私の生きる場所を見つけるまでの物語

お米育ち

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6.その魔法使いは

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 そこは果てがないかと思われる湖の底にある家だった。
 一見、ログハウスのように見えるその家は、水中であるにもかかわらず、窓から仄かに明かりが見える。水圧をものともしないその様子は、そこだけ別空間を映し出しているようであった。

 その家の主である魔法使いはふと目を覚ました。
 
 ――私の領域である湖に誰かいる。一匹?……いや二匹かな?
 
 「おや、今日は来客がある日だったかな?」
 「ぐっすり眠っていたらお客様を待たせてしまっていたようだね」

 魔法使いはベッドから状態を起こし、玄関まで一直線に向かう。
 家の扉を開くと、そこには暗闇があった。より明確に伝えると光も差さぬ水底の暗く静かな水の壁がそこにはあった。水は扉の向こうから流れてくることはなく、見えない壁があるのかのように、揺らぐことなくあるだけだった。
 しばらくすると水の壁越しに大きな気泡が現れ、その中には気を失った白猫と人間の男がいた。

 「これはまた、珍しいお客様だ」

 魔法使いは男を睥睨すると、腕を伸ばして気泡の中から白猫だけを取り出して扉を閉めた。

 ――まさか、またアレを目に入れる日が来るとはね。

 苦々しい気分を振り払い、水の壁によって濡れた自身の腕と白猫の体を魔法で乾かしてから状況を把握することにした。
 
 ――湖で溺れた動物はここに流れ着くよう魔法をかけていたけど、アレも来るのは想定外だね。そもそも、この湖に来ることはできないはずなのに。
 
 魔法使いは意識を失っている白猫に意識を切り替えて、森の記憶の読み取りを開始した。
 
 ――なるほど、君はあの日街に旅立った小さい君だったんだね。
 ――小さい君とあの人間は一緒に森へ来たのか。人除けの魔法は効いていたようだけど、小さい君が先導していたからあの人間は魔法に負けずここまでたどり着いたわけか。これは、あとで改良が必要かな。
 ――そのさきで小さい君は崖崩れに巻き込まれてしまったんだね。こんなに体が冷え切ってしまって可哀想に。

 魔法使いは森で起こった出来事を読み取り、白猫と男の情報を集めた。
 
 ――それにしても、随分と見違えた。初めて挨拶した時にはすでにくしゃくしゃの姿だったから、魔法で読み取らなかったらわからないぐらいだ。
 ――一緒に来ていた人間とはお互い信頼していたようだけど、あの人間はおそらく数十分で死ぬだろう。人間はどうでもいいが、小さい君が悲しむのは忍びないね。どうしたものか……。

 悩みながらも魔法使いは白猫を抱きかかえ、白猫の体に入った水を魔法で取り出しながら、傷ついた内壁を癒していく。

 少しすると白猫の体に体温が戻り始め、微かに動きだす。
 閉じられていた瞼を開き、アンバーの瞳が黒い靄に覆われた魔法使いを映し出した。

「実際に対面するのは初めてだね、小さい君」
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