会長にコーヒーを☕

シナモン

文字の大きさ
141 / 153
9話 残り香

15

しおりを挟む
 高広は羽田発始発便で神戸へ向かった。ほぼ定刻に神戸市沖合の人工島にある空港に降り立つと、待ち人が寄ってきた。

「何だよ、こんな朝っぱらから」

「いつもスマホ切れてんじゃん。つながるうちに会っておかないと」

「急ぎか?」

「なあ、警察の中に入れねえ?」

「いきなり?」警察じゃないんだが、知っててわざとそういう言い方をしている。省庁は違えどデータは共用してる。

「人探してるんだよ」

 彼らは傍目によく似ている。高広にとっては実の兄よりもそうかもしれない。

「…神戸に来たらしいんだけど、東京に戻って行方が分からなくなった。届けは出してるんだが、もしかしてお前、知らない?」


「市川香苗って言うんだけど」


 その名前が出たとき、不破了は後ろを向いていてよかったと思った。

 こいつ…。あの女と知り合いだったのか。忘れもしねえわ、あの変な女。

 駅に送ったはずが、後日、行方不明届が出てると回ってきた。

 田中美影が、『不破さん、この人…』と顔写真を持ってきた。

『あれからどうされたんですか、ちゃんと帰られたんですよね? 松江でしたっけ』

 何だ、その言い方。俺はちゃんと送り届けたぞ?

『田舎へ帰りたくない』とか言い出すから、新大阪まで連れて行った。

 俺はちゃんと送りましたけど?
 チケットも購入して品川と東京都内だったけど?
 何にもやましいことはしてませんよ。

 …一瞬危うかったが、あれは絶対秘密だ。

「知らね?なんか聞くところによるとやべえ組織に連れて行かれたらしいんだ。」高広は続ける。兄の言葉を分析するとそうなる。

「……不明届か。やばいって単独の誘拐犯じゃないってことか」

「そうだよ、なんだか知らねーけど」

 …そうなのか? 情緒不安定の変な女だったが。不破は届け出の話を聞いて気になっていた。…そういえばIDがどうとか言ってたな…。


 こいつに貸したな、たしか。俺もよくやるよな。もうやめなくては。(実は高広だけではなく、何人かにパスポートを含む身分証明の類を貸したことがあった。)

 不破は自分が香苗の調書を取ったことは隠し、知ってる範囲のことを伝えた。

 闇組織の人さらいに関して全国の作業所や施設を捜査中だという。

 香苗を知るも何も調書を取ったのは自分だ。
 不破了は結局ほぼ無害と結論出された香水の調書を香苗の希望もあり破棄したのだった。それは科捜研にも伝えた。

「島流し、とか言うらしいんだけど、知ってる?」

 またまた答えにくい問いだ。

「複数あるんだよ、そういうの、西だと瀬戸内とか紀伊半島とか。東だと千葉だな。」

 少々複雑で、国の介入でしか解決できないので、今しばらく待てと伝える。

「ところでお前、なんて言うんだ、本名」

 高広に訊ねた。偽名で通していた高広はついに本名を伝えた。スマホの画面を見せる。送受信先氏名が入れ替わる。

「へー、兄貴の彼女ねえ」そりゃ血相変えて始発で来るよな。…にしてもあの女が彼女…ピンとこねーな。

 変な女。オタクでもなく、男勝りでもなく、身なりはきちんとして、黙々と手際よく掃除してたところを見るときちんと躾けられているのだろう。だが…全く艶めいたところがない。

「お前、金に余裕あるなら衛星会社に頼んでみたらどうだ。○○あたり。面白いもんが見れるかもよ」

「見れねーだろ、モザイクかかってるじゃん。その前にどんな場所かわからねーのに」

「それが見れるんだなー。珍しく本庁がやる気になってるらしい。」

「国家権力、なめんなよ?」
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...