120 / 153
7話 シドニーの休日
4
しおりを挟む
「いらっしゃい、どうぞこちらへ」美しい海を見下ろすノースシドニーの白い平屋建ての広い別荘に案内されるなり、会長は顔をしかめた。
「エリザベス‼君がいると知っていたら来なかった」
「まあ、失礼ね」
いきなりいがみ合う。彼らは古い友人であるが犬猿の仲。
「おいおい、どこに行くにも夫婦同伴が基本なんだよ。君は知らないかもしれないが」
レオの嫌味が響いた。驚きつつ、察する御堂と柚木。「すごい豪邸…」
陽気な日差しが眩しいサンシャインテラス。手入れされた庭木の間の長いソファに座る世界的プロデューサーと握手を交わす。ゴードン…が彼の口から語られた。
「私はねえ、特撮が大好きなんだよ。特に懐かしめのキャラクターがね。ゴードンのフィギュアをありがとう、これを見てひらめいたね」
彼は独自にゴードンの原作漫画、原作者について調べ、彼が宇部の出身であること。そこを中心に名所を探って、まずコンテを1本仕上げたという。豊かなひげを蓄え、眼鏡の奥の目がやさしい。
「発想がねえ…子供が金属のガラクタを差し出して、これを燃料にしてやっつけてくれ、なんて、日本式の人情を感じたね」
これは…本気か? 会長は信じられなかった。
「臼杵の石仏なんてよいねえ、哀愁漂う」彼は日本人でも知らない者が多そうな各地の名所をロケ地にしてはどうかといいだした。
「面白そうじゃないの」エリザベスが言う。
「今、マークスの映画を撮ってるんだよ。そっちが終わればさっそく取り掛かりたい」
「あら、マークス? またあなたが撮ってるの」
「そうだよ、公開はまだ先だがね。」
「成明が関わったビルだね」
そう言われて会長の顔色は沈んだ。
「もっと嬉しそうな顔をしなさいよ、あなたにとっても誇りじゃない」
それについては何度目かというほど言及され、会長はうんざりだった。
「評判は次のビジネスチャンスにつながるわ。下手すれば決裂してたかもしれないでしょ」
それはそうだが、別に自分が設計したわけでも金を出したわけでもない。
「前作はあのビルの予想図をもとにして話を書いたんだよ」
「舞台にはぴったりね」
巨匠はラブロマンスからパニック映画、アクションまで幅広い作風で知られていた。
「す、すご。」
「えーと、マイケル・ブラウン監督ですよね…。」
柚木と御堂は、ただただびっくりだった。「嘘…何か喋ってる」目を輝かせ、「ゴードン…」「マジ?」柚木は英語を習得してよかったと感涙するほどだった。
そしてウエルカムランチと進む。出された食事を手に取り、口に運ぶ。立食ビュッフェのようなカジュアルランチだ。ピンチョスやトマトのグラッセ…小皿に盛り付けて各々好きなものを選んでオーストラリアワインとともに頂く。
「ん?」御堂は何やら影が伸びているのに気づいた。
「きゃああああ」か、かんがるーーー!
カンガルーが庭に忍び込み、御堂の皿に手を伸ばそうとしていた。「あぶない」会長は御堂をかばいカンガルーの前に出た。
「成明、後ろに回れ」
大きな尾っぽを振り回されると危険だ、とっさに庭の植え込みのオリーブの木から枝を折り、追い払うと逃げて行った。
「大丈夫か、御堂くん」
「あの隣人、またよ。。」とエリザベスは困った顔を向けた。
「おおい、ハニー♡」陽気そうな男がカンガルーに近づく。
あいつまた…。レオも顔をしかめ、「おい、いいかげんにしろ」
「よしよし、帰ろうねえ」男はさして謝りもせず門の外へ出ていく。
「檻に入れとけ!」叫ぶも聞いてない。
「御堂さん、怪我は…」柚木に御堂はニヤッとグーサインを返した。「会長に抱きしめられちゃった。ラッキー。」
「すまんな、オリーブをダメにした。竹刀があればな」成明は隣人が去っていった方向を見ていた。
「なるほど」
「ライトセーバーでもいいぞ」
「そうだな、早速用意しておこう」
「カンガルーなんかにやられたんじゃ、一生の恥だ」
「はっは、そうだな。たまに新聞に出てるな」
次の日、成明はレオが案内すると言ってくれたシドニーのモール巡りを断り、別荘にとどまることにした。巨匠は早朝釣りに出かけると言ってシドニー沖の島へと飛び立った。
広い庭のプール前のガーデンソファに座り新聞を読んでると、
「あら、行かないの? ねえ、ちょっとつきあってくれない?」エリザベスに、隣人との話し合いについてきてくれと言われ、「おい!」
「来なさいよ。あなたの出番よ」強制的に連れて行かれた。
レオナルドと御堂らが戻ってきたとき、エリザベスと会長も帰宅した。
成明は何やら手にし、「エミューの肉をもらってきたぞ…」そろそろとビニールの中に包まれたそれを差し出した。
どうやら隣人は、カンガルーはペットとして可愛がりつつ、エミュー他の動物は食肉としているようだ。
「エリザベス‼君がいると知っていたら来なかった」
「まあ、失礼ね」
いきなりいがみ合う。彼らは古い友人であるが犬猿の仲。
「おいおい、どこに行くにも夫婦同伴が基本なんだよ。君は知らないかもしれないが」
レオの嫌味が響いた。驚きつつ、察する御堂と柚木。「すごい豪邸…」
陽気な日差しが眩しいサンシャインテラス。手入れされた庭木の間の長いソファに座る世界的プロデューサーと握手を交わす。ゴードン…が彼の口から語られた。
「私はねえ、特撮が大好きなんだよ。特に懐かしめのキャラクターがね。ゴードンのフィギュアをありがとう、これを見てひらめいたね」
彼は独自にゴードンの原作漫画、原作者について調べ、彼が宇部の出身であること。そこを中心に名所を探って、まずコンテを1本仕上げたという。豊かなひげを蓄え、眼鏡の奥の目がやさしい。
「発想がねえ…子供が金属のガラクタを差し出して、これを燃料にしてやっつけてくれ、なんて、日本式の人情を感じたね」
これは…本気か? 会長は信じられなかった。
「臼杵の石仏なんてよいねえ、哀愁漂う」彼は日本人でも知らない者が多そうな各地の名所をロケ地にしてはどうかといいだした。
「面白そうじゃないの」エリザベスが言う。
「今、マークスの映画を撮ってるんだよ。そっちが終わればさっそく取り掛かりたい」
「あら、マークス? またあなたが撮ってるの」
「そうだよ、公開はまだ先だがね。」
「成明が関わったビルだね」
そう言われて会長の顔色は沈んだ。
「もっと嬉しそうな顔をしなさいよ、あなたにとっても誇りじゃない」
それについては何度目かというほど言及され、会長はうんざりだった。
「評判は次のビジネスチャンスにつながるわ。下手すれば決裂してたかもしれないでしょ」
それはそうだが、別に自分が設計したわけでも金を出したわけでもない。
「前作はあのビルの予想図をもとにして話を書いたんだよ」
「舞台にはぴったりね」
巨匠はラブロマンスからパニック映画、アクションまで幅広い作風で知られていた。
「す、すご。」
「えーと、マイケル・ブラウン監督ですよね…。」
柚木と御堂は、ただただびっくりだった。「嘘…何か喋ってる」目を輝かせ、「ゴードン…」「マジ?」柚木は英語を習得してよかったと感涙するほどだった。
そしてウエルカムランチと進む。出された食事を手に取り、口に運ぶ。立食ビュッフェのようなカジュアルランチだ。ピンチョスやトマトのグラッセ…小皿に盛り付けて各々好きなものを選んでオーストラリアワインとともに頂く。
「ん?」御堂は何やら影が伸びているのに気づいた。
「きゃああああ」か、かんがるーーー!
カンガルーが庭に忍び込み、御堂の皿に手を伸ばそうとしていた。「あぶない」会長は御堂をかばいカンガルーの前に出た。
「成明、後ろに回れ」
大きな尾っぽを振り回されると危険だ、とっさに庭の植え込みのオリーブの木から枝を折り、追い払うと逃げて行った。
「大丈夫か、御堂くん」
「あの隣人、またよ。。」とエリザベスは困った顔を向けた。
「おおい、ハニー♡」陽気そうな男がカンガルーに近づく。
あいつまた…。レオも顔をしかめ、「おい、いいかげんにしろ」
「よしよし、帰ろうねえ」男はさして謝りもせず門の外へ出ていく。
「檻に入れとけ!」叫ぶも聞いてない。
「御堂さん、怪我は…」柚木に御堂はニヤッとグーサインを返した。「会長に抱きしめられちゃった。ラッキー。」
「すまんな、オリーブをダメにした。竹刀があればな」成明は隣人が去っていった方向を見ていた。
「なるほど」
「ライトセーバーでもいいぞ」
「そうだな、早速用意しておこう」
「カンガルーなんかにやられたんじゃ、一生の恥だ」
「はっは、そうだな。たまに新聞に出てるな」
次の日、成明はレオが案内すると言ってくれたシドニーのモール巡りを断り、別荘にとどまることにした。巨匠は早朝釣りに出かけると言ってシドニー沖の島へと飛び立った。
広い庭のプール前のガーデンソファに座り新聞を読んでると、
「あら、行かないの? ねえ、ちょっとつきあってくれない?」エリザベスに、隣人との話し合いについてきてくれと言われ、「おい!」
「来なさいよ。あなたの出番よ」強制的に連れて行かれた。
レオナルドと御堂らが戻ってきたとき、エリザベスと会長も帰宅した。
成明は何やら手にし、「エミューの肉をもらってきたぞ…」そろそろとビニールの中に包まれたそれを差し出した。
どうやら隣人は、カンガルーはペットとして可愛がりつつ、エミュー他の動物は食肉としているようだ。
8
あなたにおすすめの小説
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる