社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依

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40話 奴隷達の保護

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 今日は月一でやってくる騎士団の日だった。相変らず冒険者達が、奴隷達を囮にしてダンジョンにやって来ることが、マサルは我慢ならなかった。そして、マサルはそういう非人道的な事をする冒険者を生け捕りにして、魔力が使えなくする牢屋に閉じ込めていた。

「君達は、なぜ奴隷の命を犠牲にしてまで、ダンジョン攻略をするんだ?」

「うるせえ!俺達が購入した奴隷だ!どう扱おうが俺達の勝手だろうが!」

「そんな勝手な事が許されるとは思わないでくれよ」

「何言ってやがる!この奴隷制度は、国が認めている事だぞ?俺達は、奴隷を好きに使ってダンジョン攻略しているだけだ!」

「もし、君達が奴隷落ちした時、同じ事をされてどう思うんだ?嫌だろ?」

「はっ!俺達がそんなへまをすると思っているのか?もし仮に、俺達が奴隷に落ちたら、甘んじてそれを受けようじゃねえか。まあ、俺達がこいつ等みたいにはならねえがな」

「じゃあ、話は変わるが、このダンジョンは僕が管理をしている。そのダンジョンに無断で侵入してきたことで、ダンジョンの宝を奪いに来ているお前達に、損害賠償として1億ゼニーを請求したらどうなる?」

「馬鹿な事を!ダンジョンの中にある物は誰の物でもねえ!」

「それは君達が勝手に言っている事だろ?ダンジョンは、ダンジョンマスターが管理しているという事は周知の事実だ。しかし、君達人間はダンジョンマスターを殺し、オーブを封印して好きに扱っているだけじゃないか」

「そんな事、俺らに言ってもしょうがないだろ!昔からそれをやるのが普通じゃないか!」

「そうですか。それが普通と言い張るんだね」

「ああ!それが当たり前で常識なんだからな!」

「そうですか。じゃあ、ダンジョン側の常識を伝えましょう」

「ダンジョン側の常識?」

 マサルは、ダンジョンシステムの理由を冒険者に話した。すると、その驚愕の事実に、冒険者達は絶句したのだった。

「君達人間は、優秀だが傲慢でもある。その為、種族一強にならない為に人間を間引くのが、ダンジョンシステムなんだよ」

「ば、馬鹿な!神がそんな事を考えるわけが!」

「そうかい?人間達は、エルフやドワーフ族をどう扱っている?」

「それは関係ない!エルフの国に行けば人間の奴隷もたくさんいる!」

「そうだね」

「だから、俺達人間だけが悪いなんていう事はない!」

「だから言っているだろ?種族一強にならないようにするシステムだってね。当然、エルフの国やドワーフの国だって、ダンジョンは存在するだろ?」

「ぐっ……」

「まあ、僕はそう言ったシステムを聞かされたが、正直なところどうでも良かったんだけど、奴隷というだけでそう言った扱いをする種族というより個人が大っ嫌いでしてね」

 マサルは、そういう自分勝手な理由で、他人を傷つけることが許せなかったのだ。

「あんたが、大っ嫌いと言ってもしょうがないだろうが!俺達パーティーで買った奴隷を、どのように扱うのかは俺達の当然の権利だろ?」

「そうだね。君達の権利はたしかにあるね」

「そうだろ?だから、俺達がそのことで責められるいわれはないよな?」

「じゃあ、話を戻そうか。君達に1億ゼニーを請求します。これで君達は借金奴隷という事ですね?」

「馬鹿な!そんな勝手な事が通るわけなかろう」

「なんで?ここは僕の国だよ?王国を退けた王国の法が効かない場所だよ?」

「そ、それは……」

「それとも借金奴隷は嫌だというのですか?」

「当たり前だろ!誰が好き好んで奴隷になりたいと思う人間がいるんだよ?」

「だけど君達は3階層で、僕の家を守っている魔物を殺したじゃないか?不法侵入をして、魔物の素材を盗んだんだよ?これは君達の世界では、強盗殺人で罪に問われるんじゃないのか?」

「何で魔物を討伐して、罪に問われるんだよ!」

「それこそ認識の違いだよ。僕はこのダンジョンを管理しているんだ。それこそこのダンジョンから、スタンピードが起きたのなら攻略をしないと、人間社会を混乱させたとして討伐対象となっても、僕は何も言えないが、そんな事は一度だってなかっただろ?君達は勝手な理由で、ダンジョンにやってきて、この国の中の物を略奪していっているんだよ?」

「……」

「その為の損害請求だよ!」

「そんなのは言いがかりだ!俺達を解放しろ!」

 冒険者達は、マサルの言い分に文句を言い、わめき散らしたのだった。そして、その牢屋には冒険者達の奴隷も同じように捕らわれていた。
 奴隷の方は、冒険者達である平民でさえこういう扱いを受けているので、当然自分達は処刑されると思っていた。

「わかった!お前にこいつらをやろうじゃないか?それで借金をチャラにして、俺達を介抱してくれ!」

「ホント糞だな……奴隷達を犠牲にして、自分達だけ助かろうとするなんて……」

「奴隷をどのように扱おうが俺達の勝手だろ?あんたは気に入らないだろうが、こちらではそれが普通なんだ。で、どうなんだ?取引に応じるのか?」

「あんたは、自分の立場が分かっていないみたいですね」

「どういう事だよ?」

「その奴隷達の価値はどれほどの物ですか?」

「しかし戦闘奴隷だ。それなりの価値はあるはずだ。じゃないとすぐに死んでしまうからな?1000万はした奴隷達だぞ」

「そうですね。この人たちの価値が多めに見積もっても500万ゼニーもないでしょう?」

「うっ」

 冒険者達は、奴隷の値段を高く言ったが、マサルにそんなことが通じる事は無く、買った時の値段を言い当てられてしまった。

「だったら、差額の9900万ゼニーはどこから捻出するのですか?」

「おかしいだろ!500万の価値があるなら差額は9500万だろうが?」

「だから言っているのですよ。貴方は自分の立場を理解してないってね。何で僕が、そちらの言い値をそのまま買い取ると思っているのですか?」

「ゥぐぐぐ……汚ねぇ……」

「まあ、どちらにしてもBランクにもなっていない貴方達に、こんな借金が返せるとは思いません。後悔しながら死んでください」

「そっ!そんな馬鹿な……」



 その頃、冒険者ギルドモーレン支部では、帰ってこない冒険者が続出していた。

 その日は、騎士団もダンジョン探索する日なのが分かっていたので、比較的安全にダンジョン探索が出来る為、数多くの冒険者はこの日に準備を進めていた。

「何で、冒険者たちが帰ってこないの?」

 ギルド支部では、冒険者が帰ってこない事で騒然となっていた。本来、この時間なら素材を持ち帰ってきた冒険者で賑わっているはずなのに、冒険者の4割が帰ってこないのだ。

「今日はまだ、他の奴らは帰ってきてないのか?」

「そうなんですよ。本来ならもっと帰ってきてもいいはずなのに……」

「ひょっとして、死んだのか?」

「そんなはずは……今日は騎士団の皆様も潜っているはずです」

「だよな?俺達も、今日は魔物が少なくて不意打ちにはあってないからな」

 騎士団が潜ると、魔物を間引いてくれるため、数が少なくなるので戦いの最中に、魔物が加算される事はなくなるのだ。
 その為、戦いやすくなり死亡することはまず考えられない。だから、1階層しか行けないような駆け出しの冒険者なんかも、安全に戦いやすく帰ってきていた。帰ってこないのは、それなりに稼げているCランク冒険者ばかりだった。

「帰ってこないのは、CランクかBランクに上がったばかりの奴等か?」

「そういうわけでもなさそうですが……」

 しかし、4割ものの冒険者が帰ってこないとなると、これは事件としてギルドマスターに報告しないといけなくなる。
 騎士団の方にも中の様子が聞きたいが、騎士団は魔物を間引く事だけではなく、レベル上げも訓練の一つとして任務にあたっている。
 その為、ダンジョンに入れば4階層の魔物で訓練をして、1週間潜り続ける事になる。騎士団が帰ってくるまで、情報を聞く事が出来ないのだ。この一週間は冒険者達にも、サービスデーとして数多くの冒険者がダンジョンに入る
ことになる。



「マサル様ただいま戻りました」

「セイミ、ご苦労様。で、どうだった?」

「奴隷を囮にしている冒険者を、今日は2組生け捕りにしてきました」

「そうか……やっぱり王国は何とかした方がいいかもね……」

「ですが、マサル様は何でそんなに奴隷の保護を?マサル様には、関係のない事ではありませんか?」

「確かに関係はないかもしれないけど、罪のない人間が、ダンジョン攻略に使われるんだよ?」

「ですが、奴隷は労働力です。ダンジョン攻略に犠牲はつきものですよね?」

「それはその人たちの自己責任って事は分かるけど、奴隷達の命をそんな軽く考えて、囮にするのは違うと思わないのか?」

「わたしにはよくわかりません……」

 マサルが説明しても、この世界に生きる者達にとってはそれが普通の事であり、マサルの感覚は優しすぎるということらしいのだ。
 奴隷に落ちれば、主人の言う事に不満はあっても拒否することは出来ない。唯一拒否できるのが殺人と自殺の二つだけである。
 だから、ダンジョンで囮というが、本来は主人の護衛であり、主人のピンチは死んでも回避しなければいけないだけなのだ。
 そういう扱いをされたくなければ、奴隷に落ちなければいいだけなのである。奴隷は主人の所有物であり、そこに人権などないのがこの世界の常識だった。

「そ、そうか……」

「しかし、わたしはマサル様がやりたいようにしたらいいと思いますよ。実際、奴隷達を保護して信頼を得ているのですからね」

「本当に信頼だと思っているのか?」

「そりゃそうですよ。現にマサル様は保護した奴隷達を解放しようとしても、誰一人として望んでいないではありませんか」

「それはここから出て行っても、生活の目処が立たないからだろ?それに、奴隷達は完全に人間不信になっているじゃないか?」

「それは奴隷に落ちて、色んな嫌な事をやらされていますからね……」

「それだよ。それ!やっぱり、嫌な事を無理やりやらせるのは違うと思うんだよ」

「だからこそ、マサル様は奴隷達からの信頼があるのでしょ?自ら率先して働いているじゃないですか。まあ、まだ今は訓練の最中ですが……」

「だったらいいんだけどね……」

「グレンが言ってましたよ。マサル様の為に必死で強くなろうとしている奴隷や眷族になった人間ばかりだって!」

 いまは、騎士団がいる4階層を担当できるように、グレンやダイヤが奴隷達の訓練を手伝っていた。そこで、奴隷達はマサルの優しさにふれて強くなろうとしていたのだった。

 しかし、マサルはこの奴隷達の立場を不憫に思い、何とかしたいと思っていたのだった。
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