研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第4章 魔道スキルと研磨スキル

16話 恐怖の幕開け

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 ヒロトシは、ミドリにイヤリングの製作を頼んだ。本当なら指輪でも良かったのだが、ノーザンが両手を失っていたのでイヤリングにした。

 ヒロトシは、生産ギルドで魔宝石の原石を購入した。

「ヒロトシ様、最近魔宝石を購入していますが、何かあったのですか?」

 さすが、生産ギルドである。ヒロトシの行動には目ざとい。今までは宝石でアクセサリー目的で購入していたが、ここにきて高価な魔宝石を購入したからだ。
 宝石と魔法石の違いは、宝石に魔力があるかどうかの違いだった。魔宝石はダンジョンから採掘されるもので、宝石の中に魔力を感じる物で、丁寧に処理することで赤や青黄色など乱反射してとても綺麗で魅惑な宝石になる。当然普通の宝石とは値段も10倍ほど違ってくる。

「この魔宝石を磨いたらどうなるかと思ってな。一応試しみたいなものだよ。そんなに変わらなかったら、普通の宝石でもいいと思ってな」

「なるほど。でも、普通の宝石と魔宝石では全然違ってくるとと思いますよ」

 ヒロトシの会話から、受付嬢ではその真意を読み取る事は出来ないようだった。この会話がアリベスとなら、ヒロトシがとんでもない事をしようとしていると感づいたのかもしれなかった。

「そうか。そいつは楽しみだ」

「では、魔宝石の種類は何にしますか?」

「エメラルドはあるか?」

「エメラルドですか?ダイヤモンドではなく?」

「ああ!最初だからな。どうなるかお試しだと言ったろ?」

「なるほど……承知しました」

 ヒロトシはお試しとかではなく、エメラルドを最初から求めて買いに来ていた。エメラルドの宝石言葉には再生・豊穣・生命と言う言葉があるからだ。
 ヒロトシは、緑色の宝石には癒しの効果があると思っいた。それ故にリジェネリングには最適だと思ってエメラルドを選んだのである。

「これが、魔宝石か……ありがとな」

「いえいえ、いいものが作れるといいですね」

 ヒロトシは何も疑われる事も無く、エメラルドを購入して家に帰宅したのだった。ヒロトシは帰宅した後、受付をした受付嬢はその日に売った報告書を上に上げると、次の日アリベスはその受付嬢に血相を変えて話しかけたのだ。

「ちょっと!この報告書は本当の事なのですか?」

「ええ、そうですが……何を慌てているのですか?」

「それはこっちのセリフです。なにを落ち着いているのですか?ヒロトシ様が今更、魔宝石が綺麗だからと言ってその為だけに魔宝石を購入したと本当に思っているのですか?」

「ですが……ヒロトシ様は一応試しみたいなものだと……」

「本当に試しと言ったのですか?」

「それは本当です!だから、魔宝石で作られたヒロトシ様のアクセサリーは綺麗なんだと想像していて……」
「私も聞きましたよ。ヒロトシ様は普通の宝石じゃなくて、魔宝石を使えばどれくらい変わるのかって!」

「貴方達は、本当にそれを真に受けたと言うの?」

「「ですが……」」

「本当にめでたい人達ね。ヒロトシ様がそんな事の為だけに魔宝石を使用するわけないじゃない!まあ、いいわ!わたしは明日一番で㋪美研に訪問します。明日の予定は変更するので連絡をよろしく頼みます」

「「は、はい!」」

 次の日、アリベスは㋪美研に訪問することになる。ヒロトシを受付した受付嬢は次の日、休日だったが急遽出勤になってしまったのだった。

 次の日、ヒロトシに訪問をするため連絡を取り、その許しを得る事が出来たのはその日の夕方だった。
 今や、ヒロトシにいきなり訪問してもいいのはシルフォードぐらいだった。他の者が面会をするには連絡をしないと失礼に当たり、今回の面会も次の日の夕方にしてもらえたのは、アリベスが日ごろ丁寧な対応をしていた事で許されただけだった。
 面識がなければ、普通に1週間後の面会になっていてもおかしくはなかった。

「それで今日は何の用ですか?」

「何の用じゃないです。また何か凄い事を考えていますよね?」

「はっ?何の事を言っているんだ?」

「若い受付嬢はごまかせてもわたしは騙せませんよ。一昨日、ギルドで魔宝石を購入しましたよね?」

「ええ、購入しましたよ。それがなにか?」

「それを使ってとんでもないものを発明しようとしているでしょ?」

「ノーコメントです!」

「やっぱり!今度はどんなことをやろうとしているのですか?それは、オークションで目玉商品になるようなものですか?」

「ちょっと待て!確かに俺は色々考えているが、魔宝石を購入したのは一昨日だぞ?」

「それがどうかしたのですか?」

「じゃあ、反対に聞くがギルドが新しい商品を考えていて、その企画を外部にべらべらしゃべるのか?」

「それは……」

「しゃべらないだろ?それに俺は魔宝石を一昨日購入したんだぞ?仮に新しい企画があっても、成功するかどうかの段階でギルドに話すわけもないじゃないか」

「でも!」

「いいか?アクセサリーは磨くのに時間がかかると言っただろ?仮に魔宝石を使ったアクセサリーだったとして、昨日の今日で出来る訳ないじゃないか」

「だけど、ヒロトシ様が発明する商品が今までの延長って事はないかと!」

「仮にそうだったとして、俺が生産ギルドにその商品を持っていく義理はないはずだぞ?」

「なんでそんなことを!」

「何を言っている。俺は生産ギルドには加入していないだろ?つまり、同等の立場だろ?俺が商品を持っていくときはお互いに利益が出る様に考えているはずだ」

「ですが……だったら今度はどういう物を」

「ノーコメントだ。今回は生産ギルドに持って行ったとしても、あんた達生産ギルドには利益は出ない物だからな」

「う、嘘でしょ?魔宝石を使っているのに……」

「いいか。よく聞け!いつもいつも俺に頼りきりになっているんじゃなく。お前達はお前達で発案企画を立ててみたらどうなんだ?」

「それは……」

「聞きたいんだが、そんなにギルドの運営は厳しいのか?」

「そんな事はありませんが、ヒロトシ様の商品は今までにないものばかりで、ギルドも期待しているのですよ」

「期待するのは勝手だが、俺は生産ギルドに所属していないんだから、部外者を頼っててどうする!」

「それだけヒロトシ様は凄いって事なんです」

「いいか?こんな事はあまり言いたくはないが、一応俺は貴族だ。今回、生産ギルドの行動はあまりに無礼だとは思わないのか?」

「えっ」

 ヒロトシはアリベスを真剣な目つきで睨んでいた。その目にアリベスは自分の行動を思いなおして、顔から血の気が引くのを感じていた。

「なあ?普通に考えて君の行動はおかしいと思わないかい?」

「も、申し訳ございません!」

 アリベスは、ヒロトシがいつもの調子だったので、どうしても貴族とは思えず調子に乗ってしまっていた。ヒロトシもそういう事をあまり言いたくないので、あまりに酷い態度以外は目をつむっていたが、今回は少し釘をさす事にしたのだ。

「俺は、生産ギルドには感謝しているつもりだよ。だから、協力して欲しい時は話を持っていく。しかし、話が無ければそれは生産ギルドには関係のない話だ」

「はい……」

「そして、もし俺に協力をしてほしいのなら、生産ギルドで新しい企画を考えろ。その企画に対して俺が出来る事ならば喜んで協力する」

「わ、わかりました」

「一応言っておくが、しょうもない企画をあげてきて、協力してほしいと言っても、俺は貴族の前に商人という自覚を持っているから、俺が納得するものじゃないと動かないからな」

「は、はい……」

「じゃあ、今日の事は大目に見て目をつむるから帰ってくれ。俺も暇じゃないんだ」

「本当に申し訳ございませんでした」

 アリベスは、ヒロトシに大目玉を落とされ、とぼとぼと肩を落としギルドに帰っていった。アリベスが帰った後、セバスがしゃべりかけてきた。

「本当に生産ギルドはしょうがないですね……」

「まあ、そう言ってやるな。俺も普段はああいう雰囲気は出していないからな。それにしても、さすがアリベスさんと言うところだろう」

「確かにそうですね。昨日の今日ですぐに駆けつけるのですからたいしたのもですよ。それより、旦那様。魔宝石の方は大丈夫ですか?」

「まあ、今日はもう仕事は止めておくよ。明日からまた集中して磨がかないとな」

「でも、ミドリから聞きましたが凄い発想ですね?私もあの計画を聞いてビックリしましたよ」

「でも、これが上手く行けば冒険者達のダンジョン攻略はさらに楽になるはずだよ。それに……話は変わるが、もう一つ気になっていることがあるんだ……」

「何か気になる事が?」

「今回の闇ギルドが呼び出した魔王の事だよ」

「えっ?気になるって言っても、魔王は旦那様が討伐したと言っていたじゃないですか?それに死体も手に入れたのでしょ?」

「それはそうなんだが……相手は魔王なんだぞ?あんな簡単に討伐できるとは思えないんだよな……」

「ですが死体はあって、息の根は止まっていたのですよね?」

「しかし、あの死体が本当に魔王のものと断定できるか?」

「旦那様の心配は理解できますが、旦那様は神眼の持ち主ですよね?死体を鑑定してどうだったのですか?」

「それは確かに魔王スルトと表示されていたよ」

「だったら大丈夫なんじゃありませんか?」

「しかしだな……なんか嫌な予感がしてならないんだよな」

「や、やめてくださいよ。旦那様の予感って妙に真実味があるじゃありませんか」

「フム……俺だってこういう予感は当たってほしくないけどな。魔王の死体に魔石が無かったんだよな?」

「魔王に魔石ってあるモノなのですか?」

「いや、知らないけどさ。なんかありそうな感じしない?」

「言われてみればそうかもしれないし、よく分かりませんね……」

 ヒロトシとセバスは、とりとめのない話をしていたが、実はヒロトシの心配事が当たっていたのだった。その頃、殺されてしまった魔王スルトは人間が考えつかない方法で生き返っていた。

『な、なんなのだあの人間は!今の世にはあのような人間が存在していたのか……』

 魔王スルトの肉体は、ある場所に保管されていた。魔王スルトはクローンを作っていたのだ。

 この魔法は、自分の肉体10kgが必要になるが、その肉片に魔法かけると自分そっくりの身体をもう一体作り出す事が出来る。しかし、この肉体はあくまでもスペアの肉体であり魂は入っていない。なので、この肉体は厳重に保管され、本体が殺されると同時に魂は一瞬でクローンで作り出したスペアの肉体に移る事で、不老不死の肉体が出来る事になる。

 クローンなのでレベルが下がる事も無く、能力もそのままで復活する事が可能だが、唯一のデメリットは死んだときに、その場に残る装備品までは復活する事はない。
 つまり、スルトが持っていた魔剣レーヴァンテインはあの場に残りヒロトシが所持していることになる。

『しかし、レーヴァンテインは惜しいが契約を結んだ時の宝石が破壊されたのはラッキーだったかもしれんな』

 肉体は、ある洞窟に保管されていて、現世に残っている。そして、契約は破棄された事で、魔王スルトは何の縛りがなくなっていた。
 つまり、この世は混沌の世界に突入した事になるのである。



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