会長にコーヒーを☕

シナモン

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7話 シドニーの休日

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「いらっしゃい、どうぞこちらへ」美しい海を見下ろすノースシドニーの白い平屋建ての広い別荘に案内されるなり、会長は顔をしかめた。

「エリザベス‼君がいると知っていたら来なかった」

「まあ、失礼ね」

 いきなりいがみ合う。彼らは古い友人であるが犬猿の仲。

「おいおい、どこに行くにも夫婦同伴が基本なんだよ。君は知らないかもしれないが」

 レオの嫌味が響いた。驚きつつ、察する御堂と柚木。「すごい豪邸…」


 陽気な日差しが眩しいサンシャインテラス。手入れされた庭木の間の長いソファに座る世界的プロデューサーと握手を交わす。ゴードン…が彼の口から語られた。


「私はねえ、特撮が大好きなんだよ。特に懐かしめのキャラクターがね。ゴードンのフィギュアをありがとう、これを見てひらめいたね」

 彼は独自にゴードンの原作漫画、原作者について調べ、彼が宇部の出身であること。そこを中心に名所を探って、まずコンテを1本仕上げたという。豊かなひげを蓄え、眼鏡の奥の目がやさしい。

「発想がねえ…子供が金属のガラクタを差し出して、これを燃料にしてやっつけてくれ、なんて、日本式の人情を感じたね」

 これは…本気か? 会長は信じられなかった。

「臼杵の石仏なんてよいねえ、哀愁漂う」彼は日本人でも知らない者が多そうな各地の名所をロケ地にしてはどうかといいだした。
「面白そうじゃないの」エリザベスが言う。
「今、マークスの映画を撮ってるんだよ。そっちが終わればさっそく取り掛かりたい」
「あら、マークス? またあなたが撮ってるの」
「そうだよ、公開はまだ先だがね。」
「成明が関わったビルだね」
 そう言われて会長の顔色は沈んだ。
「もっと嬉しそうな顔をしなさいよ、あなたにとっても誇りじゃない」
 それについては何度目かというほど言及され、会長はうんざりだった。
「評判は次のビジネスチャンスにつながるわ。下手すれば決裂してたかもしれないでしょ」
 それはそうだが、別に自分が設計したわけでも金を出したわけでもない。
「前作はあのビルの予想図をもとにして話を書いたんだよ」
「舞台にはぴったりね」
 巨匠はラブロマンスからパニック映画、アクションまで幅広い作風で知られていた。

「す、すご。」
「えーと、マイケル・ブラウン監督ですよね…。」

 柚木と御堂は、ただただびっくりだった。「嘘…何か喋ってる」目を輝かせ、「ゴードン…」「マジ?」柚木は英語を習得してよかったと感涙するほどだった。

 そしてウエルカムランチと進む。出された食事を手に取り、口に運ぶ。立食ビュッフェのようなカジュアルランチだ。ピンチョスやトマトのグラッセ…小皿に盛り付けて各々好きなものを選んでオーストラリアワインとともに頂く。

「ん?」御堂は何やら影が伸びているのに気づいた。

「きゃああああ」か、かんがるーーー!


 カンガルーが庭に忍び込み、御堂の皿に手を伸ばそうとしていた。「あぶない」会長は御堂をかばいカンガルーの前に出た。

「成明、後ろに回れ」

 大きな尾っぽを振り回されると危険だ、とっさに庭の植え込みのオリーブの木から枝を折り、追い払うと逃げて行った。

「大丈夫か、御堂くん」

「あの隣人、またよ。。」とエリザベスは困った顔を向けた。

「おおい、ハニー♡」陽気そうな男がカンガルーに近づく。

 あいつまた…。レオも顔をしかめ、「おい、いいかげんにしろ」

「よしよし、帰ろうねえ」男はさして謝りもせず門の外へ出ていく。

「檻に入れとけ!」叫ぶも聞いてない。

「御堂さん、怪我は…」柚木に御堂はニヤッとグーサインを返した。「会長に抱きしめられちゃった。ラッキー。」

「すまんな、オリーブをダメにした。竹刀があればな」成明は隣人が去っていった方向を見ていた。

「なるほど」

「ライトセーバーでもいいぞ」

「そうだな、早速用意しておこう」

「カンガルーなんかにやられたんじゃ、一生の恥だ」

「はっは、そうだな。たまに新聞に出てるな」



 次の日、成明はレオが案内すると言ってくれたシドニーのモール巡りを断り、別荘にとどまることにした。巨匠は早朝釣りに出かけると言ってシドニー沖の島へと飛び立った。

 広い庭のプール前のガーデンソファに座り新聞を読んでると、

「あら、行かないの? ねえ、ちょっとつきあってくれない?」エリザベスに、隣人との話し合いについてきてくれと言われ、「おい!」

「来なさいよ。あなたの出番よ」強制的に連れて行かれた。




 レオナルドと御堂らが戻ってきたとき、エリザベスと会長も帰宅した。


 成明は何やら手にし、「エミューの肉をもらってきたぞ…」そろそろとビニールの中に包まれたそれを差し出した。

 どうやら隣人は、カンガルーはペットとして可愛がりつつ、エミュー他の動物は食肉としているようだ。


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