雨の上がる時・・・

本条蒼依

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14話 グランプリ決定!

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 出場メンバーは上級生から、色んなことをステージ上で発表していく事になる。中にはスクリーンにグラビアアイドルのように水着の写真が映されたり、持ってきた服を早着替えしたり、ファッションショーをしたりいろいろで客席は沸き上がった。

 その中でひときわ沸き上がったのは、やはり3年生で3連覇が掛かっている坂下佳織だった。スクリーンにはグラビアアイドル顔負けの写真が映され、ステージ上でも、水着になってみせたのだった。佳織は出場者がやっていなかったステージ上での水着をやってのけたのだった。
 
「すげえ!坂下さん」
「ミスコンで水着になったのは坂下さんが初めてじゃねえか?」
「スタイル素敵~~~!」
「今年も坂下さんで決まりね」
「坂下さん、このミスコンにかけていたもんね」

 こうしてミスコンは進んでいき、美沙の番になった。美沙も又スクリーンに読者モデルでの写真を映し、自己紹介をした。美沙には、ファンがついていてステージ前は沸き上がっていた。

「美沙ぁ~~~~~!」
「今年はお前がグランプリだ!」
「お前が3年連続グランプリを!」

 美沙は応援にステージ上から手を振って答えた。美沙は入学してから校内にもファンを獲得し、応援に来てもらっていた。美沙は自分の出番が終わりステージの後ろに並んだ時、自分のライバルは佳織だけだという思いで、佳織の目を見て微笑んだのだった。
 これには、3年連続グランプリを狙っていた佳織は焦りを見せていたほどだった。実際この歓声の多さは、佳織と同等であり2分されていたと感じられたのだ。

「くっ……今年の新入生に、あんなに人気がある子が入学してただなんて……」



「今回、最後のエントリーだ!張り切ってどうぞ!」

 司会の男子生徒は、ミスコンを盛り上げる様に観客に言った。

 最後の出番だった明美は、ステージの袖でドキドキしていた。今まで陰キャで、こんな表舞台に立ったことが無くて急に不安になっていたのだった。

(どうしよう……急に足が……)

 明美は緊張して、足が動かなくなっていたのだった。目の前がくらくらしてその場から逃げ出したい気分だった。

「明美?大丈夫か?」
「わんわん」

「えっ?お父さんとアオ?何でここに?」

「やっぱり、緊張していたか?お前は俺の娘だからな。そんな事じゃないかとおもっていたよ」

「わんわん」

「もうすぐ出番だ。お前がミスコンだなんて、思いっきったことするとはな……何か事情があるとは思うが、何かを変えたかったんだろ?結果はともかくこの状況を楽しんで来い!」

「わんわん」

 明美は、父親の言葉に少し冷静になった。緊張でドキドキしているが、アオを拾って学校生活が変わってきたことを思いだしていた。
 明美にとって、アオは幸運の犬であって今までいろんな勇気を与えて貰っていた。今回もまた父親の言葉と共にその愛らしい姿で勇気をもらった気がしたのだった。



「さあ!最後のエントリーは1年の立花明美さんだ!」

 観客席からは、騒めきがおこった。

「なあ、立花明美って誰だ?」
「さあ?」
「俺も、ミスコンに出るような女の子のチェックはしていたがそんな子は知らないなあ?」
「この子はスルーしていいぞ。いつも教室の隅で本を読んでいるような子で、髪の毛もぼさぼさで陰キャ女子だぞ」

 その噂の中で、明美のクラスメイトだけは、先ほどの明美の変わりようを見ていたので、びっくりするだろうと思っていた。

 ステージに上がった明美を見て、観客が騒めきたった。そこには、顔を赤らめて堂々とした姿でステージ立った明美に、観客全員が見惚れていた。

「だ、誰だよ、あの子が陰キャだなんて言ったやつは」
「ほんとうだよ。むっちゃ美少女じゃん」
「あんな子今までいたか?」
「俺は知らん……」

 そして、歓声が上がった。当然その歓声はクラスメイト達だった。

「立花あ~がんばれよ!」
「ホント可愛いわよ!」

 クラスメイトの歓声がステージ上に響いたが、佳織や美沙のような歓声はなかった。明美には、ステージ上のスクリーンに写真が映されるわけでもなく自己紹介だけだった。

「あたしは、今までこんな表舞台に立つような人間じゃなかった。しかし、こういった機会を頂いた事で頑張ろうと思いました。聞いて下さい」

 すると、ステージ上が真っ暗になり、明美にスポットライトが照らされたのだった。そして、音楽が奏でられスクリーンには、変わる前の明美が映されたのだった。

 これは全部、博也たち兄弟の演出だった。美沙のように読者モデルでの写真がある訳でもなかった為、とことんギャップで勝負する事だった。
 そして、美尋たちと遊びに行った時、明美には歌の才能もあり、ミスコンでは歌を歌う事に決めていた。ステージ上で堂々と歌う明美の声は素晴らしく、みんなが聞きほれていた。曲が終わった時、最初クラスメイトしか拍手をしていなかった観客が全員が拍手して盛り上がっていた。

「すげえ!むっちゃ上手い!」
「ホント、透き通るような声が良かったわ」
「プロでも通用するんじゃないか!」
「むっちゃ、感動した!」

 物凄くステージが沸き上がったのだった。この状況に明美は信じられなかった。自分には自信の持てるものは最近まで何もなかったのに、自分の歌声でこんなにも湧き上がっていることが信じられなかったのだ。
 そして、この状況を見た美沙は悔しくて奥歯を噛みしめた。




 そして、全ての出場者が出そろい、グランプリの発表されることになる。審査員は、20人で教師や生徒、飛び入りの商店街の店主達だった。その中には出場者の身内は入れない様にするのがルールである。

「第三位は!」

 ステージ上にはドラムロールが流れ、ステージは静まり返った。

「得票2票で3年の坂下佳織さん」

 ここで、3年連続グランプリの偉業が途絶えて、佳織はガックリ下を向いたのだった。

「第2位は!」

「得票3票!1年の……」

 美沙と明美はゴクリと喉をならした。

「久保田美佐さん!」

 美沙は笑顔でステージ上で手を振ったのだった。この辺りはグランプリを取れなくとも普段から観客の目に慣れている美沙は落ち込まず対応したのはさすがだった。





「そして、今回のグランプリは!得票数15票!」

 ドラムロールが長めに流れ、ステージはシーンと静まりかえった。

「1年の立花明美さん!」

 その瞬間、明美にスポットライトがあたり、ステージは溢れんばかりの歓声が沸き上がったのだった。明美の周りには、クラスメイトが集まり胴上げをして祝い、興奮さめ止まずミスコンは幕を閉じたのだった。


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