雨の上がる時・・・

本条蒼依

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最終話 明るい未来

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 花校祭が終わり、明美は教室にいてクラスメイトに囲まれていた。

「立花さんって歌上手いんだな?」
「ホント、聞いていて心地よかったよ」
「今度、一緒にカラオケ行こうよ」
「でも、グランプリってすげえな。当然来年も出るんだろ?」

「あたしはもういいかな?」

「ええ!なんで?勿体ないよ?」

「今は、このミスコンに興味は無くなったからかな?それより、もっと違う事に興味が出てきたかも……」

「なんか。立花さん変わったね」

「えっ?」

 明美は、クラスメイトの言葉に眉をしかめた。それを見たクラスメイトは慌てて否定したのだった。

「あっ、勘違いしないでね。いい意味で言ったんだよ」

「いい意味って?」

「ミスコンに出て自信がついたっていうか、なんか堂々としたというか」
「うんうん、あたしもそう思った。前は遠慮して自分の意見を言わなかったじゃん」
「たしかに、前の立花なら来年も出るんだろと言われたら、そのままの言いなりだった感じだよな」

「そ、そっか……」

「落ち込むような事じゃねえって、それより違う事に興味が出て来たって言っただろ?」
「うんうん。やっぱり歌とか?」
「確かに、あの歌は又聞きたいよな?歌手になりたくなったのか?」

「……内緒」

「「「「「「えええええ!」」」」」」」

 明美は顔を真っ赤にして俯いてしまい、クラスメイトは秘密と言われて大きな声を出した。

 するとそこに、担任の神谷先生が教室に入って来た。

「ほらぁ、いつまで教室に残っているつもりだ?早く下校しろよ」

「「「「「は~い」」」」」」

「おお、立花さん今日はおめでとう!すっかり印象が変わって先生びっくりしたぞ」

「あ、ありがとうございます」

 担任の神谷は、明美の対応にびっくりした。笑顔でしっかり自分の顔をみて分かりやすい大きな声であいさつをしたからだ。

「うんうん。何か自信が出てきていい挨拶だ」

 神谷は、明美の事を心配していただけにここ数日で何かいいことがあって、ここまで変われたのだろうと思って笑顔になった。

「す、すげえ……立花の奴担任の心まで奪っちまったぜ」

 角谷智弘が、冗談で茶々を入れた。

「馬鹿者!お前は何を言っているんだ!」

「「「「「あはははははは!」」」」」」
「先生、さよなら~~~~~~」

 クラスメイトは、大爆笑をして教室から出て行くのだった。

「ったく……あいつ等は……」

「ほら、立花さんも早く帰る。先生は戸締りしないといけないんだからな」

「はい!先生、さようなら」

「気をつけて帰るんだぞ」

「はい」

 明美は、教室から出たが、博也が教室に戻ってこなかったのが心残りだった。教室に顔を出すものとばかり思っていたのに、結局部活の出店の片づけで戻ってこれなかったみたいだった。

 明美は、やっぱり博也にお礼を言いたくて校門で、博也が片づけが終わるのを待っていようとおもって、校門前で待っていた。

 校門前で待っていた明美の前に現れたのは、美沙達だった。

「ねえ、あんた!こんなとこで何してんのよ?」

「えっ?」

「なにって、その……」

「グランプリを取ったからって、調子に乗るんじゃないわよ?」

「調子になんか……」

「早く帰ったらどうなの?」

「あたしは、村田君に用事があって……」

「はぁあ?やっぱり調子に乗っているじゃない!博也君に会ってどうするつもり?」

「そんな事あなたに関係ない……」

「何言ってんのよ!博也君はあたしが!」

「でも、あたしはあなたにミスコンで勝ったよね?あなたは、ミスコンであたしに負けたら博也君を諦めるって言ったじゃない」

「うっ……うるさい‼そんなのは無効よ」

「おいおい。それは違うんじゃないのか?立花は、なんのメリットもないのに、ミスコンに出場したんだぜ」

「博也君!違うの。この陰キャがこんなに変わると分かってたら、あんな条件出さなかったわ」

「俺、ちゃんと言ったじゃないか?立花は陰キャブスじゃなく可愛いって。なのに、久保田が俺の言う事聞かなかったんじゃないか?」

「村田君……」

「そ、それは……だけど、あたしは博也君の事が……」

「悪いな。俺は久保田の事は何とも思ってないから、告白されても悪いけど付き合う事はないよ」

「うっ……」

「「美沙……」」

 美沙は、何も言わず悔し涙を流し帰っていったのだった。取り巻きの二人も美沙を追って一緒に帰っていったのだった。

「あ、あの……村田君」

「大丈夫だったか?」

「う、うん。いつも助けてくれてありがとう」

「あ、いや無事なら良かったよ。それでこんなとこで何をやっていたんだ?」

「うん……村田君を待ってた」

「あ、ごめんな。片づけが終わらなくて……こういう時下級生は率先して働かなきゃいけなくてな。でも、先輩に言ってミスコンはちゃんと見てたよ」

「ほ、ホント?」

「当たり前だろ。あれだけ姉ちゃんと協力したんだ。まあ、見れなくても安心していたけどな」

「安心?」

「ああ!立花はあれだけ頑張ったんだ。グランプリを取れるって信じてたからな」

 二人の間に沈黙が流れた。

「うん……村田君、本当にありがとね」

「ああ……それで俺を待ってたって、お礼を言いたかったからか?」

「うん。それだけじゃないんだ……さっき、久保田さんとの会話で、あたしにメリットが無いのにって言ってたでしょ?」

「ああ……」

「そうじゃないんだ」

「そうじゃないって?」

「あたし、ミスコンでグランプリを取れて本当に良かったと思っている。今まで、教室の隅で小説を読む事だけが楽しみだった。あたし自身、自信が持てる物がなくて小説を読んでいた時だけ、主人公になってワクワクしてたんだ」

「うん」
 
「でも、グランプリを取れたら興味のある事を頑張ろうって思ったの」

「新しく興味のあるものが出来たんか?」

「うん。グランプリを取れたら、村田君に聞いてほしくて待ってた」

「そうか。これから何を頑張るんだ?いくらでも聞くぞ」

「あのね……あたし、ミスコングランプリを取れたのは、博也君のおかげだと思ってる」

「えっ、博也君?」

 明美の顔は、真っ赤で夕日に照らされていた。





「あたし、博也君の事が好き……いつもあたしの事を気にかけてくれてて、あたしのお弁当を美味しいって言ってくれた事も嬉しかった。だから、これからは博也君の事で一所懸命になりたいと思ったの。あたしと付き合ってください」

 明美は、博也の目を真っ直ぐにみて、告白していたのだった。

「あ~あ……立花は酷いなあ」

「えっ?」

「告白は、俺からしようと思っていたのに……」

「じゃあ」

「うん。俺で良かったらお願いします」

 博也は、照れくさそうに頭をかきながら笑顔を見せたのだった。その笑顔に明美は、嬉しくて博也に抱きついていたのだった。もう、自信のない明美はもう存在はしていなかった。




 そして、明美と博也はそれからもつつがなくつきあいは続き、博也の希望で3年間、花校祭のミスコンに出場し、坂下佳織が成し遂げられなかった3年連続のグランプリを取ったのだった。

 その後、博也とは同じ大学に進み、卒業後結婚する事になるのは別の話である。



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みんなの感想(2件)

花雨
2021.07.25 花雨

何だか心がやさしくなれそうな作品ですね(^^) 先の展開が気になったのでお気に入り登録させてもらいました(^o^)
良かったら気が向いたら私の作品も観てくださいね(^^)V

本条蒼依
2021.07.26 本条蒼依

コメントありがとうございます。
 お気に入り登録ありがとうございます(*^-^*)

これからも頑張って書いていく所存です。
どうもありがとうございました<m(__)m>

解除
。。
2021.07.25 。。

新作(´▽`)
癒し( ◜ω◝ )
最近バテバテだからほっこりします。
応援してます^ ^
熱中症には気をつけてください。

本条蒼依
2021.07.26 本条蒼依

早速、コメントありがとうございます。
 こちらの小説は、アットホームでほのぼのした感じの小説を書いてみたいと思って
書いてみました(*^-^*)

 いつも本当にありがとうございます<m(__)m>

 フリー様も、熱中症には気をつけて体調にはお気をつけください
(^^♪

解除

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