研磨職人!異世界に渡り、色んなものを磨き魔法スキルと合わせて、幸せに暮らす。

本条蒼依

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第6章 研磨という職

26話 綿花問屋も倒産

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 その頃、ダイアン男爵は、綿花問屋のヤンに綿花を買い占める様に指示を出していた。その言いつけ通りヤンは、綿花を買い占め、ヒロトシの裁縫工場に綿花を売り込みに来ていた。

「今日は、お時間を作ってくださりありがとうございます」

「いえ、こちらこそわざわざご足労申し訳ないです。それでうちにどのようなご用件で?」

「ヒロトシ様が裁縫工場を開いたとお聞きしましたので、そのお手伝いをと思いまして、どうかうちの綿花を使って頂きたいと思います」

「ああ……そういうことですか?」

 ヒロトシはすでに、シアンとセレンのおかげでヤンの存在を知っていたが白々しく初めての対応をしていた。

「この辺りの綿花は殆どがうちの管轄している物です。ヒロトシ様の工場の規模ですと、うちにしか綿花の量を賄えないと思うのです」

 ヤンはそう言って、イヤらしい笑みを浮かべたのだった。

「申し訳ないですが、ヤン綿花問屋の綿花は高価過ぎるのです。もっと勉強して頂けませんか?」

「大量購入して下さるのなら多少は……」

 ヤンは、ヒロトシがいきなり値段交渉をしてきた事にびっくりした。

「いえ……多少では困ります。今の値段の65%引きに」

「65%引きですと!し、しかし、この辺りの綿花は生産が落ちているのです。そのような値段で取引をしたら我々の店が潰れてしまいます」

「だったら、貴方の所の綿花はいりません」

「ちょっと待ってください!うちの綿花をいらないと言ったら困るのはそちらの方ですよ?」

「大丈夫ですよ!貴方の所は出費が多すぎるから利益が出ないんです。それさえなければ、十分賄えるはずですよ」

 ヒロトシの言葉に、ヤンは固まってしまった。

「何を言っているのかわからないですね……」

「そうですか……」

「しかし、わたし共の綿花を断ったら、どのように布の原材料をそろえるおつもりですか?この工場の規模ですと、この辺りでは無理という物です」

「申し訳ないね……もし、あなたの所の綿花を使った場合、製品がとてもに高くなり平民のお客様が購入しづらくなるんだよ」

「しかし、今のご時世生産量は減っているのです……商品が高くなるのは当たり前で……」

「そう言う当たり前は、賄賂をやめたらなくなりますよ」

「さっきから何を言っているのですか?うちはそのような事はしておりません」

「だったら、もっと安くできるはずですよ」

「だから。生産量が……」

「まあ、いいです。仮に綿花がそこまで高騰していてその値段で商品を作ったら、うちのメインの製品が貴族しか購入できなくなるので、やはり貴方の所の綿花は使う事が出来ません」

「メインの製品ですと?」

「うちはですね。綿花は必要ないんですよ」

「どういう事ですか?綿花がいらなければ糸を作れないではありませんか?断るにしてももっとましな嘘を!」

 ヤンがヒロトシに詰め寄ったが、それを制して説明を続けた。

「まあ、貴方が興奮するのは分かるよ?だって、今日の日の為にダイアンの指示を受けて、この辺りの綿花を買い占めていたんですものね」

 ヒロトシはヤンの顔を見て笑顔で返した。その笑顔にヤンの顔から汗が滝のように流れていた。

「な、なんンの……事やら……わつぃには」

 ヤンは、ヒロトシの目に挙動不審となり言葉もかんでいた。

「話を戻しましょうか。うちの製品はこの原材料を使うんですよ。ヒロトシは、ヤンの目の前に一掴みのウールを出した。

「こ、これは……綿ではないのか?いや、これは!」

「わかりましたか?」

「これは高級素材の!」

「そうです。スリーピングシープの羊毛ですよ」

「馬鹿な!こんな素材、揃えれるわけがない!」

「うちはそれを可能としたのですよ」

「いくらうちの綿花を使いたくないからと言って、そんな嘘をついて後悔するぞ?うちは、この先貴方の所とは絶対に取引はしないからな!」

「まあ、それは構いませんが、それをした場合貴方は破滅に導かれるでしょうね。今のうちに衛兵に自首するのをお勧めしますよ」

「何故、私が自首などせねばならないんだ!」

「そりゃ、自首をしたら賄賂の事を反省したとみなされ、罪が軽くなるかもしれないからですよ」

「馬鹿な事申すな!それに綿花を使わずそんな高級素材で品物を作ったら、誰も購入できないではないか?」

「先ほど貴方は、綿花が品薄だから値上がりしていると言いましたよね?」

「そんなの当り前ではないか?」

「だったら、このウールが生産可能としたらどうなりますか?当然、安くなるのは当たり前ですよね?」

「馬鹿な事を!スリーピングシープを討伐するのがどれほど大変だと思っているのだ?」

「いやいや、討伐したら生産とは言えないでしょ?」

「はっ?討伐せずにスリーピングシープの羊毛をどうやって手に入れるのだ?」

「証拠を見せましょうか?」

「そんな証拠があるわけない!」

 ヒロトシは、ヤンを厩舎に連れて行くとそこには30頭ほどのスリーピングシープが横たわっていた。そして、従業員達がスリーピングシープの世話をしていた。

「そ、そんなバカな!」

 ヤンの驚愕の大声に、スリーピングシープが安眠を邪魔されて全頭がヤンを睨んだのだ。

「ひっ!」

「ちょっとヤンさん……スリーピングシープを刺激しないでくださいよ」

「しかし、こんな事が……どうやってスリーピングシープを……」

「この子達は俺のテイム生物ですよ」

「はぁあ?」

「あれ?知りませんでした?俺が魔物でもテイムできるのは王都でも有名じゃないですか?」

 ヒロトシは白々しく、説明したのだった。

「そんなこと……聞いたこと……」

「おかしいなあ?貴方もビアンカの事は知っていたと思うんですけど?」

「うぐぐぐぐ……あのビアンカは人のようなものではないか……まさか、普通の魔物をテイムできるなんて、最初から知っておれば……」

「それは貴方が勝手に勘違いしただけですよ」

「うぐっ……」

「とにかくですね。このスリーピングシープの毛を使った商品が、うちのメイン商品となるのですよ」

「そんな事をされれば……綿花の価値が!」

「そうです、綿花の価値は以前の値段に戻るはずです。スリーピングシープの毛が手に入りやすい値段で売り出されるのです。そんな馬鹿高い綿花の需要は皆無となるんですよ」

「そ、そんな……」

「なので、うちとしても65%引きなら取引が出来ますよ。今の値段では取引は無理という事です」

「そんな事をされれば私は……」

「悪い事は出来ないと、学べて良かったではありませんか?いい勉強になったでしょ?」

 ヤンはその場に崩れ落ちた。ダイアンの指示とはいえ、ダイアンの金まで使って、綿花を買い占めたのだった。その綿花が大量在庫となるのは明らかだったからだ。

「ヤンさん。貴方達悪徳商人は、自分の利益しか考えていないから欲に目がくらんでそうなるんですよ」

「ぐっ……」

「俺は、これから貴方の様に裏で貴族と手を組み、賄賂を当たり前のように行なう人間達を追い込むつもりだ」

「先ほどから、あなたはいったい何を言っているのですか?私は貴族様に賄賂など……」

「いや、もう惚けなくてもいいよ。先ほど自首しろと言った時に、素直に返事をしておけばよかったのに、まだこの期に及んで惚けるとは恐れいったよ」

「だから一体何を!」

「あの時、俺は貴方に最後のチャンスを与えたんだよ。それをあなたは蹴っただけの話だ。もう貴方と話す事はないよ。お引き取り下さい!」

「そ、そんな!何で一方的に!」

 その時、ヒロトシの裁縫工場に衛兵が入ってきた。

「ここに綿花問屋のヤンがいると聞いた!大人しくしろ!」

「何で衛兵が私を!」

「そこにいたのか?お前にはダイアン男爵との贈賄の容疑が固まった!大人しくお縄に着け!」

「馬鹿な!」

 こうして、ヤンは衛兵に捕まり兵舎へと連行されてしまった。ヤンはダイアン男爵に賄賂を贈り、他の綿花業者に圧力をかけてもらい、他の業者は綿花を入手しづらい状況をつくっていた。必然とヤンの綿花問屋に、綿花が集まる構図が出来て、それを高値で売る事をしていたのだ。

 あの時、自首しろと言った時、ヤンが惚けたので裏で聞いていたシアンとセレンは、事前に入手していた証拠を兵舎へと提出した事で、王国騎士団はその証拠を元に綿花問屋とダイアン男爵の屋敷に乗り込んだと言う訳だった。


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