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橋田 一樹
しおりを挟む3点
何度みても、3点。
解答はほぼ埋まっている。
しかし見えるのは赤いチェックマーク。
唯一大問1の(1)の問題だけが〇。
点数の下に書かれた先生からの直筆メッセージ。
「留年したくなければ次のテストで必ず赤点回避!」
いやなんでこんな点数なんだよ。
折角の冬休みが……。
「おい、カズ、無視すんなよ」
うるさいお前は黙ってろ今まじで俺死にそうなんだよ。
「……なぁ はるとぉ!カズの数Aの点数教えようかぁ!?」
「おまっ、ふざけんなやめろっ」
急いで荒木の口に包み紙のままのキャラメルをぶち込む。
うぇっという荒木の声を無視して、いやむしろ聞いた上で2個目のイチゴ味、3個目の抹茶味を次々ぶち込む。
高校1年、12月。
期末テストが終わり、赤点の奴にはボーナスプレゼントが告げられ、ついに始まる冬休み。
今年こそはと息巻いて荒木と2人で入った進学校。
残念ながら2人とも童貞のまま、クリスマスを迎える予定だ。何が性なる夜だコノヤロウ。
「カズさーん、キャラメル美味しいです。紙はまじくそ不味いっすよー。」
「腹でも壊せよ、俺からのクリスマスプレゼント。」
「いらねぇーーー!!!」
「荒木まじうるせぇ」
学ランからブレザーになってやっと馴染んできた今日このごろ。念願の男子高校生になったんだ、かくなるうえは!
「かのじょほしいいいい!!」
「カズも充分うるさいよ、ほらクリスマスプレゼント。」
渡されたのは荒木の携帯。
画面に写っているのは
「これ、マルオさんだっぺ?」
「だいせーかーい」
「お前すげぇな!良くやったよ!」
「苦労したよー?はるとが写真撮ろうとしたっけ、没収されちまったんだよ。んで、俺がリスクを冒してまではるとの意思を引き継いだわけ。」
マルオさん、日本史のハゲたおっさん先生。寝てる生徒に水道水をかけてあげることで有名。
「でもクリスマスプレゼントがマルオさんとか。」
「あーうん。」
「彼女にさ」
「あー俺今カズの言いたい事すげぇ分かる。」
「おー、わかってくれるか」
「プレゼントは わ・た・し♥️」
「きっも。昼飯出るからやめて。」
「はー?お前がやって欲しいって」
「ひとっことも言ってねぇべや」
下らない。すげぇしょうもない。
でもすげぇ楽しい。
このくそド田舎のあぜ道。
関東の端っこに辛うじて引っかかっているような田舎町。
それでもここには俺の学校があって、友達がいて、家族がいる。
「あーそうだ、荒木お前キャラメル代返せや。」
「はぁー?あれプレゼントだろー?」
「なんで野郎にプレゼントしなきゃなんねぇんだよ。」
えーふざけんなって荒木が言う。
本当にただの日常。
いつか、荒木にもはるとにも彼女が出来て、男だけでバカ騒ぎをする機会が減るのかもしれない。
正直、少し寂しい。
実際、荒木のことを好きなヤツを知ってる。
「なぁ、あらきぃ」
「んぁっ?」
「やっぱやめた」
まぁいいや。
こいつはなんかアホだし、俺もアホだし。
いつかこいつに本気で好きなやつが出来たら応援してやろう。
あと
「荒木さん。数Aの追加課題手伝ってください。」
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