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図書委員会9

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翌週月曜日。僕は、まみにあらためてスキーを欠席した事のお詫びをしたが、アッコはこの日僕と口を聞いてくれなかった。アッコは明らかに様子が変だった。でも、忙しい僕は彼女のことを詮索する時間もなく、放課後、図書室へ向かった。久々の図書委員会の当番だった。今日は、3組の女の子と組む日だったが…。先に当番机に座っていたのは満川だった。「遅いぞ。」ニッと笑う満川に、あれっと思ったが、

「今日は私が代理で当番。」また3組の女の子は欠席らしい。今度はインフルエンザのようだ。
「だから、彼女が登校するまではしばらく私がやるよ。」
「助かるよ。」

短いやり取りだったが、満川との信頼関係が感じられた。今日は、学級閉鎖したクラスもあったらしく、ほとんど来客がなかった。
暇だったから、星野明子の貸出カードをのぞいてみた。ものの見事に真っ白だった。アッコらしいや。

「満川さん、お客がいないから、僕の貸出やって。」
「…津山くん、どんな本読むの?」

僕は物語よりも図鑑が好きな子だった。僕の貸出カードには宇宙、昆虫、動物、金属などのいろんなジャンルの図鑑の題名が載っていた。うん、これから必要だから…。僕は地理の棚に向かった。おかしい。地理の棚の本がごっそりなくなっている。しかも日本地理の、中国地方の本棚の一部分だけ。

「!!」
「どうしたの?」きょろきょろする僕に気づいて、満川がやって来た。
「いや、ちょっとみてよ」
「おかしいわね。地理の棚の、中国地方のところでしょ。真ん中辺がごっそりないわ。」
「これから行くところだから、少しでも知っておきたいんだけどな」
満川の視線を感じた。

「…広島行くんですってね。東京とか、千葉とか、近くかなと思ってた。」
そうか、満川には行ってなかったな。広島に行くって。
「僕、岡山生まれだから。満川さんはどこ出身なの?」
「…私は、東京。でも、おばあちゃんは栃木。満川家は栃木から来たの。」
「そのぐらい近ければ、第三小学校にもちょくちょく遊びに来られるんだけどな。」

沈黙が流れた。しかも今回はお互い見つめ合ったまま微動だにしなかった。僕はこの重苦しさを吹き飛ばすべく、無理に話題を変えた。
「この本、盗難にあったかな。犯罪の匂いがする。」
我ながらつまらない冗談だった。満川はふっとため息をついて、「ばか言わないで。こんなの逆に検索をかければ誰が借りているのかわかる。でも、津山くんは見ちゃダメ。私が司書だから。」
「ハイハイ。よろしく。予約かけるから。いつ頃借りられるかだけ教えてくれればいいよ」
満川は逆引きで貸出伝票の検索を始めた。「!」彼女は目を丸くした。何と広島の本は5冊とも同一人物が借りていたからだ。『保川景子』何と。しかも5日前に延長して借りている。どういうことだ。5年1組の女子だった。
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