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第10章 Freedom国、経済の中心へ!

21話 暴走

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 ケンジは、呆れて言葉も出なかった。本当に想定外だと言う言葉を使ったからだ。

「想定外と言えば、何でも許されると本当に思っているのか?」

「そ、それは……でも、誰もこんな事になるとは……」

「聖女様、俺は今回嫌な予感がするから、もっと慎重に行動した方がいいと忠告しましたよね?」

「はい……」

「宰相様!」

 グランパス王国の宰相は、いきなり名前を呼ばれてビクッと肩を震わせた。

「俺は、何回も説明したのに理由が弱い!地上の魔物なら、どうにでもなると息巻いてましたよね?」

「ゥぐっぐぐぐ……」

「息巻いてましたよね?こっちを向いて返事してください‼」

「はい……おっしゃる通りです……」

「それで、この結果になって尻拭いは、Freedom国に丸投げですか?」

「「そんな事は⁉」」

「鳳凰騎士団の遠征を奴隷騎士団だと断り、極級ダンジョンの間引きは俺達が率先してやっていたんだ!その結果ダンジョンが落ち着いてきて、大丈夫だと言って警備の人数を減らして地上の警備が疎かになったから起きてしまった事なのに、Freedomを頼るのは間違っていないか?」

「そ、それは……」
「今は、そんな事を言っている場合ではないであろう?」

「俺だって、今この状況になって災害が起きようとしている事は、重々承知している!しかし、これが反対の立場だった場合、貴方達はどう思うんだ?我が国の騎士団を、奴隷だからと言って実力があるにもかかわらず、同じ立場に立つのは不愉快だと言われ帰還させられたんだぞ?」

「しかし、奴隷なのは事実であろう?」

「宰相様、だったらその奴隷騎士団にに助けを求めるのは、あまりに飛龍騎士団は情けない騎士団だとおもいませんか?」

「ケンジ様、そのお言葉はあまりに失礼だ!それにエンペラーとなれば、連合国で臨むのが普通なのだぞ?ここは国同士協力をしてだな……」

「その協力が出来ないと言ったのは、グランパス王国ではありませんか?」

「そんな事は言っておらん!」

「奴隷騎士団では、連携が取れないと言って帰還させたではありませんか?今回、Freedom国がエンペラー討伐に参加しても、連携が取れず反対に足手まといになるのではありませんか?」

「そ、それは……」

「何故、極級ダンジョンの警備では連携が取れないと言っていたのに、今回エンペラー戦だとFreedomの協力がいると言うのですか?納得いく理由を聞かせてもらいたい!」

「いや……それは……」

 ここで、聖女が口を開いた。その言葉にケンジは呆気に取られてしまったのだ。

「ケンジ様!しかし、その昔に討伐した時には、鳳凰騎士団は参加していなかったのですよね?だったら今回も、鳳凰騎士団は必要ないと言う事にはなりませんか?」

「……」

 そのセリフに、ケンジは聖女を睨みつけ文句を言おうとしたが、これにはマイが真っ先に口を開いたのだ。

「聖女様!それはどういう事でしょうか?」

「えっ⁉何か気を触るような事を言いましたか?」

「鳳凰騎士団は必要ないと言う事にはなりませんか?とおっしゃいましたが、その意図はどこにあるのですか?」

「それは、ケンジ様がその昔エンペラーを討伐したと言うのなら、今回もケンジ様が……」

「へええ……貴方は連携を取れないからと言ってテンプルナイトに協力もさせずに、本当にあたし達だけに尻拭いをさせるおつもりですか?」

「そ、それは……」

「さっきから、皆さんは何か言うたびにそれはとしか言いませんが、自分でも無茶苦茶な事を言っていると、自覚はあるのですよね?」

「それではケンジ様にお聞きしたいのですが、この状況をどうしろと言うのですか?」

「聖女様……それはあまりに自爆していますよ?」

「なっ⁉」

「グランパス王国の皆様も、いやキース国王は何か反論はないのですか?マルシェイム聖教国と、同じ意見なのですか?」

「今、ここに至ってFreedomの助けが必要なのだ!あのあたりに、エンペラーの集落が出来ているとなると四の五言っておれん!Freedomの協力は必要なのだ!」

 ケンジはため息をついた。グランパス王国もマルシェイム聖教国も、最近では良くなってきていたとケンジは見直していたのだが、ここまでだと思ったのだ。

「分かった……貴方達はそれほどまでに、Freedomをいいように扱うと言うのだな?」

「誰もそんなことは言っておらん!ただ、ここに至ってゴブリンエンペラーとマザーが率いる集落は、我々だけでは討伐は無理と言う事実なのだ!」

「じゃあ、もう一度聞くぞ?仮に俺達Freedomが、この要請に乗ったとしようか?奴隷だから連携がうまくいかないと、駄々をこねてダンジョンの警備から、外れてもらった鳳凰騎士団をどのようにあつかうつもりだ?」

「それは……」

「まさか、世間一般で扱う感じで、囮に使ったり人壁につかったりするのではないよな?」

「「……」」

「キース国王!聖女様!心して答えてくれないか?」

「しかし、それは当然の事ではないのか?」

「何が当然なんだ?」

「鳳凰騎士団は奴隷という事もあるが、悔しい事ではあるが飛龍騎士団はもちろん魔物に強いテンプルナイトより数段実力があると聞くぞ?」

「それと、囮に使う作戦とどこが当然だと言うんだ?」

「それは当然だろう?強い部隊には、突破口を開いてもらわなければ勝てないだろう?」

「そんなバカげた話があるか!これはあくまでの協力というものであって、奴隷だからとか実力があるからいう理由で、鳳凰騎士団だけが最前線に送り、貴方達だけが安全な位置から戦線に加わろうと言うのか?」

「実力がある者が突破口を開くのは普通の考え方ですよ?これは昔からの戦力で……聖女のわたしですら知っている物ですよ?」

「それは、国のトップがその部下の命をあまりに軽く見ている証拠だよ!俺は、そんな独裁者のような作戦には関わりたくないよ……」

「ですが!」

「聖女様、本当にそんな考え方でいいのか?仮にテンプルナイトがそのような役目になった場合、そんな命を軽く見た作戦を決行した場合、女神様はどのように思う?」

「そのような作戦が、テンプルナイト達にくだったら喜んでその作戦を……」

「すると言うのか?」

「はい!その結果信者達を救えるのです」

「馬鹿な事を……もし、それが本当ならテンプルナイトは聖教国にマインドコントロールされているよ」

「その言い方はあまりに失礼ですよ!ケンジ様でも見過ごす事はできません!」

「だって事実だろ?そんな特攻精神おかしいって!それに、言っておいてやるよ!」

「何がですか?」

「あんた達、聖教国は女神様から一回罰を受けて聖属性を剥奪されているんだぞ?最近では、やっと信仰力が生まれてきた人間が全体の6割と多くなってきたが、奴隷だからと言う理由でそんな作戦を実行に移したら、今度は本当に女神様の罰ではなく怒りをくらうぞ?」

 聖女アリサは、ケンジの言葉にハッとしたがすぐに考えた。

「何を言っているのですか?女神様がそんな事で怒りまた罰を与える?そんな事はありませんよ!今回テンプルナイトは最前線に送るような事はしませんから!」

「はっ?」

 ケンジは、聖女の言っていることに変な声が出た。女神クローティアからすれば、キース国王も聖女はもちろん自分の子供達である。当然奴隷や平民や貴族という位をつけたのは人間であり、クローティアにとっては、奴隷達も又自分の子供達である。

「じゃあ、聖女様はテンプルナイトじゃなく、奴隷である鳳凰騎士団だから罰をあたえないと言うのですか?」

「当たり前ではないですか?平民達の役立てるのが奴隷の立場なんですよ?」

 ケンジは今更ながら、奴隷達の用途の考え方に辟易して頭を抱えたのだった。その横でキース国王もまた当たり前のように首を縦に振っていた。
 そして、ケンジは奴隷のない世界を作ろうとしている自分は、本当に異常なのかと疑いたくなった。
 ケンジは、横を向き周りを見まわすと、ムシュダルク達は怒りをあらわにしていた。ケンジは冷静に、キース国王達に対応していた為、自分達も我慢しないといけないと思っているようなのが分かった。

「もう、いい!貴方達の意見を聞くのは不愉快しかない!帰ってくれ‼」

「「なっ⁉ちょっとお待ちください‼」」

 王国と聖教国の面々は、ケンジがいきなり大声を出した事でびっくりして席から立ち上がった!

「俺達Freedomは、この協力には応じない!」

「「ちょっ、ちょっと……」」

「だが、安心してほしい!エンペラーは我々Freedom国だけで討伐する!貴方達に協力して、我が騎士団をいいように扱われる事も不愉快だ!それなら俺が鳳凰騎士団にお願いして戦ってもらう!」

「「本当ですか?」」

「ああ!だから貴方達は安心して自国に戻ってくれ!」

 ケンジの言葉に、グランパス王国やマルシェイム聖教国の面々は笑顔となり、肩の荷が下りた様に騒めいていた。

「それじゃ!我々はエンペラーの対策を練るから、皆さんは退出してくれるか?」

「ケンジ様、本当にありがとう!」
「あなたは、やはり我が国の英雄だ!」
「よろしく頼むぞ!」

「ケンジ様!本当によろしくお願いします」
「エンペラーの事よろしく頼みもうしたぞ」
「これで聖教国だけでなく大陸中が安心です」

 王国も聖教国も勝手な事を言い、握手をして自分達の国へと帰っていった。この時、キース国王や聖女アリサをはじめ重鎮達は、この後とんでもない事になるとは予想だにしてなかった。
 この時、ケンジはやはり王族や貴族達権力者が大嫌いになり、信用する事は愚かな行為だと思いなおしていた。


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