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5話 天敵
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高広くんと待ち合わせた新宿のカフェに行くと、もう来てて手招きしてる。
「おー、こっちこっち」
席についてコーヒーを注文した。
「はい、これ。長らくお待たせしました」
高広くんは紙袋を出した。
おお、バッグ、長かったー、元気してたかい?
ゴソゴソ包みを破ってチェック!
うん、確かに。あんたにつけられた傷もバッチリそのままだ。
「……携帯つながらなくてどうしようかと思ったぜ。何かあった?」
「うん、実は……」
かくかくしかじか、いきさつを聞いて彼は、「えーーー?」目を丸めて、「ぎゃはははは、あんたもかい」大笑いした。
「あんたもって」
どういう意味かな。
高広くんは話し始めた。
「エビだよー。エビ。俺さー、アメリカにいた時、兄貴とエビの加工場見に行ってさーー…」
うむ?
「でっかいプールみたいなのに小エビがうじゃうじゃ流れてくわけ。説明してもらいながら歩いてたんだけど、俺、つい覗き込んでダーーイブ! しちゃってさ。エビの中に埋もれちまって、もう少しでエビミンチになるところだったぜ。すぐにラインストップしてえらい騒ぎになったんだ」
「ええー?」
まさか……。
オーマイがー!
エビエビエビ……。
話聞くだけで思い出しちゃうーー。
おい、お前もか。まさかのエビ繋がりー…。
「ーー兄さん、エビまみれの俺見て気持ち悪くなっちゃってさー。その晩寝込んだんだ。以来エビ見るとそれ思い出すって。それでエビが食えなくなったんだよ」
「えーーー」
それでエビが……小エビがダメなの……。
会長のエビ嫌い、つまりお前のせいかい! お気の毒に。
大人しく見学せんかい!
「で、あんたは何ともなかったの」私は聞いた。
「俺? 俺は平気さ。エビでもザリガニでも食えるよん」
うっ……。
「あんたもエビにねえーー…。こりゃいいや、あはははーー……」高広くんは高笑いする。
おい、笑うんじゃねえ。私、死にかけたんですけどね?
会長かわいそうに……。こんな弟がいたら大変だわ。お察します……なむなむ。
「そんなことより早く名乗り出てよ。私、あんたのこと言っても信じてもらえなかったんだから」話を切り替えた。
「え? そう」
せっかくの証拠も携帯ごと吹っ飛んじゃったし。
お手上げですわ。
「それはやめとく」
「ええ」
「ーー俺は俺なりの方法で兄さんを助けたいんだ。今しばらく雲隠れしてようと思う」
どうして。また気が変わったの。
「ーー前に親父がトラブったとき、内通者がいたんだよな。俺、それ割り出す専門の調査室にいたことがあってさ。要するに社外審査みたいなことやってんのー…」
そういえばその方面の資格持ちなんだっけ。
いや、そんなことより早く会ってあげたほうが喜ぶと思うわ。
「いいから早く……」
「あんたも手伝ってよ」
「えっ」
なんで。なんで私が。
「いいじゃん、あんたどうせ兄さんの飯作る以外は暇なんだろ」
ぐっ。
「それで五十万近く給料貰って良心痛まない?」
……なんで知ってんの。
紆余曲折あったけどちゃんと契約成立した労働者の権利だ。
良心?……ううう。
暇だろって、足元見られてるわーー。
「そんなの無理だし」
それって特命捜査? そんなスパイみたいなこと……できるかい。
「会長室の周辺だけーー。難しく考えなくていいからさ。俺が指示する、その通り動いてよ」
ええ?
「いいじゃん、二人で協力して兄さんを守ろうよ」
ーーー。
ねえ、どう思う? これ。
断ったところで……やらせる気満々でしょう。
困った坊ちゃんだ。ふー、困った兄弟。
お兄さんの方は結婚したくないとごねておられるし……。
はー……ため息。
「おー、こっちこっち」
席についてコーヒーを注文した。
「はい、これ。長らくお待たせしました」
高広くんは紙袋を出した。
おお、バッグ、長かったー、元気してたかい?
ゴソゴソ包みを破ってチェック!
うん、確かに。あんたにつけられた傷もバッチリそのままだ。
「……携帯つながらなくてどうしようかと思ったぜ。何かあった?」
「うん、実は……」
かくかくしかじか、いきさつを聞いて彼は、「えーーー?」目を丸めて、「ぎゃはははは、あんたもかい」大笑いした。
「あんたもって」
どういう意味かな。
高広くんは話し始めた。
「エビだよー。エビ。俺さー、アメリカにいた時、兄貴とエビの加工場見に行ってさーー…」
うむ?
「でっかいプールみたいなのに小エビがうじゃうじゃ流れてくわけ。説明してもらいながら歩いてたんだけど、俺、つい覗き込んでダーーイブ! しちゃってさ。エビの中に埋もれちまって、もう少しでエビミンチになるところだったぜ。すぐにラインストップしてえらい騒ぎになったんだ」
「ええー?」
まさか……。
オーマイがー!
エビエビエビ……。
話聞くだけで思い出しちゃうーー。
おい、お前もか。まさかのエビ繋がりー…。
「ーー兄さん、エビまみれの俺見て気持ち悪くなっちゃってさー。その晩寝込んだんだ。以来エビ見るとそれ思い出すって。それでエビが食えなくなったんだよ」
「えーーー」
それでエビが……小エビがダメなの……。
会長のエビ嫌い、つまりお前のせいかい! お気の毒に。
大人しく見学せんかい!
「で、あんたは何ともなかったの」私は聞いた。
「俺? 俺は平気さ。エビでもザリガニでも食えるよん」
うっ……。
「あんたもエビにねえーー…。こりゃいいや、あはははーー……」高広くんは高笑いする。
おい、笑うんじゃねえ。私、死にかけたんですけどね?
会長かわいそうに……。こんな弟がいたら大変だわ。お察します……なむなむ。
「そんなことより早く名乗り出てよ。私、あんたのこと言っても信じてもらえなかったんだから」話を切り替えた。
「え? そう」
せっかくの証拠も携帯ごと吹っ飛んじゃったし。
お手上げですわ。
「それはやめとく」
「ええ」
「ーー俺は俺なりの方法で兄さんを助けたいんだ。今しばらく雲隠れしてようと思う」
どうして。また気が変わったの。
「ーー前に親父がトラブったとき、内通者がいたんだよな。俺、それ割り出す専門の調査室にいたことがあってさ。要するに社外審査みたいなことやってんのー…」
そういえばその方面の資格持ちなんだっけ。
いや、そんなことより早く会ってあげたほうが喜ぶと思うわ。
「いいから早く……」
「あんたも手伝ってよ」
「えっ」
なんで。なんで私が。
「いいじゃん、あんたどうせ兄さんの飯作る以外は暇なんだろ」
ぐっ。
「それで五十万近く給料貰って良心痛まない?」
……なんで知ってんの。
紆余曲折あったけどちゃんと契約成立した労働者の権利だ。
良心?……ううう。
暇だろって、足元見られてるわーー。
「そんなの無理だし」
それって特命捜査? そんなスパイみたいなこと……できるかい。
「会長室の周辺だけーー。難しく考えなくていいからさ。俺が指示する、その通り動いてよ」
ええ?
「いいじゃん、二人で協力して兄さんを守ろうよ」
ーーー。
ねえ、どう思う? これ。
断ったところで……やらせる気満々でしょう。
困った坊ちゃんだ。ふー、困った兄弟。
お兄さんの方は結婚したくないとごねておられるし……。
はー……ため息。
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