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【第一章】
◆細工師ギルド長、猿のように笑う(細工師ギルド長・ゴーマン視点①)
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◆(細工師ギルド長・ゴーマン視点)
テイルが守衛から門前払いにあったあの日……ミルキア細工師ギルドのギルド長ゴーマン・オルドリゲスは、ギルド長執務室からその姿を見下ろし、一人ほくそ笑んでいた……。
彼の履歴書がビリビリと破られ灰皿の上の火にくべられ、勢い良く燃え上がる。
「フワハ、ワハハハハハ! ようやくあの愚か者を追い出してやった! 路頭に迷い、苦しんでいる顔が目に浮かぶわぁ!」
たちまち燃えかすとなってゆくそれを見つめ、ゴーマンはそれを満足した笑みで見つめると、ここ数年の忌まわしい記憶を思い返した。
――あのテイルとかいう男が、この細工師ギルドへと来たのはつい二年程前。
作り上げた見事な細工品でギルドの試験官たちを唸らせ、歴代最高の成績で入会した彼だったが、しかしその才能はギルド長や幹部役員たちのプライドを深く傷つけることになった。
なにせ入会後初めて開かれた、王国全土の装飾品が集まる定例品評会で……彼の作品が他を三倍以上も引き離した得票数で一位をもぎとり、ミルキア細工師ギルドに新星が現われたとその名を轟かせたのだ。
それがゴーマンのようにこのギルドで長年勤めて来た者なら何の問題もなかった……。だが、奴はただの無名の若造だ。
品評会には他ならぬゴーマンや多数の役員も出品しており、顔を潰された彼らはテイルに強い恨みを持った。中でもゴーマンの憤りは他とは比べ物にならない程だった。
『――あのような若造が……私の作品を越えるものを作り出すなど、ありえん! ありえてたまるものか!』
プライドの高いゴーマンはその功績を認めず、彼を日陰に追いやるため様々な仕掛けを施していった。彼は伯爵家の一員で、ほうぼうの貴族に鼻が利く。役員共も今や彼の手足に他ならず、あんな小僧一人をどうにかするのは訳が無い。
雑用だけに従事させて経験を得る機会や作品作りの時間を奪い、次回の品評会では彼の作品に一つも票が入らぬよう裏から根回しして、彼の活躍を阻止した。
おかげで、彼の噂は一発屋としてすぐに立ち消え、その後はゴーマンを始めミルキア細工師ギルドの作品が上位を独占するようになり、あれは他の人間の盗作だったのではないかという話すら出て、テイルの名は腫れ物のように扱われるようになった。
その後も、嫌がらせは以後二年間ずっと続けられていたが、彼の細工に関する熱意は衰えず、ここから去る気配は見られなかった。その姿勢が逆にゴーマンをひどく苛だたせ、彼はついに痺れを切らして自分の全権力をフル活用し、テイルの全てを奪ってやったのだ。
そして、ついに彼はこの細工師ギルドから姿を消した――その事がゴーマンには嬉しくてたまらない。
「フワーハッハッハッ、ざまあみろ! ざまあみろ、ポッとでの若造が! はは、今頃どこぞの路地で物乞いでもしているかも知れんな……そうしたら銅貨でも恵んでやるか! 一枚だけだがな、ハッハー!」
彼は喜びを爆発させる。自分を脅かす者はもういないのだ。
加えてここ数年ミルキア細工師ギルドの業績は右肩上がりで、国内の他ギルドの追随を許さない。今後さらに発展し、これからの数十年……装飾品業界で彼の名前が轟き、その名前が永遠に歴史に刻まれることは間違いないだろう。
「私の時代がついに来たのだ……ヒャーッハッハッハァ! ――む、なんだ人がいい気分で浸っておる時に……入れ!」
ノックされた扉が開き、女性秘書が室内に入って来た為、ゴーマンは表情を戻し話を聞く。
「ギルド長、取り急ぎご報告が……部材用金属の検品や小物部品の加工作業が滞り、後々の工程に支障が出ていて複数の部署が対応に追われています」
「なんだと? ずいぶん急だな……。だが、その位外からどんどん人を雇って対応させろ。今や我がギルドは飛ぶ鳥落とす勢い……金など後でいくらでも儲けられる」
「はい、そのように手配してまいります。それと……ある貴族の方が面会予約を申し出ていますが、いかがいたしましょう?」
「商談か? いいだろう……予定表に入れておけ」
「かしこまりました……では、失礼いたします」
「……行ったか。ププ……ククク、クキャーッキャッキャッキャ!」
秘書である女性が頭を下げて出て行った後も、楽しそうに再び馬鹿笑いを続けるゴーマン。
その顔にはギルドの長たる威厳も、品性の欠片も無かった。
テイルが守衛から門前払いにあったあの日……ミルキア細工師ギルドのギルド長ゴーマン・オルドリゲスは、ギルド長執務室からその姿を見下ろし、一人ほくそ笑んでいた……。
彼の履歴書がビリビリと破られ灰皿の上の火にくべられ、勢い良く燃え上がる。
「フワハ、ワハハハハハ! ようやくあの愚か者を追い出してやった! 路頭に迷い、苦しんでいる顔が目に浮かぶわぁ!」
たちまち燃えかすとなってゆくそれを見つめ、ゴーマンはそれを満足した笑みで見つめると、ここ数年の忌まわしい記憶を思い返した。
――あのテイルとかいう男が、この細工師ギルドへと来たのはつい二年程前。
作り上げた見事な細工品でギルドの試験官たちを唸らせ、歴代最高の成績で入会した彼だったが、しかしその才能はギルド長や幹部役員たちのプライドを深く傷つけることになった。
なにせ入会後初めて開かれた、王国全土の装飾品が集まる定例品評会で……彼の作品が他を三倍以上も引き離した得票数で一位をもぎとり、ミルキア細工師ギルドに新星が現われたとその名を轟かせたのだ。
それがゴーマンのようにこのギルドで長年勤めて来た者なら何の問題もなかった……。だが、奴はただの無名の若造だ。
品評会には他ならぬゴーマンや多数の役員も出品しており、顔を潰された彼らはテイルに強い恨みを持った。中でもゴーマンの憤りは他とは比べ物にならない程だった。
『――あのような若造が……私の作品を越えるものを作り出すなど、ありえん! ありえてたまるものか!』
プライドの高いゴーマンはその功績を認めず、彼を日陰に追いやるため様々な仕掛けを施していった。彼は伯爵家の一員で、ほうぼうの貴族に鼻が利く。役員共も今や彼の手足に他ならず、あんな小僧一人をどうにかするのは訳が無い。
雑用だけに従事させて経験を得る機会や作品作りの時間を奪い、次回の品評会では彼の作品に一つも票が入らぬよう裏から根回しして、彼の活躍を阻止した。
おかげで、彼の噂は一発屋としてすぐに立ち消え、その後はゴーマンを始めミルキア細工師ギルドの作品が上位を独占するようになり、あれは他の人間の盗作だったのではないかという話すら出て、テイルの名は腫れ物のように扱われるようになった。
その後も、嫌がらせは以後二年間ずっと続けられていたが、彼の細工に関する熱意は衰えず、ここから去る気配は見られなかった。その姿勢が逆にゴーマンをひどく苛だたせ、彼はついに痺れを切らして自分の全権力をフル活用し、テイルの全てを奪ってやったのだ。
そして、ついに彼はこの細工師ギルドから姿を消した――その事がゴーマンには嬉しくてたまらない。
「フワーハッハッハッ、ざまあみろ! ざまあみろ、ポッとでの若造が! はは、今頃どこぞの路地で物乞いでもしているかも知れんな……そうしたら銅貨でも恵んでやるか! 一枚だけだがな、ハッハー!」
彼は喜びを爆発させる。自分を脅かす者はもういないのだ。
加えてここ数年ミルキア細工師ギルドの業績は右肩上がりで、国内の他ギルドの追随を許さない。今後さらに発展し、これからの数十年……装飾品業界で彼の名前が轟き、その名前が永遠に歴史に刻まれることは間違いないだろう。
「私の時代がついに来たのだ……ヒャーッハッハッハァ! ――む、なんだ人がいい気分で浸っておる時に……入れ!」
ノックされた扉が開き、女性秘書が室内に入って来た為、ゴーマンは表情を戻し話を聞く。
「ギルド長、取り急ぎご報告が……部材用金属の検品や小物部品の加工作業が滞り、後々の工程に支障が出ていて複数の部署が対応に追われています」
「なんだと? ずいぶん急だな……。だが、その位外からどんどん人を雇って対応させろ。今や我がギルドは飛ぶ鳥落とす勢い……金など後でいくらでも儲けられる」
「はい、そのように手配してまいります。それと……ある貴族の方が面会予約を申し出ていますが、いかがいたしましょう?」
「商談か? いいだろう……予定表に入れておけ」
「かしこまりました……では、失礼いたします」
「……行ったか。ププ……ククク、クキャーッキャッキャッキャ!」
秘書である女性が頭を下げて出て行った後も、楽しそうに再び馬鹿笑いを続けるゴーマン。
その顔にはギルドの長たる威厳も、品性の欠片も無かった。
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