8 / 119
第一章:麻雀部への勧誘
第7話:名刺代わりの親ッパネ
しおりを挟む
東1局。和弥の起家でスタート。ドラは三筒。
(中々軽い手が入ったな)
和弥は配牌で三向聴である。しかし4巡目。
「リーチ!」
早くも今日子が先制リーチを仕掛けてきた。和弥がツモって来たのは三萬である。
「………」
一瞬だが、今日子を含めた対局者全員が真顔になる。和弥の打牌選択は何と、ドラの三筒だったからだ。
「い、一発目にドラ捨てる、普通………? アンタ実は素人とかだったりする?」
今日子は呆れながらも、作り笑いを浮かべた表情で訪ねる。
「いや通るんだろ? 実際ロン宣言も無ぇじゃねえか」
後ろで見ていた綾乃も、この打牌には少々驚いていた。
(私なら現物の二筒を切って三筒は雀頭固定だけど………。何か理由があるのかな?)
しかし和弥がドラを強打したのは、やけくそでもヤマカンでも何でもない。
(その捨て牌で早いリーチだ。典型的な七対子だろ。この女がホウレン草とかってゲームの十段だってんなら、多少なりと麻雀は知ってる訳だ。だったらドラ単騎はない。第一打がドラ表な以上、ドラはあったとしても対子なはずだ)
6巡目。和弥は山に手を伸ばす。
(それにドラを雀頭に固定すると、五・八索と一・四萬しか入り目がないだろ。
こっちなら五・六・七・八索に一・ニ・三・四・五・六萬でテンパイだ。一・四萬以外ならタンピンがつく)
ツモ牌を確認すると、二萬だった。
(ほら来た)
これで雀頭が出来上がる。
「追っかけリーチ」
リーチ棒を置くと同時に『リーチデス』という電子音が部室に鳴り響き、今度は今日子の顔が引きつったのが分かった。
その今日子が一発で掴んだのは、八索である。
「どうしたんだ? ツモアガリじゃないならさっさと捨てろよ」
苦虫を噛み潰したような表情で、今日子はそっと八索を河に置いた。
「ロン。メンタンピン・一発・ドラ1…」
裏ドラを確認する和弥。裏ドラ表示牌は六索。すなわち七索である。
「裏も一丁。18,000だな」
いきなりの親ッパネ放銃である。18,000点を和弥に払いながら、なるべく無表情を装っているつもりの今日子。
が、開始早々親ッパネを振り込み気が動転しているのは小百合、由香、そして綾乃と誰の目にも明らかだった。
(やるじゃん、この子………。確かに見え見えの七対子だったとはいえ、自信を持ってかけたリーチを躱され、逆に和了られる………。
しかも1,000点や2,000点の安い手じゃないから、余計に心にキテるだろうね今日子ちゃん………)
和弥の連荘となり、東1局一本場。ドラは一筒。
「ロン。5,800の一本場で6,100。十段さんが飛んで終了だな」
またも今日子が振り込んでしまい、1回戦目は5分足らずで終了してしまった。
(北条さん、かなり動揺しているわね………。あの捨て牌で索子の上を捨てるなんて………。竜ヶ崎くんは2巡続けてツモ切り。冷静なら聴牌気配に気づくでしょうに)
小百合も、冷たい視線を今日子に送らざるを得なかった。
「りゅ、竜ヶ崎くん。カフェ・オレのお替りはいる?」
流石に今日子の怒りが爆発寸前なのが分かったのだろう。間をおくかのように、綾乃がコーナーに置かれたカップを回収する。
「いただきます」
カップに注がれた新しいカフェ・オレを一口飲みながら、和弥は悔しさのあまり怒りに震える今日子に確認を取った。
「どうするんだ? 動画にして配信するんだろ? 2回戦目行くか?」
「と、当然でしょっ!」
(うーん。鮮やかすぎて、この対局だけじゃ実力は計れないなあ………)
部長として部員の長所・短所は把握しておきたい。良い部分は伸ばし、不味い部分は矯正していかなくてはならない。全国の強豪校のトッププレイヤーに立ち向かうには、中途半端な強さでは通用しないのだ。
どうしたものか、と悩んでいる綾乃を見て小百合が察したのだろう。
「部長。今度は私が見学して構わないでしょうか?」
「えぇ、交代しましょ。私も実際に彼と対局してみたかったし」
かくして綾乃のゲーミングチェアには、今度は小百合は座る事になった。
(中々軽い手が入ったな)
和弥は配牌で三向聴である。しかし4巡目。
「リーチ!」
早くも今日子が先制リーチを仕掛けてきた。和弥がツモって来たのは三萬である。
「………」
一瞬だが、今日子を含めた対局者全員が真顔になる。和弥の打牌選択は何と、ドラの三筒だったからだ。
「い、一発目にドラ捨てる、普通………? アンタ実は素人とかだったりする?」
今日子は呆れながらも、作り笑いを浮かべた表情で訪ねる。
「いや通るんだろ? 実際ロン宣言も無ぇじゃねえか」
後ろで見ていた綾乃も、この打牌には少々驚いていた。
(私なら現物の二筒を切って三筒は雀頭固定だけど………。何か理由があるのかな?)
しかし和弥がドラを強打したのは、やけくそでもヤマカンでも何でもない。
(その捨て牌で早いリーチだ。典型的な七対子だろ。この女がホウレン草とかってゲームの十段だってんなら、多少なりと麻雀は知ってる訳だ。だったらドラ単騎はない。第一打がドラ表な以上、ドラはあったとしても対子なはずだ)
6巡目。和弥は山に手を伸ばす。
(それにドラを雀頭に固定すると、五・八索と一・四萬しか入り目がないだろ。
こっちなら五・六・七・八索に一・ニ・三・四・五・六萬でテンパイだ。一・四萬以外ならタンピンがつく)
ツモ牌を確認すると、二萬だった。
(ほら来た)
これで雀頭が出来上がる。
「追っかけリーチ」
リーチ棒を置くと同時に『リーチデス』という電子音が部室に鳴り響き、今度は今日子の顔が引きつったのが分かった。
その今日子が一発で掴んだのは、八索である。
「どうしたんだ? ツモアガリじゃないならさっさと捨てろよ」
苦虫を噛み潰したような表情で、今日子はそっと八索を河に置いた。
「ロン。メンタンピン・一発・ドラ1…」
裏ドラを確認する和弥。裏ドラ表示牌は六索。すなわち七索である。
「裏も一丁。18,000だな」
いきなりの親ッパネ放銃である。18,000点を和弥に払いながら、なるべく無表情を装っているつもりの今日子。
が、開始早々親ッパネを振り込み気が動転しているのは小百合、由香、そして綾乃と誰の目にも明らかだった。
(やるじゃん、この子………。確かに見え見えの七対子だったとはいえ、自信を持ってかけたリーチを躱され、逆に和了られる………。
しかも1,000点や2,000点の安い手じゃないから、余計に心にキテるだろうね今日子ちゃん………)
和弥の連荘となり、東1局一本場。ドラは一筒。
「ロン。5,800の一本場で6,100。十段さんが飛んで終了だな」
またも今日子が振り込んでしまい、1回戦目は5分足らずで終了してしまった。
(北条さん、かなり動揺しているわね………。あの捨て牌で索子の上を捨てるなんて………。竜ヶ崎くんは2巡続けてツモ切り。冷静なら聴牌気配に気づくでしょうに)
小百合も、冷たい視線を今日子に送らざるを得なかった。
「りゅ、竜ヶ崎くん。カフェ・オレのお替りはいる?」
流石に今日子の怒りが爆発寸前なのが分かったのだろう。間をおくかのように、綾乃がコーナーに置かれたカップを回収する。
「いただきます」
カップに注がれた新しいカフェ・オレを一口飲みながら、和弥は悔しさのあまり怒りに震える今日子に確認を取った。
「どうするんだ? 動画にして配信するんだろ? 2回戦目行くか?」
「と、当然でしょっ!」
(うーん。鮮やかすぎて、この対局だけじゃ実力は計れないなあ………)
部長として部員の長所・短所は把握しておきたい。良い部分は伸ばし、不味い部分は矯正していかなくてはならない。全国の強豪校のトッププレイヤーに立ち向かうには、中途半端な強さでは通用しないのだ。
どうしたものか、と悩んでいる綾乃を見て小百合が察したのだろう。
「部長。今度は私が見学して構わないでしょうか?」
「えぇ、交代しましょ。私も実際に彼と対局してみたかったし」
かくして綾乃のゲーミングチェアには、今度は小百合は座る事になった。
応援ありがとうございます!
2
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる