25 / 63
二十四話、記憶が告げる侵攻図
しおりを挟む
*ノル視点
静かだ。
普段は赤で彩られる商店街。
曇天も相まって、視界は灰色と化していた。
もうこの国が終わったような。
廃墟を散策しているような気分だ。
先行して行った閣下――ヴァルディス殿。
唸り声と落下音。
それを頼りに道を曲がる。
――ズン。
という音と共に魔物の身体が崩れる。
「閣下加護なんてなくても動きすぎでは?」
正直引く。
元騎士団長なのは知っていたが……。
「身体を動かしたほうが、無駄なことを考えなくてすむからな」
――そうでしょうね。
そんな言葉は飲み込んだ。
俺だってセレスタが誘拐されたと聞いた時。
全部消そうと思うくらいだったから。
普通の魔物はお手のもの。
剣を回して鞘に納める。
その様はまだまだ現役さが伺えた。
「私は騎士団を見てくる後は頼んだぞ」
その背を目で見送る。
蝶に吸わせて倒れた魔物の記憶を見た。
森――
山――
ここは別にいい。
そして……
見覚えのある廃墟同等の場所――確かここは、旅の中で俺が消した国。
おそらく建国したのだろう。
塔のような城から伸びる八つの触手。
――「美しい夢を目指そう」
――「世界をまた、創ろう」
触手が喋ってる。
いや、これは、首?
竜?
それとも思えないものをみた。
「……ふぅ」
以前倒したはずの抜け殻が生きているのも不愉快だが。
こいつが生存しているなら、奴も――ラザリもいるはず。
いや、あの竜の首のようなものが奴ではないだろう。
と、どうしても現実から背ける。
世界を変える、か。
セレスタの安心安全のための作り替えるなら賛同したいが……彼女がそれを許さないだろう。
せめて、あの子が幸せであればいいのに。
……こうなるか。
どうせ己以外の竜を滅した上で支配するのだろう。
ついでにイグニスの民も滅ぼせば、あとは加護の使えない人間だけ。
支配なんて容易だろう。
それにあの子の消沈した顔。
ヴェラノラに任せたのに、いなくなって悲しませるとは……。
街中で俺の右目から産まれた子が侵入してきた落とし子の首を絞めていた。
俺が黒い炎を吹き、精神干渉下に置いた。
それを見て、子が擦り寄る。
「よくやったな」
撫でてやって褒める。
……こういうことをもっと幼いセレスタにやればよかったのに。
たまに殻を被った心の中で生まれるそれ。
払拭するように蝶を飛ばす。
蝶はそのまま落とし子の頭の上に留まった。
しばらくして、俺の額に飛んできた。
再び見える記憶。
――うじゃうじゃいる実験体。
気分が悪くなる。
下に見えるのは王国。
襲撃前か。
見えたのはセレスタに――いや、その変身したレイに似た者がヴェラノラを抱えていた。
姉の子ではない。
とするなら、セレスタ誘拐した時、髪の毛でも取っていたのか。それを複製……なくもない。
そして、抜け殻。
不愉快だ。
あれで生きていたとは。
今度は仕留めなければな。
俺の隣で待っていた子。
くいくいと空の袖を引っ張る感触で我に変える。
――「まだ、遊んでくる」
教えた文字で伝えてきた。
「ほどほどに、な」
頭を撫でて、再び城に戻った。
閣下が入り口で待っていた。
もう騎士団や文官たちの指示が終わったのか。
「わかったか?」
「まあ、多分」
「……そうか、では、アッシュ様を頼んだぞ」
俺は執務室に。
閣下は別の方に歩いて行った。
――“私は足手纏いだから、行けない”
そんな言葉が一緒に浮かんでいる気がした。
静かだ。
普段は赤で彩られる商店街。
曇天も相まって、視界は灰色と化していた。
もうこの国が終わったような。
廃墟を散策しているような気分だ。
先行して行った閣下――ヴァルディス殿。
唸り声と落下音。
それを頼りに道を曲がる。
――ズン。
という音と共に魔物の身体が崩れる。
「閣下加護なんてなくても動きすぎでは?」
正直引く。
元騎士団長なのは知っていたが……。
「身体を動かしたほうが、無駄なことを考えなくてすむからな」
――そうでしょうね。
そんな言葉は飲み込んだ。
俺だってセレスタが誘拐されたと聞いた時。
全部消そうと思うくらいだったから。
普通の魔物はお手のもの。
剣を回して鞘に納める。
その様はまだまだ現役さが伺えた。
「私は騎士団を見てくる後は頼んだぞ」
その背を目で見送る。
蝶に吸わせて倒れた魔物の記憶を見た。
森――
山――
ここは別にいい。
そして……
見覚えのある廃墟同等の場所――確かここは、旅の中で俺が消した国。
おそらく建国したのだろう。
塔のような城から伸びる八つの触手。
――「美しい夢を目指そう」
――「世界をまた、創ろう」
触手が喋ってる。
いや、これは、首?
竜?
それとも思えないものをみた。
「……ふぅ」
以前倒したはずの抜け殻が生きているのも不愉快だが。
こいつが生存しているなら、奴も――ラザリもいるはず。
いや、あの竜の首のようなものが奴ではないだろう。
と、どうしても現実から背ける。
世界を変える、か。
セレスタの安心安全のための作り替えるなら賛同したいが……彼女がそれを許さないだろう。
せめて、あの子が幸せであればいいのに。
……こうなるか。
どうせ己以外の竜を滅した上で支配するのだろう。
ついでにイグニスの民も滅ぼせば、あとは加護の使えない人間だけ。
支配なんて容易だろう。
それにあの子の消沈した顔。
ヴェラノラに任せたのに、いなくなって悲しませるとは……。
街中で俺の右目から産まれた子が侵入してきた落とし子の首を絞めていた。
俺が黒い炎を吹き、精神干渉下に置いた。
それを見て、子が擦り寄る。
「よくやったな」
撫でてやって褒める。
……こういうことをもっと幼いセレスタにやればよかったのに。
たまに殻を被った心の中で生まれるそれ。
払拭するように蝶を飛ばす。
蝶はそのまま落とし子の頭の上に留まった。
しばらくして、俺の額に飛んできた。
再び見える記憶。
――うじゃうじゃいる実験体。
気分が悪くなる。
下に見えるのは王国。
襲撃前か。
見えたのはセレスタに――いや、その変身したレイに似た者がヴェラノラを抱えていた。
姉の子ではない。
とするなら、セレスタ誘拐した時、髪の毛でも取っていたのか。それを複製……なくもない。
そして、抜け殻。
不愉快だ。
あれで生きていたとは。
今度は仕留めなければな。
俺の隣で待っていた子。
くいくいと空の袖を引っ張る感触で我に変える。
――「まだ、遊んでくる」
教えた文字で伝えてきた。
「ほどほどに、な」
頭を撫でて、再び城に戻った。
閣下が入り口で待っていた。
もう騎士団や文官たちの指示が終わったのか。
「わかったか?」
「まあ、多分」
「……そうか、では、アッシュ様を頼んだぞ」
俺は執務室に。
閣下は別の方に歩いて行った。
――“私は足手纏いだから、行けない”
そんな言葉が一緒に浮かんでいる気がした。
0
あなたにおすすめの小説
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます
黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。
だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる