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1話 会長にコーヒーを
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楽しい筈の休日なのにそれ通り越して月曜日が待ち遠しいとは何事?
このところの私はどうも変だ。楽な仕事にありつけたせいか職場に行くのが楽しくて仕方ない。
――もあるけど。
会長は今ごろ銚子かな。何時起きだったのかな? 釣れるのかな、マグロなんて。マジ持って帰ってきちゃったりしたらどうしよう?
とついついそればっかり。正社員生活はや3週目。どんどん私の中でのパーセンテージが高くなっていく。
それでぼーっとしてたのだろうか。メイクの最中、
「や、やだーー!」
ファンデの下地の小瓶を倒してしまった。慌てて直そうとしてももう遅い。今時プッシュ式でもない広口の瓶から中身が威勢よくドバーッとこぼれた。
「きゃーー。もったいなぁい」
結構高いんですけど、私にとっては。5000円くらい? それが殆ど流出してしまって、わずかに瓶の底に残る程度。かろうじてまだ数回は使えそうではあるけど、気分的に使いたくない……。
「よっしゃー、奮発するか、給料貰ったし」
私は田舎育ちのせいか殆ど肌トラブルのない人間だ。故にファンデーション類にもあんましこだわってなかった。けど、せっかくリッチ気分に浸れる職についたのだ、この際気前よくいっちゃえ! ついでにファンデーションも揃えよう。ついに手に入れますか、高級ライン12000円のヤツ。
そんなわけで100均を回るという当初の目的以外の用事を抱えて出かける羽目になった。
渋谷のデパートに着いてふと他のお店に目がとまる。
そこはお洒落な外資系のカウンター。ここのファンデーション類は雑誌という雑誌で絶賛されてる噂のシロモノだ。
それは知っていた。でも私はあんましこういう流行のモノに興味がない。というか、シンプルすぎるパッケがどうも好きではない。仕事帰りに伊勢〇で見かけていたけどいつも人が多いし手にとって見たことはなかった。
なのにー。
「ファンデーションをお探しですか?」
にこっと微笑むBAさんの肌があまりに綺麗だったからかもしれない。
「あ、はい」
つい、そう答えてしまった。
「おつけしましょうか? お時間よろしいですか?」
そこで頷けばあとはもうお決まりの手順だ……。オネエサンの手際のよいこと。
そして仕上がりの我が顔を見せられて。
「いかがですか?」
マジびっくり。
つや肌っていうの、コレ。素肌にもひとつベールかぶせたような。
これはライトの加減だけじゃない……。
「ありがとうございましたーー」
やだもー。いきなりベースメイク一式入った紙袋手にしてるじゃないの。
当初のと比べれば安く上がったわけだけど、こんな衝動買い、私にしてはすごく珍しいことだ。
何となく気分がよくなって、渋谷に出てきたついでに品川の例のデリカテッセンまで足を伸ばした。会長お好みのお店。こんな感じの料理作ればいいのかな? 作り方を想像しながらベーグルサンド等ぽつぽつ買いあさる。それから久しぶりの100均巡り。行ってみたがサプリの種類が増えていて見れば見るほど以前買ったものが思い出せない。……プシィさんおすすめのマカなんてないし。しかも殆ど200円だったりするし。迷った挙句『更年期』とでっかく書いてあるものにしてみる。何かこれが一番当り障りがない気がして。更年期って女の人だけのような気もするけど。まあいっか。会長にはあんましイライラしてほしくない……。
家に帰って一度メイクを落として改めてファンデを塗ってみる。これって噂どおり? しょぼい蛍光灯の下でもすごく綺麗に見える。『見て見てーー!』と友達に言いまくりたくなるような。つい他人の目を意識してしまうほどの仕上がりとでもいうか。そんなだからつい、妙な下心が沸いてくる。
―――これで会社に行ったら気付いてくれるかな?
会長……。
わかるわけないか。女の子同士ならしょっちゅうそんなこと言い合ってたものだけど。『アレお前ファンデ変えた?』なんてそんな細かい所に気付く男になんて今まで出会ったためしがない。ましてや『超鈍感』な会長にそれを期待するのは無理なお話……。何せ髪型でさえしばらく気付かなかったくらいだから。
て、何考えてるの、私。
だからそれが何?
そんな色めいてどうする。お仕事、お仕事……。
暇な日曜日。朝から快晴で会長はきっと海の上……。
本当に明日魚を持って帰ってきたりするのかなー? それで何か作れって? 手巻き寿司とか? それくらいしか浮かばない。会長は簡単そうに言ってたけど、それなりに用意が必要なのよ。あの部屋は何でも揃っているんだけど唯一冷蔵庫がないので材料は早朝か前日に揃えておかなきゃならない。
イマイチ目的がはっきりしないまま……近所の店で適当に野菜を買って来る。暇つぶしに携帯からブログを覗くと驚く事態になっていた。
「はあ? 何コレ」
『はじめまして』の嵐。いや嵐ってほどじゃないけど、短い書き込みが10件近く続いて。何故? よく見てみると昨日の書き込みで『TB(リンク)しました』というのがあり、辿っていくと「ええーー」と声あげるくらい大きなブログ。どうやらそこから流れてきたらしい方々が寂しいハズのマイブログを賑わしてくれていたのだ。
ひーー、リンクなんてしてくれなくていいのにっ。本当は嬉しいのだけど職が職なだけにちょっと困る。有名ブログの威力ってまぁー。こんなしょぼいブログに目をつけてくれるなんて信じられない話だ。
けど中には、
『薄皮シリーズの検索で来ました』
みたいな人もいる。そんな検索する人っているんだ……。ネットおそるべしっ。
『私はーーーの白いパンが好きです』
『ビスコはいちごがいいな~。100円ショップはまとめ売りなのでお得ですよね♪』
『マカもいいけどイチョウがおすすめですよ』
などなど。食べ物系のブログってこうなのだろうか? 何この盛り上がり。ビスコって駄菓子の部類じゃない? そういうの流行ってるの? かわいいといえばそうなんだけど、私は返信するかどうかかなり迷った。いや、迷いつつ……目は文字を追う。
『こんにちは。はじめまして。私は結婚する前秘書をしていたことがあるのですが、時々軽食をお出ししていました。もちろん殆ど買出しですが。narsさんはどんなタイプですか? リッチでかっこいいってつい気になってしまいます』
う~~ん。会長は……。どういう感じだろう。芸能人の例えが思い浮かばない。和風と言えば和風なんだけど。強いて言えば帝風? 変かしら。
『詳しくは言えませんがとっても素敵な方ですよ。どっちかというとゲーム系のお顔かもしれません』
すっきり端正と言いたいのだが。こういうところでゲームキャラが思い浮かぶなんて低俗な私。
『こんにちはー。mcrt24さんのとこから飛んできました。薄皮シリーズ私も大好きでしたよー。でも最近普通っぽくなってしまってちょっと残念。。。以前はパイ生地みたいな皮でホントに中身たっぷりでしたね』
はあ。そんなに知られてるの? このパンもどき。私は知らないので何とも返しにくい。
『パイ生地のパンですか? パイっぽいと言えば某ーーのデニッシュが浮かびますが、そういうのとは違うのかなあ?』
何でもないひとことにこんなに反応が返ってくるなんて。感心すらしてしまうじゃないの。元々は私が出したコメントじゃないけども。そういうのが半分以上だが、私ときたら慣れてないものだからいつの間にか真剣に読み込んでレスをつけていて。最後は大元の有名ブログの主mcrt24さんにTBのお礼をして。はたと気付いた時にはもう遅い、とんでもなく長い時間接続しっぱなしだった。
「うわーー! しまったぁ!」
と思わず頭を抱える。
だからー。給料貰ったっていうのに、この貧乏症はすぐにリッチモードに切り替わらないらしい。
やばい、やばい、やばい! これはマジ定額にしないと請求が恐いいーー。
このところの私はどうも変だ。楽な仕事にありつけたせいか職場に行くのが楽しくて仕方ない。
――もあるけど。
会長は今ごろ銚子かな。何時起きだったのかな? 釣れるのかな、マグロなんて。マジ持って帰ってきちゃったりしたらどうしよう?
とついついそればっかり。正社員生活はや3週目。どんどん私の中でのパーセンテージが高くなっていく。
それでぼーっとしてたのだろうか。メイクの最中、
「や、やだーー!」
ファンデの下地の小瓶を倒してしまった。慌てて直そうとしてももう遅い。今時プッシュ式でもない広口の瓶から中身が威勢よくドバーッとこぼれた。
「きゃーー。もったいなぁい」
結構高いんですけど、私にとっては。5000円くらい? それが殆ど流出してしまって、わずかに瓶の底に残る程度。かろうじてまだ数回は使えそうではあるけど、気分的に使いたくない……。
「よっしゃー、奮発するか、給料貰ったし」
私は田舎育ちのせいか殆ど肌トラブルのない人間だ。故にファンデーション類にもあんましこだわってなかった。けど、せっかくリッチ気分に浸れる職についたのだ、この際気前よくいっちゃえ! ついでにファンデーションも揃えよう。ついに手に入れますか、高級ライン12000円のヤツ。
そんなわけで100均を回るという当初の目的以外の用事を抱えて出かける羽目になった。
渋谷のデパートに着いてふと他のお店に目がとまる。
そこはお洒落な外資系のカウンター。ここのファンデーション類は雑誌という雑誌で絶賛されてる噂のシロモノだ。
それは知っていた。でも私はあんましこういう流行のモノに興味がない。というか、シンプルすぎるパッケがどうも好きではない。仕事帰りに伊勢〇で見かけていたけどいつも人が多いし手にとって見たことはなかった。
なのにー。
「ファンデーションをお探しですか?」
にこっと微笑むBAさんの肌があまりに綺麗だったからかもしれない。
「あ、はい」
つい、そう答えてしまった。
「おつけしましょうか? お時間よろしいですか?」
そこで頷けばあとはもうお決まりの手順だ……。オネエサンの手際のよいこと。
そして仕上がりの我が顔を見せられて。
「いかがですか?」
マジびっくり。
つや肌っていうの、コレ。素肌にもひとつベールかぶせたような。
これはライトの加減だけじゃない……。
「ありがとうございましたーー」
やだもー。いきなりベースメイク一式入った紙袋手にしてるじゃないの。
当初のと比べれば安く上がったわけだけど、こんな衝動買い、私にしてはすごく珍しいことだ。
何となく気分がよくなって、渋谷に出てきたついでに品川の例のデリカテッセンまで足を伸ばした。会長お好みのお店。こんな感じの料理作ればいいのかな? 作り方を想像しながらベーグルサンド等ぽつぽつ買いあさる。それから久しぶりの100均巡り。行ってみたがサプリの種類が増えていて見れば見るほど以前買ったものが思い出せない。……プシィさんおすすめのマカなんてないし。しかも殆ど200円だったりするし。迷った挙句『更年期』とでっかく書いてあるものにしてみる。何かこれが一番当り障りがない気がして。更年期って女の人だけのような気もするけど。まあいっか。会長にはあんましイライラしてほしくない……。
家に帰って一度メイクを落として改めてファンデを塗ってみる。これって噂どおり? しょぼい蛍光灯の下でもすごく綺麗に見える。『見て見てーー!』と友達に言いまくりたくなるような。つい他人の目を意識してしまうほどの仕上がりとでもいうか。そんなだからつい、妙な下心が沸いてくる。
―――これで会社に行ったら気付いてくれるかな?
会長……。
わかるわけないか。女の子同士ならしょっちゅうそんなこと言い合ってたものだけど。『アレお前ファンデ変えた?』なんてそんな細かい所に気付く男になんて今まで出会ったためしがない。ましてや『超鈍感』な会長にそれを期待するのは無理なお話……。何せ髪型でさえしばらく気付かなかったくらいだから。
て、何考えてるの、私。
だからそれが何?
そんな色めいてどうする。お仕事、お仕事……。
暇な日曜日。朝から快晴で会長はきっと海の上……。
本当に明日魚を持って帰ってきたりするのかなー? それで何か作れって? 手巻き寿司とか? それくらいしか浮かばない。会長は簡単そうに言ってたけど、それなりに用意が必要なのよ。あの部屋は何でも揃っているんだけど唯一冷蔵庫がないので材料は早朝か前日に揃えておかなきゃならない。
イマイチ目的がはっきりしないまま……近所の店で適当に野菜を買って来る。暇つぶしに携帯からブログを覗くと驚く事態になっていた。
「はあ? 何コレ」
『はじめまして』の嵐。いや嵐ってほどじゃないけど、短い書き込みが10件近く続いて。何故? よく見てみると昨日の書き込みで『TB(リンク)しました』というのがあり、辿っていくと「ええーー」と声あげるくらい大きなブログ。どうやらそこから流れてきたらしい方々が寂しいハズのマイブログを賑わしてくれていたのだ。
ひーー、リンクなんてしてくれなくていいのにっ。本当は嬉しいのだけど職が職なだけにちょっと困る。有名ブログの威力ってまぁー。こんなしょぼいブログに目をつけてくれるなんて信じられない話だ。
けど中には、
『薄皮シリーズの検索で来ました』
みたいな人もいる。そんな検索する人っているんだ……。ネットおそるべしっ。
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『こんにちは。はじめまして。私は結婚する前秘書をしていたことがあるのですが、時々軽食をお出ししていました。もちろん殆ど買出しですが。narsさんはどんなタイプですか? リッチでかっこいいってつい気になってしまいます』
う~~ん。会長は……。どういう感じだろう。芸能人の例えが思い浮かばない。和風と言えば和風なんだけど。強いて言えば帝風? 変かしら。
『詳しくは言えませんがとっても素敵な方ですよ。どっちかというとゲーム系のお顔かもしれません』
すっきり端正と言いたいのだが。こういうところでゲームキャラが思い浮かぶなんて低俗な私。
『こんにちはー。mcrt24さんのとこから飛んできました。薄皮シリーズ私も大好きでしたよー。でも最近普通っぽくなってしまってちょっと残念。。。以前はパイ生地みたいな皮でホントに中身たっぷりでしたね』
はあ。そんなに知られてるの? このパンもどき。私は知らないので何とも返しにくい。
『パイ生地のパンですか? パイっぽいと言えば某ーーのデニッシュが浮かびますが、そういうのとは違うのかなあ?』
何でもないひとことにこんなに反応が返ってくるなんて。感心すらしてしまうじゃないの。元々は私が出したコメントじゃないけども。そういうのが半分以上だが、私ときたら慣れてないものだからいつの間にか真剣に読み込んでレスをつけていて。最後は大元の有名ブログの主mcrt24さんにTBのお礼をして。はたと気付いた時にはもう遅い、とんでもなく長い時間接続しっぱなしだった。
「うわーー! しまったぁ!」
と思わず頭を抱える。
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