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翼をください
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お寿司を食べ終わると、ケーキが出てきた。生クリームにたっぷりのフルーツがのっている、華やかなケーキだ。
「へえ、もしかしたら翼ちゃんも『真琴ちゃん』になってたかもしれないのね」と、お母さんが話し始めた。「そうですね。選択肢が二つあったから」と答えた。
「翼・・・実は私も候補にあったわ」とお母さんが付け加えた。
「そうなんですか!」
お母さんは頷いた。「でもね、男の子で翼っていかにもでしょ? 実際、その名前は流行ってたし、今も人気だから、他の子と被っちゃうのどうかなって悩んだ末、真琴にしたの」
「そうなんですね。もしあ、わ私も・・ま、真琴になってたら・・・ギャグですね」
お母さんは微笑みながら言った。「なってないから、運命の出会いをしたのよぉ~。ああ、素敵ねえ~、ね? まことぉ~」
片山くんはちょっと照れくさい顔をしていた。「絶対お母さまにも会いたいわぁ~。会って話したいことがいっぱいあるわ~」
「こちらこそ、ぜひお願いします」
あたしが言うとお母さんは肘をついて微笑んだ。「そのうちの一つは今言っておきたいんだけど」
「何ですか?」あたしは尋ねた。
「実はね、作ってもらってるお弁当、SNSに上げてたのね。別に私が作ったって書いてないんだけど、勝手に自作って思われちゃってて、それで・・・テレビ局の人にも見られてて・・・この前『手作り弁当のコーナーに出てもらえませんか』って言われちゃって」
「ええっ!」あたしたち、同時に驚いた。
片山くんは速攻で反論した。「ムリじゃん、そんなの」
お母さんはしょげて言った。「そうなのよ、まさかそんなこと言われると思ってなくて」
「断れよ、な?」片山くんがまた意見を述べた。
「ええ」とお母さんが頷いた。「・・・暴露するから…よかったら翼ちゃんのママのこと、SNSで紹介してもいい?」
片山くんは、「はあ?」という反応を示したものの、すでにSNSに投稿されてしまったものは仕方がない。
すぐにうちのお母さんとも会って二人は大いに意気投合した。
その後、SNSは動画サイトに移り、「みつきママと美子ママの正直料理は苦手だら~」というチャンネルがプチバズり、ついにはテレビ番組にも取り上げられることになった。ちなみに美子はマイお母さんの名前だ。
「片山のかーちゃん、大人気じゃん」「料理下手でバズるってすげぇな」「大久保の母ちゃんもな―」
学校のみんなの反応もガラッと変わった。
撮影のたびにお母さんは、張り切って化粧をしていた。
正直に料理下手を告白したことで、逆に全国の料理ダメ母ーズの共感を得てみつきママは好感度大幅アップ、知名度も爆上がり中だった。ついでにうちのお母さんも・・・。
「嬉しいわあ。お弁当作ってきてよかったぁ」とお母さんは本気で泣いていた。
お母さんの役割は、料理全然ダメな人でも絶対できるお弁当メニューを紹介することだ。うちのお母さんと片山君のお母さんが実際作っている動画を流しているだけなんだけど、その際の素人丸出しの会話や、撮影現場のきれいな片山くんちのキッチンなどが合わさって受けているらしい。
「ねえねえ、この前の配信見て作ったんだけどぉ」と知多さんまで影響を受けている。
「ミックスベジタブルを色別に分けて、ツナのめんつゆ煮とご飯の上に乗せるだけできれいに見えるんだねぇ~。お母さんが作ってくれたの」と、うれしそうに手作り弁当を見せてくれる。
「なんだそれ、おばちゃんパワー」「あんなので副収入にもなるんだな」「そうなの?」「別れたオヤジが寄ってこないか心配だなー」と片山くんは、またもや定番のずり落ち眼鏡を直しながら言った。そのスタイルは女子除けには役に立ったが、彼はやっぱりモテる。
しかし、前ほど気にならない。みつきママと美子ママは今や○○真琴のライブに一緒に行くほどの仲。お母さん同士がこれだもん・・・。パワフリャな結界に包まれて雑音が気にならない、そんな感じだ。
「ほらほら、出てるよ、お母さん」とあたしはやつに手招きした。
『片山さん、例のカミングアウト後、もてもてなんですってね~』
夕方の情報番組に出演中のみつきママがコメンテーターにいじられる。
『あははは・・。いや、どうでしょう』苦笑い。
片山くんのお母さん、さらにきれいになった。料理へたくそを公表して支持を得るって、ある種の男性にはかわいらしく見えるのかもしれない。
「余計なこと言うんじゃねえ」
片山くんが隣でつぶやく。彼は自宅で勉強中だ。
「嘘みたいよね、こんな展開になっちゃって」
元はと言えば、やっぱりお母さんの弁当のおかげだ。お母さんが片山くんに弁当を食べさせなければ、こうはならなかっただろう。
そこからみつきママに伝染して、名前の話になって・・。名づけの因縁って奥深い。本人にはどうしようもないくらい。
『運命の出会い』笑。
それと、眼鏡っ子の片山くんも。
彼が只野仁になってくれたから。
と、隣をチラ見。
やっぱりかわいい。
「…もしも名前が逆で、あたしが真琴で、片山くんが翼だったらどうなってたんだろ」
ふと思いついて言ってみた。
黒縁眼鏡の翼くん。なんかかわいい。最初からこのスタイルで現れたら印象違ってたかも?
「別に変わんねえだろ」
「なんで」
「そのパターンで行けば、二人とも翼か真琴だったかもしれねえじゃん」
「うん」
「あんま変わんなくね?」
……うーん、そうかなあ。でも名前で運勢変わるかもしれないし。あたしだってこんな外見じゃなかったかもしれないし。
「変わんないよ。……お前の見た目が今と全然違ってたら眼中になかったかもしれねえけど」
片山くんはつぶやいてうつむいた。
え、どういうこと? それって……。
お母さんは、あたしは例のアーティストに似てるって言ってた。片山くんのお母さんもその人の大ファンで、きっと片山くんも影響を受けているだろう。ていうことは…。
時間差、真っ赤になるあたし。
片山くんの好みってもしかして…そこからきてるの?
終
わからない方は検索してみてください‼ そのお方のルックスと代表曲がすべてです。
「へえ、もしかしたら翼ちゃんも『真琴ちゃん』になってたかもしれないのね」と、お母さんが話し始めた。「そうですね。選択肢が二つあったから」と答えた。
「翼・・・実は私も候補にあったわ」とお母さんが付け加えた。
「そうなんですか!」
お母さんは頷いた。「でもね、男の子で翼っていかにもでしょ? 実際、その名前は流行ってたし、今も人気だから、他の子と被っちゃうのどうかなって悩んだ末、真琴にしたの」
「そうなんですね。もしあ、わ私も・・ま、真琴になってたら・・・ギャグですね」
お母さんは微笑みながら言った。「なってないから、運命の出会いをしたのよぉ~。ああ、素敵ねえ~、ね? まことぉ~」
片山くんはちょっと照れくさい顔をしていた。「絶対お母さまにも会いたいわぁ~。会って話したいことがいっぱいあるわ~」
「こちらこそ、ぜひお願いします」
あたしが言うとお母さんは肘をついて微笑んだ。「そのうちの一つは今言っておきたいんだけど」
「何ですか?」あたしは尋ねた。
「実はね、作ってもらってるお弁当、SNSに上げてたのね。別に私が作ったって書いてないんだけど、勝手に自作って思われちゃってて、それで・・・テレビ局の人にも見られてて・・・この前『手作り弁当のコーナーに出てもらえませんか』って言われちゃって」
「ええっ!」あたしたち、同時に驚いた。
片山くんは速攻で反論した。「ムリじゃん、そんなの」
お母さんはしょげて言った。「そうなのよ、まさかそんなこと言われると思ってなくて」
「断れよ、な?」片山くんがまた意見を述べた。
「ええ」とお母さんが頷いた。「・・・暴露するから…よかったら翼ちゃんのママのこと、SNSで紹介してもいい?」
片山くんは、「はあ?」という反応を示したものの、すでにSNSに投稿されてしまったものは仕方がない。
すぐにうちのお母さんとも会って二人は大いに意気投合した。
その後、SNSは動画サイトに移り、「みつきママと美子ママの正直料理は苦手だら~」というチャンネルがプチバズり、ついにはテレビ番組にも取り上げられることになった。ちなみに美子はマイお母さんの名前だ。
「片山のかーちゃん、大人気じゃん」「料理下手でバズるってすげぇな」「大久保の母ちゃんもな―」
学校のみんなの反応もガラッと変わった。
撮影のたびにお母さんは、張り切って化粧をしていた。
正直に料理下手を告白したことで、逆に全国の料理ダメ母ーズの共感を得てみつきママは好感度大幅アップ、知名度も爆上がり中だった。ついでにうちのお母さんも・・・。
「嬉しいわあ。お弁当作ってきてよかったぁ」とお母さんは本気で泣いていた。
お母さんの役割は、料理全然ダメな人でも絶対できるお弁当メニューを紹介することだ。うちのお母さんと片山君のお母さんが実際作っている動画を流しているだけなんだけど、その際の素人丸出しの会話や、撮影現場のきれいな片山くんちのキッチンなどが合わさって受けているらしい。
「ねえねえ、この前の配信見て作ったんだけどぉ」と知多さんまで影響を受けている。
「ミックスベジタブルを色別に分けて、ツナのめんつゆ煮とご飯の上に乗せるだけできれいに見えるんだねぇ~。お母さんが作ってくれたの」と、うれしそうに手作り弁当を見せてくれる。
「なんだそれ、おばちゃんパワー」「あんなので副収入にもなるんだな」「そうなの?」「別れたオヤジが寄ってこないか心配だなー」と片山くんは、またもや定番のずり落ち眼鏡を直しながら言った。そのスタイルは女子除けには役に立ったが、彼はやっぱりモテる。
しかし、前ほど気にならない。みつきママと美子ママは今や○○真琴のライブに一緒に行くほどの仲。お母さん同士がこれだもん・・・。パワフリャな結界に包まれて雑音が気にならない、そんな感じだ。
「ほらほら、出てるよ、お母さん」とあたしはやつに手招きした。
『片山さん、例のカミングアウト後、もてもてなんですってね~』
夕方の情報番組に出演中のみつきママがコメンテーターにいじられる。
『あははは・・。いや、どうでしょう』苦笑い。
片山くんのお母さん、さらにきれいになった。料理へたくそを公表して支持を得るって、ある種の男性にはかわいらしく見えるのかもしれない。
「余計なこと言うんじゃねえ」
片山くんが隣でつぶやく。彼は自宅で勉強中だ。
「嘘みたいよね、こんな展開になっちゃって」
元はと言えば、やっぱりお母さんの弁当のおかげだ。お母さんが片山くんに弁当を食べさせなければ、こうはならなかっただろう。
そこからみつきママに伝染して、名前の話になって・・。名づけの因縁って奥深い。本人にはどうしようもないくらい。
『運命の出会い』笑。
それと、眼鏡っ子の片山くんも。
彼が只野仁になってくれたから。
と、隣をチラ見。
やっぱりかわいい。
「…もしも名前が逆で、あたしが真琴で、片山くんが翼だったらどうなってたんだろ」
ふと思いついて言ってみた。
黒縁眼鏡の翼くん。なんかかわいい。最初からこのスタイルで現れたら印象違ってたかも?
「別に変わんねえだろ」
「なんで」
「そのパターンで行けば、二人とも翼か真琴だったかもしれねえじゃん」
「うん」
「あんま変わんなくね?」
……うーん、そうかなあ。でも名前で運勢変わるかもしれないし。あたしだってこんな外見じゃなかったかもしれないし。
「変わんないよ。……お前の見た目が今と全然違ってたら眼中になかったかもしれねえけど」
片山くんはつぶやいてうつむいた。
え、どういうこと? それって……。
お母さんは、あたしは例のアーティストに似てるって言ってた。片山くんのお母さんもその人の大ファンで、きっと片山くんも影響を受けているだろう。ていうことは…。
時間差、真っ赤になるあたし。
片山くんの好みってもしかして…そこからきてるの?
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わからない方は検索してみてください‼ そのお方のルックスと代表曲がすべてです。
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