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 その人かげは店のまえ何度なんどあるきまわったあとまどかおをつけて中をのぞきこんでいます。くらくて、かげの正体しょうたいはわかりません。

 かげはだれもいないのをたしかめると、まどからそっと、しんにゅうしてきました。

「……やっぱり! パンどろぼうだわ!」

 くるみおばさんはこころの中でさけぶと、レジだいうしろから、そっとはいました。
 パンどろぼうは、それにもづいていません。


 そしてついに、パンどろぼうがカカリロールパンに手をしました。

いまだっ!」

 ここぞとばかりにくるみおばさんはして、そのどろぼうの手をつかみました。
 どろぼうはおどろき、にげようとしてあばれます。

「にがさないわよ!」

 くるみおばさんはどろぼうの手を、自分じぶんのほうへグイッとせました。


「つかまえたわ、パンどろぼう! あなたはだれ? なぜ、こんなことをするの?」

 すると、どろぼうがさけびました。


「ひゃあ、ごめんなさい! ゆるしてぇ!」


 くるみおばさんは、おどろきながらたずねました。

「……あれ。そのこえは、フウタくん?」

「あ……、はい。そうです」


 すっかりくらくなった店内てんないに、おとこの子のこえだけがひびきます。
 
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