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3章 転校生

朝はドタバタ①

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朝起きたら。
誰もいなかった。
「…?」
「えーと…寝てたのか…スマホ…」
近くにスマホはなかった、今思えばミトのお母さんに渡しっぱなしだったような…今日充電器とか持ってきてなかったからなぁ充電足りるかな…。
「…?」
そういえば左手に何かにぎらされてたな…なんなんだろう。
恐る恐る左手を開いてみる。
そこには平均のビー玉より一回り大きい透き通った綺麗な玉と紙切れが握られていた。
紙はしわくちゃになっている。
広げてみると説明らしき文字が日本語で書かれていた。
…ルクス…異界の人ということしか知らないけれど日本語知ってるんだ…と謎の疑問も抱きつつその何行か書かれている文を読んだ。
『これはソウルジュエルと言うものです。
君に合った武器や守る盾のようになったりするものです。
その時が来たらその宝石は姿形を変える。
貴重なものなので肌身離さず持つように』
「とりあえずまだ使えないけど持っとけってことか?」
首を傾げつつ説明文をもういちど見る。
何か隠されたワードとかないよな?
…次、会った時に使い方聞いてやるとか思っていたら襖が開いた。
「おっ起きたか」
「…えーとおはようございます?」
「まだ寝ぼけてるなまぁおはようございますなのはあってるがまだ朝早いぞ」
コジローがそう言いながらホイっと何かを渡してきた。
あっこれオレの服だ。
「乾いてたから着替えるついでに持ってきた」
「ありがとう」
「どーいたしまして」
ありきたりな会話をしてて疑問になっていたことを聞いた。
「オレあの夜すぐ寝たのか」
「おう、二人揃って寝てたぞ起きそうにねぇから流石に転がして布団に入れたぞ、身体痛くねぇか?」
「うん、大丈夫…オレ疲れてたみたい」
と言うことにしておこう。
瞬く瞬間にオレは別世界、異界の賢者に会って居たなんて信じてもらえなさそうだし。
まだ自分でも納得してないし。
手に持ってるものが証拠なんだろうけど…。
「ちなみに今は朝の6時過ぎたくらいだ30分くらいで飯になると思うぞ学校は送ってやるから、俺も高校あそこだったからHRの時間わかるし」
「え?わっ悪いよ」
「いーよいーよ、早く起きてるとは言え昨日の疲れ残ってるだろ?」
「…まっまぁ正直今日授業じゃなくてよかったって思うくらいには」
実は今日は学校へ登校はするのだが、入学式用の準備を手伝うために2年生は駆り出されるだけなのだ。
正直頭使うより体使っている間に考えを整理するのはアリだな…などと考えて居たり。
「あー懐かしーなアレだろパイプ椅子出すやつ」
「オレらのクラスは一年生の教室掃除です」
「おっあたりじゃんよかったな」
「ハズレあるのか?」
「あるあるとりあえず着替えた方がいいんじゃね?」
「あっそうだった…甚平ってどうたたむんだ?」
上を脱ぎながら質問する。
「あっ回収するぞー洗濯籠に入れとけばいいって伝言もらってる、後スマホ充電してくれてるらしいぞ」
「そういやあの電話の後返してもらえてなかったな…」
すっかり忘れていたとはいえ、ものすごい危険な橋渡ってるなー。
スマホを落としただけ、貸しただけでってタイトルでとんでもないことになるドラマを見たことある。
多分ミトのお母さんはそんなことしないと思うけど…。
「下にTシャツ着るタイプかー」
「え?普通着るだろ?ブレザーきてるとはいえ」
「ブレザーきてるならいらねぇだろ暑くね?」
「いやそんなことは…あのーコジローさん今気づいたんすけど…」
よーく見たら中に着る用のTシャツがない。
ワイシャツ、ズボン、ブレザーはある。
まさか…。
「いやー黒Tとか着るのって学ランかと思ってたから、今の子って中着ちゃんとしてるんだなー」
「感心してねぇで返せー!!!!」
上半身裸とかさきほど畳まれたしかもアイロンで綺麗にしてくれているワイシャツをバサァ!と落とす。
「いやわリィって無地だからつまんないなーって『俺最強!』とか『海人』のネタTかなーって」
「沖縄行ったことねぇよ!いいから返せ!」
くっそ回避されるオレ遊ばれてるのか?!
「おはようコジロー、空よく眠れたかしら…」
「あ」
重なるコジローとの声。
どうやら様子を見に来たミト。
「……」
沈黙が流れる。
そして。
「…ふん!」
目にも留まらぬ速さでミトが何故かコジローの頭を叩いてごめんなさいと顔を真っ赤にして出ていってしまった。
よっぽど痛かったのか、オレの服を落として声にならない声で後頭部を押さえて悶絶している…。
えーとこれってオレのせいなのかな?
脱いでたし、上半身裸だったし下はちゃんと甚平の半ズボン履いてたけど。
初…なのかな?
そういえば、老舗の呉服屋みたいなお家だし、下手したらいろんな決まりというか変なところで箱入りだったりするのかな…その場合あんまり見ちゃダメとか。
「…オレ怒られる?」
普段なら答えてくれる声はまだ痛みに耐えてる声しか聞こえてなかった。
…とりあえず着替えよう。
先ほど落ちたTシャツを回収して着替える。
…正直下パンツじゃなくてよかった。
と謎の安堵を混ぜつつ。
着替えたらどうやってミトと話そうかと悩んでいた。



続く


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