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コーヒーとCEOの秘密 (完)
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よかったのかしら・・・。
断る間もなく車に乗せられ、会長が「そこをまっすぐ」とだけ告げて本当にすぐに到着した。
まるで迎賓館のような優雅な建物、前会長が門の前に立っていた。
「やあ、赤石くん、大丈夫か」
心配そうにのぞき込まれ、「さあ、早く入りなさい」
ドアを開けるといきなりシャンデリアが何基も釣り下がる広間、真ん中のテーブルのクラシックな椅子を引き、座るよう促される。「すみませんが彼女の話を聞いてもらえますか」
「ああ」
「お父さんの方が詳しいでしょうから」
「そうだな」
あらかじめ携帯でやりとりして、彼の父親は心得ていた。
「お勤めご苦労様。どうぞ、こちらを召し上がって」
ミルクティーを差し出され、聞き覚えのある女性の声にぱっと顔を上げると、目が合って、驚いた。
「た、棚橋室長!」
女性はにっこりとほほ笑み、「お久しぶりですね、赤石さん」
「どうして・・・」
何十年も秘書室長、会長秘書を務められた女性だ。それがなぜ会長のご実家に・・・。
「まあ、そういうことだ。赤石くん、気になることがあれば父に話して」会長に執事らしい風貌の男性が寄ってきた。
「成明、お前も泊っていけばいいのに」
「やっておきたい仕事があるので」
「そうか」
執事と何か話しながら場を離れていく。
「落ち着かれたらお風呂をどうぞ」
「すみません」
ミルクたっぷりのミルクティーは、今時分の気候に合わせてか少しぬるめで舌にも心にも優しい。
さすが・・・。
「美味しいです」
「よかったわ」
棚橋詠美秘書室長…会長のお父さまが社長をされていたころからだから30年近くか。ベテラン秘書で、退職された今は・・一緒に住まれてるの・・?
「では、坊ちゃま、どうぞ」
「ああ」
離れた場所から声が聞こえた。
はっとして三津子はドアに急いだ。
「……坊ちゃまじゃないぞ💢。もう30だからな」
「そうでしたな、成明様」
ドアを開けると、会長が車に乗ろうとしていた。
「会長!」
その声に振り返った。
「あの…すみません、こんなことまでしていただいて」
「ああ、私が相手するより父の方が通じやすいだろう。遠慮なく話してみて」
「はい」
じんとして、いらない言葉がつぶれた。
「いままでありがとうございました」
もう会えない、たぶん…。その分も含め、深く頭を下げた。
ーーえ!?
頭を上げたタイミングで頬が触れ合った。ポンと肩をたたかれる。香水のラストノートが一瞬覆った。ゆっくり…離れていく。
「何ですか? これ」
「何って……、エールというか、じゃあまた、というか、……いやだったか?」
これもアメリカ式? ハグというやつ...慣れてないから! いきなり距離が近すぎない!?
「こ、こんなことより、コーヒーを飲んでいただきたかったです」
とっさにそう答えた。何言ってるの。こんな時に。
「え? 飲んだよな?」
・・・・・・また間の抜けた時が流れた。やっぱりこうなるのかしら。だからコーヒーなんてどうでもいいのよ。
「まあ、頑張ってくれ。期待してるよ。……おやすみ」
彼はさっさと黒いロールスに乗り込み、ほんの少し頭を傾けた。
「失礼します」
その後ろ、玄関からそおっと顔をのぞかせ、再び深く礼をする三津子の姿を心配そうに見つめる二つの視線があった。
「ハラハラするな」
「私はドキドキします」
「こうして見ると、赤石くんとも中々似合いじゃないかね」
「またそんなことを…。他人が見るのと内面は全然違いますよ」
「そうかねえ。成明のヤツ、真夜中に電話をかけてきて、なにかと思えば…」
ーーーーー赤石くんと食事をしていたら、気分を悪くしたみたいで…明日ドバイに発つのにとても一人にできないので、お父さん、話を聞いてやってもらえませんか。村上部長と何かあったようなんです…。まさか僕の部屋に連れ込むわけにはいかないし。
ーーーーーよし、分かった。連れてきなさい。
「まあ、そんなご心配されるようなことじゃなさそうですよ」
「ならいいんだがね…」
断る間もなく車に乗せられ、会長が「そこをまっすぐ」とだけ告げて本当にすぐに到着した。
まるで迎賓館のような優雅な建物、前会長が門の前に立っていた。
「やあ、赤石くん、大丈夫か」
心配そうにのぞき込まれ、「さあ、早く入りなさい」
ドアを開けるといきなりシャンデリアが何基も釣り下がる広間、真ん中のテーブルのクラシックな椅子を引き、座るよう促される。「すみませんが彼女の話を聞いてもらえますか」
「ああ」
「お父さんの方が詳しいでしょうから」
「そうだな」
あらかじめ携帯でやりとりして、彼の父親は心得ていた。
「お勤めご苦労様。どうぞ、こちらを召し上がって」
ミルクティーを差し出され、聞き覚えのある女性の声にぱっと顔を上げると、目が合って、驚いた。
「た、棚橋室長!」
女性はにっこりとほほ笑み、「お久しぶりですね、赤石さん」
「どうして・・・」
何十年も秘書室長、会長秘書を務められた女性だ。それがなぜ会長のご実家に・・・。
「まあ、そういうことだ。赤石くん、気になることがあれば父に話して」会長に執事らしい風貌の男性が寄ってきた。
「成明、お前も泊っていけばいいのに」
「やっておきたい仕事があるので」
「そうか」
執事と何か話しながら場を離れていく。
「落ち着かれたらお風呂をどうぞ」
「すみません」
ミルクたっぷりのミルクティーは、今時分の気候に合わせてか少しぬるめで舌にも心にも優しい。
さすが・・・。
「美味しいです」
「よかったわ」
棚橋詠美秘書室長…会長のお父さまが社長をされていたころからだから30年近くか。ベテラン秘書で、退職された今は・・一緒に住まれてるの・・?
「では、坊ちゃま、どうぞ」
「ああ」
離れた場所から声が聞こえた。
はっとして三津子はドアに急いだ。
「……坊ちゃまじゃないぞ💢。もう30だからな」
「そうでしたな、成明様」
ドアを開けると、会長が車に乗ろうとしていた。
「会長!」
その声に振り返った。
「あの…すみません、こんなことまでしていただいて」
「ああ、私が相手するより父の方が通じやすいだろう。遠慮なく話してみて」
「はい」
じんとして、いらない言葉がつぶれた。
「いままでありがとうございました」
もう会えない、たぶん…。その分も含め、深く頭を下げた。
ーーえ!?
頭を上げたタイミングで頬が触れ合った。ポンと肩をたたかれる。香水のラストノートが一瞬覆った。ゆっくり…離れていく。
「何ですか? これ」
「何って……、エールというか、じゃあまた、というか、……いやだったか?」
これもアメリカ式? ハグというやつ...慣れてないから! いきなり距離が近すぎない!?
「こ、こんなことより、コーヒーを飲んでいただきたかったです」
とっさにそう答えた。何言ってるの。こんな時に。
「え? 飲んだよな?」
・・・・・・また間の抜けた時が流れた。やっぱりこうなるのかしら。だからコーヒーなんてどうでもいいのよ。
「まあ、頑張ってくれ。期待してるよ。……おやすみ」
彼はさっさと黒いロールスに乗り込み、ほんの少し頭を傾けた。
「失礼します」
その後ろ、玄関からそおっと顔をのぞかせ、再び深く礼をする三津子の姿を心配そうに見つめる二つの視線があった。
「ハラハラするな」
「私はドキドキします」
「こうして見ると、赤石くんとも中々似合いじゃないかね」
「またそんなことを…。他人が見るのと内面は全然違いますよ」
「そうかねえ。成明のヤツ、真夜中に電話をかけてきて、なにかと思えば…」
ーーーーー赤石くんと食事をしていたら、気分を悪くしたみたいで…明日ドバイに発つのにとても一人にできないので、お父さん、話を聞いてやってもらえませんか。村上部長と何かあったようなんです…。まさか僕の部屋に連れ込むわけにはいかないし。
ーーーーーよし、分かった。連れてきなさい。
「まあ、そんなご心配されるようなことじゃなさそうですよ」
「ならいいんだがね…」
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