらぼやく。
よく見ればあちこちに、
グレーに塗装された軍服を纏った、人であった何かが横たわっている。
臓物や体の一部でであろう何かが所狭しと転がっていた。
見渡す床も3割は赤く染まっている。
現実と何ら変わりない光景が
仮想で広がっている。
即死だったのがせめてもの救いか。
「ま、ヒューマジェストのやつらも半ば自爆に近い起爆だったんで、
数はそんなに残ってないと思うけどなっ!」
そういいながらロウは真面目にお仕事に励んでいる。
右手に持ったアサルトライフルを震わせ、
遮蔽物の向こうへ弾幕を張ってはいる。
が、どうも当たっていないようだった。
戦闘能力を買って組んだわけではないので、
当てにしていたわけではないが・・・ないにしてもだ。
どういう精度してるんだこいつの腕は。
小学生でももう少し当てるぞ。
楽しそうに弾幕を張るロウをよそ目に、ウィルスチェッカーを走らせる。
意識は戻ったが記憶のほうは曖昧だ。
その曖昧さはウィルスの可能性もあると考え、
先にチェッカーを走らせる。が、だめだった。
少し記憶が飛んでるようだ。ECBに小指を突っ込ませる前の記憶が曖昧だ。
チップ内の記憶領域《ストレージ》も・・・だめだ、
ここでフィスタール軍を発見した後の記憶領域《ストレージ》が、
更地と化している。
時間にしてものの数分だと思うが、それにあの声は・・・・・。
ともあれウィルスの心配は無い様だし、今はそれどころではない。
一先ず奴らを手早く片付けて 接続解除したほうがよさそうだ。
現実に戻ったところで何がどうこうするわけでもないが、
日に2度もECBを食らってやる余裕はないし、
俺だけ範囲外に逃げても・・・後味悪いしな。
ふと相棒に視線を送るとそれに気づいたのか、
「目が覚めたんならさっさと掃除してもらっていいですかね?BOSSぅ!」
いくら弾切れが無いとはいえ弾幕を張り続けるのは、
訓練された 傭兵といえど精神的にキツイ。
ましてや向こうからも弾が飛んでこないわけではない。
屋外の射撃練習場ではない。現実ではないにせよ本物の戦場だ。
弾に当たれば死ぬ可能性が有ることは、
仮想も 現実も変りはない。
「残りは・・・・5、いや6か。」
視覚の右上に表示されている 地図の生体反応を確認しつつ、
装備を確認する。
具現化させた愛刀、
2本の小太刀はいつも以上にやる気を見せてくれている。
その証拠にいつも以上に光を反射している・・・気がする。
「ロウ、 接続解除の準備を頼む!」
叫ぶと同時に遮蔽物を乗り越え 光学迷彩を発動する。
「ボ、BOSS!ダメージは・・・・大丈夫そうだな・・・
ったくどういう体の作りしてんだか」
後方で微かにそんなぼやきを聞きつつ、
俺は銃弾の飛び交う中を駆けていった・・・・・。
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