君に、炎を捧ぐⅢ〜偽りの剣と、真実の愛〜

みらい

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五十二話、御呪い

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「……はぁ、……はぁ」

 現実世界に戻って、セレスタの元へゆっくり近寄る。
 脚が棒のようだった。
 息も切れている。
 大して動いていないのに。
 何故か視界がぼやけている。

 俺は泣いているのか……?

 気分も悪い。
 まだ、倒れるわけにはいかないのに……。
 期待のない望みはある。
 少しだけ覚悟はした。
 が、それとこれとは別だ。

 黒い炎で身体を燃やそうとした。
 出ない。

 ……おかしいな。
 辛いのに。
 辛いのを忘れたい。

 暗示がかけられない。

 それでもどうにか辿り着いて、膝を付く。

 隣のセレスタが文字通り命をかけて取り戻した彼女。胸が上下しているのを見て安堵した。

 セレスタに目をやる。
 ちゃんと、やったのだな。
 頑張ったのだな。
 俺は少し手伝っただけ。

 目を閉じさせて、頬を撫でる。
 ひやりとしていた。

 ほんのすこしだけ。
 指先が、あたたかかった。
 きっと――まだ、ここにいる。

 また、俺は守れなかった。

 ――悲しむのはまだだ。

 ――『命の焱ってね、文字通り命の半分を捧げるんだ。

 で、もし捧げた者の命が尽きた時。
 それを与えて炎を元通り燃やす。
 そうすれば、蘇生できる。……まあ、封竜の環と同じで相手から慕われてないと無理なんだけどね。あなたなら、もう大丈夫』

 黄金の竜が伝えた言葉を思い出す。
 その片割れの炎を感じることができた。
 もう一つを渡す前に……。

 ――ごめん。
 ――愛してる。
 ――ありがとう。

 やっと口にできた。

 そのすべては誰にも聞かれない。
 聞かせることも今後ないだろう。

 セレスタ本人でさえ。
 せめて、魂に届いていればいい。
 焦げつくほど、願ったんだ。
 願うほど、狂ったのだから。

 何度も願おう。
 呪詛のように。

 そして、今一度。
 炎を……君に。
 焔を宿した指先が、彼女の胸元に触れる。
 ――燃えろ。
 俺の全部を、お前にくれてやる。

 もう何もいらない。
 俺がいたということも、跡形もなく消えるように。


 ただ――
 君がまた、笑える世界でありますように。
 世界を燃やした。


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