くるみの木のパン屋さん

雪村みおり

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「はいはい、くるみの木のパンですが……」

「こんにちは。わたし、リスのメロンネです……」


 電話でんわのむこうで、こまったようなこえが聞こえてきました。

 くるみおばさんはすぐさま、紙とえんぴつを持ってくると、たずねました。


「えーと、おとどけするんですね? 今日は、なにパンがいいですか?」

「あの、今すぐにとどけてほしいのですけど……。今すぐに」


 なんだか、少しあわてているようです。


「今すぐね。なにパンがいいですが?」

「ミックスクリームパンを三つおねがいします。わたしの家、わかりますよね?」

「ええ、わかりますとも。メロンネさんは毎日まいにち、パンを買ってくれますしねえ」

「そうですか。おねがいしますね、今すぐに」


 電話でんわは、プツンと切れました。


「やれやれ……。いったい、なにをいそいでいるのかしらねえ」

 くるみおばさんは受話器じゅわきをおくと、ひとりごとを言いました。


 ジリリリリーン!


 また電話でんわです。
 こんどは、くまのアップルさんからです。


「やあ、こんにちは。いや、今ねえ、きゅうにパンが食べたくなっちゃって……。レンゲハチミツパンを三つちょうだい。すまんが、今すぐ家へ持ってきてくれないかね」


 くるみおばさんは、ぎょっとしました。
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