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9話 残り香
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高広は羽田発始発便で神戸へ向かった。ほぼ定刻に神戸市沖合の人工島にある空港に降り立つと、待ち人が寄ってきた。
「何だよ、こんな朝っぱらから」
「いつもスマホ切れてんじゃん。つながるうちに会っておかないと」
「急ぎか?」
「なあ、警察の中に入れねえ?」
「いきなり?」警察じゃないんだが、知っててわざとそういう言い方をしている。省庁は違えどデータは共用してる。
「人探してるんだよ」
彼らは傍目によく似ている。高広にとっては実の兄よりもそうかもしれない。
「…神戸に来たらしいんだけど、東京に戻って行方が分からなくなった。届けは出してるんだが、もしかしてお前、知らない?」
「市川香苗って言うんだけど」
その名前が出たとき、不破了は後ろを向いていてよかったと思った。
こいつ…。あの女と知り合いだったのか。忘れもしねえわ、あの変な女。
駅に送ったはずが、後日、行方不明届が出てると回ってきた。
田中美影が、『不破さん、この人…』と顔写真を持ってきた。
『あれからどうされたんですか、ちゃんと帰られたんですよね? 松江でしたっけ』
何だ、その言い方。俺はちゃんと送り届けたぞ?
『田舎へ帰りたくない』とか言い出すから、新大阪まで連れて行った。
俺はちゃんと送りましたけど?
チケットも購入して品川と東京都内だったけど?
何にもやましいことはしてませんよ。
…一瞬危うかったが、あれは絶対秘密だ。
「知らね?なんか聞くところによるとやべえ組織に連れて行かれたらしいんだ。」高広は続ける。兄の言葉を分析するとそうなる。
「……不明届か。やばいって単独の誘拐犯じゃないってことか」
「そうだよ、なんだか知らねーけど」
…そうなのか? 情緒不安定の変な女だったが。不破は届け出の話を聞いて気になっていた。…そういえばIDがどうとか言ってたな…。
こいつに貸したな、たしか。俺もよくやるよな。もうやめなくては。(実は高広だけではなく、何人かにパスポートを含む身分証明の類を貸したことがあった。)
不破は自分が香苗の調書を取ったことは隠し、知ってる範囲のことを伝えた。
闇組織の人さらいに関して全国の作業所や施設を捜査中だという。
香苗を知るも何も調書を取ったのは自分だ。
不破了は結局ほぼ無害と結論出された香水の調書を香苗の希望もあり破棄したのだった。それは科捜研にも伝えた。
「島流し、とか言うらしいんだけど、知ってる?」
またまた答えにくい問いだ。
「複数あるんだよ、そういうの、西だと瀬戸内とか紀伊半島とか。東だと千葉だな。」
少々複雑で、国の介入でしか解決できないので、今しばらく待てと伝える。
「ところでお前、なんて言うんだ、本名」
高広に訊ねた。偽名で通していた高広はついに本名を伝えた。スマホの画面を見せる。送受信先氏名が入れ替わる。
「へー、兄貴の彼女ねえ」そりゃ血相変えて始発で来るよな。…にしてもあの女が彼女…ピンとこねーな。
変な女。オタクでもなく、男勝りでもなく、身なりはきちんとして、黙々と手際よく掃除してたところを見るときちんと躾けられているのだろう。だが…全く艶めいたところがない。
「お前、金に余裕あるなら衛星会社に頼んでみたらどうだ。○○あたり。面白いもんが見れるかもよ」
「見れねーだろ、モザイクかかってるじゃん。その前にどんな場所かわからねーのに」
「それが見れるんだなー。珍しく本庁がやる気になってるらしい。」
「国家権力、なめんなよ?」
「何だよ、こんな朝っぱらから」
「いつもスマホ切れてんじゃん。つながるうちに会っておかないと」
「急ぎか?」
「なあ、警察の中に入れねえ?」
「いきなり?」警察じゃないんだが、知っててわざとそういう言い方をしている。省庁は違えどデータは共用してる。
「人探してるんだよ」
彼らは傍目によく似ている。高広にとっては実の兄よりもそうかもしれない。
「…神戸に来たらしいんだけど、東京に戻って行方が分からなくなった。届けは出してるんだが、もしかしてお前、知らない?」
「市川香苗って言うんだけど」
その名前が出たとき、不破了は後ろを向いていてよかったと思った。
こいつ…。あの女と知り合いだったのか。忘れもしねえわ、あの変な女。
駅に送ったはずが、後日、行方不明届が出てると回ってきた。
田中美影が、『不破さん、この人…』と顔写真を持ってきた。
『あれからどうされたんですか、ちゃんと帰られたんですよね? 松江でしたっけ』
何だ、その言い方。俺はちゃんと送り届けたぞ?
『田舎へ帰りたくない』とか言い出すから、新大阪まで連れて行った。
俺はちゃんと送りましたけど?
チケットも購入して品川と東京都内だったけど?
何にもやましいことはしてませんよ。
…一瞬危うかったが、あれは絶対秘密だ。
「知らね?なんか聞くところによるとやべえ組織に連れて行かれたらしいんだ。」高広は続ける。兄の言葉を分析するとそうなる。
「……不明届か。やばいって単独の誘拐犯じゃないってことか」
「そうだよ、なんだか知らねーけど」
…そうなのか? 情緒不安定の変な女だったが。不破は届け出の話を聞いて気になっていた。…そういえばIDがどうとか言ってたな…。
こいつに貸したな、たしか。俺もよくやるよな。もうやめなくては。(実は高広だけではなく、何人かにパスポートを含む身分証明の類を貸したことがあった。)
不破は自分が香苗の調書を取ったことは隠し、知ってる範囲のことを伝えた。
闇組織の人さらいに関して全国の作業所や施設を捜査中だという。
香苗を知るも何も調書を取ったのは自分だ。
不破了は結局ほぼ無害と結論出された香水の調書を香苗の希望もあり破棄したのだった。それは科捜研にも伝えた。
「島流し、とか言うらしいんだけど、知ってる?」
またまた答えにくい問いだ。
「複数あるんだよ、そういうの、西だと瀬戸内とか紀伊半島とか。東だと千葉だな。」
少々複雑で、国の介入でしか解決できないので、今しばらく待てと伝える。
「ところでお前、なんて言うんだ、本名」
高広に訊ねた。偽名で通していた高広はついに本名を伝えた。スマホの画面を見せる。送受信先氏名が入れ替わる。
「へー、兄貴の彼女ねえ」そりゃ血相変えて始発で来るよな。…にしてもあの女が彼女…ピンとこねーな。
変な女。オタクでもなく、男勝りでもなく、身なりはきちんとして、黙々と手際よく掃除してたところを見るときちんと躾けられているのだろう。だが…全く艶めいたところがない。
「お前、金に余裕あるなら衛星会社に頼んでみたらどうだ。○○あたり。面白いもんが見れるかもよ」
「見れねーだろ、モザイクかかってるじゃん。その前にどんな場所かわからねーのに」
「それが見れるんだなー。珍しく本庁がやる気になってるらしい。」
「国家権力、なめんなよ?」
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