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緑川、人類の運命を背負う
時空を超えて
俺はベッドの上で泣いていた。
救急車に乗せられたのはいいが、ほぼ裸ベストという恥ずかしい格好で初期処置されたらしい。(今は入院服)もしもその恰好で普通にうろついていたなら、『…すみません、ちょっとお話聞かせてもらえませんか』などと職質され、公然わいせつ罪もしくは迷惑防止条例違反で一発で捕まっていただろう。それに、何とか戻って来れたといっても、元の世界は世界だがB妙に時間がずれている。つまり未来の世界だ。
そして、さっき高広が医者に言っていた…。
「どうも記憶があいまいみたいなんですよね。頭部の精密検査をお願いできますか」
「そうですね。奇跡的に外傷も含めて異常は見当たりません。一時的なショック状態かもしれませんね。手術することになるかもしれませんので、ご家族と連絡とれますか」
「ああ、彼、『 独身 』で、家族と離れて暮らしているので少しお待ちいただけますか。」
「はい。こちらへ…」
なぬ? 俺はまだ独身なのか。
一気に萎えた。
チクショー、5年以上経過してまだ結婚してねえのかよ。
不覚にも、ここで当初の目的、自分が結婚しているか否か判明してしまったのである。
もう嫌だー。この世界で俺はどうしてるんだよ。成明は? ナルはどうなんだ、高広にこれ以上聞くと記憶喪失認定されてさらに精密検査されそうだ。だが知りたい。どうすればいいのーー。
依然として現れない、この世界の俺。どうなってるんだーーー。
この手の創作物だと、タイムマシンで時間旅行した場合、年代によってはその時代にいる俺と今の俺の二つの個体が存在することになる。それをうまく会わずにやり過ごすかして、元の時代に戻っていく(ドクは違うが)わけだが、この時代の俺はどうなってるんだ? 会社で仕事してたはずの俺は、どうして現れない? いや、佐伯ちゃんは『いつの間にそんな恰好してビルに上ったんですか? 会社にいましたよね?』とは言ってたのだが。
もっと不思議がるよな?
もしかして…俺が来たことで元の俺が消えたってことはないか…?
何その新設定。ぞっとする。
ああー、いい加減元の世界に戻ってくれよう。なんで未来に来てるの、ゼウスの雷が強すぎたのだろうか。
喚きそうになるのを必死にこらえた。
「ひっ、何だ?」薄暗い病室の天井に黒いものが浮かんでいく。
思わず起き上がった。
実際、頭も体も何ともないのだ。
「 時空警察だ 」
「はい?」
「タイムトラベラ―発見、捕獲します」レシーバーのようなものに喋っている。
宇多田ヒカルのMVに出てくる空飛ぶバイクのさらに進化系のような斬新な形の黒い物体にまたがっている二人。エンジンの仕組みが全く不明。
服装は対照的に古式ゆかしい軍服仕様であった。帽子とともに。
「全く捕まえても捕まえてもきりがない。そんなに時間移動したいものかねえ」一人が言った。
「やればやるほど次元がゆがむんだよ。つまり俺たちの仕事が増える」顔は驚くほどのっぺりしている。
「それもほぼこの年代に集中している。よほどひどい社会なのだろうな」
「あきらめて輪廻を繰り返せば、やがてまっとうな暮らしができるのに」
「それが想像できないからこうなってるんだよ」
「宗教ってやつがなあ…」
明らかに軽蔑のまなざしであった。一人がこちらへ向かってシュッと手を動かした。
と同時に透明な網のようなものが広がり、自分の全身を覆った。「な、なんだ? なんだよ、お前ら」
「お前のような次元を超えていったり来たりしている奴をとっ捕まえて元の世界に戻してやるのさ」
「捕獲完了。タイムワープします」
『了解』
…。
病室から緑川の姿は消えた。
救急車に乗せられたのはいいが、ほぼ裸ベストという恥ずかしい格好で初期処置されたらしい。(今は入院服)もしもその恰好で普通にうろついていたなら、『…すみません、ちょっとお話聞かせてもらえませんか』などと職質され、公然わいせつ罪もしくは迷惑防止条例違反で一発で捕まっていただろう。それに、何とか戻って来れたといっても、元の世界は世界だがB妙に時間がずれている。つまり未来の世界だ。
そして、さっき高広が医者に言っていた…。
「どうも記憶があいまいみたいなんですよね。頭部の精密検査をお願いできますか」
「そうですね。奇跡的に外傷も含めて異常は見当たりません。一時的なショック状態かもしれませんね。手術することになるかもしれませんので、ご家族と連絡とれますか」
「ああ、彼、『 独身 』で、家族と離れて暮らしているので少しお待ちいただけますか。」
「はい。こちらへ…」
なぬ? 俺はまだ独身なのか。
一気に萎えた。
チクショー、5年以上経過してまだ結婚してねえのかよ。
不覚にも、ここで当初の目的、自分が結婚しているか否か判明してしまったのである。
もう嫌だー。この世界で俺はどうしてるんだよ。成明は? ナルはどうなんだ、高広にこれ以上聞くと記憶喪失認定されてさらに精密検査されそうだ。だが知りたい。どうすればいいのーー。
依然として現れない、この世界の俺。どうなってるんだーーー。
この手の創作物だと、タイムマシンで時間旅行した場合、年代によってはその時代にいる俺と今の俺の二つの個体が存在することになる。それをうまく会わずにやり過ごすかして、元の時代に戻っていく(ドクは違うが)わけだが、この時代の俺はどうなってるんだ? 会社で仕事してたはずの俺は、どうして現れない? いや、佐伯ちゃんは『いつの間にそんな恰好してビルに上ったんですか? 会社にいましたよね?』とは言ってたのだが。
もっと不思議がるよな?
もしかして…俺が来たことで元の俺が消えたってことはないか…?
何その新設定。ぞっとする。
ああー、いい加減元の世界に戻ってくれよう。なんで未来に来てるの、ゼウスの雷が強すぎたのだろうか。
喚きそうになるのを必死にこらえた。
「ひっ、何だ?」薄暗い病室の天井に黒いものが浮かんでいく。
思わず起き上がった。
実際、頭も体も何ともないのだ。
「 時空警察だ 」
「はい?」
「タイムトラベラ―発見、捕獲します」レシーバーのようなものに喋っている。
宇多田ヒカルのMVに出てくる空飛ぶバイクのさらに進化系のような斬新な形の黒い物体にまたがっている二人。エンジンの仕組みが全く不明。
服装は対照的に古式ゆかしい軍服仕様であった。帽子とともに。
「全く捕まえても捕まえてもきりがない。そんなに時間移動したいものかねえ」一人が言った。
「やればやるほど次元がゆがむんだよ。つまり俺たちの仕事が増える」顔は驚くほどのっぺりしている。
「それもほぼこの年代に集中している。よほどひどい社会なのだろうな」
「あきらめて輪廻を繰り返せば、やがてまっとうな暮らしができるのに」
「それが想像できないからこうなってるんだよ」
「宗教ってやつがなあ…」
明らかに軽蔑のまなざしであった。一人がこちらへ向かってシュッと手を動かした。
と同時に透明な網のようなものが広がり、自分の全身を覆った。「な、なんだ? なんだよ、お前ら」
「お前のような次元を超えていったり来たりしている奴をとっ捕まえて元の世界に戻してやるのさ」
「捕獲完了。タイムワープします」
『了解』
…。
病室から緑川の姿は消えた。
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