樹属性魔法の使い手

太郎衛門

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王都魔法学校入学編

ゾロゾロと会場入り

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 進行役のヴィヒレアを先頭にこれから模擬戦を行う六人が後に続いてる。

 さらに後ろからは新入生がガヤガヤとついてきている。
 野次馬根性丸出しの者と後学のためにとまじめな者と、それから黄色い声を発する者達だ。

 興味のない者はそのまま残ったようで、振り返って確認したら、半分も来てないように感じた。マホンとおしゃべり君は姿が見えた。
 それと陰口をたたいていた奴等もしっかりといるようだ。
 だって、まだ陰口が聞こえるし。

 広間から出ると、回廊が続いていく。
 この学校は、敷地内にある建物のほとんどが回廊で繋がっている。
 壁はないが屋根が付いているから、横なぐりの雨くらいじゃなければ屁でもない。
 今は、出てから最初のT字路を右に曲がって直線をひたすら歩いている。
 ふと右手を見ると、像が立っていた。
 足下あるプレートには『初代学校長』と書いてあるのが見えた。
 像は粗削りで顔がよくわからなかった。

 回廊の両脇には等間隔に太い柱が立ち並んでいる。
 柱には貼り紙が何枚も貼られていた。
 通過する度に、貼り紙からはギルドで見たようなホログラム映像が浮かび上がり、様々な宣伝や勧誘をしているようだった。
 少し気になったのは、クラブ活動というものや大陸魔法学校対抗試合、それにダンジョン探索メンバー募集といったところか。

 一つ一つの貼り紙が、派手に大袈裟に作られ、通過する人達の目に止まるようにしっかりとした工夫が凝らされていた。
 それだけに、目を奪われて人と人とがぶつかってしまうことなんて日常茶飯事ではないのだろうか。
 後ろの集団からも、「イテッ!」「早く進めよ」「余所見すんな!」といった声が聞こえてくる。

 そして歩き続けること五分。
 気づけば正面に、白塗りの壁に真っ赤な扉の付いた建物が見えてきた。染み一つもなく真っ白の壁だ。
 炭で落書きでもしようものなら、あのドアからおっさんが顔を覗かせて、「ここに書いたのは誰だ!」とか言うのだろうか。

「はい。 では、みなさんにはこの建物の中で一対一で闘ってもらいます。ここは、教師も使用しますが主に生徒達用の実技訓練所です。 建物はドーム状になっていて、壁には特殊な刻印ルーンが刻まれています。 それによってかなりの硬度があり、魔法にも物理攻撃にも耐性があるので、建物には気を使わずに攻撃していただいて大丈夫です。
 それと、地面にも回復用の刻印ルーンが刻まれていてすぐに傷は治ります。即死でない限りは死ぬことはないので、存分に戦ってください。
 ではルールですが、どちらかが戦闘不能になるか相手を降参させたら終了とさせていただきます」

 ヴィヒレアさんが、入口の手前で振り返って説明をしてくれる。
 そして、説明が終わると扉を開いて中へと先導してくれた。

 中は床も天井もまた壁と同じく真っ白だった。
 壁は分からないが、床には一面に巨大な魔方陣が描かれていた。あれが回復の刻印ルーンなのだろう。

 そして、ぐるっと囲むように設けられた観客席は、階段状に造られ数えるのも面倒なほどの数がある。
    被害が及ばないように高い位置に作られ、観客はこちらを見下ろす形になっている。
 そしてその席のいくつかには、既に先客が座っていた。
 俺達が来るよりも早く到着していたようだ。
 新入生を受持つ十人の教師達。
 
    先に出たのは俺達なのに、どうやって早く着いたのだろう?
 抜かされた記憶もないし、ルートは一本だったと思ったのだが。
 秘密の地下道でも作られていて、俺達が出ていったのを確認してから必死にそこを走ったのだろうか。
 今は平然としてるように見えるが、実はあの見える服の中は汗でビチョビチョなのかもしれない。
 ビチョビチョで気持ち悪くて早く帰りたいのかもしれない。
 だからなんだってんだ。

 先生達の他にもちらほらと座っている人が見える。
 そして遅れて新入生の野次馬君達も席へとついた。

「これは……先生達がいるのは当たり前なのですけど、他に上級生の姿も見えます。
    えーっと……、生徒会のメンバーがいますね。
    それから他の人は…あー、おそらく、クラブや探索メンバーの勧誘を兼ねて視察といったところでしょうか? 
    みなさんの中に興味のある人がいたら、アピールのために力を見せつけてやりましょう」

 ヴィヒレアさんは俺達六人へウィンクを向けてきた。
 その顔はとても素敵だ。
 よく見ればヴィヒレアさんは綺麗な顔をしている。
 しかも、割りと若いのではないだろうか。

「あの、ヴィヒレア先生。 質問いいでしょうか」
「はい、何ですか」
「先生のお歳はいくつでしょうか」

 にこやかだった、先生の顔がスッと冷たい空気を纏う顔へと変貌した。

「さあ、試合をはじめますよ」

 俺を見るみんなの視線が痛い。
 聞いたっていいじゃんね。
 まだ子供なんだし。


 試合は六人が一対一で行う三回戦だ。
 大会でもないし、個々の力を見るだけだからトーナメントでも総当たり戦でもない。

「では、対戦カードですが……どうしましょうね。……先にやりたい人!」

 ヴィヒレアさんがそう言うと、すぐに挙手をしたのは二人。
 二人とも赤い髪をした男の子と女の子だ。

「じゃあ、まずは……えっと……」
「デーンです」
「メラーです」
「そうね。 デーン君とメラーちゃんからやりましょう。それが終わったら次は……」

 残りの俺達を見るヴィヒレアさん。しかし、誰も手を挙げない。

「あ、じゃあ自分が……ナランチです」

 そう言うのは頭が橙色の少年だ。
 俺も最後で目立ちたくはないな。
 しかし、火属性系統多いな。
 俺以外の全員が赤か橙だ。 

「じゃ━━」
「俺も次でお願いします。ヴェルデです」

 俺はとられまいと急いで声をあげた。
 残ったうちの一人が名乗り出そうとしたのを、俺は声を張り上げてかぶせてやった。
 ちょっと悔しそうに見える。

「はい、二回戦はナランチ君とヴェルデ君。 最後は……」
「ソルフ・アレキサンドリアだ」
「……スンタラ…です」
「ソルフ君とスンタラ君が最後ですね。では、気合いを入れて頑張りましょー。 デーン君とメラーちゃんは真ん中へ移動してください」 

 二回戦をとられたスンタラ君は、何か言いたげな顔をして俺を見つめている。
 最初も嫌だけど、最後も嫌だったのかな。なんかごめんなさいね。
 ちなみにスンタラ君も頭が橙色で、熔属性だ。

 その間にフィールドの中心へ移動し、準備の出来た二人は相対する。
 二人ともガチガチに緊張しているように見える。
 掛け声の一つでもかけたほうがいいのだろうか。
 いや、そんなことをしたらお前は何様だって思われちゃうか。
   余裕な態度をみせていたら、その態度は気に食わねえとか言われていじめの標的にされてしまうかもしれない。
 ここは演技で緊張したふりをして、怯える小動物のような態度をしておこう。
 サービスに膝なんかぷるぷると震えさせちゃう。

 もちろん、そんな俺に注目してる奴なんて誰もいないわけで、これから戦闘をする若い二人にみんな釘付けだ。
 いや、一人こっちを見てる奴がいた。
    マホンだ。

 急に恥ずかしくなった俺は、まじめに観戦することにした。

 二人はよろしくお願いします、と挨拶をすると距離を開いた。
 審判はヴィヒレアさんではなく、どこから現れたか分からないがどうやら上級生の一人らしい。

 そしてその上級生が片手をあげ、振り下ろした。
 試合開始の合図だ。
   ドーム内へ響き渡る声。

「始めっ!!」

 二人は愛用であろう触媒用の道具を構えている。
 双方ともに短い杖だ。
 そしてブツブツと口が動いているのが見えるが、遠くて言葉は聞こえない。
 もちろん詠唱だろうが。
 二人とも移動することはなく、その場で相手に杖先を向けたままブツブツだ。
 動きはなく、これじゃ先に発動したほうが勝つだけのゲームだ。
 戦闘とは言えない。

 とか考えていたら、デーンの杖が少し光り魔法が発動する。
 次の瞬間親指の先ほどくらいの火の玉が飛んでいった。
 会場からどよめきが聞こえてくる。

 対するメラーも魔法が完成する。
 杖が光り、これまた子供の小指サイズの火の矢がのろのろと敵を目指し飛んでいった。

「ファイアボールとフレアアローか。 なかなかやるな」

 そんなことを呟くソルフ。
 これでなかなかやってるんだ??
 

    ……そうか。
    こりゃあまいったな。

 ここで、俺はあることに気づく。
 そう言えばここって、室内で土もないため植物は生えていない。観葉植物も一切ない。操れるものがない。

 地面の草でも利用しようと思っていたのにどうしようか。
 風属性魔法にするか……?
 しかし、思った通りに魔法の基準は低い。
 目立たないように……は無理かな。

 俺はキョロキョロとしていると、その内に勝負はついてしまった。
 二発目を発動しようとしたデーンが魔力不足で白目を剥いて気絶したのだ。
 次は俺の番だ。

 さて、どうしようか…。
 
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