研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第2章 研磨という技術

34話 家族全員で王都へ

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 闇ギルドの計画が失敗に終わり、シーズはそのまま逮捕された。

「ヒロトシ君。本当にありがとう。あのまま私は死んでいたと思う……」

 シルフォードは改めてヒロトシに頭を下げた。それと同時に、ベルナータとアンジェリカも、ヒロトシにお礼を言い、兵士達も膝をつきお礼を言ったのだった。

「いやぁ……皆さん頭を上げてください。シルフォード様ももうやめてください。皆さんは日頃から、町の為に頑張ってくれていますし、そのおかげで俺も町で楽しく生活ができているんですよ」

「いやいや……今回は本当に危なかった……まさか、フォーガンが裏切っていたとは思いもしなかった……」

 そのころ、フォーガンの家では家宅捜索が行われ、フォーガンはシルフォード誘拐の主犯格として逮捕された。
 シルフォードは王国にこの事を報告。フォーガン=ミスリードは、上司を誘拐し土地の乗っ取りを企てたとして、奴隷に没落特別奴隷ではなく、鉱山送りとなった。そして、ミスリード家は没落妻や娘や息子のフォーゼンは特別奴隷となった。

 その後、ミトンの町では税率はすぐに10%に戻り、ハンスとアンジェリカの婚約は元に戻ったのだった。

 今回、ヒロトシは領主を救いミトンの町を救った事でとんでもない功績を残す事になり、王都に呼び出される事になる。後日、ヒロトシは領主宅に呼び出される事になり、ヒロトシはシルフォードと面会していた。

「ヒロトシ君。凄い事になった!」

「どうかしたのですか?」

「今回、ミトンの町を救った君に王国が報表彰状を送りたいそうだ!いつ、王都に出発できるか教えてほしい」

「はぁあ?俺が王都に行くのですか?」

「そうだ!これは名誉な事なんだぞ。王国が商人に対して報奨を送るというのは、建国以来初めての事で……」

「ちょっと待ってください!俺はそんなのいりません」

「何を言っておる!これは大変名誉な事で!」 

「ここから王都まで、馬車で半年はかかるんですよ?それまで店はどうするんですか?」

「それは、一時休んでだな」

「いやいやいや……そんな事をしたら、せっかく常連になった冒険者達が町の拠点を移しちゃうでしょ?そんな営業妨害されたらこっちが迷惑だよ」

「そんな事より、王国からの報奨の方が大事……」

「馬鹿な事を!そんな王国の自己満足の為に、俺がいちいち往復1年もかけて行く必要はないよ!」

「馬鹿な事を!王国の自己満足だなんて言ったら駄目だ!王族に聞かれたら不敬罪として処刑されるぞ?」

「とにかく、俺はそんな報奨いりません!」

「ヒロトシ君!君は自分で何を言っているのかわかっておるのか?」

「シルフォード様こそ、俺が一年もこの町を離れる意味が分かっているのですか?」

「わかっておる。君が1年間いなくなるという事は、町の衰退がある程度起こることになるだろう。しかし、そんな事はたいしたことではない!君がまたこの町に戻ってきたら……」

「シルフォード様は全然わかっていません!」

「なっ!いくら君でも私を愚弄する事は……」

「愚弄などしてません。もし、俺がこの町を離れるとなると、闇ギルドは必ずこの町に潜伏し始めますよ。本当によろしいのですか?」

「うっ!だが、そう簡単に……」

 ヒロトシは、自分がいなくなる事で冒険者達は元の拠点に戻ると説明した。ヒロトシの言う事は当然であり、この町に磨きが無くなれば、高ランク冒険者はもっと儲かるダンジョンがある場所に移り住むのは当然だった。今なら、ミスリル装備を手に入れたからこそ、この町のダンジョンより難しい場所にも行けるからだ。
 そして、頼りになる高ランク冒険者がいなくなったところに、闇ギルドがミトンの町に征服するのは簡単になる。

「しかし、この間のようなことがあっても、魔道砲があれば……」

「残念でしたね。俺が1年も戻らないのに、セバス達だけをここに留守番をさせるわけないでしょ?あまりにも危険すぎます」

「だったら、魔道砲だけでも……」

「それも無理ですね」

「な、なぜ?」

「魔道砲の傘の部分、あれは俺の研磨技術でマジカル化にしています。5か月もしたらマジカル化は無くなり、タダの置物になるからですよ。あの傘の部分は魔石の威力を増幅して撃ち出す仕組みになっているんですよ?」

「……」

「つまり、安全が無くなった町に、セバス達を置いていく事なんてあり得ないという事です。それに魔道砲は町の所有物じゃなく俺の持ち物だ」

「しかし、王国から報奨を辞退するなど前代未聞だぞ?」

「俺に報奨を与えたかったら、王国がこの町に来たらいいだけの事ですよ」

「ば、馬鹿な!」

「そうですか?俺はいらないと言っているのですよ?俺の店はこの町にあって、安全は確保されていると言っても過言ではない事は、シルフォード様も理解できるはずです。それを、捨てて一からまた作り上げるなんて馬鹿馬鹿しいでしょ?」

「しかし、報奨を受け取れればもう働く事はないほどの報奨金が出るのだぞ?」

「何を言っているのですか?俺はもうそれぐらいの金を持っていますよ。今回、闇ギルドのアサシン達の遺体を冒険者ギルドに提出したんですよ?」

「うっ……」

「つまり、もう金をもらうためだけに往復1年もかけて、王都に行く理由などないという訳です」

「だったら、違う物を請求できると思うぞ?」

「別にいらないよ。俺は、研磨でセバス達とのんびり生活が出来たら十分だよ」

 シルフォードは、ヒロトシには王都に出向いてもらいたかった。この町の英雄と言われる人物が、国から報奨を受ければ自分も出世できるからである。

「ヒロトシ君考え直してもらえないか?」

「何でシルフォード様は、そんなに俺を王都に行かしたいんですか?」

「そりゃ当然であろう!この町の英雄が国から表彰されるんだ。名誉な事だし、この町は国から重要拠点として認知される。そうなれば、国からも王国騎士団が派遣され、強固なものになるのは当然だからな」




 シルフォードの説明に、ヒロトシは考え込み長い間この部屋には沈黙が続いた。

「なるほど……そういう事ですか」

「君は国から表彰され、名誉を受ける事が出来るんだよ?」

「分かりました。王国の表彰を受ける事にしますよ」

「ほ、本当か?嘘じゃあるまいな?」

「いいですよ。その代わり、この町は必ず衰退しますよ?本当によろしいのですね?」

「一時的に衰退はすると思うが、君が表彰を受ければ王国騎士団が衛兵とやってきてくれる。そうなれば安全な街として認知されるだろうから大丈夫だ!」

 シルフォードは、ヒロトシが王国からの報奨を受けてくれることに笑顔で歓迎した。

「じゃあ、いつからここを出立することにする?準備もあるだろうから1週間後ぐらいでいいか?」

「ええ、そのぐらいで大丈夫ですよ。こちらも、ギルドに挨拶したりしないといけませんからね」

 シルフォードは、執事に手紙の準備をさせた。伝達方法はスカイバードを使った伝書鳩のようなものである。
 風属性を持ったこの鳥は、追い風を自分で起こしとんでもない速さで飛行するのである。馬車で半年の距離を二日ほどで横断し、連絡には便利な方法だった。

「それじゃ、シルフォード様色々お世話になりました。後の事はよろしくお願いします」

「なんだい?そんな丁寧なあいさつなんかして、1年は会えなくなるが後は任せておきたまえ」

 ヒロトシは、一礼をしてシルフォード宅を後にしたのだった。





 そして、1週間後ヒロトシ達は㋪美研の店の前に出ていたのだった。

「旦那様、本当に我々もついていってもよろしいのですか?」

「当たり前だろ。今回はガーラの町に行くのとはわけが違うからな。何かあった時、情報がつかめないから絶対に一緒に行かないと駄目だ」

 前回は、魔道砲を使用した場合アラームで知らせる事が出来たが、今度は距離がありすぎるので、アラームが鳴らない恐れがある為、万が一の時情報が入ってこないのである。そしてもう一つ理由もあったが、ヒロトシは誰にもしゃべらなかったのだ。

「しかし、馬車はどうするのですか?ヒロトシ達は全員で30名もの大所帯ですよ?」

「それは大丈夫。俺に任せておけって」

 ヒロトシはウィンクして、研磨道具召還でトラックを出したのだ。これは地球で現場に行くとき、納品する為に使っていたトラックである。
 ヒロトシは、地球での研磨作業はおもに業務用のシンク台を磨いていた。新しい店舗が出来るとその厨房にいれるシンク台を多い時には10台以上のステンレス製のシンクを磨き上げ、それを現場に運ぶことも多かったのだ。その為、4tトラックを召還することが出来たのである。

「「「「「「な、なんですか?これは!」」」」」」

 セバスはもちろん、マインやアイも驚き大声を出した。荷台には家から運び出したじゅうたんを敷き、ソファーを並べてあった。コンテナの中は荷台とは思えない程ゆったりできる空間となったのだ。

 この召還の便利な所は、カスタマイズが出来ると事だった。コンテナには窓を設置することが出来ていた事で、それに研磨の道具と同じでエネルギー源は魔石で動く事だ。つまり、4tトラックではあるが、魔道具の一つと言えばいい。

 ヒロトシは、㋪美研の家の敷地に結界を張って誰も入れない様にして全員を後ろに乗ってもらい、セバスは助手席に乗ってもらった。

「これって馬車なのですか?馬はどこに?」

「馬はいないけど、この荷台だけで動くんだよ」

「ど、どういうことです?」

「まあ、いいから乗って。危険だからそのベルトをちゃんとしろよ。とんでもないスピードが出るからな」

 その様子を見ていた町の人間は、目を見開き驚いていた。そして、見送りに来ていた領主たち、各ギルドの幹部達もまたいったいなんなのか呆気に取られていたのだった。

「ヒロトシ君……これはいったい……」

「これは馬車の代わりですよ。王都の方には2、3日中に到着予定ですので、そのように伝えてくれてくれましたよね?」

「本当に到着するのだろうな?一応は余裕を見て、一ヶ月と言っておいたのだが、それでも早すぎるんだからな」

「大丈夫ですよ。ではいってきます」

 エンジンをかけると大きな音でディーゼル音が鳴り響いたが、排気ガスは当然出ていなかった。4tトラックは大通りをゆっくり進みだした。

「う、動いた!旦那様これは一体……」

 後ろの荷台では、ルビーとサイファーが騒いでいた。小さい子供は乗った事のない乗り物に興奮していて、他の大人達はソファーに座り心配そうに外を眺めていた。

「今は人通りが多いからな。ゆっくり行くが城門を出たらスピード出すからな」

「だ、旦那様!スピード出すって言われても、今でも十分早いですよ」

 セバスは、シートベルトを握って顔を青くしていた。セバスが驚くのも無理はなく、この世界の馬車はゴムタイヤではなく、木を加工して鉄で補強しているものである。当然そんなタイヤでスピードが出せる訳はなくスピードを出してもたかがしれている。
 ヒロトシからしたら、そんな乗り物は乗らず走った方が早いのだ。そんな世界の住人であるセバスは、トラックの助手席に乗らされたので、顔を真っ青にするのは無理もなかった。

 ヒロトシの運転したトラックが、大通りを颯爽に走り抜けていき、それを見た町の人間は驚きその場に立ち尽くして見つめていた。




 そして、城門を走り抜けようとした時、町の兵士から呼びとめられた。

「と、止まれ!なんだその乗り物は!ってヒロトシ殿⁉」

 トラックの前に兵士がとびだしてきた。ヒロトシは慌ててブレーキを踏み寸前のところでトラックは急停車したのだった。

「いきなり前に飛び出るなよ!危ないだろ?」

「し、しかし、何ですかそれは」

「馬車の代わりだよ。何もなければなるべく早く帰って来る予定だからな」

「それにしても、ヒロトシ殿は非常識すぎますよ!町の中をそんなスピードで走ったら、乗り物が転倒してしまいますよ」

「大丈夫だよ。あれでも充分遅いスピードだからね」

 ヒロトシに言わせたら、徐行より少し速いぐらいだった。つまり、30kmも出てないのにスピードの出し過ぎと言われていたのだ。このトラックなら高速道路で走行するぐらいは十分出す事が出来る為全然遅かったのだ。

「何を言っているのですか?あれ以上スピードを出すと馬車は転倒しますよ。もっとその乗り物のスピードを落としてください!」

「分かったよ……そんな怒る事ないだろ?じゃあ、俺は王都に向かうからそこをどいてくれ」

「お気をつけて、安全運転でお願いします」

「ありがとう!じゃあいってきます」

 町の兵士は、お辞儀をしてヒロトシを見送ったのだった。しかし、城門を出たら人はもうおらず、道が舗装されていないのにもかかわらず時速60kmで走り去り、城門の兵士達は目を見開き呆然として、ヒロトシ達を見送っていたのだった。



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