研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第2章 研磨という技術

12話 ミトンの町の攻防

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 ミトンの町に、進撃が走った。この鐘の音が鳴るという事は、この町に災害つまりスタンピードが起こった事を報せる鐘だったからだ。
 この鐘が鳴ると、冒険者はギルドへ一般平民は自宅か教会へ避難する事が決まっていた。

「とうとう旦那様が恐れていたことが起こってしまったみたいですね……」
「セバスどうするの?」
「マイン、落ち着きなさい。旦那様は、どうしようもなければ新開発した魔道具を使えと言ったのですよ」
「でも……みんなだって……」
「今、私達が行っても冒険者の皆様の邪魔になるだけですし、それに私達は奴隷です。相手にする余裕はないでしょう……」
「ご主人様もそう言ってたよ」
「サイファーの言う通りです。今は、私達は町のルールに従うのがいいでしょう」
「わ、分かったわ……」

 ミトンの町の城門前には、アンデット集団が襲ってくるまでに、近くに出ていた冒険者が次々戻ってきていた。城門の横にある出入り口から、続々と町の中に入ってきていた。

「いったい何があったんだ?」
「北の森にアンデットの集団が出現したんだ」
「なんだと!スタンピードか?」
「人為的なスタンピードだということだ。君達はすぐにギルドへ向かってくれ」
「わ、分かった」

 城門前は、防戦の準備で慌ただしく動いていた。そして、城門前にいた民家の人間は、町の教会へと移動する準備をしていた。
 こういった場合、城壁から5mにある民家の人間は教会へと移動しなくてはいけないのだ。この辺りは、冒険者や兵士達が戦闘をする為であり、戦闘が出来ない人間は邪魔になるからである。
 そして、生産者の物資輸送の保管場所にもなる。長期戦ともなればこの場所は怪我人の簡易的な病室や、炊き出しの準備が行われるのだ。

 冒険者ギルドでは、ギルドマスターが冒険者に今回の作戦を説明していた。魔法使いとアーチャーや遠距離攻撃が出来る者は城壁の上、槍を得意とする人間は城門前に配置を指示した。城門は鉄格子のようになっており、中から槍を突きを繰り出すのに向いているのだ。
 今回は、アンデット数十万体と言われている為、直接攻撃できる人間は城壁の外に出る事はせず、城壁を這い上がって来る魔物がいれば、それを対処するという事になった。
 城壁の上に岩を運んだり、ポーションを輸送するという大事な役割があるのだ。

 その時、見張り台に立っていた兵士が鐘をガンガン叩き、アンデットが遠くから接近してきたのを報せた。

「き、来たぞ!」

 冒険者と兵士達は、緊張で生唾を飲んだ。領主も又、陣頭指示を取るためこの場にいた。

「アンデットの数は?」

「分かりません!見渡す限りアンデットで埋め尽くされ、どこまで続いているか後方が見えません!」

「ぐっ……闇ギルドめ……なんてことを!みんな!いいか?ギリギリまで魔法を撃つな?射程に入ったら一斉にぶちかますのだ!」

「「「「「「おおおおおおおおお!」」」」」」

 冒険者達の気合の掛け声に町中に響き渡ったのだ。しかし、領主たち町の権力者達は、山賊討伐に行かせたことを後悔していた。冒険者の主力部隊が町にはいなかった事だ。ここにいるのはCランクまでの冒険者ばかりで、冒険者をまとめるSランクが一組だけだ。

「やれるだけやるしかないな……」

 そうのように考えているうちにアンデットが近づいてきた。唯一の救いは、スケルトンやゾンビばかりだという事だった。動きが遅い為、町に近づくまで時間がかかるという事だ。

「撃てぇ~~~~~!」

 兵士の号令で、城壁の上から魔法と弓矢が一斉射撃が行われた。

「ファイヤーボール!」
「エアショット!」
「グランドバレット!」
「ウォーターカッター!」

「アローレイン!」
「アローシャワー!」
「トルネードショット!」

 冒険者達は、町に近づけない様に様々な攻撃をした。アンデット達は、魔法やスキル攻撃でバラバラになるが、後から後から押し寄せてくるアンデットの数に驚愕した。

「まさに陸の津波……」

「休むな!次、撃ちこめ!」

 号令のもと、次の一斉射撃を行った。城壁の内側では、MPポーションや矢が運び込まれていた。

「MPが切れた者はMPポーションを使え!」
「錬金術師はポーションの生産を頼む!」
「わかっています!在庫の薬草をギルドから持ってきてください!」

 いつ起こるかわからない災害に、ギルドや町の倉庫には薬草の備蓄がしてある。これはシルフォードの政策の一つだった。
 日頃、倹約に努めて薬草を備蓄していたことが役に立っていた。あの頃は納税を20%上げろとかうるさく言っていたが、領主自ら節約していた為、町の人間は無理のない範囲で快く薬草の採取に協力していた。

「領主様、政策のおかげでMPポーションが大丈夫そうですね」

「いや……このままではいずれ在庫は切れるぞ……」

「ですが、時間さえ稼げれば援軍が来てくれるでしょう」

「他の町には手紙を送ったが、このアンデットの数ではどうなるか……」

「そんな……」

 シルフォードは、援軍が来てくれても焼け石に水だと思っていた。いずれアンデットは町を包囲するだろうと……
 そうなった場合、援軍は町には入れずなすすべがない状況に陥るのだと。そして、山賊を討伐しに行った冒険者達は主力部隊だが、150名ほどである。数十万体のアンデットをどうにかできるとは、どうしても思えないのだ。

「撃てぇ~~~~~!」

「アンデットが防衛ラインを超えた……」
「ちくしょお!俺達のもっと力があれば……」

「諦めるな!相手は下級アンデットだ。撃ちまくれ!」

 号令に奮起し、冒険者達は魔法を撃ちまくったが、ドンドン押し寄せてくるアンデットに恐怖を覚えたのだった。そんな時兵士の一人が領主に話しかけてきた。

「領主様!面会を申し出ている人間がいます。どうしますか?」

「こんな時にそんな暇など無い!後にしろ!」

「ですが、面会の申し出はヒロトシ殿の奴隷ですが……」

 本来なら、平民でさえこんな状況下で面会など受けれるはずもなかったが、ヒロトシが町を出る前に、シルフォードに伝えていたことがあった。

「俺が不在の時町に何かあった時は、セバスが訪ねてくることがあるので話を聞いて下さい。絶対にいい案を持ってきてくれるはずです」

「分かった……それよりヒロトシ君、君の方も気をつけろよ。単独行動なのだからな。町の命運をいつも1人に背負わせてすまん……」

「大丈夫ですよ。塩が無くなったら、俺達も大変なのですから」

 そういって、ヒロトシは海に向かっていったのだった。

「その奴隷はセバスか?」

「はい。確かそのように……」

「そうかすぐに通せ!」

 兵士に引き連れられ、セバスがシルフォードの前にやってきた。

「忙しい中、奴隷である私と面会して頂きありがとうございます」

「それで、何かいい案があるのだろう?どういう案だ?」

「主人であるヒロトシ様はこういう状況を読んでいて、魔道具を4台製作しておりました。それを使って頂きたいのです」

「ヒロトシ君が、この状況を読んでいた?」

「いえ、今回の闇ギルドの事ではなく、スタンピードが起きた場合の対策です」

「スタンピードの対策だと……それは一体なんだ?」

「魔道砲です。ただこれはMP消費が激しいので、魔法使いの皆様が協力して使って頂きたいのです」

「分かった!どんなものかわからないが、すぐに準備をしてくれ。アンデットが防衛ラインを超えたのだ」

「承知いたしました」

 セバスは、ミルデンス達と城壁の上にあがった。

「何で奴隷がこんなところに……」
「じゃまだ!こんなところに何しに来た!」

 冒険者達は、気が立っていたのでセバスを怒鳴りつけた。しかし、一緒についてきた兵士がそれを止めたのだった。

「この奴隷は領主様の知る所だ。構わないから、君達は自分の事を頑張ってくれ」

「領主様が?」

「そうだ。領主様が許可を出している」

 すると冒険者は、領主様の指示だと分かって、城壁のスペースを開けさせた。すると、セバスはマジックバックの中から魔道砲を取り出し、冒険者達の注目を集めたのだった。

 その魔道砲は、2m四方の大きさがあり、パラボラアンテナのような形をしていた。アンテナの内側磨きが施されていて、ピカピカに光っていたのである。

「な、なんだあああ⁉」
「いったいなんだあれは?」

 シルフォードは簡易的だが、セバスから説明を受けていた。そして、すぐに城壁の上に兵士と向かわせたのだ。

「ヒロトシ君は、なんてものを製作していたんだ……」

 セバスは、魔道砲の周りに4人の魔法使いを配備してもらった。

「申し訳ありませんが、このプレートに魔力を注入してください」

 魔法使いは、セバスの言う通り魔力を込めた。すると、一気にMPが吸い取られる感じがして、MP150を吸い取られた。

「魔力充填完了!発射!」

 セバスは、発射のボタンを押した。すると、パラボラアンテナの中心にある火属性の魔石がドンドン赤くなり、パラボラアンテナの皿の部分に拡がり、皿の部分全体が真っ赤になりそれが放出されたのだ。

 カッと熱線が、アンデット集団に発射され、前方にいたアンデットはじゅっという音を立てて蒸発してしまったのだ。それを見た冒険者は、唖然としていた。

「あ……あは、アハハ……なんだよこの魔道具は……」
「すげえ!」
「すげぇぜ!」
「これならなんとかなる!」

 城壁の上は大歓声が起きたのだった。セバスも魔道具の効力を初めてみて驚きを隠せなかった。すると、セバスは冒険者達からもみくちゃにされたのだった。

「あんた奴隷なのにすげえな!」

「い、いえ、私はこの魔道具を持ってきただけで凄いのは旦那様です」

「旦那様?誰だよそれは」

 Cランク冒険者では、ヒロトシの奴隷の顔まで把握している人間は多くなかった。

「㋪の責任者で、私の主ヒロトシ様です」

 ヒロトシの名前を聞き、さらに歓声があがったのだった。その様子を後ろでみていたシルフォードは、天を仰いでヒロトシに感謝したのだ。

「ヒロトシ君……君という人間は……本当に感謝する」

 そして、セバスの場所のほかに3台の魔道砲が設置されたのだ。この魔道砲は皿の部分は、ミスリルとオリハルコンの合金でできていて、魔力を伝え増幅する仕組みになっていた。
 土台の部分は、この威力に耐えられるように、重量のあるアダマンタイトで製作されていたのだった。これらは、あの屑石から採取された物である。

「あの輝きはミスリルか?いや違うな……なんだあれは?」

 生産ギルドマスターのロドンは首を傾げた。副ギルドマスターのアリベスはなんとなく察することが出来ていた。

「ギルドマスター……わたしは、なんとなくですがヒロトシ様の所の奴隷達が、頑なにミスリルの販売を断ったのが分かった気がします」

「あっ……そういう事か!」

「ええ、そうです。あの魔道具の製作に使ったのですよ。なのに、わたし達はギルドの売り上げの事ばかり……わたしは恥ずかしいです……」

「そ、そうだな。もう遅いかもしれんが、ヒロトシ殿が帰ってきたら謝罪をしよう……」

 生産ギルドの幹部達も、二人の会話を聞き自分達の行為を恥じたのだった。




 一方こちらは、闇ギルド所属のネクロマンサーの陣営である。

「な、なんだ⁉今のは……」
「ふっふざけるなよ!ミトンの町にはあんな魔道具が存在するのか」
「どうなんだ?ガーランド!」
「俺は知らない……あんなのは初めてみたし、町の兵器の噂も聞いたことが無かった……」

 闇ギルドの陣営には、闇ギルドミトン支部の唯一の生き残りのガーランドがいた。そして、そこにはネクロマンサーが数人会議を開いていた。

 いくら高ランクのネクロマンサーでも、これほどのアンデットを一人で集める事は出来ない。ネクロマンサーは何人もいて、その全員で集めたものだった。

「まあ、待て。驚きはしたが、あのような兵器に臆するでないわ」
「しかし……」
「いいか?我々で集めたアンデットはまだまだいる。一発で千体程が蒸発しただけではないか。アンデットは何体いると思っているんだ?」
「確かにそうだな。あの程度の火力では、焼け石に水という物よ」

 ネクロマンサー達は余裕で構えていた。それほどまでに敵の戦力は膨大なものと分かる。

「それに、真実を知った時、あいつ等の絶望を見てみたいよな。ふはははははは!」
「「「「「ふははははははは!」」」」」

 ネクロマンサーたちには、奥の手があるようで、大笑いしていたのだった。


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