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10話 誰にも言えない
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「そろそろ警察の捜査が始まるな。」
彼は外の海を見ながらそう言った。
「君を明け渡すつもりでいたんだが、どうすればいい?」
香苗はハッとした。…そもそもどこでいつさらわれたのか。記憶をたどる。
「―――君、訳アリか?」
彼は香苗の首の大きな注射痕に気づき、疑問に思ったのだった。だが直接聞きだすことはせず、遠回しに探りを入れる。
香苗は答えられない。
ここで、すぐにでも戻った方がよかったのかもしれない。会長や高広が待っている。両親は、ほれ見たことか、と半ばあきれつつ迎えてくれるだろう。でも、香苗には不安の種があった。
(もしも会長とマヤさんがよりを戻していたら?)
会長の事情を知らない香苗には不安だった。当然、そんな二人は見たくない。
それに、再び取り調べを受けるだろう。
はっきりしない記憶の奥で、誘拐された後、何をされたか自覚がない。
それはできれば闇の中に捨ててしまいたい。
「何をしていたか知らないが…うなされてたしな。かいちょ、会長って…」
(ええっ、何を言ってるんだ、私…よっぽど頭が会長でいっぱいなんだな。)
「君、それ系の組織の幹部にかわいがられていたの?」
「ち、ちがいます」
T商事会長室専…なんてとても言えない。香苗はうつむいた。
「匿ってあげようか?」
「え?」
「ここにいればとりあえず警察が入ってくることはない」
警察…。できればこれ以上関わりたくない。
香苗は彼の申し出を受け入れた。
「私、何かしましょうか。」
香苗は少しでもお手伝いをしようと言い出す。「ああ、そういうのいいよ、全部ロボットがやるから。」
――そう。
豪勢なキッチンは人が立つことはなく、冷蔵庫やセラーにワインや飲み物はそろっていた。身につけるものは既に収納されており、食料はドローンで毎日届く。
洗濯も掃除もオールスマート化だと言われて、ただいるだけ、の状態だ。「でも」
「ふ、ここからは見えないが、警察が入ってるらしいな。警察に公安に、科学捜査班もいるらしい。…怪しい島だよね」彼は笑いながら言った。だけど香苗ははっとした。科学捜査・・・不破了の顔が浮かぶ。苦い記憶がよみがえる。
高広に始まり、不破了…このらしからぬ流れが続いた。神戸では銃声まで聞こえて怖かった。
「何かあるんですか、島で」
「ん・・・色々言われててね。人捨て島だの炎上島だの、ひどいのになると酒池肉林だなんて、冗談じゃないよな。それで警察に言ってみたんだが、実害がないと動いてくれないんだな、これが。」と彼は苦笑した。
香苗は聞かないことにした。こちらも聞かれたくないからだ。一番知りたいのは会長とマヤがどうなったかということだが、知りようがない、スマホもなくここから出れない。あのマンション以上に幽閉されている。いや、匿われていることになっている。
ただ窓の外を見て過ごす時間が流れた。部屋は完全に個室化してるわけではなく、変わった形のソファやベッドらしきものがコーナーにあり、作り付けの小物の棚で空間が仕切られていた。それがものすごくお金がかかっていそうで、景色もだが空間自体すごい。バスルームも広くて、それがいくつもあるようだった。
気になるのは洗濯。着替えなんてない。
「俺の服しかないからな。気にしないならそのままでいいんじゃない。洗ってもすぐに乾くよ。」
その言葉に従い服をぶち込んでwash&dryボタンを押す。コースを選べばそのままきれいにアイロンがけした状態で仕上がるらしい。ドラム式でもなく、冷蔵庫みたいな壁付けの何かに入れるだけだった。
「---がAIの予想曲線とずれておりまして、いかがいたしましょうか。」
「ああ、・・・ならAIの方、無視して。調べて調整しておくわ」
「それと不正アクセスと思われるログがあり、それが湊斗様のIDのようなのですが」
「湊斗が?おかしいな、今出張じゃなかったか」
「ええ。秘書に聞きますとそのようで」
「わかった、俺から探ってみるわ」
「はい。申し訳ございません」
彼はリモートで仕事している。
どこかのお偉いさんのようだ。
服はいつもリラックスモード。シャツにリラックスパンツ、が基本で少しだけ前がはだけている。どこにも出かける様子はない。一体、いつまでここにいるのだろうか。
彼は外の海を見ながらそう言った。
「君を明け渡すつもりでいたんだが、どうすればいい?」
香苗はハッとした。…そもそもどこでいつさらわれたのか。記憶をたどる。
「―――君、訳アリか?」
彼は香苗の首の大きな注射痕に気づき、疑問に思ったのだった。だが直接聞きだすことはせず、遠回しに探りを入れる。
香苗は答えられない。
ここで、すぐにでも戻った方がよかったのかもしれない。会長や高広が待っている。両親は、ほれ見たことか、と半ばあきれつつ迎えてくれるだろう。でも、香苗には不安の種があった。
(もしも会長とマヤさんがよりを戻していたら?)
会長の事情を知らない香苗には不安だった。当然、そんな二人は見たくない。
それに、再び取り調べを受けるだろう。
はっきりしない記憶の奥で、誘拐された後、何をされたか自覚がない。
それはできれば闇の中に捨ててしまいたい。
「何をしていたか知らないが…うなされてたしな。かいちょ、会長って…」
(ええっ、何を言ってるんだ、私…よっぽど頭が会長でいっぱいなんだな。)
「君、それ系の組織の幹部にかわいがられていたの?」
「ち、ちがいます」
T商事会長室専…なんてとても言えない。香苗はうつむいた。
「匿ってあげようか?」
「え?」
「ここにいればとりあえず警察が入ってくることはない」
警察…。できればこれ以上関わりたくない。
香苗は彼の申し出を受け入れた。
「私、何かしましょうか。」
香苗は少しでもお手伝いをしようと言い出す。「ああ、そういうのいいよ、全部ロボットがやるから。」
――そう。
豪勢なキッチンは人が立つことはなく、冷蔵庫やセラーにワインや飲み物はそろっていた。身につけるものは既に収納されており、食料はドローンで毎日届く。
洗濯も掃除もオールスマート化だと言われて、ただいるだけ、の状態だ。「でも」
「ふ、ここからは見えないが、警察が入ってるらしいな。警察に公安に、科学捜査班もいるらしい。…怪しい島だよね」彼は笑いながら言った。だけど香苗ははっとした。科学捜査・・・不破了の顔が浮かぶ。苦い記憶がよみがえる。
高広に始まり、不破了…このらしからぬ流れが続いた。神戸では銃声まで聞こえて怖かった。
「何かあるんですか、島で」
「ん・・・色々言われててね。人捨て島だの炎上島だの、ひどいのになると酒池肉林だなんて、冗談じゃないよな。それで警察に言ってみたんだが、実害がないと動いてくれないんだな、これが。」と彼は苦笑した。
香苗は聞かないことにした。こちらも聞かれたくないからだ。一番知りたいのは会長とマヤがどうなったかということだが、知りようがない、スマホもなくここから出れない。あのマンション以上に幽閉されている。いや、匿われていることになっている。
ただ窓の外を見て過ごす時間が流れた。部屋は完全に個室化してるわけではなく、変わった形のソファやベッドらしきものがコーナーにあり、作り付けの小物の棚で空間が仕切られていた。それがものすごくお金がかかっていそうで、景色もだが空間自体すごい。バスルームも広くて、それがいくつもあるようだった。
気になるのは洗濯。着替えなんてない。
「俺の服しかないからな。気にしないならそのままでいいんじゃない。洗ってもすぐに乾くよ。」
その言葉に従い服をぶち込んでwash&dryボタンを押す。コースを選べばそのままきれいにアイロンがけした状態で仕上がるらしい。ドラム式でもなく、冷蔵庫みたいな壁付けの何かに入れるだけだった。
「---がAIの予想曲線とずれておりまして、いかがいたしましょうか。」
「ああ、・・・ならAIの方、無視して。調べて調整しておくわ」
「それと不正アクセスと思われるログがあり、それが湊斗様のIDのようなのですが」
「湊斗が?おかしいな、今出張じゃなかったか」
「ええ。秘書に聞きますとそのようで」
「わかった、俺から探ってみるわ」
「はい。申し訳ございません」
彼はリモートで仕事している。
どこかのお偉いさんのようだ。
服はいつもリラックスモード。シャツにリラックスパンツ、が基本で少しだけ前がはだけている。どこにも出かける様子はない。一体、いつまでここにいるのだろうか。
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