君に、炎を捧ぐ〜偽りの剣と、真実の愛〜

みらい

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十五話、蒼焔の小さな生垣の中で

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 王城と騎士団本部を繋ぐ、静かな通路。

 その両脇には、国花ルミナリアの花々が生垣のように広がっている。
 真昼の陽光を柔らかく弾き、青白い光を散らすその花は、まるでこの場所を外界から隔てる結界のようだった。

 私は人の気配がないことを確認し、花々の隙間へと身を滑り込ませる。

 ルミナリアの火の花弁が、私の背後で揺れ、音もなくその存在を隠してくれる。

 ここは、光が差しすぎない。蒼白の花が周囲を柔らかく染め、木漏れ日が心地よく落ちていた。

 そして何より、誰にも見つからない。
 たとえ真上から誰かが覗いたとしても、この場所だけは気づかれない自信がある。

 初めてこの通路を通った時のことを思い出す。

 ――騎士団に入ったばかりで、人の多さに気を張り詰めていた私。
 ふとした瞬間、頭痛に襲われて、この生垣に崩れるように身を委ねた。

 すると、まるで“よく来たね”と囁くように、ルミナリアの枝葉が揺れ、私をこの奥へと導いたのだ。

 あの時の安堵感が忘れられず、以来――
 心が疲れるたびに、私はここへ来るようになっていた。

 静寂の中、鳥のさえずりが聞こえ、風が花弁をさらってゆく。
 午前中の出来事が、まるで嘘のようだった。

「……ふう」

 片膝をつき、肩の力を抜く。

(……陛下も、ひどい)

 あの一瞬。間違いなく、私に向かってウィンクした。

 あんなもの……騎士でなければ、即倒れていた。
 いや、騎士であっても、危なかった。
 今こうして息を整えているのが、なによりの証拠だ。

 困ったものだ。
 本当に、どうしようもないほどに――あの人は反則だ。

 ルミナリアの花に埋もれるように背を預ける。
 その花々は、草木とは違い、ふわりと柔らかく、暖かい。

「……ふああ」

 つい、気が緩んであくびが漏れる。

 騎士としての顔を脱ぎ捨てて、誰にも見せない“もう一人の私”がふっと出てきてしまう。
 ……このまま寝てしまっても、いいかもしれない。

 そう思いかけた、その時――

「うむ。お堅い騎士様の素顔は、なかなかに可愛げがある。新たな発見だな」

「――はっ!?!?」

 飛び上がる勢いで、花々に埋もれていた上半身を起こす。
 反射的に声のした方向へ、鋭く視線を向けた――!
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