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1.Farewell to the Beginning
1:産み落とされしクラヴィス
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新延暦 503年 9月 17日
「おぎゃあ、おぎゃあ」
とある病院で一つの命が生まれた。
名はユーキ、姓はリーヴン。
その子を抱きかかえ、涙を流している眼鏡の男。
少し疲れているのかやつれ気味だが、
世に言うイケメンという部類に入るのは間違いない。
ラトリー・リーヴン、23歳 ユーキの父である。
まだ在学中であった二十歳の時に世界的大企業である、
ミカドグループにスカウトされた、AI研究の第一人者である。
現在はミカドグループの出資で、
去年完成したネオラボラトリーの、創設時からの所長を務めている。
彼はAI研究に精通していながらも、
バイオチップの権威としても名を馳せる存在であり、
ネオラボラトリーでは主に次世代バイオチップの研究、開発を主としていた。
普段はおっとりしているが、一つのことにのめり出すとやめられない、
止まらないといった性格で、その性根が幸いしたのか今の職にありつけている。
職員からの信頼も厚く、老若男女の垣根を超えて慕われており、
既婚者にもかかわらず、女性スタッフ内での『彼氏にしたいランキング』で、
堂々の1位に君臨している。
と言っても研究以外のことに関しては、
呆れるほどの無頓着な彼は気にも止めていないようだが。
ふと分娩を終えたばかりの女性に声を掛けられ、
赤子を優しく渡すラトリー。
渡された子は元気に産声を上げている。
自分の心血を注いで産んだ我が子が、こうして元気に生まれてきたのだ。
涙してしまっても不思議はないだろう。
赤子を抱きながら涙ぐんでいる女性。
彼女の名はキョーコ・リーヴン、27歳。
ラトリーの妻であり、同僚でもある。
元々ミカドグループの、バイオチップ開発チームの主任を務めていた彼女。
ラボでも主任として勤務しており、夫に負けず劣らず中々の美人だ。
仕事の面でも夫と並び、バイオチップの分野において第一線を走っている。
そんな才色兼備の二人の子供。
ユーキと名付けられた彼は、
現時点ではなんてことはない普通の赤子だった。
しかし彼もまた、例にもれず移植される。
そう、バイオチップだ。
ここ40年前後に出生した人間の大半は、頭部にそれを移植していた。
約半世紀前にスタートした技術で、
ここ30年は移植しないほうが珍しいくらいだ。
このバイオチップ。
正式にはナノバイオチップ。
巷ではバイオチップや単にチップと呼ばれるが一般的だ。
"ナノ"と呼ばれているが実際は5mm³程の立方体で、
単に"チップ"と呼ばれている。
チップは大脳と小脳の間に移植され、成長と共に脳内に癒着していく。
移植後2、3日で 記憶領域が機能し始め、
移植された人間の5感情報を全て記録してくれる。
それも生涯を通してだ。
例えチップ自体が損傷を受けても、自動修復機能が付いている。
それが"バイオ"と付く所以でもある。
生まれてから3日後にラトリーとキョーコが見守る中、施術は行われた。
もちろん成功した。
成功したと言っても確立された技術である。
失敗事例なぞこの30年一度もない、それほど確約された成功だった。
しかしそれを差し引いても見守る二人に、
どこか安堵や喜びといった感情は見て取れなかった。
どちらかと言えば暗い表情を浮かべていた。
その表情の原因は、ユーキに移植されたチップにあった。
それもそのはず、誰も移植したことの無いチップだったからだ。
現在世界で普及している最新のチップは 第4世代。
ラトリーとキョーコもそんな 第4世代を移植している。
その二人の子供、ユーキに移植されたのは、
世界で唯一の 第5世代である。
新たな可能性に富んだ 第5世代。
ユーキはその初の所持者になった。
しかしこれが原因で、ある組織に狙われることになると、
赤子のユーキが理解などできるはずもなかった。
その可能性を予測していてなお、移植することを決めた二人。
苦渋の決断だったのが二人の表情が物語っていた。
あれよあれよと季節は廻り、3年の月日が経過していた。
彼はすっかり成長し、二足歩行も難なくこなすようになってた。
若干甘えん坊なところもあったが、比較的おとなしい子だ。
字の読み書きも最近覚え始め、毎日が充実しているようだった。
そんなユーキは共働きの両親の職場。
ラボの一室で過ごすのが日課になっている。
職員達からもよく可愛がられ、両親共々人気者になっていた。
しかし安寧な日々はすぐに終わりを迎える。
そう、彼らにとっての悪夢の日がすぐそこまで迫っていた。
「おぎゃあ、おぎゃあ」
とある病院で一つの命が生まれた。
名はユーキ、姓はリーヴン。
その子を抱きかかえ、涙を流している眼鏡の男。
少し疲れているのかやつれ気味だが、
世に言うイケメンという部類に入るのは間違いない。
ラトリー・リーヴン、23歳 ユーキの父である。
まだ在学中であった二十歳の時に世界的大企業である、
ミカドグループにスカウトされた、AI研究の第一人者である。
現在はミカドグループの出資で、
去年完成したネオラボラトリーの、創設時からの所長を務めている。
彼はAI研究に精通していながらも、
バイオチップの権威としても名を馳せる存在であり、
ネオラボラトリーでは主に次世代バイオチップの研究、開発を主としていた。
普段はおっとりしているが、一つのことにのめり出すとやめられない、
止まらないといった性格で、その性根が幸いしたのか今の職にありつけている。
職員からの信頼も厚く、老若男女の垣根を超えて慕われており、
既婚者にもかかわらず、女性スタッフ内での『彼氏にしたいランキング』で、
堂々の1位に君臨している。
と言っても研究以外のことに関しては、
呆れるほどの無頓着な彼は気にも止めていないようだが。
ふと分娩を終えたばかりの女性に声を掛けられ、
赤子を優しく渡すラトリー。
渡された子は元気に産声を上げている。
自分の心血を注いで産んだ我が子が、こうして元気に生まれてきたのだ。
涙してしまっても不思議はないだろう。
赤子を抱きながら涙ぐんでいる女性。
彼女の名はキョーコ・リーヴン、27歳。
ラトリーの妻であり、同僚でもある。
元々ミカドグループの、バイオチップ開発チームの主任を務めていた彼女。
ラボでも主任として勤務しており、夫に負けず劣らず中々の美人だ。
仕事の面でも夫と並び、バイオチップの分野において第一線を走っている。
そんな才色兼備の二人の子供。
ユーキと名付けられた彼は、
現時点ではなんてことはない普通の赤子だった。
しかし彼もまた、例にもれず移植される。
そう、バイオチップだ。
ここ40年前後に出生した人間の大半は、頭部にそれを移植していた。
約半世紀前にスタートした技術で、
ここ30年は移植しないほうが珍しいくらいだ。
このバイオチップ。
正式にはナノバイオチップ。
巷ではバイオチップや単にチップと呼ばれるが一般的だ。
"ナノ"と呼ばれているが実際は5mm³程の立方体で、
単に"チップ"と呼ばれている。
チップは大脳と小脳の間に移植され、成長と共に脳内に癒着していく。
移植後2、3日で 記憶領域が機能し始め、
移植された人間の5感情報を全て記録してくれる。
それも生涯を通してだ。
例えチップ自体が損傷を受けても、自動修復機能が付いている。
それが"バイオ"と付く所以でもある。
生まれてから3日後にラトリーとキョーコが見守る中、施術は行われた。
もちろん成功した。
成功したと言っても確立された技術である。
失敗事例なぞこの30年一度もない、それほど確約された成功だった。
しかしそれを差し引いても見守る二人に、
どこか安堵や喜びといった感情は見て取れなかった。
どちらかと言えば暗い表情を浮かべていた。
その表情の原因は、ユーキに移植されたチップにあった。
それもそのはず、誰も移植したことの無いチップだったからだ。
現在世界で普及している最新のチップは 第4世代。
ラトリーとキョーコもそんな 第4世代を移植している。
その二人の子供、ユーキに移植されたのは、
世界で唯一の 第5世代である。
新たな可能性に富んだ 第5世代。
ユーキはその初の所持者になった。
しかしこれが原因で、ある組織に狙われることになると、
赤子のユーキが理解などできるはずもなかった。
その可能性を予測していてなお、移植することを決めた二人。
苦渋の決断だったのが二人の表情が物語っていた。
あれよあれよと季節は廻り、3年の月日が経過していた。
彼はすっかり成長し、二足歩行も難なくこなすようになってた。
若干甘えん坊なところもあったが、比較的おとなしい子だ。
字の読み書きも最近覚え始め、毎日が充実しているようだった。
そんなユーキは共働きの両親の職場。
ラボの一室で過ごすのが日課になっている。
職員達からもよく可愛がられ、両親共々人気者になっていた。
しかし安寧な日々はすぐに終わりを迎える。
そう、彼らにとっての悪夢の日がすぐそこまで迫っていた。
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