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奥様 危機一髪
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宿泊のホテルに戻り、続き間の部屋で三人は一息ついた。
「がめ煮おいしかった~」ご馳走をよばれて、牧は上機嫌だった。「ああ、しあわせですぅ。ご家庭の味は滅多に食べることができませんよね」彼はどんな家庭育ちなのか、まるで生活感とは程遠い。
「奥様がご無事でなによりです。よかった」3ベッド3バスなので余裕である。
智則はソファに深く腰掛け、満足げに婚姻届けを見つめる。
その横で塔子は。窓の外を見れば見慣れた福岡の夜空がなぜか遠く感じた。
関空はただの経由地で夏目は実家に自分を届けに来たのだった。
家の近くまで送ってくれた。
なあんだ…。何に向けての落胆かわからないが、彼はそういう人だ。
「怪しいものではございませんよ、奥様。家の方に見られるとまたややこしいことになるといけませんので、これにて失礼。―――次回は是非服を着た状態で会えるとええな。」…と言われ、バシッと叩きそうになった。
あの後大阪に戻ったのか。それとも仕事だろうか。
すっかり守り役になってくれてるようだが実はあいつのこと何も知らない。
男に守ってもらうなんて、これっぽっちも考えたことなかったのに。
ベッドのような丸いカウチにごろんと横たわってキラキラ光る豪華な指輪を眺めた。
実質、これがエンゲージリングとなる。よくわからないけどあの恐ろしい夜、夏目が取り返して夏目がはめた。
…結婚すれば違う指輪をするのよね。
――ギラギラしすぎ。
やっと、苦笑いできる余裕が生まれた。
紙袋一つで帰ってきて、家人はこの指輪に驚いていたがイミテーションだというとふうんとすぐに冷静になった。だけどそれは立派な伏線になっただろう。あんなに上品な紳士が尋ねてきて、きちんと挨拶されて、婚姻届けを突き返す親なんていない。
目覚めると主寝室のベッドにいて、服もそのままだった。どうやら彼は別の部屋で寝起きしたようだ。「おはよう」と言われ、部屋のダイニングテーブルには朝食が準備されていた。
この人には私がお父さまとうまくやって行けるように見えるのだろうか。
いや、やっていけるとかそんなこと関係なか。
もう心は決まったと。進むしかない。
くよくよしとられんばい。
塔子はキッと顔を引き締めた。
一方、香港の丘陵地の古城では主が腕組みをしてとあるデータを眺めていた。
息子が嫁となる女性の実家へあいさつに行ったことを知り、ひとまず安心した。
……物事には順序がある。きっちりしきたりを守らねばな。
息子の誕生日は明日。『家』違いではあるが、父は約束を果たした。
さて、気になるのは、あの二人。
親密な様子であった。しかも女の方が入れ込んでいるときている。(父にはそう見える)
息子の選んだ女性をすんなり(とは思われていないが)受け入れたのはよいが、こんなことになっていようとは。
「ううむ。男女の仲ではないにしても」
息子嫁へのクエスチョンマークがまた増えた。
「お前はこのことを知っているのか。智則…」
知るも何も、彼を嫁の護衛に仕向けたのはその息子。
だが、この時点ではそんなことはつゆ知らず、氏は思いをはせた。
ロジャーといい、どうしたものだろう…。
「がめ煮おいしかった~」ご馳走をよばれて、牧は上機嫌だった。「ああ、しあわせですぅ。ご家庭の味は滅多に食べることができませんよね」彼はどんな家庭育ちなのか、まるで生活感とは程遠い。
「奥様がご無事でなによりです。よかった」3ベッド3バスなので余裕である。
智則はソファに深く腰掛け、満足げに婚姻届けを見つめる。
その横で塔子は。窓の外を見れば見慣れた福岡の夜空がなぜか遠く感じた。
関空はただの経由地で夏目は実家に自分を届けに来たのだった。
家の近くまで送ってくれた。
なあんだ…。何に向けての落胆かわからないが、彼はそういう人だ。
「怪しいものではございませんよ、奥様。家の方に見られるとまたややこしいことになるといけませんので、これにて失礼。―――次回は是非服を着た状態で会えるとええな。」…と言われ、バシッと叩きそうになった。
あの後大阪に戻ったのか。それとも仕事だろうか。
すっかり守り役になってくれてるようだが実はあいつのこと何も知らない。
男に守ってもらうなんて、これっぽっちも考えたことなかったのに。
ベッドのような丸いカウチにごろんと横たわってキラキラ光る豪華な指輪を眺めた。
実質、これがエンゲージリングとなる。よくわからないけどあの恐ろしい夜、夏目が取り返して夏目がはめた。
…結婚すれば違う指輪をするのよね。
――ギラギラしすぎ。
やっと、苦笑いできる余裕が生まれた。
紙袋一つで帰ってきて、家人はこの指輪に驚いていたがイミテーションだというとふうんとすぐに冷静になった。だけどそれは立派な伏線になっただろう。あんなに上品な紳士が尋ねてきて、きちんと挨拶されて、婚姻届けを突き返す親なんていない。
目覚めると主寝室のベッドにいて、服もそのままだった。どうやら彼は別の部屋で寝起きしたようだ。「おはよう」と言われ、部屋のダイニングテーブルには朝食が準備されていた。
この人には私がお父さまとうまくやって行けるように見えるのだろうか。
いや、やっていけるとかそんなこと関係なか。
もう心は決まったと。進むしかない。
くよくよしとられんばい。
塔子はキッと顔を引き締めた。
一方、香港の丘陵地の古城では主が腕組みをしてとあるデータを眺めていた。
息子が嫁となる女性の実家へあいさつに行ったことを知り、ひとまず安心した。
……物事には順序がある。きっちりしきたりを守らねばな。
息子の誕生日は明日。『家』違いではあるが、父は約束を果たした。
さて、気になるのは、あの二人。
親密な様子であった。しかも女の方が入れ込んでいるときている。(父にはそう見える)
息子の選んだ女性をすんなり(とは思われていないが)受け入れたのはよいが、こんなことになっていようとは。
「ううむ。男女の仲ではないにしても」
息子嫁へのクエスチョンマークがまた増えた。
「お前はこのことを知っているのか。智則…」
知るも何も、彼を嫁の護衛に仕向けたのはその息子。
だが、この時点ではそんなことはつゆ知らず、氏は思いをはせた。
ロジャーといい、どうしたものだろう…。
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