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1つ目の国内
第三の相談:鍛冶屋の悩み(相談編4)
しおりを挟む店長さんに引き連れられ、奥の部屋まで移動すれば、椅子に座り向かい合う俺達。
「…さて……どこから話すか…」
「んんっ、そんな込み入った話で…?」
「…まぁな……ひとまず…あの短剣を作ったのはお察しの通り俺じゃねぇ……俺の“娘“だ」
「…娘さんがいらしたんですね…」
「あぁ……あの子は若いながらに才能がある…武器を打つ才能がな」
「ほぅ。それは職人である店主からしたら嬉しい事ですなぁ」
「あぁ…よく出来た子だよ。俺みたいなガサツ者にはもったいないくらいな……まぁ多少落ち着きがないところがあったがな…」
「…大事にされてるんですね…」
「……すまんねぇ、店主。まわりくどいのはオッサン苦手なの」
「…ルート殿?」
「……」
「手短にいこうや…何が……いや、“旧騎士団”と何があった?」
「なっ!?」
「…やれやれ…勘がいいな……」
「はっはっはっ、オッサンもだてに歳をとってないからねぇ」
「……そりゃそうだな……あの子は、ある時を境に武器を打つのを辞めちまったよ……」
「えッ!?。あんな凄い物を作れるのに!?」
ガッ!と思わず立ち上がったマリーナ。
彼女の気持ちもわからんではない。
あの短剣の出来は、そこらにある武器とは一目…いや、10目も置くほどだ。
…若いながらにその域まで達したとなれば、将来は国支えの鍛冶士と扱われてもおかしくないほどに…
「…先代も嬢ちゃんみたいなやつだったらよかったんだがな…」
「…グラーダ前期師団長が…ですかっ?」
「……あの頃はあの子の人気は鰻登りだったからな……その噂を聞きつけ奴が来たんだが……横暴な態度でな…」
「あらあら、それはそれは……騎士団としてどうなのよ?」
「…良くない…良くあるはずがない……だからこそ、グラーダ前期師団長は裁かれたのだ……」
「ほぅ…」
「…ルート殿は、彼の事についてご存知か?」
「いや、全く知らないねぇ」
「…まじか…此処らじゃベルヘルナ騎士団の事もあってかなり有名だと思うが…」
「いやいや、オッサン流れ物だから…この国に来たのも最近だし」
「…そういえば、ルート殿はベルヘルナ騎士団の事すら知らなかったな…」
「……逆にこっちが聞きたいんだが…お前さんはどういう関係なんだ?」
「…んー…相談者と相談相手…かね?」
「…は?」
「……いい歳こいて何フラフラしてんだよ…」
事情を説明した後、呆れたようにこちらを見てくる店主。
いやいやぁ、気持ちはわかりますよ?
「いやぁー、言い訳できないねぇー」
でも、こればっかりはどうにもならんし、変えるつもりもないからね。
「…はぁ…だがまぁ、お前さんだったのか……最近あった貴族の一斉摘発の首謀者は…」
「首謀者とは言い方が悪い…ただ、オッサンはこの騎士団長様が、国の事を思っていたから相談に乗っただけだし」
「…はっ。そのついでで貴族の不正を暴いた上、取り除くとか出来るもんじゃないだろ……しかし、納得がいった…最初は騎士団の部下を引き連れてかと思ったが…妙に口調がそれじゃなかったからな…」
「いや、いずれルート殿には騎士団長になってもらう予定だ…そうなった場合、私の上官に…そしてゆくゆくは…」
「いや、なりませんから」
「…えぇー…」
「えぇーじゃありませんよ」
「…こりゃ、とんでもない奴がいたもんだな……あの騎士団からの誘いを断るとは…」
「オッサンは何処かに縛られるってのは、性に合わないんだよぉ…それに、オッサンは上に立つのは苦手だし、騎士団で働いても和を乱すだけだろうからねぇ…」
「…あぁ…確かに言われてみたらその通りかもな…」
「…うぐぅっ…しっ…しかし、まだ諦めたわけではっ…」
「お前さんもしつこいねぇ…だが、その話は此処で終わり…今は店主の話を聞かないとね…すんませんね、話の腰を折っちまいまして…」
「いや、気にすんな…おかげで嬢ちゃんが先代とは違うってわかったしな…暴走しがちだが…」
「えぇ、暴走娘ですが悪い子じゃないんで」
「…ぼっ…暴走娘っ……?」
「間違っちゃいないでしょうよ……とりあえず、聞かせてくれませんかね。先代騎士団長様の事…後でまたお菓子奢りますから」
「お菓子に釣られるほど単純じゃっ………はぁ…………先代騎士団長であるグラーダは…そうだな、一言でまとめるなら話を聞かない暴れ馬というところだな」
「ほぅ…」
「騎士団長の座に座るほどの実力を有していたのは事実なんだが…いかんせん性格がな……騎士団長という立場を使い、無銭飲食やら窃盗やら女性を連れ込むなどしていたらしい…」
「…そこだけ聞くと、ただのクソッタレとしか思えないんですがねぇ?……本当に騎士団長?」
「あぁ…残念ながらな………実力自体は本物だったし、国の戦力の要……多大な功績もあったからな…多少は目を瞑っていたらしい…」
「…こっちからしたら溜まったもんじゃなかったがな……」
「耳が痛い……だが、そんな行いをずっと続けていれば限界が来る…当時の支援者だった貴族も見捨てるほどの事態になったのだ……それから、新たに私が騎士団長の座に座り、グラーダ元騎士団長はこれまでの行いの結果、獄中にて鞭打ち刑を執行後、国外追放……その後の事は把握できていない。生きているのか、死んでいるのかも不明だ」
「…なるほどなぁ………脳筋クソ野郎だったってわけか……んで、店長さんの娘さんもその被害者と…」
「…あぁ…ある時店に来てな…ちょうど娘に経験を積ませる意味で店番をやらしてたのが良くなかった……入ってくるなり、気に入ったから武器を作れと言ってきやがってな……まぁこっちも仕事だからよ、金をはうっていうんなら相手は客だ。それなりの対応をさせてもらうさ……」
「…聞けば聞くほど申し訳ない…」
「いや、前任者とはいえお前さんが気にする必要はねーよ……んで、武器を作ったが気に入らなかったって感じかい?」
「いや、そもそも作ってないな」
「…はい?」
「作れなかったって言うのが正解か……いけすかない奴だが、実力だけは本物だったからな……持ち主専用に作った武器じゃないと、奴の力に耐える事はできそうになかったんだよ……その事をあの子は見抜き、今は作れないと説明したんだが……なんで作れないんだと暴れ出してな…」
「…うわぁぉ…まじかよ…」
そんな馬鹿な事をする奴が実際にいるんだと…心の底から呆れた。
「材料が足らないと必死に説明したんだが…聞かない始末…しまいには、店にある物を使ってでも作れと騒ぐ始末だ」
「…うわぁぁ…」
「……ルート殿……すごく頭が痛い…」
「…気持ちはわかるが…我慢だ我慢…」
「……本当…無茶苦茶な奴だと流石に俺も止めに入ろうとしたんだが…奴は娘が腰から下げているあの子専用の小槌を奪い取ると……」
店主さんは、そこで一旦口を閉じた…
…なんか、嫌な予感がするな…
「…あー…店主さん?。言いづらい事なら別に無理して…」
「………いや、きちんと話すさ……そうじゃなきゃお前さんらも納得できんだろうし……他のとこで同じ事が起こってほしくねーからよ……」
そういうと、店主さんは一口水を飲み…
「…壁に飾ってあった…あの子の初めての作品をぶち壊しながったんだよ…それも大事な小槌もろともな…」
「なッ!?」
「…」
店主さんは顔に出さないようにしているが…手が怒りで震えてやがる…
……何気なく訪れた店でとんでもない話が出てきたもんだわ…うん…
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