研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第4章 魔道スキルと研磨スキル

13話 刀

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 ヒロトシにとって噂の鍛冶屋では、何ともきな臭い感じとなった。これは、オーランの町の人間にとってもそうであり、この店の武器や防具さえ手に入れれば後は用はなかったほどだった。

「それでどうだ売り上げの方は?」

「それが思うほど伸びなくて……」

「どういう事なんだ?お主は奴のレシピさえ手に入れれば大儲けできると言ったではないか」

「それはそうなのですが……」

「だから、儂はノーザンを殺人の容疑者として仕立てたのだぞ?」

「しかし、タルデュース様……ノーザンはどうしたのですか?」

「ふっ!あ奴は奴隷商人に売り飛ばしてやったわ!儂の言う事を聞かぬからああいう目に遭うのだ」

「そうですか……それなら安心ですね」

「それよりもレートン。貴様は店の売り上げをもっと上げるのだ。じゃないとあの店を乗っ取った意味が無かろう!武器の質は良いのは確かなのであろう?」

「それはもう。あの道具の匠が発明した武器なのですから間違いはありません!」

 ノーザンと言う鍛冶師は、貴族と自分の弟子?に嵌められ、奴隷に落とされていた。そして、ノーザンとは道具の匠と呼ばれる名工だった。
 細工師のミドリが買ってもらった道具の製作者もこの人だった。ここ数年行方知れずになっていた理由は、噂になっていた切れ味の鋭い武器を開発していたからだった。
 数年間工房に籠って、新しい武器を製作しそれを完成させたのだったが、それをタルデュースに目をつけられてしまったというわけだ。



 話は数か月前にさかのぼる。その日、ノーザンは工房で新しいロングソードを作っていた。いや、もうその形は刀と言った方がいいだろう。
 この世界の武器は、鋳型を取って作るのが定石であり、武器も叩き斬ると言った方がいい。しかし、ノーザンは刀を引き斬る事で相手にダメージを与える武器を作った。これは道具をメインに作っていたノーザンの発想だった。
 ようは包丁を武器にしたのだ。鉄を叩き、焼きを入れて砥いだのである。今まで常識とされた武器より刃は薄く、焼きを入れる事で硬く仕上げられていた。

「やっと完成したぞ」

 ノーザンは喜びのあまり歓喜の叫びをあげ、ギルドに登録しようと浮かれて初めて作った刀を持ち、ギルドに急いだ。
 そして、その浮かれ切った行動が悪かった。あまりに嬉しくはしゃいでしまい、人にぶつかってしまったのだったのだ。そのぶつかった相手が悪かった。その人物こそがタルデュースだったからだ。

「ぶ、無礼者!貴族にぶつかるとは何事だ!」

 ノーザンは顔を真っ青にして、タルデュースに謝罪をしたのだった。

「申し訳ありません!新しい商品が出来て浮かれてしまいました!どうかお許しください!」

 ノーザンの言葉に、タルデュースはハッとして悪い笑みを浮かべた。

「ほう!新しい商品とな?それはなんだ?」

「こちらでございます」

 ノーザンは、ギルドに登録するはずの出来たばかりの剣を差し出したのだ。

「こいつは凄いのう!」

 タルデュースは、金の臭いを嗅ぎつけたのだった。

「お主!お前のような無礼者は不敬罪に処す」

「そ、それはご勘弁を……」

「観念をしてほしいのか?だったら儂のお抱え鍛冶師となるがよい!命は助けてやろう」

「そ、そんな!」

「いやなのか?嫌ならしょうがあるまい。不敬罪として処刑するだけだ。おい!お前等こやつを叩き斬れ!」

「「分かりました」」

「ちょっとお待ちください!わ、分かりました。お抱えの鍛冶師にならせてください」

「そうかそうか。理解がいい人間は、いやドワーフは長生きが出来るぞ」

「それじゃついてくるのだ」

 ノーザンは自分の行動を後悔したが後の祭りであった。貴族のお抱えとは待遇はよく聞こえるがそんな事はない。これから搾取されるだけの存在となるからだ。

 屋敷に着いた途端、タルデュースはノーザンにその剣の納品を月5本と命じたのだ。

「月に5本だと?それは無理だ!どんなに頑張っても3本が精一杯なんだ?」

「何だその言葉遣いは!儂が5本と言えば5本だ!もしできないと言うのなら頭を使え!」

「しかし……」

「じゃあ、わかった!人材を用意してやろう!そいつと一緒に製作しろ」

「ですが!」

「反論はゆるさん!お前は儂のお抱えとなったのだ。それ以上反論するというのなら反逆罪として奴隷にするぞ?」

 ノーザンはもう逃げる事すらできなかった。タルデュースは、ノーザンに無理難題を押し付けていた。そして紹介したのがレートンだった。

「その刀は、登録するんじゃないぞ?その刀はこの儂の支援があってできた物だからな」

 ノーザンは、訳が分からなかった。支援とはどういう事なんだと、頭に疑問符が浮かんだほどだった。そして、何もできず反論も許されず、次々タルデュースの言う事が実現されていった。そして、最初の1本はタルデュースに取り上げられてしまったのだ。
 最初の1本は登録するのに必要なもので、自分の物と証明するのに大事なアイテムだったが、それを取られてしまった。

「後日、人材は派遣してやる。おまえは、すぐに刀の製作に取り掛かれ。時間がないのであろう?」

 ノーザンは、タルデュースの顔を見ると絶対に逃さんと言うのが顔に書かれていて、意気消沈し工房に帰るしかなかった。そして、3年の月日をかけて開発した刀をこうも簡単に奪われてしまい、悔し涙を流したがもう遅かった。

 そして、ノーザンが帰った後、タルデュースは部下にいた鍛冶師の男を呼び出した。

「これはこれはタルデュース様。いつもご贔屓にしていただきありがとうございます。それで今日は何ようでしょうか?」

「今日は、お主には良い話を持ってきたのだ」

「ほう!それはそれは。それでどういったお話で?」

「ある男の工房の手伝いをしてほしいのだ」

「どこの工房ですか?」

「ノーザン工房だよ」

「あっ……あ奴は駄目です……頑固なドワーフでして道具の匠と言われて誰にも仕事を手伝わせねえ。ここ数年工房に引き篭もって何かやっているらしいですが、よくわからねえドワーフなんですよ」

「まあ、話を聞け!コイツを見てみろ?」

 タルデュースは先ほどあった事を、レートンに説明した。すると、レートンは目を見開き驚いた。

「そいつはすげえですぜ。まさか、ノーザン工房に入れるとは思わなかった」

「それで、レートンにはあ奴の弟子になってもらい、この刀のレシピを習得して欲しいのだよ」

「なるほど!そして、頃合いを見謀ってノーザンの奴を……」

「そういう事だ!そうすればいつものようにお主は新しい武器を!そして、わかっておろうな?」

「分かっておりますよ。その売り上げの一部をタルデュース様に」

「がははははははは!その手筈で頼むぞ」

 タルデュースの屋敷から二人の笑い声が響いていたのだった。

「ちょっと待ってください!このレシピは俺の物です。いくら俺がタルデュース様のお抱え鍛冶師だからと言って、そう易々他人にみせれるものではありません!」

「ほう!儂の言う事が聞けないと言うのか?」

「そうはいっていません」

「なら、貴様一人で納期に5本納めれると言うのだな?」

「そ、それは……」

「もしいう事を聞かぬのなら、反逆罪に処すぞ?それでいいのか?」

「……」

 そして、数が月が経った今レートンは、ノーザンの仕事を手伝い、そのレシピを盗んでしまったのだ。こうしてノーザンも抵抗したのだが、タルデュースが納期を早めたりして派遣した弟子に仕事を手伝わせろと指示を出したことが原因だった。

 そうして、レートンもノーザンがやっと作り出した刀の製作方法を習得してしまったのだ。これにより、タルデュースはノーザンから取り上げた最初の一本を返したのだ。
 レートンが作り出した最初の一本を、ギルドに登録してしまったからである。これによりノーザンは刀を作り続ける作業員と成り下がってしまったのだ。
 それからすぐの事だった。タルデュースがノーザンに3本の刀を納めろと指示を出したのだ。

「ちょっと待ってください!3日前に納品したばかりではありませんか?」

「すぐにいるんだ!」

「そんなすぐに出来るものじゃないんです!」

「お前は何かといえば反抗ばかりしおって!まだ自分の立場が分かっていないみたいだな」

「ですが、無理なものは無理なんです!本当なら1ヶ月に1本のペースで良いものを製作したいのです」

「だったら睡眠時間を削れ!無理と言っているから無理なんだ!」

「そ、そんな……」

「いいか?2週間後に3本納品しろ!わかったな?」

「わ、分かりました……」

 ノーザンは理不尽すぎるその要求に、その晩は飲まずにはいられなかった。そして、その日の朝ノーザンの作った刀が殺人に使用されたのである。

「ノーザン!神妙にしろ!お前に殺人容疑が掛かっておる!」

「はぁあ⁉」

 寝ていたところに、町の兵士が乗り込んできて、ノーザンは一気に目が覚めたのだった。

「この剣はお前の物だな?」

 ノーザンは驚いた。自分が大切に保管していた剣が、兵士の手に握られていたからだ。

「確かにそれは俺の物だが、何で兵士の皆さんがそれを持っているんだ?」

「白々しい事を!これは昨晩、殺人現場にあったものだ。被害者が心臓に一突きにされて死んでおったのだ」

「ば、馬鹿な!」

「馬鹿は貴様だ。こんな需要証拠を殺人現場に残すとは。貴様には取り調べをさせてもらう。一緒に来てもらうぞ」

「俺はやってねえ!」

 ノーザンは昨日やるせない気持ちで浴びる様に酒を飲んで、ドワーフ族だと言うのに二日酔いになっていた。

「ドワーフのくせに二日酔いとは呆れる。いいから大人しくしろ!」

 こうして、ノーザンの抵抗は空しく兵士に逮捕されてしまったのだった。


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