樹属性魔法の使い手

太郎衛門

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王都魔法学校再入学編

樹クラスの面々

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 知っている顔は二人。
 それも覚えていたわけじゃなく、最近覚えた顔。
 ピュールさんとパーティーを組んでいるらしいドンナーという男。
 それと、その隣にいる俺を変態扱いする彼女、たしかシャーロット。
 そして信じられないが、その彼女こそがマホン。
 あのマホン。
 体型も変わっていて全然わからない。
 というか、性別が変わっていてわかるはずもない。
 いや、性別は変わってないか……。
 今も振り返り、俺をひたすらに睨み付けているわけだが、駄々漏れの殺気。

 これは……護衛とかいらないんじゃないか?

 俺は階段状になっている席の一番後ろ、最上段に座り、教室内を見下ろす形となっているのだが、二人以外に見覚えのある生徒はいない。
 クラスのメンバーが代わることは基本的にないのだから、顔を見知ってる奴がいてもおかしくはないのだが、さすがに数日通ったくらいじゃ覚えちゃいない。
 覚えちゃいないが、少しくらい記憶の端っこにひっかかっててもおかしくない程に個性的なのが数名いるけどね。

 斜め前に座っている赤色の髪で、目元が隠れているのが印象的な女の子。
 ブツブツとひたすらに何かを呟いている。
 悪魔でも召喚するのだろうか。

 俺が見ていると、視線を感じたのか彼女はこちらをチラリと見た。
 しかし、すぐに興味を失ったように視線を戻し、またブツブツと悪魔召喚を始めた。
 召喚はしてないけどね。

 俺と同じ後ろの席、窓際の一番端に座るのは、二人の少女。
 たぶん双子だ。
 若干の違いはあるが、似た顔をして同じ髪型をして、同じ格好をしている。
 頭は青色。

 片方は怪訝な目で俺を見ている。
 少しつり目で口をくっちゃくっちゃとし、机の上に足を乗せながら、ふんぞり返っている。

 もう片方はタレ目。
 俺には一切興味がないのか、机に向かい黙々と本を読んでいる。

 顔のパーツに違いはあるけれど、こんなにもよく似て印象的な双子なら少しくらい覚えていてもおかしくはないのだが。

 つり目の方が俺を見飽きたのか、チッと舌打ちをして前に向き直った。

 俺の回りには舌打ちする奴が多い気がする。

 まぁそれはさておき、特に印象深い最後の一人。

 どこかで見た事のあるような彼。
 橙色の頭で丸い眼鏡をつけている。
 俺の斜め前に座り、上半身をこちらに捻った彼は、ひたすらに俺を見ていた。
 俺も負けじと見つめ返す。
 すると、彼は目を見開きガタンと立ち上がった。
 もしかして、ケンカ売られちゃう?

 机に膝をぶつけ、その勢いで消しゴムが転がっていくが彼は気にしていない。
 というか、見えていない。
 見えているのは俺だけのようだ。
 一目惚れでもしてしまったかのように。
 もしかして、そっち系?

 彼は俺を指差し、口を大きく開いた。

「ヴェ、ヴェ、ヴ───」

 先生の言葉に聞き耳を立てていた生徒達だが、その音源に一気に意識を持ってかれ、その言葉の対象になるものへ皆が一斉に振り向いた。

 俺は机に飛び乗り、一瞬にして彼との距離を詰めた。
 口を塞ぎ、先生から見えないようにして腹パンを叩き込む。 

「ぐふっ」

 先生を含めた全員の視線を独り占めすることにはなったが、彼に最後まで言わせることはなく、途中で阻止することに成功した。

 なんだこいつ。

「どうした!?」
  
 先生だ。
 ビックリした顔をして声をあげた。

 そりゃそうだろう。
 突然立ち上がり、急にぐふっと言いながら腹を抱えこむようにして踞っているからな。

 慌てず動揺せず対応する俺。

「いえ、何でもありません! 彼が腹痛みたいで」

 すると、先生は急いでこっちへとやって来た。
 そして、腹を抱えて唸る彼へと声をかける。

「おい、ナランチ。 どうした?大丈夫か?」

 ナランチ?
 たしか……杖を貸したあのナランチ?
 いやいや、クラスが違うはずだから別のナランチか。
  
「だ、大丈夫です」

 ナランチは苦しそうにしながらも俺へとウィンクを見せ、先生へと返答をした。
 そして、懐からチラリと黒い杖を俺に見せてきた。
  
「そ、そうか。 辛いようなら医務室へ行くんだぞ」
「はい……ありがとうございます」
  
 あのナランチじゃん。
 借りパクのナランチじゃん。
 どうやってクラス替えを……いや、そんなことはどうでいい。
 それよりも何で彼には俺が分かった?
 認識阻害しているはずなのに。

 と、そこでバンッと、何かで机を叩きつけるような音がした。

 俺は思わずそちらに顔を向ける。

 つり目の少女が、机に片足だけを乗せていた。
 片足は机の下。
 ローブからのぞく生足が実に艶かしい。

「さっきから目障りなんだよっ!」

 おっ、ということらしいですぞ、ナランチくん?

「オメーが来てから騒がしいし、話が進まねーんだよ」
  
 そして、唇を尖らせプッと口に入っているものを
 飛ばしてきた。
 しかし、俺は頭を少しずらしただけであっさりとソレを躱す。

「ひぃや!」

 口から飛びだした物は、ものの見事にナランチの頬にペチャリと命中した。
 ナイッショ!
  
 これで彼女の溜飲が下がっ──

「避けてんじゃねーよっ!」

 ってねーし。
 つーか、俺かいっ!
 俺が来てから…ああ、俺だ。

「まぁまぁ、スィーニーさん。 落ち着いてください」
「チッ。 先生、シーニィだよ。スィーニーはこっち。間違えんな」

 シーニィは、親指でクイッと黙々と本を読んでいる隣の片割れを指した。

「アンタも十分騒がしいよ。 空気を読め」
  
 おいおい、落ち着きそうだったのにまたしゃしゃり出てくる奴がいるし。
 あなたが空気を読もうよ……。

「あ? やんのかテメー」
「ハッ! 何かときたらすぐにやるのかか。 それしか言葉はないのか? スィーニー」
「テメー……シーニィだっつってんだろ! バカか」

 教室のちょうど中心あたりに座る彼は、スッと立ち上がりシーニィの方へ振り返った。
 そして、ブラウンの前髪がかかる眼鏡を人差し指でクイッと少し押し込むと、鋭い眼光を浮かべた。

「バカはお前だ。 俺は天才だっ、バカ」

 バカの応酬。

 彼はどうやら天才らしい。

 すごいな。
 あんなに堂々と自分で天才って言っちゃうんだ。
 しかし、何がどう天才なのだろうか。
 興味はないが。

「ぶっ殺す! 表へ出ろっ!」

 今にも飛び掛かりそうな勢いで立ち上がるシーニィ。
 と、そこでパンパンッと手を叩く音が鳴った。

「はい、そこまでです」
  
 止めたのもちろん先生だ。
 にっこりと微笑む顔は何故か恐さを感じる。

「──先生! 前々からこいつには我慢ならねーんだ!」 
  
 シーニィは、先生が手を叩いたくらいでは気が削がれたりはしなかった。
 先生にまで噛みつく彼女。
  
「……分かりました。 では、先生から少しお話をさせてください」
  
 シーニィは先生の言葉に黙って席についた。
 腕を組み、イライラした様子は変わらないが。
  
「みなさんも知ってることと思いますが、もうすぐ"魔法学校四競技大会"が行われます。  そして、みなさんは五年生となったので、今年から出場権が与えられました。なので、それに先だって選抜試験を行いたいと思います」

 先生の言葉にザワザワする教室内。

「ということで、来週の頭にみなさんには選抜というなの模擬戦をしてもらいますので、そこでシーニィさんとペラン君は思う存分に戦って下さい。 どうですか?それでいいですか?」
  
 シーニィからは反対の言葉は出なかった。
 その相手となる眼鏡の彼、ペランからも特に言葉はなかった。
 それがお互いに承諾したということなのだろう。
 暗黙の了解。

 そして静かになった二人とは違い、教室内のざわつきはより一層強くなったのである。
  
「ねぇ、ヘンタイさん」
  
 ざわつく教室内で唐突にハッキリと聞こえるその言葉。
 ただし、それがまさか俺のことだなんて微塵も思わないわけで、俺が反応一つしないでいると、睨む視線と俺の視線がバッチリと合う。
  
「アンタよ、アンタ」
  
 真っ直ぐに突き刺さる人差し指。

 人に向けて指を差しちゃいかんよ。
 習わなかったのかな?

「お、俺?」
「そう。 アンタは私とやるのよ。 ギッタギタにしてやるわ!」
「えっ! シャーロット、大会に出るつもりなの?」

 驚いた声をあげるのは、シャーロットの隣にいるドンナーだ

「出るわ。 悪い? ドンナーも出るのよね?」
「いや、まぁ、俺はそうだけど…シャーロットは経営学とかばっかり学んでて、そっちの道行くんだから関係ないだろ?」
「………」

 黙ったかと思えばまた俺をキッと睨み付けてくる。
  
「アイツをぶっ飛ばしたいのよ…」

 チラッと見える机の下で握る拳は、プルプルと小刻みに震えていた。

「ああ……、そういうことなら俺に任せろ。 俺の、いや、シャーロットの揉まれた恨みは俺が晴らしてやる」
「……あ、ありがとう。 でも、自分でやりたいのよ」
「俺だって揉んでないのに……えっ? ああ。え?」
「………。 もういいわ、自分でやる」
  
 こうして、俺の意思とは関係なくトントンと話は進んでいった。
 まぁ、揉んだ俺が悪いのか?
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