研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第6章 研磨という職

3話 喜ぶ老人達

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 その日、㋪美研はお年寄りで賑わっていた。

「こ、こいつは凄い!」
「ホント、よく見えるわねえ」
「これで文字もはっきり見えるわい」
「ほんと、裁縫の時針の穴に糸が通せるわ」
「ルーペのように手で持つ訳じゃないし、両手が開いて作業も出来そうね」

「それじゃあ、すみませんが自分に合った見本の眼鏡の番号を言って頂けますか?」

「ん?マインちゃんや、どういう事だね?これを購入できるんではないのか?」

「シェスター様、それはあくまでも眼鏡の度数の見本です。眼鏡のフレームは、その個人にあわせないと耳が痛くなりますよ」

「ほうほう!そんなとこまで気を遣ってくれるのか」

 鑑定を持っている人間に、顔を寸法を測ってもらい、その寸法通りの眼鏡を後日引き取ってもらうのだ。

 眼鏡は飛ぶように売れた。老人たちは目が見えるようになったことを喜んでいて、井戸端会議はその話題一色だった。
 この商品は当然生産ギルドでも、その噂で持ちきりだった。その噂を聞きつけアリベスが部下と共に㋪美研にやってきたのは言うまでもなかった。

「ヒロトシ様。これはどういうことですか?」

「どうもこうもないだろ?これが㋪美研の新製品だ」

「ですが!ヒット商品なんてそう簡単にできるわけがないと言ってたではありませんか?」

「まあ、そのことなんだが俺の言っていた意味が分かったか?」

「何を言っているのですか?」

「町の人間は、震災で余裕がないと言っていただろ?」

「はぁ……言っていましたね。それがどうかしたのですか?」

「こうして、㋪美研の商品を見てどう思った?」

「どうって!ヒット商品が作れるなら何でギルドに……」

「それは関係ないだろ?」

「なんでですか?町の復興で協力してくれても……」

「いいかい?前にも言ったが、俺は生産ギルドには所属していないんだぞ?生産ギルドとは、持ちつ持たれつの仲だが、協力するしないは俺の心持ち一つだろ?」

「うううう……」

「まあ、そんな事はどうでもいい。アリベスさんは今回の事を見てどう思ったんだ?」

「どう思ったって言われても……」

「生産ギルドに所属している生産者は、今までこれをやって来たからそれをしてればいいと言う考えについてだよ」

「えっ?」

「前に売り上げが上がらないとぼやいてただろ?だから、手っ取り早く㋪美研にすり寄って来たんだろ?」

「すり寄ってってそんな言い方……」

「いいかい?俺は言っただろ?生産ギルドもヒット商品を出したら、それを購入して協力してやると」

「それが出来たら苦労しませんよ!」

「よく考えてくれよ」

「何をですか?」

「今回㋪美研の商品を購入してくれている客層のことだよ。なんかおかしいと思わないか?」

「おかしい?」

「今回の客層はお年寄りって事だよ」

「そ、そういえば!お年寄りと言えばお金を使ってくれない客層じゃないですか?なんでお年寄りが!」

「言っておくが勘違いして、町の雑用の依頼料をぼったくるんじゃないぞ?」

「ですが、お金があるなら!」

「そういう考え方だから、ギルドはヒット商品を生み出せないんだよ」

「何でですか?」

「じゃあ、自分と置き換えて考えてみるんだ」

「自分と置き換える?」

「ああ。仮にアリベスさんが、老後の生活をした時にお金はどうするんだ?」

「そりゃ、不安だから今頑張って貯蓄してますよ」

「そうだよな?しかし、老後の生活でその貯金を切り崩して生活をしていたら、依頼料をあげたくても上げることができるか?」

「そ、それは……」

「そりゃ無理な話だって事は容易に想像がつくよな?それなのに、今回の事を見て金を持っているならFランクの依頼料を上げるなんていったら、暴動が起きるぞ?」

「そんなバカな事が……」

「いいや、俺が先導して暴動を起こしてやるよ」

「そ、そんな!」

「いいか?問題はそこじゃないんだよ」

「どういう事ですか?」

「お年寄りは金を持っていないわけじゃない。自分が何歳まで生きるかわからないが、体が動かないから収入が無いだけなんだ。その為、若いころにできるだけ不安が無いように稼ぎまくっていただけなんだよ。つまりだ、生活が楽になったり役に立つことになら、お金を使ってくれるって事をあんた達は理解しないといけないんだ」

「うぐっ……」

「そこまではいいか?俺は、今回ご老人に良い生活をしてもらいたいからこの眼鏡を作った。今まで、図書館で本を読むのが楽しみにしていたが、目が悪くなり読むのがつらいからやめた人間がたくさんいたから、読める様にしたんだ」

「……それだけの理由で?」

「生産ギルドは、商品を使う人の事を考えろと言ってんだ。そうすれば、町の人間は金を使ってくれるよ」

「うううう……」

「納得いかないか?」

「そんなことありません……」

「一応言っておくが、今回眼鏡を手に入れた老人達を見てろよ。驚くべきことが起こるぞ?」

「どういう事ですか?」

「老人達が、自らFランクの依頼料を引き上げる事になるよ」

「嘘でしょ?なんでそんな事を!さっきヒロトシ様はギルドが引き上げたら駄目だって言ったじゃありませんか?」

「ああ!ギルドが老人たちがお金を持っているからと言って、それを搾り取ろうとするのは駄目だと言ったんだ!しかし、自ら依頼料を上げることで、家の雑用をしてもらう事に関しては問題はないだろ?」

「それは……ですが何で?」

「そりゃ、お年寄りが家の溝掃除や庭の雑草の手入れするのは大変だからさ。しかし、お金に余裕があるなら自ら高い金を払うからやってほしいと言う事は問題ないだろ?」

「何でですか?なんで余裕が!」

「分からないかい?眼鏡を手に入れることで仕事ができるようになるからだよ。その収入はお小遣い程度かもしれないが、無収入だった者が収入を得ることができるようになるんだよ」

「どうしてですか?」

「まだわからないのか?目が見えるようになれば裁縫だってできるようになるんだぞ?そうなれば、内職の依頼を受けれるようになるだろ?お年寄りの中には生産職の方がいらっしゃるんだ。それこそ、錬金術師だってな」

「あっ……」

「となれば、今まで現役を退いていた人間が、職に復活することになってもおかしくはないだろ?」

「なるほど……」

「眼鏡は8万ゴールドと高いが、職に復帰できるとなれば安い買い物だよ。つまり、生活が楽になると考えたら老人もお金を進んで使うさ。お金を使わなかった人間が経済をまわし始めるんだよ」

「確かに……」

 アリベスは、ヒロトシの説明に目から鱗が落ちる思いだった。

「だから、発想の転換だよ。金儲けしたいなら使う側の事を考えて見な」

「そんな簡単に行くとは……」

「そんなの当り前だ!簡単に儲けることが出来たら、平民全員が大金持ちだ!商売を舐めんな!」

「うう……」

「まあ、そう言ってばかりもいられないよな?」

「えっ?」

「生産ギルドに依頼を出してやるよ」

「本当ですか?」

「ガラス職人に、ガラスを発注してやるよ。眼鏡レンズの元になる物だ。あと、フレームの発注だ。寸法通り作ってもらいたい」

「あ、ありがとうございます!」

 アリベスは、眼鏡の仕事を貰う事が出来、笑顔となったのだ。しかし、ヒロトシからギルドも商品開発を求められることになった。


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