36 / 39
Knock my Heart
Knock my Heart⑦
しおりを挟む
「頑張ろうね。」
私は小さな声で、でも2人に聞こえるように言う。2人はコクリと小さく頷く。みんな、緊張しているのだろう。その緊張している2人の姿を見ると、私だけではないという安心感を得る。
「君たち―。緊張してるねー。」
私たちがステージ下で待機していると、知らない女性が声を掛けてきた。長い黒髪にスラっと伸びた手足、キリっとした目に大人っぽがにじみ出ている。
「...そうですね。」
私が小さな声で答える。
「初々しいねー。若さだよ。まぁ楽しんでやりなよ。演奏が全てなんだからさ。」
お姉さんはバーッと言いたいことを言って、手を振りながら去っていった。
「何だったんだろうね?知ってる人?」
お姉さんが去って行ったあと、ずっと黙っていた明音が呟いた。
「私は、知らない。」
千代さんがまず答える。
「私も知らないかな。」
私は答える。
「そっかぁ。でも・・・」
「出番でーす。ステージにお願いします。」
スタッフさんの声に遮られて、明音の言葉の最後は聞き取れなかった。
ステージに上がり、ベースをアンプにつなぐ。そして、一度3人で真ん中に集まる。
「最初、なんて言えばいいかな?盛り上がれーとか?」
明音が言う。
「流石にそれは...。バンド名とか?」
私は、そこでバンド名を付けてなかったことに気づく。
「そっか。終わったら決めようか。今日は適当にあいさつしようか。」
千代さんからの提案に私と明音は頷く。
「おっけー。じゃあ頑張ろうか。」
私たちのバンドでは、こんな感じで、明音が仕切ってくれている。そんな明音の号令で、私たちは位置に着く。
「今日は1曲だけやります。よろしくお願いします!」
明音が芯の通った声で言い、リズムをとる。そして、演奏が始まった。
前奏が始まるところで、私はふと前を見る。お客さんは少なかったが、それでもみんなが私の方を見ている。一瞬、私は足がすくんでしまう。それでも、「もっと上手に」という決意から、食いしばる。食いしばり、周りの音をよく聞く。明音のドラムに合わせて、ベースを弾いていく。
ここからは私の歌の番だ。私は少し息を吸う。そして、もう一度、私はお客さんの方を見る。さっきまでのお客さんと感じが違う。時間は夕焼け時だ。そのオレンジが、お客さんの後ろから輝いている。そう見えていた一瞬、オレンジは大きくなっていき、水のように広がっていく。会場は、プールのようになり、オレンジの水で満たされていく。水位はどんどんと上がっていき、私の腰まで来た。
ふと、私は歌わないといけないと気づき、再び息を吸い、声を出す。声を出してから、私は気が付く。声が小さく、全然張れていない。もっと声を出そうと、大きく息を吸い込もうとする。それでも、もう胸くらいまで来ている水に押され、息をちゃんと吸い込めない。それでも、私は小さな声で歌う。オレンジ色の水に口までつかる。恐る恐る、私は水中で息を吸う。ほとんど空気はない。それで、もう一度、私は観客を見る。視線が刺さる。さっきまで、夕焼けと重なっているようで、少し暖かいとまで感じていた観客が、今では冬の水の中のように冷たく感じる。そして、私の歌パートは終わってしまった。
私は小さな声で、でも2人に聞こえるように言う。2人はコクリと小さく頷く。みんな、緊張しているのだろう。その緊張している2人の姿を見ると、私だけではないという安心感を得る。
「君たち―。緊張してるねー。」
私たちがステージ下で待機していると、知らない女性が声を掛けてきた。長い黒髪にスラっと伸びた手足、キリっとした目に大人っぽがにじみ出ている。
「...そうですね。」
私が小さな声で答える。
「初々しいねー。若さだよ。まぁ楽しんでやりなよ。演奏が全てなんだからさ。」
お姉さんはバーッと言いたいことを言って、手を振りながら去っていった。
「何だったんだろうね?知ってる人?」
お姉さんが去って行ったあと、ずっと黙っていた明音が呟いた。
「私は、知らない。」
千代さんがまず答える。
「私も知らないかな。」
私は答える。
「そっかぁ。でも・・・」
「出番でーす。ステージにお願いします。」
スタッフさんの声に遮られて、明音の言葉の最後は聞き取れなかった。
ステージに上がり、ベースをアンプにつなぐ。そして、一度3人で真ん中に集まる。
「最初、なんて言えばいいかな?盛り上がれーとか?」
明音が言う。
「流石にそれは...。バンド名とか?」
私は、そこでバンド名を付けてなかったことに気づく。
「そっか。終わったら決めようか。今日は適当にあいさつしようか。」
千代さんからの提案に私と明音は頷く。
「おっけー。じゃあ頑張ろうか。」
私たちのバンドでは、こんな感じで、明音が仕切ってくれている。そんな明音の号令で、私たちは位置に着く。
「今日は1曲だけやります。よろしくお願いします!」
明音が芯の通った声で言い、リズムをとる。そして、演奏が始まった。
前奏が始まるところで、私はふと前を見る。お客さんは少なかったが、それでもみんなが私の方を見ている。一瞬、私は足がすくんでしまう。それでも、「もっと上手に」という決意から、食いしばる。食いしばり、周りの音をよく聞く。明音のドラムに合わせて、ベースを弾いていく。
ここからは私の歌の番だ。私は少し息を吸う。そして、もう一度、私はお客さんの方を見る。さっきまでのお客さんと感じが違う。時間は夕焼け時だ。そのオレンジが、お客さんの後ろから輝いている。そう見えていた一瞬、オレンジは大きくなっていき、水のように広がっていく。会場は、プールのようになり、オレンジの水で満たされていく。水位はどんどんと上がっていき、私の腰まで来た。
ふと、私は歌わないといけないと気づき、再び息を吸い、声を出す。声を出してから、私は気が付く。声が小さく、全然張れていない。もっと声を出そうと、大きく息を吸い込もうとする。それでも、もう胸くらいまで来ている水に押され、息をちゃんと吸い込めない。それでも、私は小さな声で歌う。オレンジ色の水に口までつかる。恐る恐る、私は水中で息を吸う。ほとんど空気はない。それで、もう一度、私は観客を見る。視線が刺さる。さっきまで、夕焼けと重なっているようで、少し暖かいとまで感じていた観客が、今では冬の水の中のように冷たく感じる。そして、私の歌パートは終わってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【短編集】こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
神木さんちのお兄ちゃん!
雪桜
キャラ文芸
✨ キャラ文芸ランキング週間・月間1位&累計250万pt突破、ありがとうございます!
神木家の双子の妹弟・華と蓮には"絶世の美男子"と言われるほどの金髪碧眼な『兄』がいる。
美人でカッコよくて、その上優しいお兄ちゃんは、常にみんなの人気者!
だけど、そんな兄には、何故か彼女がいなかった。
幼い頃に母を亡くし、いつも母親代わりだったお兄ちゃん。もしかして、お兄ちゃんが彼女が作らないのは自分達のせい?!
そう思った華と蓮は、兄のためにも自立することを決意する。
だけど、このお兄ちゃん。実は、家族しか愛せない超拗らせた兄だった!
これは、モテまくってるくせに家族しか愛せない美人すぎるお兄ちゃんと、兄離れしたいけど、なかなか出来ない双子の妹弟が繰り広げる、甘くて優しくて、ちょっぴり切ない愛と絆のハートフルラブ(家族愛)コメディ。
果たして、家族しか愛せないお兄ちゃんに、恋人ができる日はくるのか?
これは、美人すぎるお兄ちゃんがいる神木一家の、波乱万丈な日々を綴った物語である。
***
イラストは、全て自作です。
カクヨムにて、先行連載中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる