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騎士学校を卒業した騎士の卵は次に現役の騎士に弟子入りし、騎士見習いになる。およそ二年間、現役の騎士の側で騎士とは何か学び、騎士となるのだ。
マリエルの師匠にはマリエルの父、ダーリング卿が立候補した。
父に仕えるというのは騎士の世界では良くあることだが、ダーリング卿は何のかんの言って娘には甘いところがある。
そこでマリエルはあえて厳しい道を選んだ。
南方にある女性だけの騎士団入りを目指したのだ。無事にそこの騎士団の騎士見習いになると決まった時、デイビッドはひどく驚いた様子だった。
「マリエルは、ダーリング卿の弟子になるんじゃないの?」
「それも良いと思ったけど、どうせ騎士になるなら、色々経験を積みたくて」
「でも随分、遠いんじゃないか、それに危ないし」
「あら、私だって騎士なんだし、危険は折り込み済みよ。それより、婚約破棄だけど……」
デイビッドはしかめ面になる。
「破棄なんかしないよ」
「あら、そう?じゃあこのまま婚約継続でいいの?」
「もちろんだよ」
とデイビッドは頷いた後、おそるおそるマリエルに尋ねる。
「マリエルはどうなの?それでいいの?」
マリエルは喜んで頷く。
「ええ、いいわ。すごく助かるもの」
騎士学校の三年間、デイビッドが婚約者でマリエルは随分と助けられたのだ。
やはり父の言う通り、男性が多い騎士学校でマリエルは声を掛けられることも多かった。
デイビッドはまったく紳士的にマリエルの婚約者役を演じてくれた。
騎士学校はとてつもなく厳しい学校で勉強と訓練漬けの日々だったが、騎士見習いになると世界も大きく広がる。
特に王都で騎士見習いをするデイビッドは環境が激変する。気分も変わるだろう。
なんせ騎士は割とモテる。
特に顔が良い訳ではないマリエルの兄までモテ出すのだから、デイビッドなら大モテだ。
デイビッドは甘いマスクに、明るい茶色の髪と瞳の持ち主だ。ハッとするような美丈夫ではないが、貴公子のように立ち振る舞いが洗練されているから大抵の人、――特にご婦人――には好感が持たれている。
「じゃあさよなら。婚約破棄したいならちゃんと言ってね」
マリエルは、幼なじみと王都に別れを告げた。
それから二年が経ち、マリエルは無事騎士となり女性騎士団の正騎士となった。
デイビッドは筆まめで二週間に一度は手紙をくれる。
手紙にはいつもちょっと洒落たアクセサリーや菓子やハンドクリームが一緒に入っている。マリエルももちろん手紙を返す。
南部の日持ちのするフルーツや革製品なんかも同封する。
四ヶ月に一度はマリエルも帰省する。
一応子爵子女のマリエルにとって社交は義務だ。王都にいる間くらいは夜会にも出かける。エスコートはデイビッドがバッチリ務めてくれた。
デイビッドは王都の騎士団でますます男ぶりに磨きが掛かっている。
デイビッドはどこの夜会でも注目される。
高位貴族の令嬢達は子爵令息なんぞ歯牙にもかけないが、それ以下の身分の令嬢達は皆デイビッドに声を掛けられるのを待っている。
マリエル達は二十歳になり、貴族学校の同級生達の中にはちらほら結婚する人も出てきた。
女性の適齢期は十八歳から二十代前半までだ。
「マリエルとデイビッドは結婚しないの?」
と聞かれて、「まだ無理よ、騎士としてもう少し務めないとね」とマリエルは答えた。
マリエルが南部にいるのはそう長いことではない。
王族の警護を担当する近衛騎士団は女性王族のために一定数の女性騎士を確保している。王宮には面倒なしきたり尽くしで、身分で判断されることも往々にしてある。女性騎士は特に貴族子女であることが求められている。
腕が立ち貴族出の女性騎士という条件にピッタリ合う人材はなかなかおらず、マリエルは数年後には王都に戻ることが決定している。
ただし、予定は予定だし、数年後が正確にいつなのかは分からない。
だからマリエルはデイビッドには誤解がないよう、はっきり言っている。
「いつでも婚約解消していいからね」
デイビッドは「僕はこのままで良いよ」と答える。
マリエルだってこのままで別に構わない。
二十歳を過ぎても好きな人もいなければ、付き合っている男性もいない。
いないというか、デイビッドだと思われている。
『何なのかしら、これって一体』
少々疑問に思うが、社会に入りたての若者が大抵そうであるように、騎士に成り立てのマリエルもまた、忙しくも充実した日々を送っていた。
十二歳からもう十年、二人は婚約破棄はしないまま、あの日を迎えた。
デイビッドがフェンリルに姿を変えたあの日を。
***
三ヶ月ほど前にデイビッドから魔物退治で西部に行くと手紙が来た。デイビッドは銀狼騎士団と呼ばれる王都を守る国の主力騎士団に所属している。
任務は王都防衛だが、兵力は国内最大を誇り、地方に何かあれば応援に駆けつけるのもこの銀狼騎士団の役目だった。
こうした派兵は珍しくないが、騎士になって二年目のデイビッドが派兵対象になるのはマリエルが知る限り初めてだった。
魔物退治は経験を積んだ騎士が選ばれる。新人ではなくなった証である。
手紙の最後に『無事に戻って来られたら、大事な話がある』と書かれていた。
『大事な話って何かしら……』
思わせぶりな言い回しにドキンとしたが、マリエルの出来ることはデイビッドの無事を祈ることくらいだ。
その後、デイビッドからの手紙は途絶えたが、西部の異変は遠い南部まで届いてきた。
魔物が増えて西部はかなり混乱しているらしい。
ついに国内最強の将軍ベネデット卿が大軍を率いて西部に向かった。
のちに聞いた話では、デイビッドがいたのは、このベネデット将軍の率いる本陣ではなく、残党狩りを目的にした部隊だったそうだ。
比較的安全な任務だったはずが、本隊から逃れて、想定より多くの魔物がデイビッド達に襲い掛かった。
同胞達が倒れ、絶体絶命の最中、デイビッドはフェンリルに変化した。
マリエルの師匠にはマリエルの父、ダーリング卿が立候補した。
父に仕えるというのは騎士の世界では良くあることだが、ダーリング卿は何のかんの言って娘には甘いところがある。
そこでマリエルはあえて厳しい道を選んだ。
南方にある女性だけの騎士団入りを目指したのだ。無事にそこの騎士団の騎士見習いになると決まった時、デイビッドはひどく驚いた様子だった。
「マリエルは、ダーリング卿の弟子になるんじゃないの?」
「それも良いと思ったけど、どうせ騎士になるなら、色々経験を積みたくて」
「でも随分、遠いんじゃないか、それに危ないし」
「あら、私だって騎士なんだし、危険は折り込み済みよ。それより、婚約破棄だけど……」
デイビッドはしかめ面になる。
「破棄なんかしないよ」
「あら、そう?じゃあこのまま婚約継続でいいの?」
「もちろんだよ」
とデイビッドは頷いた後、おそるおそるマリエルに尋ねる。
「マリエルはどうなの?それでいいの?」
マリエルは喜んで頷く。
「ええ、いいわ。すごく助かるもの」
騎士学校の三年間、デイビッドが婚約者でマリエルは随分と助けられたのだ。
やはり父の言う通り、男性が多い騎士学校でマリエルは声を掛けられることも多かった。
デイビッドはまったく紳士的にマリエルの婚約者役を演じてくれた。
騎士学校はとてつもなく厳しい学校で勉強と訓練漬けの日々だったが、騎士見習いになると世界も大きく広がる。
特に王都で騎士見習いをするデイビッドは環境が激変する。気分も変わるだろう。
なんせ騎士は割とモテる。
特に顔が良い訳ではないマリエルの兄までモテ出すのだから、デイビッドなら大モテだ。
デイビッドは甘いマスクに、明るい茶色の髪と瞳の持ち主だ。ハッとするような美丈夫ではないが、貴公子のように立ち振る舞いが洗練されているから大抵の人、――特にご婦人――には好感が持たれている。
「じゃあさよなら。婚約破棄したいならちゃんと言ってね」
マリエルは、幼なじみと王都に別れを告げた。
それから二年が経ち、マリエルは無事騎士となり女性騎士団の正騎士となった。
デイビッドは筆まめで二週間に一度は手紙をくれる。
手紙にはいつもちょっと洒落たアクセサリーや菓子やハンドクリームが一緒に入っている。マリエルももちろん手紙を返す。
南部の日持ちのするフルーツや革製品なんかも同封する。
四ヶ月に一度はマリエルも帰省する。
一応子爵子女のマリエルにとって社交は義務だ。王都にいる間くらいは夜会にも出かける。エスコートはデイビッドがバッチリ務めてくれた。
デイビッドは王都の騎士団でますます男ぶりに磨きが掛かっている。
デイビッドはどこの夜会でも注目される。
高位貴族の令嬢達は子爵令息なんぞ歯牙にもかけないが、それ以下の身分の令嬢達は皆デイビッドに声を掛けられるのを待っている。
マリエル達は二十歳になり、貴族学校の同級生達の中にはちらほら結婚する人も出てきた。
女性の適齢期は十八歳から二十代前半までだ。
「マリエルとデイビッドは結婚しないの?」
と聞かれて、「まだ無理よ、騎士としてもう少し務めないとね」とマリエルは答えた。
マリエルが南部にいるのはそう長いことではない。
王族の警護を担当する近衛騎士団は女性王族のために一定数の女性騎士を確保している。王宮には面倒なしきたり尽くしで、身分で判断されることも往々にしてある。女性騎士は特に貴族子女であることが求められている。
腕が立ち貴族出の女性騎士という条件にピッタリ合う人材はなかなかおらず、マリエルは数年後には王都に戻ることが決定している。
ただし、予定は予定だし、数年後が正確にいつなのかは分からない。
だからマリエルはデイビッドには誤解がないよう、はっきり言っている。
「いつでも婚約解消していいからね」
デイビッドは「僕はこのままで良いよ」と答える。
マリエルだってこのままで別に構わない。
二十歳を過ぎても好きな人もいなければ、付き合っている男性もいない。
いないというか、デイビッドだと思われている。
『何なのかしら、これって一体』
少々疑問に思うが、社会に入りたての若者が大抵そうであるように、騎士に成り立てのマリエルもまた、忙しくも充実した日々を送っていた。
十二歳からもう十年、二人は婚約破棄はしないまま、あの日を迎えた。
デイビッドがフェンリルに姿を変えたあの日を。
***
三ヶ月ほど前にデイビッドから魔物退治で西部に行くと手紙が来た。デイビッドは銀狼騎士団と呼ばれる王都を守る国の主力騎士団に所属している。
任務は王都防衛だが、兵力は国内最大を誇り、地方に何かあれば応援に駆けつけるのもこの銀狼騎士団の役目だった。
こうした派兵は珍しくないが、騎士になって二年目のデイビッドが派兵対象になるのはマリエルが知る限り初めてだった。
魔物退治は経験を積んだ騎士が選ばれる。新人ではなくなった証である。
手紙の最後に『無事に戻って来られたら、大事な話がある』と書かれていた。
『大事な話って何かしら……』
思わせぶりな言い回しにドキンとしたが、マリエルの出来ることはデイビッドの無事を祈ることくらいだ。
その後、デイビッドからの手紙は途絶えたが、西部の異変は遠い南部まで届いてきた。
魔物が増えて西部はかなり混乱しているらしい。
ついに国内最強の将軍ベネデット卿が大軍を率いて西部に向かった。
のちに聞いた話では、デイビッドがいたのは、このベネデット将軍の率いる本陣ではなく、残党狩りを目的にした部隊だったそうだ。
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