無能と呼ばれてパーティーを追放!最強に成り上がり人生最高!

本条蒼依

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42話 秘策

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 クロス達は、必死に堤防の高さを維持していた。しかし、堤防の高さをかさ上げし固めるまでの時間が無かったのだ。河は増水し、ありえないほどの濁流で、堤防の土を削り取って行くのである。

「クロス!もっと魔力を上げれないか?」

「上げる事は可能だが、見てわかるように作ったところから土が削られる!違う事を考えないと、いずれ全員がMP切れで町は水没するぞ」

「く、くっそおおお!何とかならないのか?このままでは……」

 今、指示を出しているのは、魔法使いのリーダーである。Sランクのパーティーであり、魔道師(S)のブリュッケンだった。

「誰か何かいい案はないか?」

 魔法使い達は、堤防を維持することで必死で、妙案が浮かぶほど余裕は今の地点であるわけがなかった。
 ブリュッケンもまた、ここをおさめようとするなら、終日続いている雨がやまないと、何ともできないと思っていた。

「ブリュッケン。もしここで俺が抜けたら、何時間ほどならこの状態を維持することが出来る?」

「お、おい!クロスこの状態から抜けるというのか?馬鹿な事言うな!」

「いいから!俺に考えがある。何時間だ?」

 クロスの気迫に、ブリュッケンは絶句してしまった。

「リーダー!ここはクロスに任せよう。こいつが逃げるとは思えん。今まで、絶対不可能と思ったことを成し遂げた男だ!」
「そうだ!俺らもギリギリまで頑張るから、クロスを信じようじゃねえか!」
「あたしも頑張るから、クロス何かあるのなら急いで!」

 ブリュッケンは、みんなの意見を聞き、絞り出すような声で2時間とクロスに答えた。

「いいか?2時間だ!それ以上たってお前の案が上手く行かなければ、すぐにここに戻ってきてくれ!」

「わかった!ブリュッケンここは任せたぞ。みんなも頑張ってくれ!」

「クロス、何をするかわからんが俺達の命を預けた!」

 クロスは、町の外に向けて【フライ】で飛んで行ってしまった。

(クロス……急いでくれ!)

 クロスは、河の流れを見て低い土地の方に向かい、城壁から離れた位置に【グランドフォール】の魔法を唱えた。するとその土地は、大きな落とし穴になり、今増水している河幅と同じくらいの落とし穴が出来て、両サイドに盛り土を作った。
 そして、【グランドコーティング】を使い、盛り土を補強して固めてしまった。

「これで何とかなりそうだ……」

 クロスは町の外に、迂回するもう一本河を作り水量を減らそうと考えたのだった。普通は、河を作るなど国家事業であり年単位でやるような事だった。
 しかし、クロスはポーションも暇な時に作っており、MPポーションの在庫は豊富に持っていたからこそ、この案を思いついたのだった。

「急がないと……みんなが!」

 一回の魔法で、同じ河幅の落とし穴は1km作れるかどうかで、ムーンタリアの町を迂回するとなると、何kmの河を作ることになるのか分からなかった。
 しかし、クロスは弱音を吐いている場合じゃないと思い、魔法を使い続けた。



 そして、あっという間に2時間が過ぎ去ったのであった。

「クロスはまだ戻らないか?」

「まだです!」

「くうううう!まさか本当に逃げたのでは……いやいや……俺が不安になればみんなの士気に影響する」

「リーダーもうだめです!」

「馬鹿野郎!諦めるな!もうすぐだ。もうすぐ、クロスが帰って来る。それまで何とかするんだ!」

「しかしこのままでは!」

 街中の堤防は、もう限界が近づいていた。ブリュッケンも強がっていたがそろそろMPがつきそうになっていた。
他の仲間ももう、気力だけで立っていたのだ。

 そして、とうとう魔法使い(B)の人間が1人倒れてしまった。

「リーダー!一人気絶した!人をまわしてくれ」

(ク、クロス何をやっている……)

「リーダーもう限界だ!」

 ブリュッケンのもとには、ランクの低い人間が気絶し出したという報告がドンドン入ってきたのだった。

「住民の避難はどうなっている?」

「まだ、4割ほど避難がすんでない!どうしますか?」

 リーダーのブリュッケンは苦渋の選択を迫られていた。このままでは、冒険者達が犠牲になってしまう。しかし、冒険者達を避難させれば、避難をしていない住民が犠牲になるからである。

 そして、ブリュッケンは2時間を10分過ぎていたこともあり、冒険者達に避難を指示しようとした時、河の水量が減り始めたのだった。

「リ、リーダー!川の水が減り始めています。これならなんとか!」

「クロスはいったい何をやったんだ?」

「リーダー、何をしているんですか?」

「ああ……す、すまない。もうひと踏ん張りだ。みんなよろしく頼むぞ!」

「「「「「「おお!」」」」」」」

 すると、町の上流の方を見ると、誰かが【ウォールオブストーン】を唱えているみたいだった。堤防があり得ない高さで補強されているのが、ブリュッケンにも確認できた。

「リーダー、クロスが戻って来た。もう大丈夫らしいです」

「そ、そうか……」

 ブリュッケンは、その後景をみて、その場にへたり込んだのだった。

「ブリュッケン、待たせて悪かった。もう大丈夫だ!」

「何言ってやがる。俺はまだまだ大丈夫だ」

「そんな事言って、へたり込んでいるじゃないか」

「お前が遅いからじゃねえか!もうちょっとで犠牲者が出るとこだったんだぞ。今まで何をしてたんだ!」

「まあ、ちょっと待ってくれ。とりあえずウォールオブストーンで、高さを補強してからだ」

「そ、そうだな……みんな!クロスのウォールオブストーンを補強を手伝うんだ!」

「「「「「「おお!」」」」」」

 クロスは膨大なMPを込める事で、高い堤防を作り、他の魔法使いは補強を手分けして頑丈な堤防を作り上げていき、決壊の危機を脱する事に成功したのだった。

 その事を、ブリュッケンは対策本部に報告すると、領主であるドーレンは労いの言葉をブリュッケンに送ったのである。

 ブリュッケンは、対策本部から帰ってきて、早速クロスの所にどういう事かギルドに帰ってきたのだった。

「クロスはいるか?」

「リ、リーダー!聞いてくれよ。クロスの奴とんでもないことをしでかしたぞ」

「ああ、それを説明してもらおうと思ってギルドに戻って来た。それでクロスはどこだ?」

「今ギルドマスターと話しているよ」

「そうか……で、クロスは何をやったんだ?」

 冒険者の説明に、ブリュッケンは開いた口が塞がらなかった。クロスは、土魔法で正面城門の方に町を迂回する様に、もう一本河を作ったと説明を受けた。

「な、なんだと⁉」

「それとだな!」

「なんだ、まだ何かあるのか?」

「川の上流に、ため池を一個所作る事で水量を減らしたんだ」

「そんな事が可能なのか?」

「可能も何も偵察に向かった冒険者が確認済みだ。クロスの奴本当にたいしたもんだ」

「それって河の流れを変えたようなもんじゃねえか……普通は、国が年単位でやるような仕事だぞ」

「ああ……そうだな。だがクロスはそれをたった2時間ほどでやりとげ、ムーンタリアの町を救っちまったんだ」

「まじかよ……あのギルドの足手まといだった奴が……」

「オイオイ……ブリュッケン、クロスにそんな言い方……」

「いやっ……悪い、悪意はねえよ。本当に感心しているだけだ。あいつのおかげで犠牲者が出ずに、みんな助かったんだからよ」

「ああ、そうだな」

 冒険者達は、そう言いながらギルドの酒場で盛り上がっていたのだった。



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