社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依

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14話 女神の焦り

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 モーレンの村には、それから1日もせずに討伐隊が派遣された。その数、200名と言う大部隊だった。
 その日、マサルの店は冒険者達で大盛況で、アタッカーにはストレングスポーション、タンカーにはプロテクションポーション、魔法使いにはマジックポーション等がどんどん売れてすべて品切れになってしまった。

「申し訳ありません……ポーションは全て売り切れました」

「そっかあ……それは残念だ」
「だが、これらは本当にありがたい。この村にあなたが移り住んでくれて本当にうれしいよ」
「これからも俺達にいいポーションを売ってくれよな」

「本当にありがとうございます」

 マサルの製作したポーションは、冒険者達に大人気だった。錬金術師が売る瓶の底には、サインをつけるのが常識になっていて、マサルのサインは『優』の字をつけるつもりだったが、鍛冶屋の親父さんに文字が難しすぎると言われて『マ』とカタカナにした。

 そして、ポーションの効果は絶大で冒険者の一撃でゴブリンは瞬殺できたと後から聞いた。その意見を聞き、マサルは冒険者達の役に立てた喜んだのだった。

「ご主人様、よかったですね」

「ああ!これで安心して、また森の中に入れるな」

「はい!あたしが又、魔物の素材を集めて来ますね」

「よろしく頼むよ」

 このゴブリン討伐の噂はすぐに広まり、モーレンの村に住む錬金術師の腕は、確かなものだと貴族の間でも噂になった。そして、モーレンの村にダンジョンがあるという事もギルドでは問題となり、冒険者達が派遣される事になった。

「村長!この村にも、ギルドが設立されるかどうか検討されているみたいだな」

「まだ分からんみたいじゃよ」

「だが、ダンジョンが近くにある村にはギルドが進出してきて、その村は町になるのが通例だろ?」

「ルーデンスも知っていると思うが、この村には早馬を飛ばせば半日で着くローディスの町があるじゃないか」

「確かにそうだな……しかし、あの町のギルドはあの町でダンジョンがあるじゃないか。こっちの村のダンジョンも見張るとなると大変じゃないのか?」

「じゃが、こんな近くに2つのギルドを設置するとなると経費の無駄遣いになると、今話し合っているみたいじゃぞ」

「なるほどなあ……」

「しかしじゃ……それより、不安な事があるのじゃよ」

「ん?なにかあったのか?」

「マサルの事じゃ……今回、苦も無くゴブリンの集落を壊滅出来たのは、マサルのポーションのおかげだと言っても良い成果だと、ギルドでも噂になっておるんじゃ」

「たしかにあのポーションの効果は凄いという噂だな。本来なら1.5倍増しに強くなるが、どう考えても2倍の効果で発揮してたというしな」

「それだよそれ!出過ぎる杭は目立つんじゃ……」

「何が悪いんだ?」

「いや、マサルにとって貴族のもとで働く事が良しとしてれば良い事なのじゃが……それならばこんな田舎の村に来る事はないじゃろ?」

「そ、そういう事か……」

「ああ……普通の錬金術師でも、貴族に囲われたくないと言って田舎で生活しているのに、そんな特別なポーションを作れる錬金術師を、貴族達が放っておくことは考えられん」

「それじゃあ……村長の所にはもう?」

「ああ……領主様から連絡が来ておるよ」

「だったら、マサルに連絡をしないと!」

「ま、待つのじゃ!マサルには黙っておれ!」

「なんでだ?このままではマサルは領主様に……って、村長!まさか……」

「そのまさかじゃよ」

「な、なんで?マサルは村の一員じゃないのかよ!」

「ああ!だから言っただろ?出過ぎる杭は目立つとな……それに、領主様に逆らっても何もいいことなど無い。それならば、領主様のつかいが来た時に面倒の無いようにするのが村の長としての役目じゃろうが」

「しかし……マサルはそれを望まないから、このような村に移住したのではありませんか?」

「だったら、お主は領主様に逆らいマサルに逃げろと申すのか?匿えと申すのか?そんなことして見ろ!領主様からは増税されるのは目に見えている」

「そ、それは……」

「だったら、マサルには悪いが領主様の所で働いてもらうしかないであろう!」

 村長はマサル一人を犠牲にして、村の利益を尊重したのだった。
 


 そのころ、天界では女神エステは、マサルの事が気になって下界の様子を数百年ぶりに覗いていた。

「ま、まさか、下界がこんな事になっているなんて……こんな事なら、マサルさんを錬金術師になんかにするんじゃなかったわ!」

 女神エステもまさか、貴族達によって錬金術師が住みにくい世の中になっているとは思いもしなかったのだった。

「で、でも……このままだと、マサルさんが地球の時より酷い境遇になってしまう……どうしたら……」

 女神が、現世に降臨するのはタブーとされているため、一個人の為に降臨する事が出来なかった。
 女神降臨したとなれば、教会が黙っていないのだ。女神エステはなんとかして、その村から逃げるようにとマサルに伝えたかった。
 エステは、マサルに自由で楽しい人生を送ってもらいたくて、自分の世界エルドニアに来てもらったのに、貴族に囚われたら、地球の時より辛い飼い殺しになってしまうのだ。

「とりあえず、マサルさんにこの事を伝えないと……」

 その時、女神エステの所に二人の女性、女神がやってきたのだった。

「お姉さま。急ぎって聞いたのですが何か用ですか?」
「そうよ!今お茶を楽しんでいたのにいきなり呼びつけるなんて!」 

「マリン、シルビア、やっと来たのね。お願い協力して頂戴!」



 エステは、二人の妹に事情を説明したのだった。

「なっ⁉お姉さま。今、あの世界で、錬金術師がどういう立場か知らなかったのですか?」

「あなた達は知っていたの?」

「そんなの当然でしょ?姉さんは今は管理部だけど、あたし達は現場で働いているんだもの!」

「それなのに、お姉さまはそのマサルさんの言う人間を、魔道練金薬師として転移させたのですか?」

「だ、だって私が知っていたころは、錬金術師ならどこに行っても歓迎され幸せに生活できていたんだもの」

「今はそんなことはないよ……力のある錬金術師は貴族に囲われ、只ポーションを作り続けさせられて、お金を生み出す道具のように働かされ続けて、死ぬまで酷使させられているのよ」

「今更そんな事言ってわたしを責めないでよ。本当に知らなかったんだから!」

「それでどうするのよ?」

「だから、この事をマサルさんに伝えたいの」

「どうやってですか?下界に降臨するのは禁じられているでしょ?」

「あなた達の神気を貸してほしいのよ!」

「まさか、お姉さま。マサルさんの夢見枕に立つのですか?」

「私一人の神気では立つことが出来ないんだからしょうがないじゃない。貴方達と3人なら伝える事が出来るから協力して!」

 マサルが司祭や司教の立場なら、エステ一人でも夢見枕に立つことができたが、マサルは錬金術師なので女神側で神気を使いアクセスする事にしたのだった。

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