樹属性魔法の使い手

太郎衛門

文字の大きさ
68 / 68
魔法学校四競技大会編

選抜戦

しおりを挟む
 週が明けた。
  
 いつものように振る舞って俺は登校する。

 まだ馴染めない教室は、魔法四競技大会の話で持ちきりだった。
 教室に限らず廊下でも外でも、なんなら学校に来るまでも、 そのことを口にする人々で溢れ返っていた。
 競技についての話題がほとんどを占めているわけであるが、今年は例年とは違い、あることが注目されている。
 それはもちろん他国の王族についてだ。

 皆興味津々。
 そりゃそうだ。
 他種族が、ここ王都に出入りすること自体珍しく、ましてや王族が全て集まるというのは、後にも先にも初めてのことであったから。
 競技に興味がなく、四競技大会をどうでもいいとさえ思っていた俺だって、その話が聞こえようものなら少し耳を傾けてしまう。
 正直、少し大会の日が待ち遠しくも感じていた。
  
「───ねぇ! 聞いてるの?!」
  
「イタッ!」
  
 俺は隣にいる女性から突如として肩にパンチを喰わせられた。
 言わずもがな、シャーロットだ。
 何故か教室に着くなり、先に着席していた彼女へと隣に座らされた。
 そして、そのまま実技訓練所へと首根っこを掴まれ連れていかれることとなった。

「アンタね、次、私とやるんだからね?  ったく、しっかりしなさいよ! 呆けててあっさり負けたりなんかしたら許さないんだからね!」

「はぁ……」
  
 今、俺達の目の前ではまさに模擬戦が繰り広げられている。

 一組あたり十五分程度だろうか。
 言っちゃ悪いが、どれもこれもあっさりしたものだ。
 死に直結するような、ヒヤヒヤするものなど今のところ一つもない。
 ──ぬるい。
 それが久々の学校で見た模擬戦の最初の感想だった。
 それ以降は申し訳ないが全く見ちゃいない。
 いや、一応ここで観戦しているから視界に入っているのだが、全然頭に入ってこないのだ。
 正直、どうでもよかった。

 屋敷に行ってからは、さっさと寮へと帰り、その後はずっと悶々としていたわけで、結局次の日もそれが晴れることなどはなく、実家に帰ることも忘れ引きこもってしまった。
 ただ、やはり無事なことだけは知らせたくて手紙を出しておいた。
 無事とかの前に心配をしているのかどうか知らないが。
 まぁ、数年も連絡一つしていなかったのだから、とりあえずはそれだけでもよいだろう。

「──では、ブラク君、シャーロットさん! 中央へ!」
  
 先生の声が会場内へ響き渡る。

 実技訓練所に到着してからも考え事に耽っていたら、いつの間にやら俺の番となっていた。

 ちなみにうちクラスで注目の対戦カードとなっている、シーニィとペランは大取りとなっている。
 別に二人が実力者だからというわけではなく、あれだけ騒いだもんだから注目されてしまった。
 とはいえ、ペランは天才らしいから楽しみだ。

 さっさと適度に負けて彼らの試合へと回そうかな。
  
 と、思っていたのだが。

「──その試合ちょっと待った!!!」

 中央へと歩み始めた途中、突如としてかけられたのはまさかの待ったコール。

 俺は足を止め振り返った。

 透き通るような白い肌。
 艶のある髪を首に流した可憐な少女。
 身長は俺と同じぐらいか。
 ピンクの唇に、キュッとした顎ライン。
 綺麗なパーツで形作られた顔立ちは、美少女の一言。
 ゆったりとしたローブを着ているが、ラインが浮き出るほどに胸はそこそこ。

 そんな彼女が俺の方を見ていた。

 よく見れば、視線は俺ではなく、俺の後ろにいる人物に向いていた。
 声の発生元である男を見ていた。

 そうなんです。
 待ったをかけたのは男なんです。

 いやー、ドームで反響して分かりづらかったとはいえ、正面から声を掛けられたのに振り返ってしまうなんてお恥ずかしい。

 少女はただのは観客だな。
 同じクラスメイトで、たぶん観客だ。
 というかあんな子、クラスにいたんだろうか。
 全く気付かなかった。
 あんなに可愛いのに。

「何でしょうか?」

 少女のことはとりあえずどうでもいい。

 問題はこの男だ。
 大柄で筋肉質、腰に携える武器は杖というより棍棒。
 最早、魔法使いというより戦士だ。というか、オーガだ。ケダモノだ。
 こんなケダモノがクラスに潜んでいたとは。
 あの少女以上に驚きだぜ!へっ!

 しかし、俺はどうだっていいのだが、やる気に満ちていたのに水を注されたシャーロットが怒り狂った顔になってしまったじゃないか。ばかっ!

「──わ、我と勝負を代わってくれんか!」

「えっ? 俺とやるということで?」

「い、いや、貴殿ではござらん! シャーロット殿と一戦をば! そしてあわよくば一線をば」

 コイツ、何をイッテンダ?

 だが、まぁそれならオッケイだろう。
 やらなくていいならそれがよいよい。

「あんたね、何言ってんのよ! 気持ち悪い!」
  
 眉をハの字にしたシャーロットさんだ。
 腰に手を当て、怒り心頭といったところだ。
  
「……お願いします…。 シャーロットさんとやらせて頂き、我が勝ったらお付き合いください……そして一線を…フカフガ──」
  
 告白ですか。
 鼻の穴を膨らませてフカフガしやがって。
  
「…………ちっ。 受ける義理もないけど、面倒くさくなりそうだから、いいわ。受けてあげる」
  
 シャーロットは心底嫌そうな顔をしている。

「あ、あざっす!」

 あっさり上手くいくとは思わなかったのか、逆に驚いた顔をしている男。
  
「──ただし! その男、ブラクに勝ったらやってあげるわ!」
  
 ………はっ?
 えっ、とばっちり?
  
「すいません、腹痛が……あっ、漏れそうです。やばいです。キツイです。というわけで、あちきはこれにて───」
  
 馬鹿馬鹿しい。

 俺はそう言うと、くるりと翻しこの場を去ろうとする。
  
 すると、
  
「───ぐぅわぁぁてぇぇぇえいぃぃ!!!」

 男が大声をあげた。
 反響も相まって、物凄くうるさい。
 うん、うるさい。

 そして、男はダダダッと大きな足音を鳴らしながら、俺の目の前へと移動してきた。
 足はそこそこに速い。
 オーガの世界なら一等賞をとれるかもしれない。

「貴殿に拒否権などはありはしないのだ!!
 シャーロット殿の許可が降りた今、いざ、尋常に勝負するのだぁ!」

 俺は先生の顔を見た。
 組まれた試合をするにも拘わらず、これでは予定が狂ってしまう。
 もちろん、止めてくれると思って視線を合わせたのだが、先生は何も言わなかった。
 むしろ、ニコニコと機嫌よく面白そうなものを見るように静かに 佇んでいる。

 くっ。
  
「あの、俺はシャーロットとは大丈夫なので、貴方に全てを───」

 俺はシャーロットとどうこうもないし、関係ないことだからと断りを入れようとするのだが、話し終える前に男が目を見開き啖呵を切った。

「やあや!我こそは偉大なる父、テランブール・オーガストの嫡男、ゴブリング・オーガストである!
 シャーロット殿との一線、いや、正式なお付き合いを賭け、貴殿と我はこれより真剣勝負を行うのであーる!!!」
  
 もう聞く耳をもっちゃいない。
 しかし、名前からもうオーガなんだな。
 というか、ゴブリンでオーガじゃねぇか。
 ゴブリングってなんだよ。
 何かの遊びか、おい。
 まぁいいけど。
  
 しかし、これは俺が勝ったらどうなんだ?
 付き合う権利を獲得するのか?
 そうか、獲得か……。
 いらないかな。うん、それはとりあえずいらないとして……やるしかないか。
  
 仕方なく中央へとトボトボと歩みを進め、男と向き合った。
  
 先生は何事もなかったかのように片腕を上げると、
「───それでは、始めっ!!」

 声を張り上げドーム内へと響き渡らせた。
 男は、先生の声が完全に消えるのを待たずして、杖改め、その厳つい棍棒で奇声を上げながら飛び掛かってきたのだった。
しおりを挟む
感想 77

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(77件)

Jack_Knave
2018.10.17 Jack_Knave

最後のやつ寝息が抜けてる気がする

2018.10.17 太郎衛門

Jack_Knave様

コメント頂きありがとうございます。

ご指摘の通り最後の部分に抜けがありました。
すぐに訂正致します。
ありがとうございましたm(__)m

解除
青色
2018.10.11 青色

最近キャラが増えてきて名前が覚えられませんね…
ジルヴァラという新キャラも登場したことですしね!

2018.10.12 太郎衛門

青色 様

コメントありがとうございます。

たしかにキャラが増えましたね…。
時間をつくって整理したいとこです(-_-)

ただ、ゴリさんと今回のジルヴァラについては過去からの再登場です(^.^)

解除
Rioz
2018.10.02 Rioz

メチャメチャ面白いです!最新話に追いついちゃいましたー、続きが早く読みたい~\(^o^)/

2018.10.09 太郎衛門

Rioz 様

コメントありがとうございます。

リアルが多忙につきなかなか更新できずに申し訳ございません。
更新スピードを上げられるように頑張りますのでこれからも宜しくお願いしますm(__)m

解除

あなたにおすすめの小説

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。