89 / 153
5話 天敵
13
しおりを挟む
都会を抜けると嘘みたいに田園風景が広がり、海沿いに御伽の国のような景色が続く。車は目指す、丘の上に立つ建物へ。
無事午前十時前に到着。可愛らしい木造の平屋がお目見えした。シンボルツリーはオリーブと月桂樹。軒先に淡い水色、ピンク、オレンジ……いろんな花が咲き乱れてる。
「いらっしゃい」
ずらっと並んだ人たちから一人、日本語で声をかけられた。「市川さん、会うのを楽しみにしてました」「ありがとうございます」
会長がさっと手を出して、
「紹介しよう、こちらがこの家の主、アラン・リードと妻のるりか」
「コンニチハ、ハジメマシテ」
肩上の茶色い髪、ヒゲがうっすら、細面の優しそうな人。私の想像図に近いアランさん。日本人の奥様るりかさんはふわふわの栗色の髪の毛に肌は真っ白で妖精みたいな透明感ある人だ。
「こちらがレオナルド・フォスターと妻のエリザベス」
フォスター夫妻、どちらも金髪。
「ハーイ」
大きな手を差し出した。恰幅のいいおじさま。背が高くでん、としてる。奥様は人形のように綺麗な長い金髪、大きな青い目。ものすごい美人ですね。レオナルドとエリザベスって、どこの国王、王妃よ。すげー。
「アランは舞台演出家、レオは分かるね、レックスのCEO。細かいことはあとでるりかに聞いてくれ」
えらい簡単な紹介だ。まあ英語で喋ってくれても要通訳だけどね。てへ。
会長はノーネクタイ、ノーベストでいつもよりはラフだけどやっぱりスーツ。
私はといえば、昨日結局高広くんと店を回り、紆余曲折の末、脱ファストファッションーーちょい上ランクの服にした。あんまり代わり映えしませんけどね。色味が高広くんテイストかな。ちょっとパステル調の明るい上下、ゆるトップスとゆるパンツだ。
「さて、作業に取り掛かるか。きみはるりかと中で準備してて」
「はい」
窯の完成まであと一仕事あるらしい。「市川さんは私と一緒に作業しましょうね。畑もあるのよ」とるりかさんにこり。日本人は会長とるりかさんだけで、あとはみんな海外の人。つまり英語で喋ってるわけでその会話の内容は私にはさっぱり。手入れされた芝生のお庭に流暢な英語が流れる。まるで海外の光景を目にして私は改めて思う。
やっぱ無理だわ。アメリカなんて。
全然進歩してない。英語アレルギーだろうか。英語で喋ってる人だらけの所に自分がいるところが想像できない。
今だって、たった五人喋ってるだけで頭がガッチガチに固まってしまう。
映画は字幕や吹き替えでカバーできるけど、洋楽とかほとんど聴かないし……。早口で何言ってるか全然わかんないんじゃね、つまんないし。化石のような頭だ。
その流れるような会話がいきなり途切れた。
「オー、ナルアキ……」流石にこれは私にもわかるわ。大きな声で、エリザベスさんは両手をかざした。
「Are you still saying that?」
「It’s nothing to do with you.---×××××……」
「No……!」
???
えらい剣幕で言い合ってる。身振り手振りすごいんですけど。
ええ、相手はもちろんナルアキーー会長です。
会長、何やってるの、よその奥さんとーー。
「ちょ、会長っ!」
止めようとした私をルリカさんが制した。
「あ、えーと……いつものことなのよ。ナルさんとエリーさん、き、気にしないで。喧嘩してるように見えてそうじゃないの。日常会話。大丈夫だから。ね、私と一緒に来て」
「え」
ーーいつも?
「あの、なんて……」言ってるかだけでも教えて欲しかったりして。
「いいから、いいから。大したこと言ってない」
「Elizabeth, would you please be quiet in front of your husband.」
「If you shut up first.」・・・・・
みんなは苦笑いしてる。ニヤニヤ。まだ続いてる……どう見てもケンカ……いやいや、うるさい英語を背に、振り返り振り返りるりかさんに案内されて家の中に入った。
****************
英語のセリフは読み飛ばしていただければ幸いです。
無事午前十時前に到着。可愛らしい木造の平屋がお目見えした。シンボルツリーはオリーブと月桂樹。軒先に淡い水色、ピンク、オレンジ……いろんな花が咲き乱れてる。
「いらっしゃい」
ずらっと並んだ人たちから一人、日本語で声をかけられた。「市川さん、会うのを楽しみにしてました」「ありがとうございます」
会長がさっと手を出して、
「紹介しよう、こちらがこの家の主、アラン・リードと妻のるりか」
「コンニチハ、ハジメマシテ」
肩上の茶色い髪、ヒゲがうっすら、細面の優しそうな人。私の想像図に近いアランさん。日本人の奥様るりかさんはふわふわの栗色の髪の毛に肌は真っ白で妖精みたいな透明感ある人だ。
「こちらがレオナルド・フォスターと妻のエリザベス」
フォスター夫妻、どちらも金髪。
「ハーイ」
大きな手を差し出した。恰幅のいいおじさま。背が高くでん、としてる。奥様は人形のように綺麗な長い金髪、大きな青い目。ものすごい美人ですね。レオナルドとエリザベスって、どこの国王、王妃よ。すげー。
「アランは舞台演出家、レオは分かるね、レックスのCEO。細かいことはあとでるりかに聞いてくれ」
えらい簡単な紹介だ。まあ英語で喋ってくれても要通訳だけどね。てへ。
会長はノーネクタイ、ノーベストでいつもよりはラフだけどやっぱりスーツ。
私はといえば、昨日結局高広くんと店を回り、紆余曲折の末、脱ファストファッションーーちょい上ランクの服にした。あんまり代わり映えしませんけどね。色味が高広くんテイストかな。ちょっとパステル調の明るい上下、ゆるトップスとゆるパンツだ。
「さて、作業に取り掛かるか。きみはるりかと中で準備してて」
「はい」
窯の完成まであと一仕事あるらしい。「市川さんは私と一緒に作業しましょうね。畑もあるのよ」とるりかさんにこり。日本人は会長とるりかさんだけで、あとはみんな海外の人。つまり英語で喋ってるわけでその会話の内容は私にはさっぱり。手入れされた芝生のお庭に流暢な英語が流れる。まるで海外の光景を目にして私は改めて思う。
やっぱ無理だわ。アメリカなんて。
全然進歩してない。英語アレルギーだろうか。英語で喋ってる人だらけの所に自分がいるところが想像できない。
今だって、たった五人喋ってるだけで頭がガッチガチに固まってしまう。
映画は字幕や吹き替えでカバーできるけど、洋楽とかほとんど聴かないし……。早口で何言ってるか全然わかんないんじゃね、つまんないし。化石のような頭だ。
その流れるような会話がいきなり途切れた。
「オー、ナルアキ……」流石にこれは私にもわかるわ。大きな声で、エリザベスさんは両手をかざした。
「Are you still saying that?」
「It’s nothing to do with you.---×××××……」
「No……!」
???
えらい剣幕で言い合ってる。身振り手振りすごいんですけど。
ええ、相手はもちろんナルアキーー会長です。
会長、何やってるの、よその奥さんとーー。
「ちょ、会長っ!」
止めようとした私をルリカさんが制した。
「あ、えーと……いつものことなのよ。ナルさんとエリーさん、き、気にしないで。喧嘩してるように見えてそうじゃないの。日常会話。大丈夫だから。ね、私と一緒に来て」
「え」
ーーいつも?
「あの、なんて……」言ってるかだけでも教えて欲しかったりして。
「いいから、いいから。大したこと言ってない」
「Elizabeth, would you please be quiet in front of your husband.」
「If you shut up first.」・・・・・
みんなは苦笑いしてる。ニヤニヤ。まだ続いてる……どう見てもケンカ……いやいや、うるさい英語を背に、振り返り振り返りるりかさんに案内されて家の中に入った。
****************
英語のセリフは読み飛ばしていただければ幸いです。
11
あなたにおすすめの小説
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる