私の生きる場所を見つけるまでの物語

お米育ち

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3.その白猫と男は(2)

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 テーブルまで運ばれるとそこには、削ったかのような形の火の通った肉が皿に盛られていた。
 
『これは……!あのお店のお肉……!』
 
 盛られた肉に白猫が目を輝かせていると、男が面白そうに笑った。

「さっきまで泣いていたかと思えば、今度は肉に目を輝かせて凝視してるときたか。本当に表情豊かだな」

 見られていたことに恥ずかしさを覚えた白猫は、慌ててお肉から目を逸らすことにした。

「俺の夕飯はパンに野菜と肉を挟んだ食べ物なんだが、肉が少し多いからおすそ分けだ。よかったら食べてくれ」

 白猫は男の言葉を聞いて、我慢ができず早速一口噛り付いた。すると、時間が経って冷めているにも関わらず、肉が柔らかく、口の中に肉自体の甘味と旨味が広がった。今まで食べてきた虫たちとの格闘の日々が、一瞬で吹き飛ぶほどの衝撃であった。
 一心不乱に噛り付いていると、ふと視線を感じた。視線の主を見てみると、男が手に持った食事を一口も食べずにこちらを見ていた。
 白猫は食べ方が汚かっただろうかと、不安になり噛り付くのをやめたときだった。

「タイミング的にまさかと思ってはいたんだが、確認させてくれないか。……人の言葉を理解しているのか?」

 疑問形で聞かれているが、これは確信していると判断した白猫は首を縦に振る形でそれに答えた。男は目を見開き、小さく呻いた。

「…………改めて肯定されると結構な衝撃だな……」
「ちなみに、名前はあるのか?」

 白猫は首を横に振った。実際に森の中では誰も名前を持っていなかった。話し相手である、魔法使いさんにも「小さい君」と呼ばれるだけだったからだ。
 
「……そうか、よければ名前を付けさせてくれないか?」
 
 ――名前ね……なくても困らなかったけど、あってもいいかもしれない。せっかく名前を付けてもらうなら、この優しい人に付けてもらいたいかな。

 白猫は『いいよ』と小さく鳴き、首を縦に振った。

「ありがとうな、どんな名前がいいか考えるから少し待ってろよ……」

 言いながら男は手を伸ばすと、白猫の頭を優しく撫で始めた。白猫は最初おっかなびっくりされるがままにしていたら、次第に心地よさを感じ始め、喉をゴロゴロと鳴らして甘えるようかのように男の手に頭を擦り付けた。

「…………フェイはどうだ?……妖精という意味なんだが」

 男は恥ずかしそうに目を逸らし、語尾を小さく告げてきた。

 ――まさか、妖精のようだと思って付けてくれたのかな……?

 白猫は胸の中がそわそわして、あたたかい気持ちになった。首を縦に振り、伝わらないと思いつつも応えた。

『私の名前は今日からフェイよ。名前をくれてありがとう!』

 その様子に男は目を丸くし、すぐに柔和な笑みを浮かべた。

「受け入れてくれてありがとう、フェイ。自己紹介が遅れてしまったが、俺の名前はルーカスだ」
「食事を中断させてすまなかった。まだ肉はあるからゆっくり食べてくれ」

 ルーカスはフェイを撫でるのを止め、自身の食事に手を戻した。
 フェイはそれを確認し、更に盛られた肉に噛り付くことを再開した。

 ――フェイ。私の名前。なんだか、そわそわして落ち着かない。

 頭の中で自分の名前を反芻していると、盛られていた肉はあっという間になくなっていた。
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