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1話 嫌われ者
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僕の家は代々黒魔術を継承している。
皆、「黒魔術」という言葉を聞くと、怖い印象だとか、いけないことをしているように聞こえるかもしれない。
黒色が悪いイメージを持っているのだろうか、魔術が自分にとって、何をするかわからないからだろうか。
それとも、黒と魔術が合わさるから、きっと良くないもののように、思えるのかもしれない。
けれど、僕にとって黒色は最高に格好良い色だ。
お気に入りのマントだって、いつも履いていく靴だって、それから髪の毛だって黒色だ。
僕のお気に入りを、他の人がどうこう言うからという理由で、変えたいとは思わない。
そんな権利、誰だって持ってはいない。
魔術だって、そう。
「燃え盛れ、焔の踊り!フレイムラッシュ!」
お父さんがその呪文を唱えれば、まるで炎の精霊がダンスを踊るように、真っ暗だった辺り一体の松明に火をつけて、どんなに先の見えない場所も明るく照らしてくれる。
火の使いみちは僕たち人が決める。
火の魔法を使って火事が起きた時、じいちゃんはそう教えてくれた。
だから、僕たち黒魔術士はいつどこで魔術を使うか、よく考えなければいけない。
「波よ打ち寄せ、大海を鎮めよ!アクアブリーズ!」
これは海の近くでないと効果が発揮できない、ちょっと唱えどころにコツが必要な呪文だ。
でもお母さんは、この呪文を使って、海で溺れかけている人を助けたことがある。
その場にいた人が、皆黒魔術士なら良かったのに。
助けた人の家族の人からは、とっても感謝された。それは僕も嬉しかった。
でも、人魚の逆燐には触れた。
「自然を、何より海を穢すとは、いつかその魔術は災いを呼ぶであろう」だって。
人魚の王様はそう言った。
僕はすごく腹がたった。
お母さんがしたことは、正しいことなのに。
誰かが亡くなることよりも、その手段を僕らは持っているのに、助けることを選ぶことが正しくないだなんて。
それ以来、お母さんは海に近づくことを禁じられた。
飲まなければ、僕ら魔術士全員がそれに該当するって。
お母さんは、僕らのため、その誰かのために禁を受けた。
僕は悔しかった。
お母さんは「仕方がない」と笑っていた。
けれど、その横顔はどこか寂しそうだったことを、今でも覚えている。
お母さんは次の瞬間には、しゃがんで僕と目と目を合わせてからこう言った。
「誰も恨んではダメよ」
恨むってどういうことだろう。
僕が疑問に思っていると、お母さんはえくぼを浮かべて、もう寂しさなんか微塵も残っていないと、僕に伝えるかのようにニコッと笑った。
「それに…自由なる風よ、旅人の道しるべとなれ。エアウィスパー」
柔らかい風は僕らを包むと、身体が宙に浮いていた。
「わぁ…」
「なにも、海がダメだからといって、お空がダメなんて聞いてないわ」
お母さんは、シーッと口に手を当てて、ウインクをした。
それからふっとして、風も止んだ。
「あなたは、自由に生きなさい」
お母さんは、凛とした目で僕にそう告げた。
僕たち黒魔術士は、きっと誰もが黒魔術士になる道を選んできたのだろう。
最初「継承」と、まるでしなければならないことを、仕方がなくしているように聞こえたかもしれないけれど、
僕は、黒魔術士の家系に生まれたことが、とても誇らしかった。
皆、「黒魔術」という言葉を聞くと、怖い印象だとか、いけないことをしているように聞こえるかもしれない。
黒色が悪いイメージを持っているのだろうか、魔術が自分にとって、何をするかわからないからだろうか。
それとも、黒と魔術が合わさるから、きっと良くないもののように、思えるのかもしれない。
けれど、僕にとって黒色は最高に格好良い色だ。
お気に入りのマントだって、いつも履いていく靴だって、それから髪の毛だって黒色だ。
僕のお気に入りを、他の人がどうこう言うからという理由で、変えたいとは思わない。
そんな権利、誰だって持ってはいない。
魔術だって、そう。
「燃え盛れ、焔の踊り!フレイムラッシュ!」
お父さんがその呪文を唱えれば、まるで炎の精霊がダンスを踊るように、真っ暗だった辺り一体の松明に火をつけて、どんなに先の見えない場所も明るく照らしてくれる。
火の使いみちは僕たち人が決める。
火の魔法を使って火事が起きた時、じいちゃんはそう教えてくれた。
だから、僕たち黒魔術士はいつどこで魔術を使うか、よく考えなければいけない。
「波よ打ち寄せ、大海を鎮めよ!アクアブリーズ!」
これは海の近くでないと効果が発揮できない、ちょっと唱えどころにコツが必要な呪文だ。
でもお母さんは、この呪文を使って、海で溺れかけている人を助けたことがある。
その場にいた人が、皆黒魔術士なら良かったのに。
助けた人の家族の人からは、とっても感謝された。それは僕も嬉しかった。
でも、人魚の逆燐には触れた。
「自然を、何より海を穢すとは、いつかその魔術は災いを呼ぶであろう」だって。
人魚の王様はそう言った。
僕はすごく腹がたった。
お母さんがしたことは、正しいことなのに。
誰かが亡くなることよりも、その手段を僕らは持っているのに、助けることを選ぶことが正しくないだなんて。
それ以来、お母さんは海に近づくことを禁じられた。
飲まなければ、僕ら魔術士全員がそれに該当するって。
お母さんは、僕らのため、その誰かのために禁を受けた。
僕は悔しかった。
お母さんは「仕方がない」と笑っていた。
けれど、その横顔はどこか寂しそうだったことを、今でも覚えている。
お母さんは次の瞬間には、しゃがんで僕と目と目を合わせてからこう言った。
「誰も恨んではダメよ」
恨むってどういうことだろう。
僕が疑問に思っていると、お母さんはえくぼを浮かべて、もう寂しさなんか微塵も残っていないと、僕に伝えるかのようにニコッと笑った。
「それに…自由なる風よ、旅人の道しるべとなれ。エアウィスパー」
柔らかい風は僕らを包むと、身体が宙に浮いていた。
「わぁ…」
「なにも、海がダメだからといって、お空がダメなんて聞いてないわ」
お母さんは、シーッと口に手を当てて、ウインクをした。
それからふっとして、風も止んだ。
「あなたは、自由に生きなさい」
お母さんは、凛とした目で僕にそう告げた。
僕たち黒魔術士は、きっと誰もが黒魔術士になる道を選んできたのだろう。
最初「継承」と、まるでしなければならないことを、仕方がなくしているように聞こえたかもしれないけれど、
僕は、黒魔術士の家系に生まれたことが、とても誇らしかった。
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