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第二章
01.結婚式当日
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王国の王太子の結婚式、――私と王子の結婚式は本日、11時より始まり、婚礼を祝う宴は夜遅くまで続く。
王都中心部の教会で挙式した後、すぐに二人で馬車に乗り、王宮に向かう。
パレードだ。
贅をこらした黄金造りの馬車に乗り、沿道の人々ににこやかに手を振る私だが、騒がれるのが嫌いな王子は腕組みしてムッとしている。
なので王子に囁いた。
「ちょっと、グレン様、もう少し笑って下さい。王家支持率下がったらどうするんですか?」
「ちゃんとしているだろう」
と彼は不機嫌そうに言い返してくる。
「してないから言ってるんですよ!実は王子結婚嫌がってる説流れたらどうするんですか?それにグレン様、美形なんですから、その格好良さをたまには生かして下さい」
そう言うと王子は、照れた。
「格好良いとエルシーも思うのか?」
「はい、キラキラですよ。正直、隣に立つのはヤダなと思うくらい格好いいですよ」
王家の礼服という白地に赤の服はとても王子に似合っている。
基本、この国の王太子というのは軍籍にあるため、礼服は軍服的格好良さがあり、美丈夫で有名な王子をこれ以上となく美しく見せた。
「…………」
王子は何故かこちらをチラチラと伺い、頬を染め、恥じらう。
王子は二十六歳で187センチメートルもある立派な体格だ。
しかし恥じらってもなお美形である。
「エルシーもとても美しい……。エルシーはいつも美しいが今日は神々しい程に美しい。白バラの妖精のようだ」
「はっ、はい、ありがとうございます」
そんなこと言われてもじもじした。
「手を振れば良いのか」
「はい」
王子は沿道に向かい、手を振る。
キャーと女の子の悲鳴が上がる。
これで王家支持率は安泰である。
ホッとしていると王子が私をグッと抱き寄せた。
「何ですか?」
「結婚を嫌がってはいないと世の中に伝えたい」
と言うと王子はキスした!
無事に王宮に着き、今度は披露宴が始まる。
王宮の大広間にて三千人くらいのご招待客とお食事と歓談をする。
王子は竜の国とも言われる我が国の王太子であるため、周辺諸国からは王か王太子など最高ランクの王侯貴族がお祝いに駆けつけて下さった。
「こちらが妃殿下のエルシー様か」
「はい、お目にかかれて光栄です。エルシーでございます」
お招きした王侯貴族の方々と私が会うのは、初めてだ。
結婚の三日前から花嫁は悪魔にさらわれるといけないということで人に会わずに過ごす習わしがあるのだ。
「悪魔って誰ですか?」
と聞くと皆目を逸らしたので、詳細は知らない。
「殿下が一目で恋に落ちたという程熱愛の妃殿下とか」
「ええ、今日を楽しみにしておりました」
王子は思ったよりデキル人だった。
諸外国の方々とも、まともに話をしている。
だが内容は変だ。
王子は王子が私に一目惚れして速攻で結婚を決めたというあの溺愛設定を押し通すつもりらしい。
「…………」
各国のお姫様、お妃様方は微妙な感じで私を見つめている。
外交の場であるから皆様口には出さないが、目は口ほどにものを言う。
一様に姫様方の瞳は、「これに一目惚れ?」とおっしゃっている……。
王子は黙っていれば長身の美丈夫という奴だ。
特に今日の礼服は本当に似合っていつもより三割増しくらい格好いい。
対する子爵令嬢の私は普通だ。
とてもではないが、王子が是非にと乞い望み、半年で結婚にこぎ着けたという絶世の美少女ではない。
だが、表面上は和やかに披露宴は進んでいく。
竜の国の王族は陛下ご一家、そして王子しかいないので、我が国の王族は滅多に外遊をしない。中でも王子は外国に行ったことは一度もなく、招かれた方々はこの期に竜の国を統べる王家の長、次代の王を見定めようと好奇の目を寄せる。
***
「エルシー」
王子が私を呼び、煌びやかな衣装を纏い、青い髪に王冠を乗せたご老人の前に立つ。
その瞬間に、ひときわ皆の視線が王子とその方とついでに私に集まった。
「俺の母方の伯父上だ。一つ向こうの国、アルステアの国王陛下だ」
「本日はおめでとうございます。エルシーと呼んでも良いかね?」
「はっ、初めまして、陛下。どうぞそのようにお呼び下さい」
長身痩躯のご老人であった。
青い瞳に青い髪。纏う色彩は王子の兄チャールズ陛下を思わすが、似ているというなら王子に似ている。
王子の美貌はお母様譲りらしいので、この伯父上様にも似ているのだろう。
王子のご両親は先の王妃様がキリッとした美人で、先の国王陛下がお優しげな貴公子風なのだ。
金目の印象が強いせいで王子は先の陛下似と言われているが、顔の造作そのものは、よく見るとチャールズ陛下がお父上様似で、王子は西方アルステアの特徴が強く出ている。
意志の強そうな瞳は、何もかも見透かすように、射ぬくように冷え冷えと鋭く輝いているが、王子と似ているので、初対面だが怖くは思わなかった。
アルステアと我が国は間にカンデュラという国を挟んでいるので、そう滅多に行き来は出来ないのだが、このアルステアの国王陛下は甥に当たる王子を可愛がって下さったと聞いている。
アルステアの国王陛下は私をじっと見つめ、そして相好を崩された。
甥の結婚が余程嬉しいのか、とても朗らかに「ははは」と声を立ててお笑いになる。
結構大きなお声だったので、こちらに皆の注目が集まる。
「これで我が国も安泰だ」
「えっ?」
我が国ってアルステアのこと?
「グレン、初めの子はヴィーヴルの世継ぎになるのだろう」
とアルステアの陛下は王子に問いかける。
「はい。金目の王子でしたら、それが王となります」
王子はとっても警戒しながら、頷いた。
王子は私の腰をつかみ、自分の方に引き寄せる。いつでも担いで逃げ出せる体勢だ。
ヴィーヴルというのは王子の家、王家の家名だ。
今日から、私はエルシー・ヴィーヴルとなる。
「では金目じゃない子か、女の子か、金目でも二人目か、青い髪の子が出来たらうちにくれ。王にするから」
とアルステアの国王陛下は言った。
「は?」
私だけでなく、王子も固まった。
王都中心部の教会で挙式した後、すぐに二人で馬車に乗り、王宮に向かう。
パレードだ。
贅をこらした黄金造りの馬車に乗り、沿道の人々ににこやかに手を振る私だが、騒がれるのが嫌いな王子は腕組みしてムッとしている。
なので王子に囁いた。
「ちょっと、グレン様、もう少し笑って下さい。王家支持率下がったらどうするんですか?」
「ちゃんとしているだろう」
と彼は不機嫌そうに言い返してくる。
「してないから言ってるんですよ!実は王子結婚嫌がってる説流れたらどうするんですか?それにグレン様、美形なんですから、その格好良さをたまには生かして下さい」
そう言うと王子は、照れた。
「格好良いとエルシーも思うのか?」
「はい、キラキラですよ。正直、隣に立つのはヤダなと思うくらい格好いいですよ」
王家の礼服という白地に赤の服はとても王子に似合っている。
基本、この国の王太子というのは軍籍にあるため、礼服は軍服的格好良さがあり、美丈夫で有名な王子をこれ以上となく美しく見せた。
「…………」
王子は何故かこちらをチラチラと伺い、頬を染め、恥じらう。
王子は二十六歳で187センチメートルもある立派な体格だ。
しかし恥じらってもなお美形である。
「エルシーもとても美しい……。エルシーはいつも美しいが今日は神々しい程に美しい。白バラの妖精のようだ」
「はっ、はい、ありがとうございます」
そんなこと言われてもじもじした。
「手を振れば良いのか」
「はい」
王子は沿道に向かい、手を振る。
キャーと女の子の悲鳴が上がる。
これで王家支持率は安泰である。
ホッとしていると王子が私をグッと抱き寄せた。
「何ですか?」
「結婚を嫌がってはいないと世の中に伝えたい」
と言うと王子はキスした!
無事に王宮に着き、今度は披露宴が始まる。
王宮の大広間にて三千人くらいのご招待客とお食事と歓談をする。
王子は竜の国とも言われる我が国の王太子であるため、周辺諸国からは王か王太子など最高ランクの王侯貴族がお祝いに駆けつけて下さった。
「こちらが妃殿下のエルシー様か」
「はい、お目にかかれて光栄です。エルシーでございます」
お招きした王侯貴族の方々と私が会うのは、初めてだ。
結婚の三日前から花嫁は悪魔にさらわれるといけないということで人に会わずに過ごす習わしがあるのだ。
「悪魔って誰ですか?」
と聞くと皆目を逸らしたので、詳細は知らない。
「殿下が一目で恋に落ちたという程熱愛の妃殿下とか」
「ええ、今日を楽しみにしておりました」
王子は思ったよりデキル人だった。
諸外国の方々とも、まともに話をしている。
だが内容は変だ。
王子は王子が私に一目惚れして速攻で結婚を決めたというあの溺愛設定を押し通すつもりらしい。
「…………」
各国のお姫様、お妃様方は微妙な感じで私を見つめている。
外交の場であるから皆様口には出さないが、目は口ほどにものを言う。
一様に姫様方の瞳は、「これに一目惚れ?」とおっしゃっている……。
王子は黙っていれば長身の美丈夫という奴だ。
特に今日の礼服は本当に似合っていつもより三割増しくらい格好いい。
対する子爵令嬢の私は普通だ。
とてもではないが、王子が是非にと乞い望み、半年で結婚にこぎ着けたという絶世の美少女ではない。
だが、表面上は和やかに披露宴は進んでいく。
竜の国の王族は陛下ご一家、そして王子しかいないので、我が国の王族は滅多に外遊をしない。中でも王子は外国に行ったことは一度もなく、招かれた方々はこの期に竜の国を統べる王家の長、次代の王を見定めようと好奇の目を寄せる。
***
「エルシー」
王子が私を呼び、煌びやかな衣装を纏い、青い髪に王冠を乗せたご老人の前に立つ。
その瞬間に、ひときわ皆の視線が王子とその方とついでに私に集まった。
「俺の母方の伯父上だ。一つ向こうの国、アルステアの国王陛下だ」
「本日はおめでとうございます。エルシーと呼んでも良いかね?」
「はっ、初めまして、陛下。どうぞそのようにお呼び下さい」
長身痩躯のご老人であった。
青い瞳に青い髪。纏う色彩は王子の兄チャールズ陛下を思わすが、似ているというなら王子に似ている。
王子の美貌はお母様譲りらしいので、この伯父上様にも似ているのだろう。
王子のご両親は先の王妃様がキリッとした美人で、先の国王陛下がお優しげな貴公子風なのだ。
金目の印象が強いせいで王子は先の陛下似と言われているが、顔の造作そのものは、よく見るとチャールズ陛下がお父上様似で、王子は西方アルステアの特徴が強く出ている。
意志の強そうな瞳は、何もかも見透かすように、射ぬくように冷え冷えと鋭く輝いているが、王子と似ているので、初対面だが怖くは思わなかった。
アルステアと我が国は間にカンデュラという国を挟んでいるので、そう滅多に行き来は出来ないのだが、このアルステアの国王陛下は甥に当たる王子を可愛がって下さったと聞いている。
アルステアの国王陛下は私をじっと見つめ、そして相好を崩された。
甥の結婚が余程嬉しいのか、とても朗らかに「ははは」と声を立ててお笑いになる。
結構大きなお声だったので、こちらに皆の注目が集まる。
「これで我が国も安泰だ」
「えっ?」
我が国ってアルステアのこと?
「グレン、初めの子はヴィーヴルの世継ぎになるのだろう」
とアルステアの陛下は王子に問いかける。
「はい。金目の王子でしたら、それが王となります」
王子はとっても警戒しながら、頷いた。
王子は私の腰をつかみ、自分の方に引き寄せる。いつでも担いで逃げ出せる体勢だ。
ヴィーヴルというのは王子の家、王家の家名だ。
今日から、私はエルシー・ヴィーヴルとなる。
「では金目じゃない子か、女の子か、金目でも二人目か、青い髪の子が出来たらうちにくれ。王にするから」
とアルステアの国王陛下は言った。
「は?」
私だけでなく、王子も固まった。
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