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1.Farewell to the Beginning
23:前兆2
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「先にそっちから話すか」
いてて、と言いながら座り直す親父。
年だな。そりゃそうか、こないだ46になったんだ。
四捨五入で五十路だ、とは言えまだまだ現役だが。
4月の上旬ごろ、姉さんとの 個別通信が出来なかった。
原因は 干渉波。
親父の仕事と何らかの関係があったと踏んでいた。
結論から言えば、俺の予測は的中していた。
親父が1年もの間就いていた仕事。
それは海を挟んだ隣国フェスタール王国内での反AI主義ヒューマジェスト。
任務は反AIの、諜報と妨害にあった。
なんでも国防を担うお偉いさんからの直々の依頼だとか。
フェスタールはかなり治安の良い国で且つ先進国。
経済規模、人口共に世界第3位の強国だ。
だがそんな治安の良いはずのフェスタールでさえ、
反AIとの小規模な摩擦は、度々起こっていたらしい。
大国と言っても全てを把握できるわけはない。
痒い所に手が届く。そんな人材として親父が抜擢された。
仕事自体、最初は順調だったらしい。
といっても足が付くのは大半が下っ端。
そいつらから得られる情報は、
仕事に就く時から一歩前進した程度。
そこから先は微動だにしなかった。
下っ端の巣くうアジトもいくつか見つけたりもしたらしいが、
こちらも重要拠点ではなかった。
決定打、重要な情報を得られず、ずるずると任期が伸び、
動きがあったのは、最終契約期間も終わりを迎える1週間程前。
いつものように 仮想で、反AIのアジトを見つけた親父は、
いつものように一人で片付け、
いつものように 箱庭内のデータを漁っていた時。
そいつらに奇襲を受けた。
一人は 傭兵ランクカーネル。
世界に50人もいないと言われている、
干渉波を 解除した 傭兵。
クラング・フォーゲル。
数年前までとある国の軍人をしていたらしい。
親父とは何度か戦場で会っているのだとか。
そしてもう一人、小柄だが男の口調だったと言う。
金色の 擬人装甲を見に纏い、
2丁のハンドガン。
ツーハンドで銃口の下と弾倉にそれぞれ
15㎝程の刃物が装着されていたそうだ。
「えれぇ強かったんだが、
俺の知ってるレアに、あいつはみたことねえわ」
”レア”とはギルドでのカテゴリだ。※
傭兵のランクの上から順に、
ピアレス、マーシャル、ジェネラル。
この者達を総称して”レア”と言う。
因みに親父はマーシャル、上から2番目のランクらしい。
世界で20人程しかいない。その中の一人だ。
「クラングだけだったら屁でもねえんだが」
親父でてこずると言うことは少なくともジェネラル相当の実力者。
戦闘中にクラングと少し会話したらしいが、
反AI側の人間で間違いないらしい。
殺し合いの真っただ中で、その相手と会話とか。
正直何を言っているのかわからない。
「それで、逃げ帰ってきたと」
「ち、ちげえし!相手の素性が半分割れたんだ!
諜報って意味では成功なんだよ!」
言い訳が過ぎるぞ、親父よ。
しかし 干渉波に関してはクラングと言う男のか。
フィスタールに居たのに、
俺との 個別通信が出来なかった姉さんも、
親父と一緒に行動してたって事か。
そして素性不明の金色の 擬人装甲。
なるほど、ペイディに似てるのか。
「黄金のツーハンドとペイディの関係か」
「それだ。別に黒だとは思っちゃいねえ。
何かしら関係があって、情報を持ってるかもしれねえしな」
関係性を疑うのも無理はない。
俺だって親父と姉さん以外に銃を相手にするのは、ペイディが初めてだった。
近接戦がメインの 仮想での戦闘。
もちろん銃を 具現化する 傭兵は少数だが、
いないことはない。
ただツーハンドとなると話は別だ。
あまつさえ 具現化後の制御に、
かなりの負担をチップに掛ける。
戦場においては 肉体強化と 結界による、
防御能力の向上も必須だ。
この二つを維持しながら、更に銃の維持となると、
出来る人間は限られてくる。
となればペイディが浮かび上がるのは必然。
現状でツーハンドを使えるのはクラングと一緒にいた黄金の 擬人装甲。
そしてペイディの二人だけだ。
黒ではないと思いたい反面、ツーハンドというキーワードに一致する二人が、
黒だと言ってきているようだった。
「わかった。その代わりというか、手間賃って事で俺も同席させてくれ」
「いいぜ。もちろんミツコも含めてな。
あとペイディ君以外の友達も呼んどけよ。
ペンションの辺りはセキュリティ固めてるし大丈夫だと思うが、
彼一人だと流石にあやしすぎるからな」
っていうか話だけなら海って口実は要らないんじゃ。
「そういえばなんで海なんだ?話だけなら別に・・・」
さっきまでへこんでた癖に、もういつものニヤケ顔だった。
「色々見てえだろ?」
・・・このエロ親父め。
独身だからって謳歌しすぎじゃないか?
◆
「やべぇ。頑張り過ぎたかも」
蛙のように潰れる俺の頭に、冷たいタオルが舞い降りた。
気持ちいい。
「あんまり頑張ると、この後遊べなくなるわよ」
「そろそろ日が傾くし、お開きだろ」
珍しい、フロスだった。
相変わらずの美脚だ。
太過ぎず、細すぎず。
健康的であり、魅惑で優艶且つ魔性の脚だ。
踏まれたいかって?とんでもない!
俺を踏むなんて勿体ないですよ!
「めずらしいじゃん、レオから離れるなんて」
そうなのだ。足にばかり気を取られている場合ではない。
何時もレオとべったりのフロスがどうしたんだ?
辺りにレオの気配がないのも不自然だ。
「そうね。ちょっとあなたと二人きりで話がしたかったから」
なんですかね、唐突に。
意味深すぎやしないですかね。
これは・・・ドッキリか?
周りをキョロキョロしている俺に、
不思議そうな視線を送るフロス。
「回りくどいのは嫌いですから単刀直入に聞きますわね」
今日は随分と淑女モードなんだな。
しかし何だろう。二人に何かしでかしたかな。
「ムルトは。その」
随分溜めるじゃねーか。
エンターテイメントをわかってらっしゃる。
「レオの事どう思ってるのかしら」
ん?
「ごめん。どういう意味かな」
「とぼけないでくださる?わたくし、真剣なんだから!」
えーと。
頭が痛い。昔こんな芸人が俺の近くにいた気がする。
たしかレオ・アリクアーマとかいう、
珍しい苗字だった奴が。
「話が見えてこないんだけど。一応言っとくけど俺、同性愛者じゃないぜ?
もちろんレオはフロスの事が好きなんだろ?
じゃなきゃ聞きたくもないノロケ話を延々としてこないだろうし」
キョトンとしたフロスを見て、やはり勘違いしているようだ。
「何言ってるのよムルト。そんなの当然でしょ?
あたしが聞いてるのは友達としてよ。
最近 仮想から帰ってきても、
落ち込んでることが多いみたいだから。心配になって」
勘違いをしていたのは俺の方だったようだ。
しかもあっという間にじゃじゃ馬モードだ。すぐ口調に出る。
いやしかし、そうか。
確かに最近レオの成長が芳しくないなとは思っていた。
自分でも気づいていたか。
とは言ってもこの一年で俺からアドバイスできることも、
少なくなっちゃったしなあ。
ペイディと模擬戦やってもほぼ秒殺だし。
ジェナスもマンネリ気味で、
あえて自分に不利な状況下で、レオの攻撃に耐えるという、
変な遊びを覚える始末だ。
そう、徐々に力の差が広がってきてしまっている。
レオにとっての分厚い壁が今試練となって襲い掛かる。
そんな状況だ。
ただレオは強い。ハートが、だ。
「確かに最近うまくいってないけど。
レオなら大丈夫だよ。あいつ強いから。
じゃなきゃ俺に8回も挑んでこないって」
去年の今頃もこんなこと言った記憶が。
あ~地獄の窯だ、思い出した。
「何なら夏休み中ヒマしてるんだろ?
仮想来て応援してやってくれよ。
フィアンセが居たらレオも頑張れるんじゃね?」
ああ、自分の顔がニヤついているのが手に取るようにわかる。
自分の顔だ、当たり前か。
しかしフロスはまんざらでもなさそうだ。
淑女モードで顔を赤らめて、肩口からハートが溢れそうだ。
「お、お邪魔にならないかしら?」
「まあ観戦するだけなら大丈夫だろ。
それにいざとなったら 騎士が守ってくれるんだろ?」
今年のトマトは太陽をいっぱいに浴びてさらに赤くなる。
それにつられて俺の口角がまた吊り上がる。
「その辺にしてくれよ。ムルト。後が大変だから」
おっと 騎士様のご登場だ。
村人役はさっさと退散するか。
「それじゃ、後よろしく」
傾き始めた太陽と共に、俺はクールに去るぜ。
◆
ペンションに入ると、冷房のひんやりとした風が心地良い。
親父は既にソファに腰かけ、スタンバっていた。
熱々のお二人は、ジェナスに送迎と言う名の護衛をお願いした。
現実でも戦車並みの威圧感は健在だ。
任せて大丈夫だろう。
一応親父の部下も何人かついてるらしいしな。
申し訳ないが3人には今回、外野で待機してもらう。
ペイディと出会ってから3ヶ月。
まだジェナスとレオに対して、GOサインが出ていなかった。
中々に慎重だ。
「あれ、姉さんは?」
ペイディもいないが、さっき外の更衣室でごそごそやっていたから。
多分それだろう。
「ミツコはちょっと、お使い頼んでてな」
お使い、ねえ。
まあいいけど。
ふと後ろから足跡が聞こえ、
ドアに備え付けられたパイプチャイムが、不規則な音を奏でる。
「す、すいません遅れてしまって」
「大丈夫、俺も今来たとこだし」
流石にフィットネススーツに水泳帽はまずいと思ったのか。
ペイディはいつもの学生服に身を包んでいた。
いや学生服もこの場にあっているかと言われると疑問だが。
一先ずテンプレ通りに紹介する。
「ペイディ、親父のセイジ・イシダだ。って言っても知ってるか」
「初めまして。ペイディ・ソフォスと申します。お噂は 予予」
「堅っ苦しい挨拶は抜きだ、ペイディ君。
それに噂ってどうせろくなもんじゃねえだろ?」
カッカッカと笑う親父に対応に困ったのか、彼は苦笑いしていた。
「で、早速だが。UMCは持ってきてるか?」
「はい。ここに」
いきなり 仮想潜るのか?
てっきり話を付けてからかと思ったんだが。
そう言えば 仮想で何するのか親父に聞いてなかったな。
「んじゃ早速」
そう言って二人は近くの端末から潜っていく。
念の為、ペンションのセキュリティレベルを上げておく。
姉さん以外はこれで感知されれば、 仮想に居ても警報が出る。
それじゃ俺も潜るか。
はてさて、親父は 仮想で何をするのやら。
※ギルド所属の 傭兵について
ざっくりですが表のような感じです
いてて、と言いながら座り直す親父。
年だな。そりゃそうか、こないだ46になったんだ。
四捨五入で五十路だ、とは言えまだまだ現役だが。
4月の上旬ごろ、姉さんとの 個別通信が出来なかった。
原因は 干渉波。
親父の仕事と何らかの関係があったと踏んでいた。
結論から言えば、俺の予測は的中していた。
親父が1年もの間就いていた仕事。
それは海を挟んだ隣国フェスタール王国内での反AI主義ヒューマジェスト。
任務は反AIの、諜報と妨害にあった。
なんでも国防を担うお偉いさんからの直々の依頼だとか。
フェスタールはかなり治安の良い国で且つ先進国。
経済規模、人口共に世界第3位の強国だ。
だがそんな治安の良いはずのフェスタールでさえ、
反AIとの小規模な摩擦は、度々起こっていたらしい。
大国と言っても全てを把握できるわけはない。
痒い所に手が届く。そんな人材として親父が抜擢された。
仕事自体、最初は順調だったらしい。
といっても足が付くのは大半が下っ端。
そいつらから得られる情報は、
仕事に就く時から一歩前進した程度。
そこから先は微動だにしなかった。
下っ端の巣くうアジトもいくつか見つけたりもしたらしいが、
こちらも重要拠点ではなかった。
決定打、重要な情報を得られず、ずるずると任期が伸び、
動きがあったのは、最終契約期間も終わりを迎える1週間程前。
いつものように 仮想で、反AIのアジトを見つけた親父は、
いつものように一人で片付け、
いつものように 箱庭内のデータを漁っていた時。
そいつらに奇襲を受けた。
一人は 傭兵ランクカーネル。
世界に50人もいないと言われている、
干渉波を 解除した 傭兵。
クラング・フォーゲル。
数年前までとある国の軍人をしていたらしい。
親父とは何度か戦場で会っているのだとか。
そしてもう一人、小柄だが男の口調だったと言う。
金色の 擬人装甲を見に纏い、
2丁のハンドガン。
ツーハンドで銃口の下と弾倉にそれぞれ
15㎝程の刃物が装着されていたそうだ。
「えれぇ強かったんだが、
俺の知ってるレアに、あいつはみたことねえわ」
”レア”とはギルドでのカテゴリだ。※
傭兵のランクの上から順に、
ピアレス、マーシャル、ジェネラル。
この者達を総称して”レア”と言う。
因みに親父はマーシャル、上から2番目のランクらしい。
世界で20人程しかいない。その中の一人だ。
「クラングだけだったら屁でもねえんだが」
親父でてこずると言うことは少なくともジェネラル相当の実力者。
戦闘中にクラングと少し会話したらしいが、
反AI側の人間で間違いないらしい。
殺し合いの真っただ中で、その相手と会話とか。
正直何を言っているのかわからない。
「それで、逃げ帰ってきたと」
「ち、ちげえし!相手の素性が半分割れたんだ!
諜報って意味では成功なんだよ!」
言い訳が過ぎるぞ、親父よ。
しかし 干渉波に関してはクラングと言う男のか。
フィスタールに居たのに、
俺との 個別通信が出来なかった姉さんも、
親父と一緒に行動してたって事か。
そして素性不明の金色の 擬人装甲。
なるほど、ペイディに似てるのか。
「黄金のツーハンドとペイディの関係か」
「それだ。別に黒だとは思っちゃいねえ。
何かしら関係があって、情報を持ってるかもしれねえしな」
関係性を疑うのも無理はない。
俺だって親父と姉さん以外に銃を相手にするのは、ペイディが初めてだった。
近接戦がメインの 仮想での戦闘。
もちろん銃を 具現化する 傭兵は少数だが、
いないことはない。
ただツーハンドとなると話は別だ。
あまつさえ 具現化後の制御に、
かなりの負担をチップに掛ける。
戦場においては 肉体強化と 結界による、
防御能力の向上も必須だ。
この二つを維持しながら、更に銃の維持となると、
出来る人間は限られてくる。
となればペイディが浮かび上がるのは必然。
現状でツーハンドを使えるのはクラングと一緒にいた黄金の 擬人装甲。
そしてペイディの二人だけだ。
黒ではないと思いたい反面、ツーハンドというキーワードに一致する二人が、
黒だと言ってきているようだった。
「わかった。その代わりというか、手間賃って事で俺も同席させてくれ」
「いいぜ。もちろんミツコも含めてな。
あとペイディ君以外の友達も呼んどけよ。
ペンションの辺りはセキュリティ固めてるし大丈夫だと思うが、
彼一人だと流石にあやしすぎるからな」
っていうか話だけなら海って口実は要らないんじゃ。
「そういえばなんで海なんだ?話だけなら別に・・・」
さっきまでへこんでた癖に、もういつものニヤケ顔だった。
「色々見てえだろ?」
・・・このエロ親父め。
独身だからって謳歌しすぎじゃないか?
◆
「やべぇ。頑張り過ぎたかも」
蛙のように潰れる俺の頭に、冷たいタオルが舞い降りた。
気持ちいい。
「あんまり頑張ると、この後遊べなくなるわよ」
「そろそろ日が傾くし、お開きだろ」
珍しい、フロスだった。
相変わらずの美脚だ。
太過ぎず、細すぎず。
健康的であり、魅惑で優艶且つ魔性の脚だ。
踏まれたいかって?とんでもない!
俺を踏むなんて勿体ないですよ!
「めずらしいじゃん、レオから離れるなんて」
そうなのだ。足にばかり気を取られている場合ではない。
何時もレオとべったりのフロスがどうしたんだ?
辺りにレオの気配がないのも不自然だ。
「そうね。ちょっとあなたと二人きりで話がしたかったから」
なんですかね、唐突に。
意味深すぎやしないですかね。
これは・・・ドッキリか?
周りをキョロキョロしている俺に、
不思議そうな視線を送るフロス。
「回りくどいのは嫌いですから単刀直入に聞きますわね」
今日は随分と淑女モードなんだな。
しかし何だろう。二人に何かしでかしたかな。
「ムルトは。その」
随分溜めるじゃねーか。
エンターテイメントをわかってらっしゃる。
「レオの事どう思ってるのかしら」
ん?
「ごめん。どういう意味かな」
「とぼけないでくださる?わたくし、真剣なんだから!」
えーと。
頭が痛い。昔こんな芸人が俺の近くにいた気がする。
たしかレオ・アリクアーマとかいう、
珍しい苗字だった奴が。
「話が見えてこないんだけど。一応言っとくけど俺、同性愛者じゃないぜ?
もちろんレオはフロスの事が好きなんだろ?
じゃなきゃ聞きたくもないノロケ話を延々としてこないだろうし」
キョトンとしたフロスを見て、やはり勘違いしているようだ。
「何言ってるのよムルト。そんなの当然でしょ?
あたしが聞いてるのは友達としてよ。
最近 仮想から帰ってきても、
落ち込んでることが多いみたいだから。心配になって」
勘違いをしていたのは俺の方だったようだ。
しかもあっという間にじゃじゃ馬モードだ。すぐ口調に出る。
いやしかし、そうか。
確かに最近レオの成長が芳しくないなとは思っていた。
自分でも気づいていたか。
とは言ってもこの一年で俺からアドバイスできることも、
少なくなっちゃったしなあ。
ペイディと模擬戦やってもほぼ秒殺だし。
ジェナスもマンネリ気味で、
あえて自分に不利な状況下で、レオの攻撃に耐えるという、
変な遊びを覚える始末だ。
そう、徐々に力の差が広がってきてしまっている。
レオにとっての分厚い壁が今試練となって襲い掛かる。
そんな状況だ。
ただレオは強い。ハートが、だ。
「確かに最近うまくいってないけど。
レオなら大丈夫だよ。あいつ強いから。
じゃなきゃ俺に8回も挑んでこないって」
去年の今頃もこんなこと言った記憶が。
あ~地獄の窯だ、思い出した。
「何なら夏休み中ヒマしてるんだろ?
仮想来て応援してやってくれよ。
フィアンセが居たらレオも頑張れるんじゃね?」
ああ、自分の顔がニヤついているのが手に取るようにわかる。
自分の顔だ、当たり前か。
しかしフロスはまんざらでもなさそうだ。
淑女モードで顔を赤らめて、肩口からハートが溢れそうだ。
「お、お邪魔にならないかしら?」
「まあ観戦するだけなら大丈夫だろ。
それにいざとなったら 騎士が守ってくれるんだろ?」
今年のトマトは太陽をいっぱいに浴びてさらに赤くなる。
それにつられて俺の口角がまた吊り上がる。
「その辺にしてくれよ。ムルト。後が大変だから」
おっと 騎士様のご登場だ。
村人役はさっさと退散するか。
「それじゃ、後よろしく」
傾き始めた太陽と共に、俺はクールに去るぜ。
◆
ペンションに入ると、冷房のひんやりとした風が心地良い。
親父は既にソファに腰かけ、スタンバっていた。
熱々のお二人は、ジェナスに送迎と言う名の護衛をお願いした。
現実でも戦車並みの威圧感は健在だ。
任せて大丈夫だろう。
一応親父の部下も何人かついてるらしいしな。
申し訳ないが3人には今回、外野で待機してもらう。
ペイディと出会ってから3ヶ月。
まだジェナスとレオに対して、GOサインが出ていなかった。
中々に慎重だ。
「あれ、姉さんは?」
ペイディもいないが、さっき外の更衣室でごそごそやっていたから。
多分それだろう。
「ミツコはちょっと、お使い頼んでてな」
お使い、ねえ。
まあいいけど。
ふと後ろから足跡が聞こえ、
ドアに備え付けられたパイプチャイムが、不規則な音を奏でる。
「す、すいません遅れてしまって」
「大丈夫、俺も今来たとこだし」
流石にフィットネススーツに水泳帽はまずいと思ったのか。
ペイディはいつもの学生服に身を包んでいた。
いや学生服もこの場にあっているかと言われると疑問だが。
一先ずテンプレ通りに紹介する。
「ペイディ、親父のセイジ・イシダだ。って言っても知ってるか」
「初めまして。ペイディ・ソフォスと申します。お噂は 予予」
「堅っ苦しい挨拶は抜きだ、ペイディ君。
それに噂ってどうせろくなもんじゃねえだろ?」
カッカッカと笑う親父に対応に困ったのか、彼は苦笑いしていた。
「で、早速だが。UMCは持ってきてるか?」
「はい。ここに」
いきなり 仮想潜るのか?
てっきり話を付けてからかと思ったんだが。
そう言えば 仮想で何するのか親父に聞いてなかったな。
「んじゃ早速」
そう言って二人は近くの端末から潜っていく。
念の為、ペンションのセキュリティレベルを上げておく。
姉さん以外はこれで感知されれば、 仮想に居ても警報が出る。
それじゃ俺も潜るか。
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