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王都魔法学校再入学編
三番目の子
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内面的な異常。
それを生まれた瞬間に気付くことはまず不可能だろう。
ただ泣いているだけの、赤ん坊としての内面に、他との違いを見つけるのは難しいからだ。
では、いつそれを異常と思うのか、認めるのか。
それは異常な行動をとった、もしくは本人がそれに気付いた時である。
本来、内面とは育った環境によって形成されていく。
しかし、内面に異常がある者は環境に関係なく、独自の性格を有している。
残忍であったり、冷酷、非情、猟奇的。
それらが異常性な内面として、一番厄介であると言えた。
外見的な異常。
それは生まれた瞬間に誰もが気付く。
奇形であればもちろん、肌や目の色などが違えば一目瞭然だ。
そして、この世界においては希に髪の色が異常である者が生まれる。
明らかに親の遺伝子では生まれることはない色だ。
そして、そういった子供に共通するのが、生まれつき備えている特殊な能力である。
強靭な肉体であったり、膂力が並外れていたり、
俊足であったり、魔力過多だったり、動物の体の一部を持っていたり、馬の耳だったり、念仏だったり。
地獄耳、千里眼、透視、テレパシー、念動力、発火能力、発汗能力、不眠不休。
過去を見ればそれは多様だ。
一部、三ツ目族と被るが。
そうした神通力とも超能力とも言われる力を生まれつき持つ子供達。
使える能力にしろ、使えない能力にしろ、この世界において『超人』と呼ばれる存在となる。
そして、その中でも禍々しい力を持つ者を忌み子とし、『禍々しい人』と呼ぶようになった。
さらに禍々しい人は年月と共に『禍人』と呼ばれるようになり、いつしか禍人は『魔人』と名を変えていった。
┼┼┼
ある一人の男の子がこの世に生を受けた。
その家庭には既に兄と姉がおり、三番目の子だった。
兄と姉の能力は並み。
英才教育を受けてきたことで、二人とも多少頭はいいが普通の人とそんな遜色はなかった。
父はそんな二人にはさほどの期待をしていなかった。
そして三人目を授かった日、とある占い師から『超人』が生まれると言われ、彼に大きな期待を込めた。
その時点で父はもう、家督を三番目にと決めていた。
そして出産の日、部屋の外で父が今か今かと待っていると、産声をかき消すほどの悲鳴が轟いた。
兄と姉も取り上げたことのある産婆の第一声が「ま、魔人!!」であった。
父は耳を疑った。
超人の間違いじゃないのかと。
しかし、目にした三番目の子は、人間であるのにも拘わらず、魔族の持つ髪色、漆黒であった。
正確には、その時点では超人とも魔人とも呼んでいいのか分からなかった。
『能力』があるのかどうかも分からないし、あったとしてもそれが忌々しい力なのかも分からない。
もちろん内面も知り得ない。
それなのに、父と産婆は魔人という判断を下してしまった。
見た目はどっからどう見ても人間であったのに、髪の毛が魔族の象徴と言える黒髪であったという理由だけでだ。
人間で黒髪は聞いたことも見たこともなかったから。
ただそれだけなのに、忌み子として扱われたのだ。
父は彼を避けた。
母は彼を愛した。
凡人の兄と姉に代わり、全てを引き継がせると父は決めていたのに、家督は長男に決まっているとし、彼を幽閉してしまう。
彼はある塔の最上階へと連れられ、そこで人生の全てを過ごすことを命じられた。
┼┼┼
三番目の子は悩み苦しみ、そして嘆いた。
自分は悪くないのに、と。
こう仕向けた父が憎いと。
同じ人間でありながら、のうのうと暮らす人間が憎いと。
もともと、内面的な異常があったのかもしれない。
それを塔での生活が拍車をかけたのかもしれない。
普通な人生を歩んでいたら、普通の人間だったのかもしれない。
しかし、それはもう誰にも分からない。
誰にも言わず、いや、言えず、三番目の子は順調にというべきか、歪んだ性格を着々と形成していった。
そしてある日のこと、彼はいつものように小さな四角に切り取られた壁の穴から、いつもと変わらない風景を見ていると、ふと、何かが目の前を横切ったような気がした。
ここは地上からは相当な高さのある塔。
それも最上階。
空を飛べる人間がいるとは思えない。
だから、三番目の子は気のせいだと思うことにした。
気を取り直し、また同じように外を見た──その時だった。
向こう側からこちらを見つめる目があった。
気持ち悪い。
それが普通の人の感想だ。
しかし。
──面白い。
それが三番目の子の感想だった。
普通なら恐れおののくのだが、三番目の子は違った。
その目から逸らさなかったのだ。
塔で暮らす三番目の子には恐怖というものが無かった。
暇潰しにと置いてくれたあらゆる本を読み、知識はあるが感情が乏しかったからだ。
圧倒的な経験不足。
しかし、そんな三番目の子にも感情はある。
心を埋める感情は三つ。
興味と怒りと怨み。
ただそれだけだった。
興味が勝った三番目の子は、その視線の先にいる者を招き入れた。
ただ、どうやって入ってきたのかは三番目の子にも分からなかった。
気付けばソレは中にいた。
───父をコロセ。兄を、姉をコロセ。力の使いカタを教えてヤル。
三番目の子の耳元でそう囁き、ソレは嗤っていた──。
それから三番目の子は幾年かをさらに塔で過ごし、元々備えていた『力』の使い方を覚え、塔を抜け出したのだった。
┼┼┼
王都アヴィニオン、現国王、ユオダス・グランダルム。
前王の三番目の子供にして、王の血を引く唯一の生き残り。
国が所有する王都の一角にある塔に幽閉されていたはずの彼は、忽然とその姿を消し、ある悲劇の事件後にふらっと現れ"王位"を継承した。
悲劇とは、王族が皆殺しにあった事件らしい。
犯人は未だに捕まらず、それについてもドライ先生に疑いがかかっているようだった。
黒髪を持ち、『魔人』として親類からは忌み嫌われていたユオダスだが、その政治手腕は父である前国王を凌ぐとも。
それもあってか、国王としては日は浅いが国民からはそこそこに慕われているとかなんとか。
そして彼の隣に立つ謎の男、シュヴァルツ。
彼もまた、ユオダスと共に現れ、気付けば宰相という位に就いていた。
ユオダスの政治力はシュヴァルツに依るものが大きいのではないかとも噂されている。
と、ここまでが王都に到着して俺が集めた情報だ。
ベッドにダイブしつつ、手に入れた情報と有り余ったお金を整理中。
今は街にある宿の一室で寛ぎ中の俺だが、どうして金があるのか。
それは、『マリン草』とかいう薬草が高額で取引されているのを目撃し、試しに作ってみたらあっという間に稼げてしまったからだ。
この世界にある理由は分からないが、あれは紛れもなく魔界の薬草。
謎。
何かの影響で突然生えたのだろうか?
……わからない。
まぁそんなことはさておきだ。
とりあえずやらなきゃいけないことは、家へ一度帰ること。
それにドライ先生について調べないと。
父は母は、それにマオは元気にしているだろうか。
兄は今何をしているのだろうか。
マホンとピュールさんのことも気になるな。
まず行くべきは家、学校、ギルドか……。
それを生まれた瞬間に気付くことはまず不可能だろう。
ただ泣いているだけの、赤ん坊としての内面に、他との違いを見つけるのは難しいからだ。
では、いつそれを異常と思うのか、認めるのか。
それは異常な行動をとった、もしくは本人がそれに気付いた時である。
本来、内面とは育った環境によって形成されていく。
しかし、内面に異常がある者は環境に関係なく、独自の性格を有している。
残忍であったり、冷酷、非情、猟奇的。
それらが異常性な内面として、一番厄介であると言えた。
外見的な異常。
それは生まれた瞬間に誰もが気付く。
奇形であればもちろん、肌や目の色などが違えば一目瞭然だ。
そして、この世界においては希に髪の色が異常である者が生まれる。
明らかに親の遺伝子では生まれることはない色だ。
そして、そういった子供に共通するのが、生まれつき備えている特殊な能力である。
強靭な肉体であったり、膂力が並外れていたり、
俊足であったり、魔力過多だったり、動物の体の一部を持っていたり、馬の耳だったり、念仏だったり。
地獄耳、千里眼、透視、テレパシー、念動力、発火能力、発汗能力、不眠不休。
過去を見ればそれは多様だ。
一部、三ツ目族と被るが。
そうした神通力とも超能力とも言われる力を生まれつき持つ子供達。
使える能力にしろ、使えない能力にしろ、この世界において『超人』と呼ばれる存在となる。
そして、その中でも禍々しい力を持つ者を忌み子とし、『禍々しい人』と呼ぶようになった。
さらに禍々しい人は年月と共に『禍人』と呼ばれるようになり、いつしか禍人は『魔人』と名を変えていった。
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ある一人の男の子がこの世に生を受けた。
その家庭には既に兄と姉がおり、三番目の子だった。
兄と姉の能力は並み。
英才教育を受けてきたことで、二人とも多少頭はいいが普通の人とそんな遜色はなかった。
父はそんな二人にはさほどの期待をしていなかった。
そして三人目を授かった日、とある占い師から『超人』が生まれると言われ、彼に大きな期待を込めた。
その時点で父はもう、家督を三番目にと決めていた。
そして出産の日、部屋の外で父が今か今かと待っていると、産声をかき消すほどの悲鳴が轟いた。
兄と姉も取り上げたことのある産婆の第一声が「ま、魔人!!」であった。
父は耳を疑った。
超人の間違いじゃないのかと。
しかし、目にした三番目の子は、人間であるのにも拘わらず、魔族の持つ髪色、漆黒であった。
正確には、その時点では超人とも魔人とも呼んでいいのか分からなかった。
『能力』があるのかどうかも分からないし、あったとしてもそれが忌々しい力なのかも分からない。
もちろん内面も知り得ない。
それなのに、父と産婆は魔人という判断を下してしまった。
見た目はどっからどう見ても人間であったのに、髪の毛が魔族の象徴と言える黒髪であったという理由だけでだ。
人間で黒髪は聞いたことも見たこともなかったから。
ただそれだけなのに、忌み子として扱われたのだ。
父は彼を避けた。
母は彼を愛した。
凡人の兄と姉に代わり、全てを引き継がせると父は決めていたのに、家督は長男に決まっているとし、彼を幽閉してしまう。
彼はある塔の最上階へと連れられ、そこで人生の全てを過ごすことを命じられた。
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三番目の子は悩み苦しみ、そして嘆いた。
自分は悪くないのに、と。
こう仕向けた父が憎いと。
同じ人間でありながら、のうのうと暮らす人間が憎いと。
もともと、内面的な異常があったのかもしれない。
それを塔での生活が拍車をかけたのかもしれない。
普通な人生を歩んでいたら、普通の人間だったのかもしれない。
しかし、それはもう誰にも分からない。
誰にも言わず、いや、言えず、三番目の子は順調にというべきか、歪んだ性格を着々と形成していった。
そしてある日のこと、彼はいつものように小さな四角に切り取られた壁の穴から、いつもと変わらない風景を見ていると、ふと、何かが目の前を横切ったような気がした。
ここは地上からは相当な高さのある塔。
それも最上階。
空を飛べる人間がいるとは思えない。
だから、三番目の子は気のせいだと思うことにした。
気を取り直し、また同じように外を見た──その時だった。
向こう側からこちらを見つめる目があった。
気持ち悪い。
それが普通の人の感想だ。
しかし。
──面白い。
それが三番目の子の感想だった。
普通なら恐れおののくのだが、三番目の子は違った。
その目から逸らさなかったのだ。
塔で暮らす三番目の子には恐怖というものが無かった。
暇潰しにと置いてくれたあらゆる本を読み、知識はあるが感情が乏しかったからだ。
圧倒的な経験不足。
しかし、そんな三番目の子にも感情はある。
心を埋める感情は三つ。
興味と怒りと怨み。
ただそれだけだった。
興味が勝った三番目の子は、その視線の先にいる者を招き入れた。
ただ、どうやって入ってきたのかは三番目の子にも分からなかった。
気付けばソレは中にいた。
───父をコロセ。兄を、姉をコロセ。力の使いカタを教えてヤル。
三番目の子の耳元でそう囁き、ソレは嗤っていた──。
それから三番目の子は幾年かをさらに塔で過ごし、元々備えていた『力』の使い方を覚え、塔を抜け出したのだった。
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王都アヴィニオン、現国王、ユオダス・グランダルム。
前王の三番目の子供にして、王の血を引く唯一の生き残り。
国が所有する王都の一角にある塔に幽閉されていたはずの彼は、忽然とその姿を消し、ある悲劇の事件後にふらっと現れ"王位"を継承した。
悲劇とは、王族が皆殺しにあった事件らしい。
犯人は未だに捕まらず、それについてもドライ先生に疑いがかかっているようだった。
黒髪を持ち、『魔人』として親類からは忌み嫌われていたユオダスだが、その政治手腕は父である前国王を凌ぐとも。
それもあってか、国王としては日は浅いが国民からはそこそこに慕われているとかなんとか。
そして彼の隣に立つ謎の男、シュヴァルツ。
彼もまた、ユオダスと共に現れ、気付けば宰相という位に就いていた。
ユオダスの政治力はシュヴァルツに依るものが大きいのではないかとも噂されている。
と、ここまでが王都に到着して俺が集めた情報だ。
ベッドにダイブしつつ、手に入れた情報と有り余ったお金を整理中。
今は街にある宿の一室で寛ぎ中の俺だが、どうして金があるのか。
それは、『マリン草』とかいう薬草が高額で取引されているのを目撃し、試しに作ってみたらあっという間に稼げてしまったからだ。
この世界にある理由は分からないが、あれは紛れもなく魔界の薬草。
謎。
何かの影響で突然生えたのだろうか?
……わからない。
まぁそんなことはさておきだ。
とりあえずやらなきゃいけないことは、家へ一度帰ること。
それにドライ先生について調べないと。
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