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56.実家②
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さらに翌日、またママ様がいらしたが、ほぼ同時に王宮から王妃様の手紙も届いた。
「なになに?なんて書いてあるの?」
ママ様が興味津々で覗き込む。
母もそしてローテーションで一人は来てくれている姉も側でそわそわしている。
「ママ様が教え下さったことと同じです」
要約すると王妃様からの手紙は、毎日グレン王子がクラリッサ嬢のところを訪れていること。
それから、私達、とっても仲良しになったの。義理姉妹、上手くやれそう。うふふ。
という内容であった。
ママ様が事前に教えて下さらなかったら、ショックを受けたかも知れない。
王妃様の手紙のご使者はすぐに返事が欲しいとお待ちだ。
私はペンを取り、「良かったですね」と書き、封してご使者に渡す。
ご使者が帰ると、ママ様が言った。
「あれ、最新情報じゃないわよ。きっと昨日書いた手紙ね。最新情報は、クラリッサ嬢の元に通っているのは、国王陛下もで、クラリッサ嬢はお二人の愛の間によろめいている、よ」
「うわー、陛下、節操なし」
と思わず唸ってしまった。
「陛下って、エルシーのこと好きだったんじゃないの?」
姉もちょっと呆れた様子で口を挟む。
「気の迷いだったみたいですね。やっぱり不倫、良くないです」
うんうんと頷いてしまう私だ。
「エルシー様、今日は刺繍の道具を持ってきたわ。やることなくて暇でしょう。刺繍でもしましょう」
ママ様がそうおっしゃり、女性陣でちまちまと刺繍をする。
離宮ではなんやかんやと忙しく、針と糸を持つのも久しぶりなので、私は自分のイニシャルを刺すことにした。
「はい、エルシー様はこれ」
と渡されたのは、クリーム色のハンカチと深く鮮やかな青色の糸だった。
この日で私が実家に帰り四日目だ。
刺繍をしながら、私は母に言った。
「あの、お母様、もはや殿下がお迎えに来られるとは思えませんから、一週間たったらさっさと子爵領に引っ込もうかと思うのですが」
「エルシー!」
と母は悲鳴を上げ、ママ様も姉もびっくりした様子で止めてきた。
「ちょっ、ちょっと待って、エルシー様、いくら何でも早いわよ」
「そうよ、エルシー、考え直しなさい」
「ですが、いつまでも待っている訳には行きませんし、正直言って外出も出来ない今の状況はちょっと窮屈です。王都もこれから暑くなりますし、田舎の屋敷でのびのび過ごしたいのです」
「……エルシー様、グレン殿下のこと、嫌いになったの?」
「そうではありませんが……落ち着いたら、修道院に入るのも良いかと」
「エルシー、馬鹿なことは考えないで」
と母が泣いた。
「分かりました。王家からそこそこの慰謝料は頂けるでしょうから、次の旦那様を探したいと思います。平民で平凡な男性とささやかで明るい家庭を築きたいです」
「エルシーは極端ねぇ」
と姉様が呆れた声を出す。
「あら、エルシー様、平民が良いの?うちの息子じゃ駄目?」
とママ様が言った。
「……家の息子とは、ジェローム様ですか?」
「他にも二人いるの。どっちでもいいわ。うちのお嫁さんになってよ」
「あら、いいお話じゃない、エルシー」
と姉様が言う。
「私にはもったいないお話です。ママ様には申し訳ないですが、出来れば王都を離れたいのです」
王都にいると王子のことを思い出す。ちょっと今は辛い。
「それに平民ですと、赤ちゃん産めなくても離婚まではされないでしょうし」
打算もあるのだ。
私は自分が可愛い。
「そう?気が変わったら言ってね。エルシー様、顔は?ハゲとかデブでも気にしないの?」
「はい。清潔感があれば気にしません。後は心優しく、浮気しないで、尊敬出来る人物であればそれで」
「……慎ましそうに見えて意外と我が儘な希望ね、エルシー様」
ママ様が呟くと、姉様までうんと頷いた。
「理想ですから。それに駄目なら駄目で今度こそ修道院に行けば良いかと」
「エルシー!」
と母がまた泣いた。
「分かりました。取りあえず、温泉に行きたいです」
「あら、温泉。良いわね」
「温泉に浸かってゆっくり将来を考えたいと思います」
仕上がったイニシャル入りハンカチは線もガタガタで出来の良いものではなかった。
自分で使う分には良いかとしまい込もうとしたが、ママ様がさっと取り上げた。
「ママ様」
「エルシー様、逃げ出したいのは分かるけど、グレン殿下のこと、信じてあげて」
と言われてしまった。
「なになに?なんて書いてあるの?」
ママ様が興味津々で覗き込む。
母もそしてローテーションで一人は来てくれている姉も側でそわそわしている。
「ママ様が教え下さったことと同じです」
要約すると王妃様からの手紙は、毎日グレン王子がクラリッサ嬢のところを訪れていること。
それから、私達、とっても仲良しになったの。義理姉妹、上手くやれそう。うふふ。
という内容であった。
ママ様が事前に教えて下さらなかったら、ショックを受けたかも知れない。
王妃様の手紙のご使者はすぐに返事が欲しいとお待ちだ。
私はペンを取り、「良かったですね」と書き、封してご使者に渡す。
ご使者が帰ると、ママ様が言った。
「あれ、最新情報じゃないわよ。きっと昨日書いた手紙ね。最新情報は、クラリッサ嬢の元に通っているのは、国王陛下もで、クラリッサ嬢はお二人の愛の間によろめいている、よ」
「うわー、陛下、節操なし」
と思わず唸ってしまった。
「陛下って、エルシーのこと好きだったんじゃないの?」
姉もちょっと呆れた様子で口を挟む。
「気の迷いだったみたいですね。やっぱり不倫、良くないです」
うんうんと頷いてしまう私だ。
「エルシー様、今日は刺繍の道具を持ってきたわ。やることなくて暇でしょう。刺繍でもしましょう」
ママ様がそうおっしゃり、女性陣でちまちまと刺繍をする。
離宮ではなんやかんやと忙しく、針と糸を持つのも久しぶりなので、私は自分のイニシャルを刺すことにした。
「はい、エルシー様はこれ」
と渡されたのは、クリーム色のハンカチと深く鮮やかな青色の糸だった。
この日で私が実家に帰り四日目だ。
刺繍をしながら、私は母に言った。
「あの、お母様、もはや殿下がお迎えに来られるとは思えませんから、一週間たったらさっさと子爵領に引っ込もうかと思うのですが」
「エルシー!」
と母は悲鳴を上げ、ママ様も姉もびっくりした様子で止めてきた。
「ちょっ、ちょっと待って、エルシー様、いくら何でも早いわよ」
「そうよ、エルシー、考え直しなさい」
「ですが、いつまでも待っている訳には行きませんし、正直言って外出も出来ない今の状況はちょっと窮屈です。王都もこれから暑くなりますし、田舎の屋敷でのびのび過ごしたいのです」
「……エルシー様、グレン殿下のこと、嫌いになったの?」
「そうではありませんが……落ち着いたら、修道院に入るのも良いかと」
「エルシー、馬鹿なことは考えないで」
と母が泣いた。
「分かりました。王家からそこそこの慰謝料は頂けるでしょうから、次の旦那様を探したいと思います。平民で平凡な男性とささやかで明るい家庭を築きたいです」
「エルシーは極端ねぇ」
と姉様が呆れた声を出す。
「あら、エルシー様、平民が良いの?うちの息子じゃ駄目?」
とママ様が言った。
「……家の息子とは、ジェローム様ですか?」
「他にも二人いるの。どっちでもいいわ。うちのお嫁さんになってよ」
「あら、いいお話じゃない、エルシー」
と姉様が言う。
「私にはもったいないお話です。ママ様には申し訳ないですが、出来れば王都を離れたいのです」
王都にいると王子のことを思い出す。ちょっと今は辛い。
「それに平民ですと、赤ちゃん産めなくても離婚まではされないでしょうし」
打算もあるのだ。
私は自分が可愛い。
「そう?気が変わったら言ってね。エルシー様、顔は?ハゲとかデブでも気にしないの?」
「はい。清潔感があれば気にしません。後は心優しく、浮気しないで、尊敬出来る人物であればそれで」
「……慎ましそうに見えて意外と我が儘な希望ね、エルシー様」
ママ様が呟くと、姉様までうんと頷いた。
「理想ですから。それに駄目なら駄目で今度こそ修道院に行けば良いかと」
「エルシー!」
と母がまた泣いた。
「分かりました。取りあえず、温泉に行きたいです」
「あら、温泉。良いわね」
「温泉に浸かってゆっくり将来を考えたいと思います」
仕上がったイニシャル入りハンカチは線もガタガタで出来の良いものではなかった。
自分で使う分には良いかとしまい込もうとしたが、ママ様がさっと取り上げた。
「ママ様」
「エルシー様、逃げ出したいのは分かるけど、グレン殿下のこと、信じてあげて」
と言われてしまった。
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