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4話 機嫌の悪い日々
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水曜日ーー。
「ああ、ご苦労様。もういいよ」
「はい、では失礼します」
使いの者を退室させ、ゆっくり彼女に歩み寄る。
「やあ、おかえり、体調はどうだい?」
「かいちょ…。さみしかったです」
出張が伸びてやっと帰ってきた。言葉は嬉しそうだがなんだか様子が怪しい。
「熱っぽいな。風邪か?キミ、真っ赤じゃないか、顔も、手も」
手もむくんでいるのか、いつもと違う。
「傷だらけじゃないか。エビの料理でもしたのか」
そんな感じがした。が、
「首にも小さな傷が。キミ、何かあったのか」
「すみません、はしゃいで転んじゃって」
「そうか?それにしては…顔も赤いよ。これ、湿疹じゃないか?」
アレルギー反応?まだ治ってなかったのか。
「言いなさい。何があったんだ」
声が小さくまごついている。
「何も…足場が悪くてつい」
「腕もだぞ。転んでできるような傷じゃないだろう。それにどんどん赤くなって…蕁麻疹か? 何があったか言いなさい。私はキミの上司だぞ」
「そっ…」
言いにくそうに顔をそむける
「い、言いたくないの…思い出したくない…セカンドハラスメントです」
「なんだって?」
セカンドハラスメント!? 驚きの言葉を口にする。
「キミ、何かされたのか」
「ち、ちがいま…」
「キミ」
苦しそうに首にしがみついてきた。
「どうしたーーー」
足をバタバタさせてもがいている。
異常事態だ。息が、おかしいぞ。
「!いかんーー」
とっさに携帯をつないだ。
「ーーー私だ。秘書が突然ショック状態になってーーー」
脚を抱え抱き上げる。
「わからないんだ、急にーーー中毒ーーアナフィラキシーかもしれん。呼吸が苦しそうだーーああ、そっちへ連れて行くーーエレベーターの前に誰か寄越してくれ。全身腫れ上がって真っ赤だーー車を、秘書室長にこの後の私の予定をCXLするよう言ってくれ。ああ、もうーーーー」
「息が、止まりそうなんだーーー」
ーー早く!
咄嗟に右手で体を支えエレベーターに向かった。リフトに乗りスマホを持った手でパネルを押した。
「しっかり首に手を回して!」
…11Fだ、11、早くーー……
早くしないと息が……。
「会長、こちらへ」
エレベーター前で待機していたドクターの顔がこわばる。
「すみません、ストレッチャーへ寝かせてもらえますか、アドレナリン打ちます」
「ああ」
腿に注射。
……何も変化なし。
非常にまずい。
呼吸が止まってる……。
「蘇生準備」
「蘇生ーーー?そんなにひどいのか」
「わかりません、ただ対処するしかないんですよ。血液と酸素が止まらないように…脳に回らなくなったら危険です」
「早く、胸骨圧迫」
「人工呼吸」
「AED装着します」
ーーシンデンズヲシラベテイマスーー
ーーデンキショックガヒツヨウデスーージュウデンシテイマスーー
ーー!?
「反応が早い、心臓がーー。」
「心…肺停止……」
心臓が……止まっ……た。
「ダメか…」
「大丈夫です、まだ…」
ーカラダカラハナレテクダサイーーボタンヲオシテクダサイーー
########
ーーデンキショックヲオコナイマシターー
「ーー!!」
ついさっきまで喋っていたのに。
電気ショックを与えるドクターらをただ見てるだけだった。
数十秒、数分、時が永遠に感じた。
・・・・・・・・・・・・ーーーー。
ドクターが声を上げた。
「たすかった!」
「ああ、危なかった」
「救急車きましたーーー」
助かったーーのか?
にわかに信じられなかった。
「処置はアドレナリン剤と電気ショック2回ですね」
「はい」
「大丈夫です、しばらく安静にしていれば回復しますよ」
「ああ、よかった」
救急車、搬送先の病院とドクターがやりとりするのを聞いていた。
「こちらでお待ちください」
処置室の前で待機するよう言われ、長椅子に座って頭をもたげる。
ーーああ、どうしてこんなことに。
悔やんでも悔やみきれない。出張に行かせたこと。行かせなければ、こんなことにはなっていない。
「成明!」
顔を上げて驚いた。
「お父さん。どうして……」
「姫島君から聞いたんだよ」
「そうですか」
「お前顔が真っ青じゃないか」
「……初めてですからね、人の死に際に直面したの」
「そうか。そんなに切迫して…。美紀子の時はすでに亡くなっていたからな」
「そうですね…」
お母さん…あの時はあの時で別の苦しみがあった。
「それで……状態は」
「ええ、なんとか。一週間ほどで戻るそうです」
「そうか、よかったな」
父とともに部屋に通され、改めて様子を伺ってみた。
血の気の引いた顔だ。普段の様子から想像もつかない青ざめた顔色をしている。
「この子がそうなのか。お前のそばにいるという」
「はい」
「……かわいいお嬢さんじゃないか」
「ええ」
「素直そうないい子じゃないか。お前が惹かれるのもわかる」
「……」
「隠すことはないだろう。成明」
「……どうでしょうね」
「……私が悪いのだがね。お前のそういうところ。自分のことには偏屈になる。よく美紀子に怒られたよ、うっすら覚えているだろう」
……。バツ悪そうに父は笑った。
「私のせいだよ。まだ子供のお前に小さな高広を押し付けて……大人でも手を焼く高広を。悪いことをしたと思っている」
「……いきなり何を。お父さんこそ、お母さんを亡くしてよく一人でやってこられたと思います」
「私にはお前達がいたからね。お前と高広が私の原動力だ。だが、それを口実に仕事に逃げていたとも言える。全くお前達の世話をしてやれなかった…悪かったと思ってる。お前のその性格は私のせいでもあるんだ。お前は責任感が強い。警戒心もだ。だがもういいんだよ、成明。お前のまわりに舞い降りてくる幸せの種を逃すことなく掴んでいいんだ。いまがその時ではないか?」
「……」
「前向きに、結婚だって自由にしていいんだ」
「それはないです」
父はため息をついた。
「なあ、成明 、こんな風に考えられんかーー。お前がそう頑なに結婚しないと言い張ることでマヤさんへの愛を貫いているように見えないか」
「ーーまさか」
「だからそう見えるのだよ。現に私もそう思っていた。高広がいれば同じように思うだろう。ーー私の目にもお前とマヤさんは似合いの恋人だったと思う」
「それはーー素性を知らなかったから」
「マヤさんは養女だ。本当の娘ではない」
「それが何なんです」
「お前は本当に女心がわかってないな。成明、お前の最大の弱点だぞ。少しでもマヤさんの気持ちを考えたことがあるか?」
返す言葉にほんの少し惑った。
「やめてください。……もう終わったことですよ」
「……ならよいがね。姫島君から色々聞いてるよ。山元興商の社長をうまくもてなしたそうだな。微笑ましいじゃないか」
「ええ」
「ん…」
ベッドの上の生気のない肌が少し動いた。
「目を覚ました!」
覗き込んで確かめる。
「全く君は! 驚かせないでくれ!!」
「まあまあ、成明、落ち着いて」
不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「……父だよ。心配して来てくれたんだ…。君、あやうく死にかけたんだぞ!」
「またそんな言い方をして……。さっきまでお前が死んだような顔してたじゃないか。ーーーすみませんねえ、市川さん、せがれがこんな天邪鬼で。まあ、ゆっくり休養してまた面倒見てやってください」
体を少し動かした。
「ああ、いいですよ、そのままで。声が聞けて一安心だ。寝てなさい、寝てなさい」
「はあ……」
いつもののんびりした声。回復したか。よかった。
「ほら、成明、帰ろう……」
父とともに部屋を出た。
「成明様」
廊下で、執事の顔を見たのは何ヶ月ぶりだろう。
「……ーー落ち着いたら転院の手続きを頼む。現地での病状と毎日の経過を私の部屋に送るよう言ってくれ」
「はい」
執事は心配そうにこちらを伺う。
「坊っちゃま、たまにはお帰りください。旦那様もお喜びになります。心配されているのですよ」
「わかってるよ……」
シンとした廊下にコツコツ足音が響く。長い長い1日だった。
翌日、宇部現地の病院から届いた報告書を見ていた。
『調整池に落水、半日不穏な状態が続く
検査結果 大腸菌群 大腸菌ー陰性』
海老の養殖池に落ちたーー。
半日昏睡…?
なぜすぐ言ってこないんだ。
発生ー日曜午後。
「会長、宇部のこうだ水産の方がお見えです」
その宇部から、客人五名。うち若い男が一人。
「この度はもうしわけありませんでしたーーー」
高田誠二。地権者の孫。
話ぶりからこの男が相手をしたらしい。
「申し訳ありません、ほんの数分目を離したすきに」
「目を離したすきに池に落ちたというのか?子供じゃないんだぞ!警察には届けたのか」
「申し訳ございません、誰もついていなくて、私のミスです」
不毛なやりとりが続く。
頭を下げるばかりで何も引き出せそうにない。
ーー何を庇ってる?
ーー何があったんだ。
「もういい、帰ってくれ」
生死をさまよう事故なのに。
なぜ何も言ってこないんだ。
ーーそこまで黙り込むか。
セカンドハラスメント…。
邪な思いが頭を巡る。
主に性被害にあった際に出てくるワードだが。
「……」
彼らが退室した後、携帯をつないだ。
「ーー長嶺くん。君の県で起きた事なんだが。ひとつ融通をきかせてくれないか」
ーーえ? ああ、宇部の。知ってるよ。世話したことがある。
ーー君は超一流の営業だな。故郷の津々浦々把握している。
ーーははは、歩き回るのが趣味だからな。
色んな人と話をするのが大好きなんだ。で、何だ。
ーー実は……ーー
ーーうん、わかった。話してみよう……。
ーーたのんだよ。
カルテに記載されないなにか。
真実が知りたい。
「ああ、ご苦労様。もういいよ」
「はい、では失礼します」
使いの者を退室させ、ゆっくり彼女に歩み寄る。
「やあ、おかえり、体調はどうだい?」
「かいちょ…。さみしかったです」
出張が伸びてやっと帰ってきた。言葉は嬉しそうだがなんだか様子が怪しい。
「熱っぽいな。風邪か?キミ、真っ赤じゃないか、顔も、手も」
手もむくんでいるのか、いつもと違う。
「傷だらけじゃないか。エビの料理でもしたのか」
そんな感じがした。が、
「首にも小さな傷が。キミ、何かあったのか」
「すみません、はしゃいで転んじゃって」
「そうか?それにしては…顔も赤いよ。これ、湿疹じゃないか?」
アレルギー反応?まだ治ってなかったのか。
「言いなさい。何があったんだ」
声が小さくまごついている。
「何も…足場が悪くてつい」
「腕もだぞ。転んでできるような傷じゃないだろう。それにどんどん赤くなって…蕁麻疹か? 何があったか言いなさい。私はキミの上司だぞ」
「そっ…」
言いにくそうに顔をそむける
「い、言いたくないの…思い出したくない…セカンドハラスメントです」
「なんだって?」
セカンドハラスメント!? 驚きの言葉を口にする。
「キミ、何かされたのか」
「ち、ちがいま…」
「キミ」
苦しそうに首にしがみついてきた。
「どうしたーーー」
足をバタバタさせてもがいている。
異常事態だ。息が、おかしいぞ。
「!いかんーー」
とっさに携帯をつないだ。
「ーーー私だ。秘書が突然ショック状態になってーーー」
脚を抱え抱き上げる。
「わからないんだ、急にーーー中毒ーーアナフィラキシーかもしれん。呼吸が苦しそうだーーああ、そっちへ連れて行くーーエレベーターの前に誰か寄越してくれ。全身腫れ上がって真っ赤だーー車を、秘書室長にこの後の私の予定をCXLするよう言ってくれ。ああ、もうーーーー」
「息が、止まりそうなんだーーー」
ーー早く!
咄嗟に右手で体を支えエレベーターに向かった。リフトに乗りスマホを持った手でパネルを押した。
「しっかり首に手を回して!」
…11Fだ、11、早くーー……
早くしないと息が……。
「会長、こちらへ」
エレベーター前で待機していたドクターの顔がこわばる。
「すみません、ストレッチャーへ寝かせてもらえますか、アドレナリン打ちます」
「ああ」
腿に注射。
……何も変化なし。
非常にまずい。
呼吸が止まってる……。
「蘇生準備」
「蘇生ーーー?そんなにひどいのか」
「わかりません、ただ対処するしかないんですよ。血液と酸素が止まらないように…脳に回らなくなったら危険です」
「早く、胸骨圧迫」
「人工呼吸」
「AED装着します」
ーーシンデンズヲシラベテイマスーー
ーーデンキショックガヒツヨウデスーージュウデンシテイマスーー
ーー!?
「反応が早い、心臓がーー。」
「心…肺停止……」
心臓が……止まっ……た。
「ダメか…」
「大丈夫です、まだ…」
ーカラダカラハナレテクダサイーーボタンヲオシテクダサイーー
########
ーーデンキショックヲオコナイマシターー
「ーー!!」
ついさっきまで喋っていたのに。
電気ショックを与えるドクターらをただ見てるだけだった。
数十秒、数分、時が永遠に感じた。
・・・・・・・・・・・・ーーーー。
ドクターが声を上げた。
「たすかった!」
「ああ、危なかった」
「救急車きましたーーー」
助かったーーのか?
にわかに信じられなかった。
「処置はアドレナリン剤と電気ショック2回ですね」
「はい」
「大丈夫です、しばらく安静にしていれば回復しますよ」
「ああ、よかった」
救急車、搬送先の病院とドクターがやりとりするのを聞いていた。
「こちらでお待ちください」
処置室の前で待機するよう言われ、長椅子に座って頭をもたげる。
ーーああ、どうしてこんなことに。
悔やんでも悔やみきれない。出張に行かせたこと。行かせなければ、こんなことにはなっていない。
「成明!」
顔を上げて驚いた。
「お父さん。どうして……」
「姫島君から聞いたんだよ」
「そうですか」
「お前顔が真っ青じゃないか」
「……初めてですからね、人の死に際に直面したの」
「そうか。そんなに切迫して…。美紀子の時はすでに亡くなっていたからな」
「そうですね…」
お母さん…あの時はあの時で別の苦しみがあった。
「それで……状態は」
「ええ、なんとか。一週間ほどで戻るそうです」
「そうか、よかったな」
父とともに部屋に通され、改めて様子を伺ってみた。
血の気の引いた顔だ。普段の様子から想像もつかない青ざめた顔色をしている。
「この子がそうなのか。お前のそばにいるという」
「はい」
「……かわいいお嬢さんじゃないか」
「ええ」
「素直そうないい子じゃないか。お前が惹かれるのもわかる」
「……」
「隠すことはないだろう。成明」
「……どうでしょうね」
「……私が悪いのだがね。お前のそういうところ。自分のことには偏屈になる。よく美紀子に怒られたよ、うっすら覚えているだろう」
……。バツ悪そうに父は笑った。
「私のせいだよ。まだ子供のお前に小さな高広を押し付けて……大人でも手を焼く高広を。悪いことをしたと思っている」
「……いきなり何を。お父さんこそ、お母さんを亡くしてよく一人でやってこられたと思います」
「私にはお前達がいたからね。お前と高広が私の原動力だ。だが、それを口実に仕事に逃げていたとも言える。全くお前達の世話をしてやれなかった…悪かったと思ってる。お前のその性格は私のせいでもあるんだ。お前は責任感が強い。警戒心もだ。だがもういいんだよ、成明。お前のまわりに舞い降りてくる幸せの種を逃すことなく掴んでいいんだ。いまがその時ではないか?」
「……」
「前向きに、結婚だって自由にしていいんだ」
「それはないです」
父はため息をついた。
「なあ、成明 、こんな風に考えられんかーー。お前がそう頑なに結婚しないと言い張ることでマヤさんへの愛を貫いているように見えないか」
「ーーまさか」
「だからそう見えるのだよ。現に私もそう思っていた。高広がいれば同じように思うだろう。ーー私の目にもお前とマヤさんは似合いの恋人だったと思う」
「それはーー素性を知らなかったから」
「マヤさんは養女だ。本当の娘ではない」
「それが何なんです」
「お前は本当に女心がわかってないな。成明、お前の最大の弱点だぞ。少しでもマヤさんの気持ちを考えたことがあるか?」
返す言葉にほんの少し惑った。
「やめてください。……もう終わったことですよ」
「……ならよいがね。姫島君から色々聞いてるよ。山元興商の社長をうまくもてなしたそうだな。微笑ましいじゃないか」
「ええ」
「ん…」
ベッドの上の生気のない肌が少し動いた。
「目を覚ました!」
覗き込んで確かめる。
「全く君は! 驚かせないでくれ!!」
「まあまあ、成明、落ち着いて」
不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「……父だよ。心配して来てくれたんだ…。君、あやうく死にかけたんだぞ!」
「またそんな言い方をして……。さっきまでお前が死んだような顔してたじゃないか。ーーーすみませんねえ、市川さん、せがれがこんな天邪鬼で。まあ、ゆっくり休養してまた面倒見てやってください」
体を少し動かした。
「ああ、いいですよ、そのままで。声が聞けて一安心だ。寝てなさい、寝てなさい」
「はあ……」
いつもののんびりした声。回復したか。よかった。
「ほら、成明、帰ろう……」
父とともに部屋を出た。
「成明様」
廊下で、執事の顔を見たのは何ヶ月ぶりだろう。
「……ーー落ち着いたら転院の手続きを頼む。現地での病状と毎日の経過を私の部屋に送るよう言ってくれ」
「はい」
執事は心配そうにこちらを伺う。
「坊っちゃま、たまにはお帰りください。旦那様もお喜びになります。心配されているのですよ」
「わかってるよ……」
シンとした廊下にコツコツ足音が響く。長い長い1日だった。
翌日、宇部現地の病院から届いた報告書を見ていた。
『調整池に落水、半日不穏な状態が続く
検査結果 大腸菌群 大腸菌ー陰性』
海老の養殖池に落ちたーー。
半日昏睡…?
なぜすぐ言ってこないんだ。
発生ー日曜午後。
「会長、宇部のこうだ水産の方がお見えです」
その宇部から、客人五名。うち若い男が一人。
「この度はもうしわけありませんでしたーーー」
高田誠二。地権者の孫。
話ぶりからこの男が相手をしたらしい。
「申し訳ありません、ほんの数分目を離したすきに」
「目を離したすきに池に落ちたというのか?子供じゃないんだぞ!警察には届けたのか」
「申し訳ございません、誰もついていなくて、私のミスです」
不毛なやりとりが続く。
頭を下げるばかりで何も引き出せそうにない。
ーー何を庇ってる?
ーー何があったんだ。
「もういい、帰ってくれ」
生死をさまよう事故なのに。
なぜ何も言ってこないんだ。
ーーそこまで黙り込むか。
セカンドハラスメント…。
邪な思いが頭を巡る。
主に性被害にあった際に出てくるワードだが。
「……」
彼らが退室した後、携帯をつないだ。
「ーー長嶺くん。君の県で起きた事なんだが。ひとつ融通をきかせてくれないか」
ーーえ? ああ、宇部の。知ってるよ。世話したことがある。
ーー君は超一流の営業だな。故郷の津々浦々把握している。
ーーははは、歩き回るのが趣味だからな。
色んな人と話をするのが大好きなんだ。で、何だ。
ーー実は……ーー
ーーうん、わかった。話してみよう……。
ーーたのんだよ。
カルテに記載されないなにか。
真実が知りたい。
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